首都高、横浜環状北線でシールドマシン組み立て現場の見学会 12m超のシールドマシンに見て触れられる親子見学会 |
首都高速道路は8月9日、現在工事が進行中の横浜環状北線において、親子見学会を開催した。地元の新羽小学校の4~6年生の希望者、14家族33名が参加し、現在トンネルの切削に向けて組み立てが進められているシールドマシンを実際に見学したり、触れたりしていた。
横浜環状北線は、第三京浜の港北IC(インターチェンジ)にできる港北JCT(ジャンクション)から、首都高速の横羽線と大黒線が交わる生麦JCTまでを繋ぐ約8.2kmの高速道路。途中には新横浜出入口、馬場出入口、新生麦出入口の3つの出入口ができる。将来的には港北JCTからさらに西に向かって延長し、東名高速道路に繋がる他、保土ヶ谷パイパスや横浜新道、横浜横須賀道路、さらには湾岸線まで繋がる環状線の一区画となる計画だ。
横浜環状北線の位置 | 第三京浜と繋がる港北JCTと新横浜出入口 | 馬場出入口はトンネルの途中にできる |
首都高神奈川線とは生麦JCTで接続。さらに新生麦出入口もできる | 将来的には環状道路として湾岸線まで繋がる予定 |
説明会では、首都高速や第三京浜、東名高速など横浜市と都心とを繋ぐ道路は充実していても、それらの道路同士を繋ぐ道がなかったとして、環状北線ができることで渋滞の緩和だけでなく、交通事故も減らすことができると説明した。具体的には、新横浜から羽田空港まで走った場合、三ツ沢線を利用した場合と比べて約10分短縮されるほか、渋滞の緩和によりCO2排出量が年間5万4000t減るとしている。
横浜環状北線は、住宅地の中を抜ける道路となるため、全長約8.2kmの内、約5.9kmがトンネルとなる。トンネルは地上から掘り下げていく開削工法と、地中を横に掘り進めていくシールド工法があるが、住宅地の下を抜けるため、約5.5kmをシールド工法によって掘り進める。そのため、新型のシールドマシンが2機作られている。
今回使われるシールドマシンは高さ約12.5mで重さは約2000t。アクアラインを掘ったシールドマシンは高さが約14mなので、それと比べると小さいが、アクアラインのシールドマシンは泥水圧と呼ばれるもので、切削時に土を泥水のようにしてからポンプで吸い出すのに対し、今回のマシンは泥土圧式。これは泡状の薬剤によって土を泥状態にして削り進める。そのため、削った土はベルトコンベアに乗せて排出することができる。この泥土圧式はまだ新しい技術で、泥土圧式としては12.5mのシールドマシンはかなり大きい部類に入ると言う。
横浜環状北線の開通による効果 | 全区間の内、約5.9kmがトンネルとなる | トンネル内断面のイメージ。道路の下が避難通路になる |
小学生向けにQA形式でシールドマシンの説明も行われた |
現在はトンネルの港北JCT側に立坑が完成しており、そこに500tのクレーンを使って分解したシールドマシンのパーツを下ろし、立坑内で組み立てている。すでに1機はほぼ形になっており、もう一機は組み立て始めといったところ。見学者一行は地上にある500t吊りの巨大なクローラークレーンが、立坑にシールドマシンのパーツを下ろすところを見学した後、実際に立坑を降りていき、シールドマシンの組み立て現場を見学。完成間近のシールドマシンには実際に触ることもできた。
シールドマシンの組み立てには約3カ月が必要とのことで、発進式は10月初旬に行われ、実際に掘り始めるのはその後になる。シールドマシンは1分間に5cm掘り進むことができ、24時間休みなく稼働。1カ月で360m進むことができる計算。
小学生からは先端のカッターの刃はどれくらいで交換するのかといった質問が上がっていたが、スタッフによれば、トンネルを掘り進めている途中で刃を交換できるようにはなっているが、それは何かトラブルが発生した場合のためで、問題がなければ交換することなく5.5kmを掘りきると説明していた。
馬場出入口部分では、流入・出のためにトンネルを拡幅する必要があるが、この付近も住宅が密集しているため、地上から掘り下げることなくトンネルを拡大すると言う。さらに地上から直接掘り進められるシールドマシンを使うことで、地上にほとんど穴を開けることなく出入口を作ることができると言う。
馬場出入口の拡幅の手順。拡大シールド工法で断面を拡大したところから細いパイプを放射状に刺していき、そこから薬液を注入することで土を固めた後、内側を掘り広げていく |
これらの作業もトンネル切削と同時進行で進められ、トンネル貫通工事全体が完了するのが、現在のところ2012年9月の予定とした。さらに実際に道路として開通するのは2012年度末か2013年度頭あたりの予定となっている。
【お詫びと訂正】記事初出時、トンネル部の長さと、シールド工法による区間の長さの表記を誤っておりました。また、縦坑はただしくは立坑でした。お詫びして訂正させていただきます。
(瀬戸 学)
2010年 8月 10日