高橋敏也の新型「プリウス」買ってみた長期レビュー 第4回:そろそろ、ちょっとカスタマイズしたくなりました |
先日、知人に私の新型「プリウス」を動かしてもらった。事務所の前に停めてあったプリウスを、近くのコインパーキングに入れてもらっただけ。わずか数百mの移動だったが、それでも友人はかなり戸惑ったようだ。友人の愛車は10年以上乗り続けているワゴンタイプだったから、当然と言えば当然の話である。
まずキーロックの解除から戸惑ったと言う。新型プリウスはスマートエントリーなので、キーを持った人が運転席などに近づいて、ドアハンドルを操作するだけでロックが解除される。友人曰く「キーを差し込んで回したいとは言わないが、せめてロック解除のボタンぐらい押させてほしい」とのこと。もちろん新型プリウスの電子キーにも、ちゃんとロック、ロック解除のボタンはある。
さらに乗り込んでから、エンジン始動も戸惑うところである。あらかじめ手順は教えてあったので、操作に困るということはなかったらしい。だが、やはりエンジンを始動するときぐらいはキーを差し込んで回さないと「これから運転するぞ!」という実感が湧かないと言うのだ。あえてそこでは指摘しなかったのだが、新型プリウスの場合は必ずしも「エンジン始動」ではない。「ハイブリッドシステムの始動」あるいは「パワースイッチのON」なのだが……。
システムを始動した際、エンジンがかからないことに不安を感じたらしいし、いざ走り出したときも、エンジンがかかってないのに動くことに違和感を感じたらしい。その上、突然始動するエンジンに驚かされ、さらには「バックで坂を登る(近くのコインパーキングがそうなのだ)」ときに、ちょっと考え込む新型プリウスに驚かされたらしい。実は私もそのコインパーキングで「バックで坂を登る」際に、タイムラグがあって驚かされた。
ちなみに新型プリウスは、メカニズム的なバックギアを持っていない。ついでに言うとセルモーターもクラッチもトルコンもないのである。こう言うと多くの人が驚くのだが、そうなのだから仕方がない。で、新型プリウスのバックは基本的にモーター駆動だけで行われるのだが、さすがにバッテリー残量が足りなくなるとエンジンも動き出す。だが、そのエンジン駆動はモーターに電力を供給しているだけなのである。
もちろん新型プリウスに対して、いい雰囲気の戸惑いもあったと言う。パワーが想像以上にあるとか、思った以上に室内が広いとか……。実はそれ以上に彼が戸惑ったのは、私が他人に新型プリウスを運転させたことだと言う。「マークIIブリットの時は“ちょっと運転させて”って言ったら、地獄の番犬みたいに怒っただろう」だって。思わず「そこか!」と突っ込んではみたが、確かにそうだった記憶があるなあ。私もここ3年で、人間がわずかに丸くなったということか。体型はもっと丸くなっが……。
■パワースイッチを3倍速に!
さて、購入してから数カ月が経過した新型プリウス。路上でふと周囲を見渡すと、いやあ、プリウスの多いこと多いこと。さすがに初代を見る機会は減ってきたが、2代目、そして新型と、日本の道路はプリウスでいっぱいなのである。最初は仲間が増えてうれしいとか思っていたのだが、すぐに心変わりするのが人間の悲しい性である。
カスタマイズして、ほかの新型プリウスに「ちょっとだけ」差を付けたい! これを子供っぽいと考えるか、個性を追求するナウいミドルエイジ(中年)と考えるかは、人それぞれ。まあ、あまり派手なカスタマイズは個人的に避けたいのだが、ちょっとだけ、ワンポイントでカスタマイズして楽しみたくなってきたのである。
意外と大きなTRDの「プッシュスタートスイッチ(ハイブリッド車専用)」。私は当初、赤い押す部分のプレートだけが入っているものだと思っていた。その割には高いなあとか…… |
そんな訳でまずターゲットにしたのが「パワースイッチ」だ。冒頭でも書いたとおり、新型プリウスは「エンジンの始動(エンジンをかける)」のではなく、「パワースイッチのON」なのである。そんなイメージにピッタリのカスタマイズパーツが、トヨタテクノクラフトのモータースポーツブランドであるTRDから発売されているのだ。それが「プッシュスタートスイッチ(ハイブリッド車専用)」(品番:MS422-00002)なのである。
品番からも分かるとおり初期ジオン軍において量産化されたMS-06「ザク」をチューニングし、パイロットの能力次第では3倍以上の戦闘能力を……じゃないってば! 要するに既存のものを交換する、TRDロゴが入った「赤い」パワースイッチである。渋いつや消しの赤と、TRDのロゴマーク、そして「POWER ON OFF」の表記がなんとも渋く、そして格好がいい。
もちろんパワースイッチなので、見るのは運転席に座ったときぐらいなものである。しかし、パワーONするたびに「赤い彗星のスイッチ……」などと、自己満足できるのだ。なお、取り付けは純正スイッチユニットとの交換だけで、価格は1万4700円となっている。1万4700円でパワーONのたびにニヤッとできるのだから、決して高くはないと思う。
しかし「純正スイッチユニットとの交換」と言われて、そうですか、じゃあさっそく自分で作業しましょうというほど、私のスキルは高くない。そこであらかじめ、いつもお世話になっている東京トヨタ井草店に電話をし、「TRDのパワースイッチを取り付けてくださいまし!」とお願いしておいた。トヨタテクノクラフトの製品ということもあって、作業と取材の許可をもらった(もちろん工賃など技術料は別途かかります)。
取り付け作業を実際に見ていて、確かにこれは信頼できるところにお願いするものだと分かった。後述するVICSビーコンユニットの取り付けも一緒にお願いしたのだが、それにしてもパネルを剥がす剥がす、さらに剥がす。途中からどのパネルがどこのパネルか分からなくなり、配線の状況に至っては、最初から理解することを諦めた。
それでもさすがは東京トヨタの工場スタッフ。パネルに傷も付けず、「バキッ」とか嫌な音を出すこともなく、マニュアルのようなものを一切見ないで手早く作業が進んでいく。私が年頃の女性だったら、確実に惚れるような状況である。まあ、惚れられても困るだろうが。
■おまけ「電子キーが反応しなかった時の正しい対処」について
スマートエントリーの要である電子キー。身に着けているだけで、ドライバーはその存在を意識することなく、施錠/解錠からパワーオンまで、すべてをこなすことができる。だがもし、電子キーを確かに身に着けているにもかかわらず、新型プリウスが反応しなかった場合はどうすればいいのか? 例えば電子キーの電池トラブル、強い電波干渉などが考えられる。
そんなとき、決して慌ててはいけない。ちゃんとそんな緊急時のための方法が用意されているのだから、それを試してみよう。まず新型プリウスが施錠されている場合は、電子キーに内蔵されているメカニカルキーを引っ張り出して解錠、運転席に座る。
そしてブレーキペダルを踏みながら、電子キーのトヨタマーク側をパワースイッチに当てる。この段階でブザー音がしたら、電子キーの認識は成功である。あとは10秒以内にパワースイッチを押してモードを切り替えるか、ブレーキペダルをしっかり踏み込んだまま、パワースイッチを押してハイブリッドシステムを起動すればいい。
もしこの手順を行っても電子キーが認識されない場合は、電子キーが物理的に壊れていたり、新型プリウス側で問題が起きていたりするかも知れない。速やかに救援を頼んだほうがいいだろう。そう考えて落ち着いた上で、電子キーを間違えていないか確認し、もう1度正しい起動、緊急時の起動を試してみるのは決して無駄ではないと思う。
まずは電子キー内蔵のメカニカルキーで、施錠された新型プリウスを解錠する。この小さいメカニカルキー、結構好きである | ブレーキペダルをしっかり踏んで、トヨタマーク面をパワースイッチに当てて、ブザーが鳴れば認識完了。10秒以内にモード変更、起動を行う。なお、できるだけ早く販売店へ行って、状況を確認しよう |
■パワースイッチと一緒にVICSビーコンユニットを追加装備!
パワースイッチの交換となれば、ダッシュボード周辺で作業することになる。私もそれぐらいの想像力は持っていたので、以前から考えていたカスタマイズというか、機能追加を一緒にお願いすることにした。そう、「VICSビーコンユニット」(1万7850円)の後付けである。
VICSは「Vehicle Infomation and Communication System」の略で、簡単に言ってしまうと道路交通情報をカーナビで受信し、表示したり渋滞回避に利用したりしようというものだ。現在、その情報は「光ビーコン」「電波ビーコン」「FM多重放送」の3メディアで提供されている。
ただし光ビーコンと電波ビーコンの情報を受信するためには、「VICSビーコンユニット」が必要という訳である。だが、私は当初、それを搭載しなかったのである。もちろん予算的にあわなかったからではない。今まではカーナビとセットのように、何も考えず搭載していたからだ。
だが、今まで役に立ったという記憶もなかったし、その存在をあまり意識することがなかった。今回の新型プリウス購入では、オプションパーツを考えに考え抜いたので、逆に「VICSビーコンユニットは不要」という結論に至った訳だ。
ところがですね、あなた。私の新型プリウスに乗る人、乗る人、そのほとんど(注:ただしカーナビに興味のある人に限る)が「ええっ? ビーコン載せてないの? だめだよー、それは」と言うのである。インテルの天野氏から、Car Watchの編集者まで、カーナビ好きからことごとくそう言われ、正直、凹んだ。そこでパワースイッチ交換をいい機会として、VICSビーコンユニットを追加搭載した訳だ。
いやいや、後でいろいろ話をしていて気づかされたのが、私の思い違いに関してだ。VICSなどの情報を「役に立たない」と感じるのは、まず何より「役立てよう」という積極性のなさが原因ではないかということだ。一方的に提供される情報というものは、提供された側が、まず取捨選択をする。その上で、取り込んだ情報を役立ててこそ、なんぼのものだということである。
まあ、私の目からウロコが落ちたところで、VICSビーコン情報が「いかに役立つか」を実体験しようじゃないかという話になるのは、当然の帰結と言えよう。そこで3人で新型プリウスに乗り込み首都高速道路、あの首都高へと向かったのである。
というのも話は簡単、首都高の11月4日のニュースリリースによれば、「首都高の道路情報サービスが向上、VICS簡易図形情報が、より見やすく、わかり易い表示」となったのだそうだ。「祝VICSビーコンユニット搭載記念」としては、最適な状況である。男3人というのは、いかがなものかと思うが。
その結果に関しては、写真を参照して欲しい。ちなみにおっさん3人のドライブも、そうわるくはなかったというのはここだけの話。
■ええいっ! IR(赤外線)カットフィルムも貼っちゃえ!
ついで、ついでで申し訳ないのだが、今回の工場入りをよい機会に、以前から考えていた「IR(赤外線)カットフィルム」も導入することにした。導入の理由は主に2つ、1つは標準のプライバシーガラスだと、少しスモーク具合が薄いかなと思ったこと、そしてもう一つは紫外線、赤外線をなるべくカットしたいということだ。
もともと新型プリウスの後部は、「UVカット機能付ソフトプライバシーガラス」が装備されている。UV(紫外線)カット機能、そしてソフト(薄い)ながらもプライバシーガラスにはなっている訳だ。だが、そのスモーク度合いは以前のマークIIブリットや、ガイアと比べて格段に薄い。
こうした点を考えたのか、純正オプションに「IR(赤外線)カットフィルム」、スモークとクリアが用意されているのである。このフィルム、リアサイドガラスとバックドアガラスをカバーし、スモークタイプで赤外線を約53%、紫外線を約99%もカットしてくれると言う。また、アクシデントの際、ガラスの飛散防止にもなるというのだ。
ラゲッジルームに置かれた純正の「IR(赤外線)カットフィルム(スモーク)」。自分自身で作業することも可能だが、私はプロに任せることをお勧めする |
そこで「ついで」の出番である。事前に担当営業の太田さんと打ち合わせをしておき、今回のカスタマイズにあわせて、フィルムを貼ってもらうことにしたのだ。というのもフィルム貼りは、専門の業者さんがいて、その業者さんに来てもらって作業するものだからである。
もちろんフィルム貼りには業者さんがいて、販売店でなくても出来るというのは、私も知っている。また、ドライバー自身がやろうと思えばできることも知っている。実際、私の友人の作業を手伝ったこともあるが、気泡が入らないよう、シワがないように貼るのは大変だった記憶がある。それでも気泡だらけ、シワだらけだったのも印象に残っている。
そんなときこそ純正フィルムを用意し、プロにやってもらうべきなのだ。で、東京トヨタ井草店の工場に、さっそうと登場したのが富士硝子(東京都板橋区中丸町17-1、Tel:03-3973-1722)の西山さんである。
テキパキと道具を用意し、自前の作業台を広げた西山さん、すぐに作業に取りかかる。しかしまあ、その作業のスムーズなこと、正確なこと。プロというのは当然としてもまさに「職人」の技である。気泡なんてこれっぽっちも入らないし、シワなんて青春真っ直中の少女の肌のように、ただの1本もない。というか言われなければ、そういう色のガラスなんだろうなと思ってしまうほどだ。
もちろん富士硝子という会社名からも分かるとおり、フィルムだけでなく乗用車用のガラスなども扱っている。旧車や希少車などのガラスで、よく相談を受けたりもするそうだ。もちろんフィルム施工の技術に関しては、ご覧のとおりである。
そんな訳でスモークタイプのIRカットフィルムも貼り終わり、今回のカスタマイズは無事終了である。すべての作業がほぼ連続して行われ、11時に始まって、13時前には終了した。ご協力いただいた東京トヨタ井草店の皆さんと、富士硝子の西山さんにこの場を借りてお礼申し上げる。まあ、またいずれご迷惑をお掛けすると思うのですが、付き合ってやってください。
■1回の給油で700km以上、走行可能!
さて、それでは最後に燃費の話である。前回最後の給油は8月15日、それから2カ月ほど経過した訳だが、給油回数はたったの3回。ちなみに10月17日の給油は、ちょっとした事情があって満タンにすることとなり、中途半端な給油となった。タンクをほぼ空にして行った給油は9月9日と10月5日、2回である。
まず9月9日だが、これは都心部ばかりをチマチマ走った末の給油である。約18km/Lと決してわるくはないが、不肖・高橋、いろいろネットで情報を漁った結果、18km/Lを割った燃費は「よくない」と判断することにした。最終目標は“平均的に20km/L”なのだが、19km/Lにも届いていないのに、20km/Lはないだろうと考えている。
給油日 | 走行距離 | 給油量 | 給油金額 | 燃費 |
2009年6月16日 | - | 38.66L | 4601円 | - |
2009年6月26日 | 355.5km | 20.41L | 2510円 | 17.4km/L |
2009年6月26日 | 223.2km | 10.16L | 1250円 | 22.0km/L |
2009年7月19日 | 663.7km | 39.59L | 4553円 | 16.8km/L |
2009年8月15日 | 658.3km | 36.17L | 4485円 | 18.2km/L |
2009年9月9日 | 692.4km | 38.71L | 4955円 | 17.9km/L |
2009年10月5日 | 713.6km | 38.16L | 4656円 | 18.7km/L |
2009年10月17日 | 369.7km | 23.13L | 2776円 | 16.0km/L |
一方、10月5日のデータは、ちょっとうれしい結果となった。この走行距離のうち、約200kmは高速道路を走ったものだ。高速走行で燃費がよくなったのだが、とりあえず18km/Lを超えているし、何より給油までに“700km”を走ったのがうれしい。以前なら給油ごとにリセットするトリップメーターが、300kmに近づいたら燃料計を見なくても「そろそろ給油だな」と思ったものだ。それが700kmになったのだから、うれしくないはずがない。
燃料残量の警告が出るまで新型プリウスを走らせ、そこからのんびりガソリンスタンドへ行くと、満タンでほぼ38Lのレギュラーガソリンが入る。そこでトリップメーターAをリセットし、また700kmを目指して走り出す。もちろん最終目標は20km/Lなのだから、38Lとなれば760km走らなくてはならないのだが……今はまだ無理だ。
(高橋敏也)
2009年 11月 24日