高橋敏也の新型「プリウス」買ってみた長期レビュー
第5回:新型プリウスの使い勝手、ラゲッジスペースなどなど


 新型「プリウス」に乗っていると、よく人に「ラゲッジスペースは狭いんでしょ?」と聞かれる。新型プリウスの後部に巨大なバッテリーユニットが搭載されていることは、多くの人が知っている。バッテリーがスペースを取るため、ラゲッジスペースは自動的に狭くなる。そう考えるのも、無理のない話である。

応急用タイヤスペースの前方に位置する銀色のプレート部分が、バッテリーユニットのアッパーカバーである。この分がスペース確保上のハンデとなっている

 余談だが新型プリウスに搭載されているバッテリーの仕様は、1.2Vのバッテリーセルを6個1組にして、その7.2Vモジュールを28個搭載していると言う。まあ、バッテリーに関して話し始めると止まらないので、これぐらいにしておこう。とにかく新型プリウスの後部には、確かに巨大なバッテリーユニットが搭載されているのである(トヨタでは“HVバッテリー”と呼ぶ)。

 さて、そんな新型プリウスのラゲッジスペースだが、個人的な感想としては「意外と広いな」というのが正直なところである。私も例に漏れず、「プリウスのラゲッジスペースはやや狭いのだろう」と思い込んでいた口である。だが、実際に使ってみるとこれが意外と広く、使い勝手も悪くないのだ。

 一応、新型プリウスのラゲッジスペースをスペックとして見ると、VDA方式測定値で446Lとなる。ちなみに私も今回、調べて初めて知ったのだが、VDA方式というのはドイツ自動車工業会(VDA)が定めたもので、内部容量がちょうど1L、長さ20cm、幅10cm、高さ5cmの箱が何個入るかという測定方式だ。

 446Lというのだから、新型プリウスのラゲッジスペースには、上記の箱が446個も入るのである……。とか言われても、よく分からんがな! ちなみに“薄型じゃない”ティッシュの一般的な箱のサイズが、長さ24cm、幅11.5cm、高さ8cmほどである。ティッシュの箱なら、そりゃ数百個入ってもおかしくないだろうなあ。ティッシュの特売があって、無制限で購入できるときなどは、このVDA方式の値が役立ちそうだ……。

 なお、カローラクラスのセダンだと、トランクルームの容量はVDA方式で400L前後あるらしい。ワゴンの場合は2名乗車時、後部座席を折りたたんだ際には、1000Lに近い値となる。いやいや、新型プリウスだって後部座席を畳んでしまえば、そのラゲッジスペースは、相当広いものになる。カタログスペックによれば、後部座席をたたんだ際には、奥行き約1.7m、幅約1.55mの空間が確保できるのだ。

 確かに新型プリウスのラゲッジスペースは、床面が高いように感じる。これは当然のことで、その下には従来モデルよりはコンパクトになったとはいえ、巨大なバッテリーユニットが格納されているのだから。奥行きや幅は十分なのだが、高さがやや足りないように見える。だからこそ「ラゲッジスペースは狭いんでしょう?」となる訳だ。

 スペックや雰囲気だけで話をしていても始まらない。VDA方式はスペックを比較するときは便利だが、実際にどれぐらい荷物が載るかを実感しづらい。そんな訳で高橋方式測定値というのを考えてみた。そう、自作パソコン用の本体ケース、それも大型のものが何台搭載できるかを、試してみたのだ。

 ちょうど知り合いのところにSilverStoneの「SST-FT02」という、大型本体ケースが、箱に入った状態で数台置いてあった。そもそも大型サイズ、重量もあるパソコンケース、その外箱である。箱のサイズを測ったら、幅32.5cm、奥行き58cm、高さ75.5cmもあった。果たしてこの巨大な箱が、新型プリウスのラゲッジスペースに、いったいいくつ入るのか?

 いや、ちょっとサンプルが大きすぎたかも知れない。後部座席を立てたままだと、どう工夫しても1つしか入らないのである。立てても、寝かしても、入るのは1つだけ。2つ入れようとすると、どうしてもバックドアに干渉してしまうのだ。

巨大な本体ケースの箱。側面を下にして入れるとこの状態。縦方向に2つ搭載することはできないあきらめないで再チャレンジ。これでもう1つ入れると、バックドアを閉められなくなる。テストに使った箱が、ちょっと大きすぎたか……

 まあいい。大量に荷物を積もうというのだから、後部座席を折りたたむのは、むしろ当然の話である(そうしないと話が進まないというのも、当然の話である)。では後部座席をたたんだ際には、この巨大な箱がいくつ入るのか? ここからゲーム「倉庫番」のように、向きを変えて巨大な箱を詰め込む作業が始まった……。苦闘十数分(大きくて重いんだ、これが)、なんとかラゲッジスペースに収まったの数はなんと4つ! しかも小物を入れるスペースは十分残っている。

そこで後部座席を折りたたみ、チャレンジ再開である。まあ、縦でも横でも、この方向なら奥まで入ることが分かった奥に2つ、手前に1つというレイアウトだと、4つは難しい……
奥に3つ押し込み、手前に1つというレイアウトが正しいと判明。まさにゲーム「倉庫番」状態だが、大きな本体ケースを箱ごと4台、搭載できると分かったしっかしまあ、このクラスの本体ケースを4つ積むと、ほぼ満杯状態である。もっとも手前の1つ、その周辺には小物を入れる余裕が残っている
運転席側から見た、荷物満載の状況。圧迫感があるとか、そういったレベルではないな、これは。本当に必要なときしか行いたくないレベルである

 もちろんワゴンタイプの車両で、後部座席をたためば、もっともっと大きなラゲッジスペースを確保できるだろう。以前乗っていたガイア(7人乗り)は、後部座席の2列を折りたたむと中で大人が2人、ゆっくり寝られるほどのスペースが確保できた。引っ越しのときもガイアを使ったのだが、そのラゲッジスペースの大きさから大活躍してくれた。

 それでも新型プリウスのラゲッジスペースは「狭くない」。もちろん後部座席は片側だけ倒すことができるので、3人乗車の上で、大量に荷物を搭載することもできる。家具など本当に大きなものを買いに行くときは、2人乗車にすればいいのだ。そもそもね、新型プリウスは「大容量ラゲッジスペース」が特長じゃないですから。燃費ですよ、燃費! 新型プリウスの特長は!


謎のフロントコンソールトレイと、その他の収納スペース
 後部のラゲッジスペースに、バッテリーユニットの搭載というハンデを背負った新型プリウス。しかし、そのほかの室内収納スペースは、一般的な車両と大きな違いはない。最新車両らしく、実に気配りされた収納エリアが、さまざまに用意されているのだ。今回はそれらの収納+αを、一気に紹介しておこう。

運転席と助手席の間、センタークラスター下に「フロントコンソールトレイ」がある。ちなみにこのスペースをカバーするためのパネルが、オプションで販売されている

フロントコンソールトレイ
 見出しで「謎の」としたのは、個人的に「どーしてこうなった?」という思いが少しだけあったからだ。ちなみにこのフロントコンソールトレイ、カーナビ画面の下から、運転席と助手席の間に伸びる、アーチ状のセンタークラスター下にあるスペースを言う。

 センタークラスターにはシフトレバー、走行モード切り替えのボタン、そしてフロントカップホルダーなどがある。「謎の」とした理由は、センタークラスターをあえて用意したことに対してである。デザイン的、そして人間工学的に考えられた結果としてセンタークラスターを用意、そこにシフトレバーなどを設けたというのは分かる。

 だが、シフトレバーなどは、ナビ画面の下にまとめてしまい、センタークラスター自体をなくすという方向もあったのではないかと思うのだ。というのも新型プリウスのセンタークラスターは、存在感がかなりあるのである。これがなくなれば、室内をもっと広く見せられたのでは……とか、素人のおっさんは考える訳だ。

 ちなみにこのフロントコンソールトレイ自体は、ティッシュ置き場として重宝している。運転席からも助手席からも手が伸ばしやすく、ティッシュの箱を安定して置けるからだ。だが、センタークラスターはあったほうがいいのか、それともないほうがいいのか? そう問われたら、私は「ないほうがいい」と答えるだろう。

このスペースは「ティッシュ置き場」を狙ったものだと、個人的には確信している。デザインの段階で、ティッシュの箱のサイズが意識されたことは、ほぼ間違いない……と思うティッシュのほか、私はここに緊急脱出用のツールを置いている。緊急時、ガラスを割ったり、シートベルトを切断することが可能なツールだ
助手席側のドアに設けられたボトルホルダー。写真のように500ml入りペットボトルが、すっぽり入る大きさだ

カップホルダーなら新型プリウスにお任せ!
 というか、多すぎないか? 新型プリウスのカップホルダー。運転席と助手席の間にあるセンタークラスターに1つ、大型コンソールボックスに1つ、計2つはいいでしょう。問題は運転席と助手席、それぞれのドアにあるドリンクホルダーだ。要するに前席まわりには、計4つのカップ(ドリンク)ホルダーがあるのだ。

 もちろん理由は分かっている。センタークラスターのカップホルダーは、小物入れに使われる機会も多いはずだ。また、大型コンソールボックス内のカップホルダーは、そもそも脱着可能なものである。コンソールボックス内に物をたくさん入れたいときは、カップホルダーを取り外すことになる。

 そんなときは、ドアのボトルホルダーが活躍してくれるのである。選択肢が多ければ、それだけ利用パターンを工夫することができる。このあたりはいいんじゃないかと思う。

 なお、後部座席のカップホルダーは収納可能なアームレストの先端に2つ用意されている。大人が4人、乗車してくつろぎ、それぞれ飲み物をホルダーに収納できるということだ。まあ、当たり前と言えば当たり前のことなのだが。

前席のセンターコンソールボックスから、後部座席向けに収納が出てくるというのもよくある話だが、新型プリウスの場合、それはない後部座席中央に、何やら意味ありげなスペースが……
まあ、当然の流れとして、アームレストが出てくる。そしてそこにカップホルダーが用意されているという仕組みだ後部座席て見つけた、ちょっと面白い場所。ペットボトル左奥にある通気口。実は室内の空調用ではなく、座席の後ろに収納されているバッテリーユニットの空調用空気取り入れ口なのである。新型プリウスのハイブリッドらしい点だ

大型コンソールボックスの中には……
 Aタイプの大型コンソールボックスには、その内部に中段トレイと前方トレイ(カップホルダー)が用意されている。中段トレイは小物入れとして重宝するし、前方トレイは当然のようにカップホルダーとして活用できる。

 さらにコンソールボックスの奥には、オーディオ入力端子と、サービスコンセントが用意されている。要するにコンソールボックス内にオーディオプレイヤーを入れて、そのオーディオ出力を接続でき、なおかつ電源も確保できるようになっているのだ。

 まあ、AタイプがあるということはBタイプもあるのだが、Bタイプのほうはフタを開閉するだけのシンプルなものだ。

まずはセンタークラスター上のホルダーに1つ、カップというか、ボトルが入るさらにセンターコンソールのフタを背後にずらすと、脱着可能なカップホルダーがもう1つ出てくる。普段はドアのホルダーより、こっちを使う機会が多いセンターコンソールボックスのフタを開けると、小物を置くのに便利なトレイが用意されている
さらにトレイは跳ね上げが可能で、ボックス内、その奥にアクセスしやすくなっているセンターコンソールボックスは「大型」というだけあって、かなりの収納力を誇っている。といっても私の場合、あまり使っていないのだが余談その1。フラッシュライトは常備したいツールというより、必須アイテムと言ったほうがいいだろう。私はLEDタイプで照度の高いものを常備するようにしている。ただしバッテリーを内蔵しているツールだということに注意。炎天下、暑くなるようなところには入れておきたくない
余談その2。できれば使う機会がないことを祈るばかりだが、私は牽引ロープとブースターケーブルを応急用タイヤスペースに常備している余談その3。デッキアンダートレイには、停止表示板(三角反射板)とエマージェンシーキットが入っている。エマージェンシーキットは非常用食料、飲料水、ブランケットがコンパクトにまとめられたものだ。ほかに捨ててもいいバスタオルを常備している(キャラクター柄だったので、写真から外したが)

サングラスを入れるのが若者、運転用のメガネを入れるのが……
 珍しいものでもないが、ソーラーパネル付ムーンルーフを装着していないプリウスの場合、天井部分に「オーバーヘッドコンソール」が用意されている。もちろんほかのものを入れてもいいのだが、まあ、ほとんどの人がここにサングラスやメガネを入れるだろう。

 新型プリウスが到着した当初、私はここに度付きのサングラスを入れていた。しかし最近、老眼がさらに進行してしまい、運転用のメガネを別に用意することになった。その運転用メガネがオーバーヘッドコンソールに入っているのを見ると、ちょっと悲しい日々である。

撮影のために、わざわざサングラスと入れ替えてみました。もちろんメガネなどを必要としない場合は、何か小物を入れてもいいちなみにこれはポニョ嫁絶賛の機能。助手席側はもちろん、運転席側にもバイザー内にバニティミラーが用意され、照明も付いている

 全体的に見て、新型プリウスの収納スペースは、必要十分と言える。豪華ではないが、使い勝手よく配置されているというのが正直な印象である。個人にはコインホルダーがあってもいいかなとか(工夫すればなんとでもなるけど)、USB給電ポートがあってもいいかなとか思ったりもしたが(使う機会は少ないかも)。

新型プリウスのグローブボックスは、ちょっと面白い構造になっている。何やら上下に別れているように見えるが……本当に別れているのである。上によく使う物を入れ、下には車検証など、あまり使わない物を入れておくといいだろう

燃費に緊急事態発生か!!
 最後はいつものように新型プリウスの燃費状況をご報告……しようと思ってデータを見たら、これが大変まずいことになってきた。そう、ここ数回の燃費データが、非常によろしくない状況なのである。

給油日走行距離給油量給油金額燃費
2009年6月16日38.66L4601円
2009年6月26日355.5km20.41L2510円17.4km/L
2009年6月26日223.2km10.16L1250円22.0km/L
2009年7月19日663.7km39.59L4553円16.8km/L
2009年8月15日658.3km36.17L4485円18.2km/L
2009年9月9日692.4km38.71L4955円17.9km/L
2009年10月5日713.6km38.16L4656円18.7km/L
2009年10月17日369.7km23.13L2776円16.0km/L
2009年11月8日630.9km37.79L4610円16.7km/L
2009年11月26日625.7km38.64L4637円16.2km/L

 前回の最後で書いたとおり、10月17日の燃費データは、イレギュラーで給油、満タンにしたものだ。だから16.0km/Lというよろしくない燃費も、誤差を含めたものだと思っていた。ところが11月8日、11月26日のデータを見ると、10月17日のデータも意外と正確だったのではと思わざるを得ないのだ。

 10月17日以降、明らかに燃費がわるくなっている。まあ、一つ思い当たる理由はあるのだが、まだ確認できていないので調べてからご報告したい。しかし、いずれにせよこの落ち込み具合はかなり深刻である。このまま燃費が落ち込むようなら、リッターあたり20kmなんて夢のまた夢になってしまう。

 原因を調べるのはもちろんだが、もっとほかにも積極的な手を打たなくては。ドライバーが積極的に動いて、燃費をよくする方法……重量軽減のため痩せるって話は、ソーラーカーレースだけにしてほしい。なるべく車に乗らないというのは、明らかに消極的すぎる。

 そんな高橋が選んだ、燃費向上のための積極策とは……次回乞うご期待!

(高橋敏也)
2009年 12月 24日