スバル、運転支援システム「新型EyeSight」で車両停止制御などを実現
5月中旬発売の「レガシィ」から搭載

新型EyeSightを搭載した「レガシィ」

2010年4月22日発表



 スバル(富士重工業)は4月22日、自動ブレーキによる車両停止制御などの新機能を搭載した運転支援システム「新型EyeSight(アイサイト)」を発表した。同日都内において発表会を開催した。

 EyeSightは、先代「レガシィ」に初搭載され、現行の「エクシーガ」にも搭載されるステレオカメラを用いた運転支援システム。前方の車両や歩行者、車線などを認識し、プリクラッシュブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報などの機能を実現していた。新型EyeSightは、これを進化させたものになる。

発表会場に展示された新型EyeSightのユニット。ハードウェアそのものは、先代EyeSightと同様30万画素のイメージセンサーを組み込んだカメラを2つ搭載する
レガシィに積まれた新型EyeSight。ユニットは同じだが、車内から見た場合、先代のEyeSight搭載車とは異なる外観になっていたフロントウィンドーから見た新型EyeSight。展示会場が雨だったためやや分かりにくいが、2つのカメラ部が見える
富士重工業 スバル技術本部 電子技術部担当部長 野沢良昭氏

全速度域動作のプリクラッシュブレーキ機能を実現
 新型EyeSightについての詳細説明は、富士重工業 スバル技術本部 電子技術部担当部長の野沢良昭氏より行われた。野沢氏は「新型EyeSightは、スバル独自のステレオカメラを利用した運転支援技術。ドライバーのボンヤリやウッカリを防ぐ“ヒューマンエラー回避支援”と、運転中のドライバーの負担を軽減する“運転負担軽減支援”がある」と言い、これらの機能によって事故を防いでいく。

 進化したEyeSightでは、「プリクラッシュブレーキ機能によって、自車と先行車の速度差が30km/h以下である場合は、自動ブレーキによって衝突を軽減、または回避できる。速度差が30km/hを超えるときは自動ブレーキによって衝突被害を軽減できる」と言い、全速度域で動作するプリクラッシュブレーキ機能は、乗用車として世界初になる。

 また、新型EyeSightでは、自動ブレーキの最大減速度を従来の0.25Gから0.4Gへと約1.6倍に高めている。これにより、全車速追従機能付きクルーズコントロールにおいて、都市部の渋滞など減速幅の大きい状況でも追従可能になり、ユーザーの利便性を高めている。また、渋滞時に先行車が停止した場合でも、停止状態を維持でき、先行車が発進した場合、スイッチまたはアクセル操作で再発進できる。

新型EyeSightの2つの支援技術ステレオカメラ方式の運転支援技術は、1999年9月に発売されたADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)が初の商品化乗用車世界初となる、全車速域で働くプリクラッシュブレーキ機能
プリクラッシュブレーキは3段階で働く。最初に車間距離警報をメーターパネル内に出す警報後も先行車に近づく場合は、弱い1次ブレーキを働かすさらに近づく場合は、強い2次ブレーキを働かせて停止させる。30km/h以下であれば、路面状況などによるものの、衝突を回避することが可能になる
減速度が1.6倍になった全車速追従機能付きクルーズコントロール機能渋滞時の完全停止にも対応する

 これらの機能は、新型EyeSightがステレオカメラ方式で、人の目と同様に物体をとらえていることからできることだと言う。新型EyeSightのユニットそのものは、従来のEyeSightと変更はなく、30万画素のイメージセンサーを組み込んだカメラを35cmの間隔で配置する。2つのカメラから得られた画像の視差により距離情報を生成、1秒間に30枚の画像を処理している。

ステレオカメラによる画像認識状況。3次元で物体を判断視差により、距離情報を持つデータを生成するスバルの試算する、安全運転支援機能による事故低減効果。重大事故による被害を2~3割低減できると言う
新型EyeSightは、5月中旬に発売されるレガシィから搭載

 この新型EyeSightは、5月中旬に発売される「レガシィ」から搭載され、新型EyeSightを搭載しないベース車との価格差はおよそ10万円程度になる予定。新型EyeSightで実現される機能は、下記の8つのものになる。


機能制御名
衝突回避・衝突被害軽減機能AT誤発進抑制制御
プリクラッシュブレーキ
プリクラッシュブレーキアシスト
運転負荷軽減機能全車速追従機能付きクルーズコントロール
先行車発進のお知らせ
予防安全機能車間距離警報
車線逸脱警報
ふらつき警報
富士重工業 常務執行役員 スバル技術本部長 宮脇基寿氏

スバルでは「そもそも事故を起こさない」という技術に取り組んでいる
 発表会では、富士重工業 常務執行役員 スバル技術本部長の宮脇基寿氏から、スバルの安全思想が語られた。宮脇氏は、「スバルでは“SUBARU ALL-AROUND SAFETY”という共通メッセージを世界各国で展開している。スバルでは、安全への取り組みを4つの段階で考えている」と言い、予知・予防としての“0次安全”、いざというときにドライバーの回避動作を支援する“1次安全”、万が一の衝突のときに乗員や歩行者を守る“2次安全”、事故が起こった際の緊急通報などの“3次安全”を挙げた。

 スバルではこれらすべてを重視しているが、「そもそも事故を起こさない」という技術に取り組んでいるとし、各安全段階についてのこれまでの取り組みを紹介した。

スバルが目指す快適・信頼の新しい走りと地球環境の融合4段階に分けて考える安全へのステップ0次安全の例。スバルでは視界を重視しており、初代サンバーのカタログでも視界のよさを強調
「走りを極めれば安全になる」と言い、運動性能のよさが0次安全につながるドライバーを支援する1次安全。ABSや横滑り防止機構のVDCなどにより、運転を支援する万が一の際に乗員や歩行者を保護する2次安全。スバル360や、スバル1000の時代から独自に衝突実験を行い、安全を追求している
現在のスバル車に採り入れられている2次安全技術。低重心の水平対向エンジンは、衝突の際に車の下に潜り込むことで乗員を保護するほか、ボディー構造やエアバッグなどさまざまな技術で安全をサポートする安全技術の追求が現在のスバル車の安全性の高さにつながる。昨日、最も安全性能が高い車を表彰する「自動車アセスメントグランプリ'09/'10」にレガシィが輝いたほか、世界各国で高い評価を受けている

 宮脇氏は、それらの安全に対する取り組みを紹介した上で、EyeSightに触れ「人のヒューマンエラーを補えるのは、最も人の目に近いステレオ画像認識ではないかとの考えから独自に研究開発をスタートした」とし、1990年ごろに始まったと述べた。

 「開発当初は、レガシィ ツーリングワゴンの荷室いっぱいにコンピューターなどを積み込んでおり、手作りに近いデータ評価装置で画像認識の確認を繰り返していた」(宮脇氏)と言い、ステレオカメラだからこそ、レーダー式では難しい自動車や歩行者を認識できるとそのメリットを語った。スバルでは今後さらに新型EyeSightを発展させ、知能化を進めることにより、安全性能を向上させていくと言う

 また、発表会とあわせて新型EyeSightを搭載したレガシィの試乗会も開催された。試乗会の模様は追って掲載する。

(編集部:谷川 潔)
2010年 4月 22日