高橋敏也の新型「プリウス」買ってみた長期レビュー
第1回:プリウス納車されました


高橋敏也、プリウス買いました。これから半年にわたってテクニカルライター視点で長期レビューをお届けしていきます

 

Impress Watch Videoの「高橋敏也のパーツパラダイス」で、新型プリウスの動画を配信中(画像をクリックすると動画ページが開きます)
 ここだけの話、私が普通乗用車の免許を取得したのは34歳、1998年のことである。それまでの私はいわゆるバイク野郎、2輪車至上主義者であり、4輪車は別世界の乗り物だった。ところが血気盛んな青年期をあっさりパスし、やれ腰が痛いだの、冷たい雨が辛いだの、青春を返せだの、中年であることを嫌というほど思い知らされると、4輪車に俄然興味が湧いてきた。

 時として雨の中、信号待ちをしていると、隣にいる乗用車の車内が見えたりする。冷たい雨に震えつつ、6気筒のうち5気筒しか点火しない装備重量が0.4t近い2輪車に跨がって、青信号をじっと待つ。その隣では暖かい車内で、男女が楽しげに会話をしているのである。その時の心情など、決して原稿にできるものではない。

 そんな訳で若い人に囲まれ、必死になって自動車免許を取得したのだ。取得と同時に購入した、生涯初の4輪車はトヨタ自動車の「カルディナ GT-T」であった。免許取得の道筋が見えてくると、どんどん4輪車が欲しくなってきた。しかし、2輪車一本槍で生きてきたおっさんの悲しさ、何が流行で、どんな車種を選べばいいか、まったく分からない。そこで当時、歩いて5分のところにあった東京トヨタ自動車 井草店へ突撃し、自動ドアが開ききらないうちに「車1台ください!」と元気よく叫んだのである。

 そうなると困るのは、お店のほうだ。免許を取得予定のおっさん、もちろん私のことだが、自分ですら何を買っていいのか分かっていないおっさんの突入である。それでも暖かい笑みを浮かべながら、ちゃんと相手をしてくれるのがプロである。「お客様、どういったお車をお探しですか?」などと丁寧に応対しつつ、カタログをさりげなくテーブルに並べてくれたりする。

 ちなみに私はコンピュータ関連の雑誌記事などを書いて、日々の暮らしを送るテクニカルライター、いわゆるPCライターである。だからこそ「どういったお車」という言葉には、ちょっと特殊な形で反応した。「20インチ以上のブラウン管ディスプレイ(当時はハイエンドだった。とにかく箱がでかい!)を積みたい」とか、「ミドルタワー本体ケースなら、最低でも5台は積みたい」とか、そういった内容である。

 さすがに相手も唖然とした訳だが、そこはそれ、プロのセールス技が炸裂する。あれやこれやと話を聞いているうちに、私のニーズにあうのは荷室の広いワゴンタイプ、カルディナじゃなかろうかということで話がまとまった。ではなぜターボ搭載のカルディナ GT-Tになったのか? 実は当時、本当に舞い上がっていて、「ボンネットに穴が開いているのが格好いい」という、ただそれだけでドッカンターボを選んでしまったのである。

 今思えば、おそろしいことだ。初心者マークを貼り付けた、反射神経がすっかり衰えた中年のおっさんが「ボンネットに穴がある」という理由だけで、ドッカンターボに乗って都内を走り回っていたのだから。納車から数週間後、駐車場から出た途端にアクセルを踏みすぎて、隣家の塀に激突した件などは、今思い出すと赤面ものである。

 そんなこんなで10年とちょっと。荷室の広い乗用車、それも4WDばかり選んで乗ってきた私だが、ここに来て選んだのが「プリウス」である。もちろんトヨタが誇るハイブリッドカー、新型プリウスのことだ。果たして45歳のおっさんはいかなる理由で新型プリウスを選び、そしてそれをどう乗りこなすのだろうか? そんな話をつらつらと始めてみたい。

ある晴れた日に、燃費のいい車が欲しいと思った
 ここでまず新型プリウス搭乗記の前提となる、私の日常的なカーライフをざっと紹介しておきたい。不肖・高橋、テクニカルライターという商売上、オフィスは秋葉原近辺に置いている。現住所は杉並区井草近辺(だから東京トヨタ 井草店なのだ)なので、自宅からオフィスへの走行距離は、実測でざっと17km程度だ。ほぼ毎日が車通勤なので、1日最低34km、寄り道して40kmほどの走行距離となる。

 が、しかし。打ち合わせとか、新製品が突然店頭に並んだとか、重要書類を忘れたとか言って、自宅とオフィスを日に数度、往復するときもある。さらに中距離のイレギュラー走行として、成田空港や羽田空港へ行ったり、群馬のメーカーへ取材に行ったりということが発生する。結局、月に約800kmほどの走行距離となる。年間1万km、走るか走らないかといったところだ。

 ポイントとしては混雑する東京都内の走行がメインであり、ストップ&ゴーを繰り返すため、省燃費には向かないということである。さらに私の運転はやや荒っぽいため(たまに2輪車の運転感覚が混じる)、燃費はさらに悪くなる。実のところ燃費の悪さは、カルディナ GT-T以来、常に頭痛の種だったのだ。過去の燃費履歴を大ざっぱに言うと「1リッターあたり6~8km」ぐらいだから、どこに出しても恥ずかしくないぐらい恥ずかしい。

 カルディナ GT-T以後、生活環境の変化などにあわせて、V6 3000㏄の「ハイラックスサーフ」、7人乗り「ガイア」などを乗り継ぎ、つい先日まで「マークII」ブリットに乗っていた。まあ、どれも2000cc以上のガソリンエンジンを搭載しており、コンパクトカーなどと比較すれば燃費はよくない。唯一期待できそうだったガイアも、ミニバンということで車両重量がそこそこあり、燃費はなんだかなあという結果に終わった。すべての車種を通して、リッターあたりの走行距離が10km以上になった記憶がほとんどないのだ(もちろん高速道路の定速走行を長距離といった状況を除いた話だが)。

 そして2008年、信じられないようなガソリン高がおっさんを直撃したのであった。恐ろしい勢いで高騰するガソリン、その上愛車マークIIブリットはハイオク指定なのである。燃料タンクの容量は70L、燃料計の警告ランプが点灯してから給油すると60L近く入る。給油した後でレシートを眺めつつ、天を仰いでおっさんは思った。「満タンで1万円を超えるようになったら、もう車を下りようかな……」と。

 ところがどっこい、投機マネーのおそろしさ。世間様はあっという間に、満タン1万円の世界に突入したのである。かといって車を下りる潔さはないし、エコチャレンジという根性もない。果たしてどうしたものか。ちなみにここで新型プリウスを予約して以降の、マークIIブリット給油記録を並べてみたい。予約してから慌てて記録を取り始めたので、2009年4月1日以降のものである。

給油日走行距離給油量金額燃費

2009年4月9日

378.0km57.35L6939円約6.6km/L

4月22日

388.2km60.28L7414円約6.4km/L

5月 2日

367.9km62.44L7555円約5.9km/L

5月15日

313.1km53.31L6451円約5.9km/L

5月26日

451.4km58.07L7433円約7.8km/L

6月 6日

426.7km57.81L7457円約7.4km/L

 もうね、どう表現していいやら。いずれも給油時にトリップメーターの走行距離を記録したものであり、正確とは言い難いが、目安にはなるだろう。はっきり言って散々な結果だ。ちなみにラスト2回の給油で7km/L以上をマークしたのは、高速道路の定速走行が入っているからだ。もう少し長距離になれば、8km/L以上も可能だっただろう。だが、とてもとても10km/L以上は望めないデータである。

 そしてまた点灯する、燃料計の警告ランプ。いつものセルフスタンドでハイオクガソリンを給油しつつ、おっさんはしみじみ思うのである。「ああ、燃費がすごくいい車に乗りたい。例えばハイブリッドカーとか」と。いやいや、マークIIブリットに関して言えば、不満はまったくないのである。フルタイム4WDで自然吸気の2400cc、18インチホイールとのマッチングもよく、高級車の雰囲気も、スポーツ車の雰囲気も感じさせてくれた(あくまで雰囲気だが)。

 しかし、私のカーライフにおいて高級車やスポーツ車は不要だったし、例えば以下のような計算も成り立つのである。私が燃費のよいレギュラーガソリンの乗用車、例えば実燃費で20km/L程度は走るハイブリッドカーに乗り換えた場合。

・現在(2009年7月)
1Lあたり:136円(ハイオク)
1Lあたりの走行距離:6.5km
1kmあたりの出費:約21円

・ハイブリッドカー(仮定)
1Lあたり:120円(レギュラー)
1Lあたりの走行距離:20km
1kmあたりの出費:6円

 1年で1万kmを走るとして、現在はガソリン代だけで約21万円かかることになる。それが燃費のいい乗用車なら、同じ距離を6万円で走ることができるのだ。もちろんガソリン価格は変動するし、そう都合よくも行かないだろう。それでもこの計算は魅力的だったし、何より「新車に乗り換える」ためのちょうどいい「言い訳」になったのである。

 例えばですね、現在の乗用車を10年乗り続けましたと。そうなるとガソリン代は単純計算で210万円かかるが、燃費のいい車なら60万円でしょうと。その差額、なんと150万円! 環境にもいいだろうし、財布にも優しい。さらにエコカー減税という話が、ちらほら耳に入ってきた時期でもあった。そうしておっさんは決断したのであった、ある晴れた日に。

 「そうだ 京都、行こう」……もとい「そうだ 燃費のいいと噂の、ハイブリッドカーに乗り換えよう」と。

始まりは新型プリウスの噂
 確か2008年の前半だったと思う。海外の有名サイトに3代目プリウス、すなわち新型プリウスのリーク写真が掲載されて話題になった。そんな中、愛車ブリットを東京トヨタ井草店に持ち込み、ついでに担当営業の太田さんと雑談をした。もちろん話題は新型プリウスに関してである。

 そのときは「新型プリウスでワゴンタイプが出たら、すぐに予約します」とか、そんなことを言っていたと思う。もっとも当時、ブリットは3年目、初回の車検を終えたばかりであり、新車に乗り換えなどという雰囲気ではなかった。それでも当時の強烈なガソリン高は、省燃費の車、プリウスのようなハイブリッドカーに興味を持たせるのに十分だったのである。

 信じられないほどのガソリン高や、引き続きリークされた新型プリウスの話題は、私の背中を押し続けた。ふと気がつけば私は太田さんに「新型プリウスが出たら、真っ先に予約しますんでよろしく」とか宣言していたのである。

 もちろん新車購入は、乗り換えといっても大きな出費、その気になったからと言ってパッと決められるものではない。本当に乗り換えは幸せへの道なのか? せっせと情報をインターネットなどで集めてみたりする訳だ。まず当時の現行プリウス、すなわち2代目プリウスの情報をできる限り集めた。別に疑っていた訳では無いのだが、どうやら本当にハイブリッドカーというヤツは、燃費が抜群にいいらしい……。

 そうこうしているうちにエコカー減税の話や、エコカー補助金の話も飛び交いつつ、ホンダから低価格なハイブリッドカー「インサイト」が登場した。車両価格で200万円を切るハイブリッドカーの登場は衝撃的であり、個人的にはインサイトのデザインが好きだったこともあって、心がグラグラしたのを憶えている。

 実は新型インサイトの搭載するエンジンが、1300ccというのも私にはかなり魅力的だったのである。というのも私はカワサキ(川崎重工業)の「Z1300」という2輪車を愛用しており、型番から分かる通り、それは1300ccのエンジンを搭載していて、新型インサイトならほぼ同じ排気量だなあとか、そんなことを考えていた訳だ。

 あれやこれやで日々は過ぎ、2009年3月下旬になって、太田さんからついに連絡があった。新型プリウスの予約開始が近づいたので、興味を持っているお客さんに購入意思を確認しているのだと言う。こっちとしてはあれやこれや考えている間に、気分はもう新型プリウスのオーナーである。二つ返事で購入したい旨を伝えた。

 そして2009年4月1日、エイプリルフール、新型プリウスの予約が始まったのである。当然、真っ先に正式な予約を入れた訳だが、太田さんの素早い対応もあって東京トヨタ井草店では1番目の予約となったらしい。もともと新型プリウスが正式発表となれば、予約が殺到することは想定の範囲内だった。こうなるといかに早く予約を入れるかで、納車のタイミングが違ってくる。

右が「ご成約プレゼント」で貰った新型プリウスミニカー。左が「新型プリウス試乗会」でもらった新型プリウスプルバックミニカー。どちらもいい出来だ大きなミニカーはドアが開くし、小さなミニカーは走る! これだけで満足していればよかったのかも知れない成約プレゼントのミニカーでは、特定のモデルで利用可能な「ソーラーパネル付きムーンルーフ」までリアルに再現されている。だが、このソーラーパネル付きムーンルーフに関しては、言いたいことが山ほどある

 実際4月1日以降、「予約台数3万件を突破」とか、「ついに8万台を突破」とか、そういった景気のいい話がポンポン飛び出したのはご存じのとおり。井草店で予約1番目であっても、全国で何番目かは分からない。こっちはそうした話が飛び出すたびに、納車が遅れるんじゃないかとハラハラしたものである。

 ちなみに正式な予約を入れてから、慌てて金策に走ったのはここだけの秘密である。

6月11日、新型プリウスついに納車される!
 思えば4月1日のエイプリルフールから、指折り数えて2カ月とちょっと。太田さんから待ちに待った連絡が入る。「6月11日の納車が決まりました」。初回出荷というか、ファーストロットにはなんとか間に合ったようだ。連絡を受けた瞬間、ちょっとうれし涙がこぼれたのは、大人気ないと自分でも思う。いや、それほどまでに新型プリウスの予約件数は、積み上がっていたのだ。

 もちろんそれまでには太田さんと打ち合わせに打ち合わせを重ね、グレードやボディーカラー、オプションパーツなどを決めておいた。走行距離が3万km弱のマークIIブリットは下取りに入れるので、その査定もすでに出してもらってある。書類の準備も終わっているし、後は6月11日を待つだけとなった。ちなみに最終決定した内容は、以下のとおりである。

・購入車両
プリウス G ツーリングセレクション
ボディーカラー:ホワイトパールクリスタルシャイン
型式:ZVW30-AHXGB(T)

支払合計:346万4275円
(下取り120万円を含まず)

・エコカー減税
自動車取得税:免除
自動車重量税:免除
来年1年の自動車税:半額

・エコカー補助金(予定)
普通車助成金:10万円

・新車、それもハイブリッドカーを買う喜び
プライスレス

 自動車取得税と自動車重量税をあわせると、それだけで20万円と少しの出費となる。これがまるまるエコカー減税で免除となり、さらにエコカー補助金(当時は“たぶん出るだろう”という話だった)とあわせると、なんと30万円もお得になる。支払いの合計は350万円弱なので、割引率で考えれば1割にも満たない額である。だが「30万円あれば、何ができるか、何を買えるか?」と考えれば、それは大変な額だと思う(なお、購入金額やチョイスしたオプションの詳細に関しては、次回レポートする)。

そして6月11日、その日はやってきた。
 新型プリウスがついに納車されるのである。東京都杉並区で1番とは言わなくても、井草界隈では1番に新型プリウスをゲットできると喜んでいたら、張り切りすぎて寝坊した。朝10時に東京トヨタ井草店へ入るはずが、気が付けば時計は11時。なんとこの1時間ほどの差で、新型プリウス井草店1番納車という栄誉を逃してしまったのである。しかも天気はどんよりとした曇り……。

東京トヨタ井草店は、新青梅街道沿いにある。今まで4台、約10年、ここでお世話になってきたがトラブルはただの1度もない東京トヨタ井草店の取り扱い車種。そうなんだよね、悲しいことにマークIIシリーズはもうなくってしまったんだよね……

 まあ、そんなことはどうでもいいじゃないか! 1番だろうと2番だろうと、肝心なのは新型プリウスをゲットすることである。などと自分を誤魔化しつつ(内心、がっかりしたのも確か)、下取りに入れるマークIIブリットに乗って東京トヨタ井草店へ向かう。その駐車場には……ありましたがな、私の新型プリウス、ホワイトパールクリスタル社員、もといシャインの車両が!

 店に入って、まずは店長の神津さんと挨拶を交わす。神津さんから「店頭納車」、要するにお客さんが店舗に出向いて納車を受ける際のプレゼント、「レスキューマンIII」を受け取る。そしていよいよ、太田さんによる納車の手続きが始まった。といっても書類を確認してサインしたりするだけなのだが。それより何より、車両である、あの新車購入時の喜び、ビニール外しですがな。

まずは担当営業の太田さんがお出迎えしてくれた。「寝坊して遅刻しちゃいました」、「おまけに雨まで降ってきましたね」などと楽しく会話。さて、どっちが私でしょう? もちろん左のむさ苦しいおっさんが私であるお店まで行って納車を受けると、サービスでもらえる「レスキューマンIII」。事故などの際にウインドーガラスを破壊したり、シートベルトを切断するためのツールだ。この手のツール、いざというときのため、是非常備しておいてほしい笑顔、笑顔の神津店長、そして私。さて、どっちが店長さんでしょう? えっ? もういいって? すいませんね……
「ほうほう」などと言いつつ、書類の説明を受ける。納車の儀式にはつきものだが、緊張感はいやが上にも高まってくる点検事項を確認したら、自筆でサインする。本当にちゃんと確認したかって? そりゃあもう……そのほか、車両の説明もちゃんと受ける。というか初のハイブリッドカーであるため、説明してもらわないとよく分からない。今までの乗用車とは、ちょっとばかり勝手が違うようだ
なるほど、ハンドルに操作スイッチが用意されているのですね……って、このあたりは見てすぐ分かる機能だけどもちろんエンジンもちゃんと見ますがな。新型プリウスは2代目よりも大排気量、1.8リッターエンジンを搭載している。だが、かなりコンパクトに見えるもう太田さんの説明を黙って聞くぐらいしかできない私。この日、私は何回「なるほど」と言っただろうか
見慣れないパーツはあるにしても、ウインドーウォッシャー液だとか、エンジンオイルの点検口だとか、そういったおなじみのものはしっかり残っている。そのあたりを確認中ちゃんとスペアタイヤの場所なども確認。ジャンプケーブルと牽引ロープは私が購入して、マークIIブリットに搭載していたものを、そのまま新型プリウスに持ってきた後部座席にも座ってみる。身長176cm、体重80kgちょいの私が、余裕で座れる後部座席である
後部座席に余裕がある理由、その1つが前席のシート背面をえぐってあること。このため後部座席に座る人の膝まわりに、グッと余裕ができた

 太田さんによると、お客さんも人それぞれ。私はビニール外しのような楽しい作業は自分自身でやりたいのだが、なかには面倒だという人もいると言う。自らの手で、あのビニールを外す瞬間こそ、納車の醍醐味だと信じている私は少数派? 新車の香りを吸い込みつつ、ビニールを外しながら、シートなどの仕組みをチェックすることこそ、納車という儀式だと思うのだけど……。

新車購入の喜びが、このビニール外しに集約しているのである。もしこの世に「新車のビニール外し」という職業があるなら、それは私の天職である今までとは明らかに異なるシフトレバーにも、新車のビニールが! ビニールがあれば、それを外すのが私の仕事である。

 それはそれとして今回の納車では、太田さんに1つだけ特別なお願いをしておいた(取材のお願いは別として)。新車ならではということで、新型プリウスの下まわりを見せて貰おうというのである。奇妙な依頼ではあったが快諾していただき、走り出しの前に、新型プリウスの腹というか、裏というか、下まわりをじっくり観察することができた。といっても「なるほど……」とか言うだけなのだが。

初公開!(でもないだろうけど) これが新型プリウスの下まわりだっ! 印象としては「カバーされている部分が多いなあ」である。燃費向上のため、空気抵抗を減らす工夫なのだろうこうして見ると分かりやすい。見事にフラットな下まわり。ちなみに写真手前が、車体前方である前輪の足まわり。ブレーキ、サスペンションなど、アバウトにしか分からないのだが、やっぱりすごい!
後輪側で見つけた、謎のリンク。何らかの重要な役割を持っているのだろうが、たぶん私は一生知ることはないだろう。また、普通に納車されていたら、一生見る機会もなかっただろう

 さらに太田さんの説明を受け、納車の儀は1時間ちょっとで終わった。今まで大きな事故もなく、お世話になったマークIIブリットとお別れし、マークIIブリットのリモコンキーと、新型プリウスのスマートエントリーキーを交換する。何度か経験していることだが、この瞬間ばかりは喜び以上に寂しさを感じる。新車が欲しいといっても、現在の愛車とて惚れ込んで買ったものなのだから。

左が新型プリウスのスマートエントリーキー、右がマークIIブリットのリモコンキー。車が代われば、キーも代わるってことだスマートエントリーキーには、キー側のバッテリーがなくなった際に使用する、緊急用のキーが仕込まれていた。なるほど「今まで本当にありがとう」のマークIIブリット。3年間、私の足となって大活躍してくれた。みんなね、ガソリン高騰が悪いのよ
最後にマークIIブリットの荷室と、新型プリウスの荷室の広さを比較してみた。やっぱりというか、当然というか、ブリットの方が広い。これが今後、どのように影響してくるかが問題だ

 そして6月11日、昼のほぼ12時。私は最新ハイブリッドカー、トヨタの誇る新型プリウスで公道へと走り出したのである。うわわわ! エンジンが回ってないのに走ってるよ、この車!

神津店長のお見送り(太田さんは誘導してくれている)で、いざ公道へ。神津店長がなんとなく不安そうに見えるのは、私の気のせいだろうか?記念すべき公道への進出! といっても目の前の新青梅街道へ出ただけなんだけど新車で、しかも今まで体験したことのないハイブリッドカーで、初の公道。そのときばかりは嬉しさより、緊張感が上回る。顔が引きつっているのはそのため
おおっ! エネルギーモニターだ! しかも液晶表示だぞ! この表示段階では、なんとエネルギーを「回生」しているではないか! そう、我が新型プリウスは発電して、バッテリーに充電している真っ最中なのであった

 なお、今回の取材にご協力いただいた東京トヨタ井草店の皆さん、本当にありがとうございました。そして新しいオーナーの元に旅立ったマークIIブリット、本当にありがとう。次回は新型プリウス購入の詳細、車両の詳細などをリポートしたい。

(高橋敏也)
2009年 7月 16日