日産、「リーフ」発表会リポート EVの普及だけでなく、ゼロ・エミッション社会創出を目指す |
日産自動車は12月3日、電気自動車(EV)リーフの発表会を、神奈川県横浜市の同社グローバル本社ギャラリーで開催した。ここではその模様をリポートする。リーフの詳細については関連記事を参照されたい。
ヘッドライトクラスターやリアのデフューザーの形状が空力に貢献する | Gグレードはルーフスポイラー上にソーラーパネルを備える | |
フロントホイール。タイヤはブリヂストンのエコピア | 充電コネクタのリッドのエンブレムにはイルミネーションが仕込まれる | ダッシュボード上にある3つのランプは充電状態を表すインジケーター。フロントウインドー越しに確認できる |
インバーター | リダクションギア付きモーター |
バッテリーパック | バッテリーパックは床下に置かれる。モーターはフロント | リーフの床下を覗いたところ |
ボンネットを開けるとインバーターが見える |
充電コネクタは急速充電用と普通充電用を備える | ||
リーフの室内。起動スイッチはステアリングホイール左に。インストゥルメントパネルは2段構え | ||
バッテリーの温度と残量が左右に表示される | メーターパネル中央の表示 | |
ステアリングホイールにはオーディオのリモコンやクルーズコントロールの操作系がある | ペダルは2つ。ボンネットと充電コネクタのオープナーが見える | ステアリング右のスイッチ |
シフトレバーはジョイスティック形式 |
ラゲッジルーム。シートは6:4の分割可倒式だが、倒したシートとラゲッジルームの床には段差があり、ラゲッジルームのほうが深い |
スペアタイヤは搭載せず、パンク補修キットを積む | リアシート |
門田CVE |
■エンジニア冥利につきる会心作
発表会には、リーフの開発責任者である門田英稔チーフビークルエンジニア(CVE)が登場、リーフの概要を説明した。
門田CVEはまず、リーフの動力性能の魅力をアピール。「モーターは低回転からフルトルクを出せる優れた特性を持っているが、闇雲にトルクを出すとクルマがガクガク振動してしまう」ため「駆動系のねじり共振点近くのトルク制御を微妙に行うことで、スムーズな加速を実現した」と言う。
また、重心点まわりにバッテリーを搭載したことで回頭性がよくなり、バッテリーによって重心が低くなったために、「リアの巻き込み感が少ない、非常にマイルドな挙動のクルマを作ることができた」とした。コーナーリング時にもモーターのトルクを1/10000秒単位で制御し、小気味よい曲がり方を実現していると言う。
リーフに搭載されているカーナビ。左下の「ゼロ・エミッション」ボタンを押すと、EV関連のメニューが表示される | 充電ステーションの検索 |
電池残量に応じてどこまで走行できるかを図示。同時に充電ステーション情報も表示される |
各部の電力消費を表示 | 燃費ならぬ電費情報。ユーザー同士で電費を競うアトラクションも検討されている |
タイマー充電で夜間電力を活用する | |
ゼロ・エミッションであるだけでなく、リサイクル率の高さでもエコに貢献する。バンパーや内装材は他社製を含めた廃車からリサイクルされたもの |
次に、リーフの安全性をアピール。アラスカ、ドイツ、パリでの実走行テストのほか、衝突実験でもバッテリーの損傷が少ないこと、内燃機関車では走行できない水深700mmの冠水状態でも走行できることなどを説明した。
最後に「リーフスマイル」という言葉を紹介。同社はリーフ発売に先立って全国で試乗イベントを開催し、約10万人がリーフの運転を体験したが、「試乗を終えた人がみなニコニコしていた」ために、関係者から生まれた言葉と言う。
1991年から同社でEVに携わってきた門田CVEだが、「会心作となった。エンジニア冥利に尽きる」とリーフへの自信をのぞかせた。
アラスカでの走行テスト。外気温は-20度 | アウトバーンで高速域のサスペンションセッティングをテスト | パリでは市街地での走行テスト |
前方衝突(上)と後方からの追突試験(下)。いずれも右の写真は衝突後のリーフを底面から撮影したもの。赤い枠の右側がバッテリーだが、ほぼ変形していないのが分かる |
車体と、バッテリーのパック、モジュール、セルの各レベルで安全性を担保する | バッテリーケースとボディーをボンディングワイヤで接続し、電位を等しくしてあるので、万が一故障しても感電しない | 落雷試験の映像。充電器とリーフの間にヒューズがあり、落雷の電流が流れこむことはない |
充電コネクタに水をかけても、漏電しない構造を採る | 内燃機関車では走行できない700mmの冠水でも走行できる |
水深700mmを走行する映像 |
志賀COO |
■EV普及だけでなく、ゼロ・エミッション社会創出を目指す
2009年にリーフの開発を発表して以来、同社はリーフそのものと、リーフに関連した取り組みについて頻繁に情報を発信してきたが、発表会では同社の志賀俊之COOがこれらを総括した。
従来の内燃機関とはインフラや使い方がことなるEVゆえ、志賀COOがまず強調したのは「高い品質を確保するだけでなく、EVを初めて購入されるお客様に、万全の販売サービス品質をお届けする体制を整えた」ということ。さらに、EV普及には社会全体での取り組みが必要なことから、地方自治体などとパートナーシップを組んでいることもアピールした。
日産はEVの開発と販売だけでなく、EVを取り巻く環境づくり、ひいては電気エネルギーをベースとしたゼロ・エミッション社会の創出も視野に入れて活動しており、多方面からのアプローチを進めている。志賀COOのスピーチからこれらを要約すると、次のようになる。
全国の日産ディーラー2200店舗で200Vの普通充電が可能
うち200店舗には約30分で80%までの充電が可能な急速充電器を設置
急速充電器設置店舗を中心に半径40kmでほぼ日本全国をカバー
急速充電器を独自開発して、競争力のある価格で市販
車両購入方法にはEVの特性を生かした様々なプランを提案
EV普及だけでなく、ゼロ・エミッション社会を作り出すことを目指している
政府、地方自治体、電力会社、民間企業、多くの専門家の協力を得た
世界中で80を超えるパートナーシップを締結
日本では現在9つのパートナーシップを締結
住友商事と共同で、EVで使用されたリチウムバッテリーの2次利用の事業開発を行う合弁会社を設立
バッテリーバリューチェーンの管理やエネルギー貯蔵に向けた取り組みを行う
また、リーフは国内だけでなく、欧米でも販売、生産を行うことが発表されている。これについては次のように述べた。
10月に追浜で生産開始
間もなく米国で、2011年初めには欧州で販売開始
2012年後半に米国スマーナ工場で、2013年には英国サンダーランド工場で生産を開始
バッテリーはNECとの合弁会社オートモーティブエナジーサプライで生産
2012年後半から米国、ポルトガル、フランス、英国でバッテリーの生産を開始
2015年までにルノー日産アライアンスで年間約50万台分のバッテリー供給体制を整える
これまで日産は、パートナーシップを結んだ自治体で試乗イベントを開き、約10万人が試乗した。同時に市民によるワークショップを開き、EVの活用と、EVのある社会について考えるワークショップを開催した | |
志賀COOが運転するリーフが、ワークショップの参加者や予約した人たちに迎えられる |
日産ギャラリーにはたま電気自動車とハイパーミニも展示されている |
(編集部:田中真一郎)
2010年 12月 3日