PSP向けカーナビレビュー後編「みんなのナビ」 nav-uエンジン搭載で、操作性や案内の分かりやすさは抜群 |
価格も手ごろなうえに、最新モデルではデータ量も充実して、DVDナビにも負けない実用度になってきているPND(Portable Navigation Device)。据え置き型カーナビは高価で敬遠していた人や、セカンドカー用にもう一台、なんていう人にも気になる存在のハズ。そこでさらに視野を広げると、気になってくるのがソニーのPSPを使ったカーナビだ。ここ最近では「MAPLUSポータブルナビ3」と「みんなのナビ」が登場したが、いずれもPSPを持っている人ならソフトと専用GPSレシーバーで1万5000円以下という価格も魅力だ。
ということで、この2つのPSP用カーナビソフトのレビューを2回に分けて行っていく。前編ではPSPならではのメリット/デメリット、そして「MAPLUSポータブルナビ3」をリポートしたが、この後編ではゼンリンから発売となった「みんなのナビ」を紹介していこう。
と、リポートに入る前にひとつお断りを。今回テストに使用したのは発売直前のバージョン。まだ、実際に触っていないので断言はできないが、伝え聞くところによると市販バージョンは動作が若干軽くなっている様子。そのため、そのあたりの話は多少割り引いて読んでほしい。
■みんなのナビ
ゼンリンは昭和23年創業の老舗地図メーカー。カーナビとのかかわりも強くCD~DVDナビ時代は自社ブランドでカーナビ向け地図ソフト(ナビ研対応)をリリースしていたほか、ソニーや三洋電機など同社の地図を利用しているカーナビは多い。その強みは徹底した調査を元にした住宅地図にある、ってハナシは余談なので今回は省略。
同社はこれまでPSP向けとしては「みんなの地図」をリリースしていた。が、このソフト、GPSを利用する点をはじめ市街地図収録、「Petaマップ」対応、ジャンル検索可能と、据え置き型カーナビとあまり変わらない特長を持っていたものの、ルート探索が最長10kmまでと制限されていた。つまり長距離移動が多いクルマ用としてはちょっとモノ足りない内容だったワケ。
そこで新たにリリースされたのが、今回紹介する「みんなのナビ」だ。こちらはタイトルからも分かるように「ナビ」に特化しており、同社としては初のクルマ向けのソフトとなる。
カーナビの場合、ルート探索や案内などナビエンジンのデキが使い勝手に直結するため、初参入となるこのソフトの仕上がりは気になるところ。だが、定評のあるソニー・nav-uのエンジンをPSP用に移植することで、かゆいところに手が届く高い完成度を実現。ハード面での差はあるものの、PSPでnav-uとほぼ同等のナビとなっている。
下の表組みを見て貰えば分かるように、ラインアップ上は以前の記事で紹介したnav-uのNV-U3Cに近いスペックで画面サイズ、タッチパネルの有無ぐらいが大きく違う点。それに伴って画面レイアウトやメニュー表示が若干変わっているけれど、使い勝手そのものへの影響はほとんどない。nav-uを使ったことがあると、つい画面を押してしまって「?」となることがたまにある程度だ。
NV-U3 | PSP+みんなのナビ | NV-U3C | |
モニターサイズ | 4.8V型 | 4.3型 | 3.5V型 |
アスペクト比 | 16:9 | 16:9 | 4:3 |
画面解像度(ピクセル) | 480×272 | 480×272 | 320×240ル |
外形寸法(幅×奥行×高さmm) | 約150×約20×約87 | 約169.4×約18.6×約71.4(GPSアンテナ除く) | 106×17×78 |
質量(g) | 約250 | 189/16(GPSアンテナ) | 約157 |
自律機能 | POSITION plus G | あり | POSITIONアシスト |
GPSアンテナ | 内蔵/外部 | 専用オプション(PSP-290) | 内蔵 |
地図データ/内蔵メモリー | 4GB | UMD2枚組 | 4GB |
外部メモリー | メモリースティックデュオ | メモリースティックデュオ | メモリースティックデュオ |
縮尺 | 25m-800km(17段階) | 25m-800km(17段階) | 25m-800km(17段階) |
電話番号検索 | 約1000万件 | 約1000万件 | 約1000万件 |
住所検索 | 約3400万件 | 約2300万件 | 約3400万件 |
市街地図まで標準としたことでデータ量が増えUMDは2枚組。DISC1がシステムデータや道路地図、検索データなど、DISC2には詳細地図データや地点検索データ、案内画像データなどを収録している。2枚同時には使えないため、メモリースティックへのデータインストールは必須となる。
インストールは3タイプ用意。快適に使うなら4GB以上の容量を持ったメモリースティックを用意して、一番上のDISC1+DISC2を選びたい。インストールに要する時間は25分ほど(メモリースティックの転送速度で異なる) |
メニュー表示時の項目。ナビゲーション、アプリケーション、編集・設定と3つのタブが用意されるのはnav-uと変わらないが、その中の項目は「みんなのナビ」向けに微妙に変えられている |
「行き先」を選択した際のメニュー。使用できる項目は住所や電話番号など、一般的なもの |
■多彩なジャンルとネット連動で目的地をカンタン検索
目的地検索は住所や電話番号、ジャンル、名称などを用意。ただし、電話番号はタウンページ情報のみ検索が可能。据え置き型のカーナビやnav-uの最新モデル「NV-U75」のような個人宅検索には未対応だ。それ以外の部分では、もうPNDどころか据え置き型カーナビとあまり変わらない。市街地図を収録したことで住所検索はまさにピンポイントだし、駅や大型の商業施設のような場所では駐車場や出入口などまでリストアップしてくれるなど使い勝手は抜群。よく使うジャンルを2つ設定しておける「最寄検索」も健在だけど、「画面上のアイコンをタッチ」というわけにはいかないので、手順がワンアクション増えてしまった。ソフトには責任がない部分とは言えちょっと残念。
と、まずよいところを先に書いたけど、実はあまり歓迎できない部分も受け継いでしまった。それが目的地を探すときの検索速度。住所や電話番号では気にならないものの、ジャンルや名称で候補が多い場合は、かなりの間<検索中……>の文字とにらめっこすることになる。前編で紹介した「MAPLUS3ポータブルナビ」もこの点は同様だったことを考えると、アルゴリズムというよりはハードの限界なのかもしれない。また、しつこいようだけど文字入力は不便。PSPのボタン操作で行うソフトウェアキーボード入力は、カーナビで使うインターフェイスには向いていない。
少し脱線したので話を検索に戻そう。検索にはもうひとつ便利な機能が用意されている。それが「ガイドブック」だ。観光やグルメスポットなどの情報を、ソニースタイルが運営する地図情報サイト「Petaマップ」からダウンロードすることで、ナビ上で活用することができるというもの。
そのメリットは、元々ナビに収録されているものと違って、鮮度の高い情報が手に入れられること。nav-uではメモリースティックやパソコンとUSB接続する必要があったけど、PSPなら内蔵無線LAN&ブラウザで直接アクセスできちゃうのだ。ホットスポットなどのアカウントを持っていれば外出先でも使えるから、ドライブ先で時間が余ってしまったり、どこに行くか迷ってしまったり、なんて時に重宝しそう。据え置き型カーナビでもこういったダウンロードに対応したモデルがあるけど速度が遅く意外と面倒。こっちのほうがスマートかつコストも気にせずに済む。PSP版ならではの機能だから、持ち歩いて積極的に使いたいところだ。
PSPの無線LAN機能を使って「Petaマップ」に直接アクセスすることができる。検索、ダウンロードした「ブック」はメモリースティックに保存され、詳細を見たり、目的地として設定したりすることが可能だ |
■実用的で便利なルート探索
ルート探索の速度は「HDDナビほど瞬速ではないけど、イラっとするほど遅くない」といった感じ。ハードの違いに加え、渋滞予測が入っていないこともあってか、先日レビューを掲載したnav-uのNV-U75より速く、近距離なら10秒足らずで済む。標準では「推奨」で探索が行われ、結果画面では利用距離と予測所要時間、高速料金が表示される。それを見て気に入らなければ「探索条件」ボタンを押せば一般道優先、有料道優先、一般道距離優先と条件を変えて再びルートを探索できる。
据え置き型カーナビのように条件の異なるルートを同時に比較することはできないけど、「推奨」でもほぼ妥当と思えるルートを引いてくれるから、それほど利用する機会はないハズ。ルートの途中に中継点を設けたいときは「ルート編集」のほか、ルート案内中に検索した場所をそのまま中継点として最探索が行える。ルートを間違えて通り過ぎてしまった場合は「スキップ」で飛ばすことができるのは実用的でとても便利。
■豊富な案内画面でルートを分かりやすく案内
定評あるnav-uエンジンを使っているだけに、ルート案内はハイレベル。交差点での案内は拡大図に加え、距離を示すプログレスバーやレーンガイドが表示され、とても分かりやすい表示。さらに主要交差点では実写ベースのイラストを用いたパターンや、道路に設置されているモノと同じ意匠の方面案内看板も用意されている。高速道路ではIC(インターチェンジ)やJCT(ジャンクション)、SA(サービスエリア)/PA(パーキングエリア)などを表示するハイウェイモードのほか、都市高速入口やJCTではイラストによる案内が用意されており、とても分かりやすい案内をしてくれる。案内音声は聞きとりやすい声質でタイミングよく誘導してくれるものの、MAPLUS3のような“おしゃべり”などはしてくれない真面目なモノだ。
また、クルマから降りて使える「徒歩モード」も搭載。クルマでは通れないビルや駅の中、歩道橋などを使ったルートを案内、横断歩道などはアイコンで示してくれる。このモードへはメニューからカンタンに切り替えられるから、「大規模施設の駐車場にクルマを駐めて、さらに施設のある場所まで歩く」なんてシチュエーションでは相当便利。ただ、nav-uと違って電子コンパスなどを搭載していないため、精度面では今一歩。MAPLUS3と同じく、ワイヤレスLANの電波を使って測位を行う「PlaceEngine」に対応するため、GPSの電波が届かないビルの中などでも利用が可能なハズだが、テストした場所ではあまりよい結果が得られなかった。
精度面ではやはりハードが同じということもあってMAPLUS3と変わらない印象だ。GPSのみでの測位となることからnav-uの「POSITION plus GT」や「POSITION plus G」のような精度は持っていないけれど、トンネル内での挙動を見ていると推測航法は搭載されている様子。とはいえ、それまでの速度を維持してルートどおりに進んで行くだけなので、トンネル内での渋滞や分岐には対応できない。
■嬉しい市街地図の標準搭載
地図は25mスケールから800kmスケールまで17段階の切り替えができる。後半のほうの使い道がないのはnav-uと同じ。嬉しいことに標準で建物の形状などまで確認可能な市街地図を収録しており、100mスケール以下で表示が可能だ。地図の色は17パターンから、文字サイズは3パターンからと、好みに応じたカスタマイズにも対応している。
2D/3Dの切り替えも用意されているものの、メニューの少し深い階層から変更する必要がある。それほど頻繁に切り替えることはないだろうけど、もう少し手軽にできてほしいところ。
■「PSPでカーナビ」はアリ?
今回、PSP用のナビソフトを2タイトルチェックしてみたが、その実力はかなり高いレベルといえる内容。PSPというハードのパワーで実現した部分、逆に制約を受けてしまった部分等々はあるけれど、「カーナビ」として使うには十分な実力を持っていた。
ナビとして使う上で一番のネックはタッチパネルではない点。必ずしもタッチパネルが最良のインターフェイスではないけれど、現状ではそれによって操作性がかなりスポイルされてしまっている。まぁ、出発前に手元で操作を完了しておけば済むハナシだから、逆に安全といえるかもしれないけれど……。そのほかGPSのみとなる精度面、VICS未対応といった点は、低価格なPNDも同様と割り切って使うことで意外と気にならなかった。
そのあたりを踏まえて両者を見ていくと、「MAPLUSポータブルナビ3」は声優ナビに代表されるカスタマイズ性や、とにかくスムーズな地図表示と魅せることにコダワり、一方の「みんなのナビ」は高性能なnav-uエンジンを利用することでナビとしての高いパフォーマンスを実現。と、奇しくもまったく異なるキャラクターを持つ仕上がりとなっていたけれど、どちらを購入しても満足度はかなり高いハズだ。なんといってもPSPを持っているなら、専用GPSレシーバー込みでもわずか1万5000円ほどで実用的なカーナビが手に入れられるのは相当なサプライズ。あまり声を大きくしては言えないが、この価格は「据え置き型ナビの地図更新より安い!」のだ。
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(安田 剛)
2009年 12月 2日