日産「リーフ」、初の公道試乗イベント開かれる

参加者全員で記念撮影。中央で握手しているのは横浜市の大場副市長と日産の川口常務

2010年12月5日開催



5日は100人が参加した

 日産自動車は12月4日と5日、電気自動車(EV)の普及啓発イベント「the new action TOUR」(NAT)を、神奈川県横浜市の同社グローバル本社で開催した。

 EV「リーフ」に試乗するとともに、EVと「ゼロ・エミッション社会」について啓発するイベント。今回はその4回目で、これまで神奈川県、さいたま市、北九州市で開催されている。

 12月3日にリーフを発表し、20日に発売を控える同社だが、リーフの発売を単に“EVを販売する”にとどめず、ゼロ・エミッション社会の実現を目指した活動につなげているのが大きな特徴。EVの活用にはインフラ整備が欠かせないうえに、エネルギーを有効活用する「スマートグリッド」においてはEVが“乗り物”以外の役割も果たすため、社会の変革にも取り組む姿勢を明らかにしている。

 このため、リーフの発売にさきがけ、世界で80以上の政府・自治体とEV普及についてパートナーシップを締結し、インフラ整備などを進める一方、ユーザーたる一般市民向けには、EVそのものと、ゼロ・エミッション社会におけるEVの役割を啓発すべく、NATを開催してる。

ゼロ・エミッション社会の創出を目指すことで、EVへの「賛成の連鎖」を広げ、EV普及につなげる

 同社の川口均 渉外担当常務執行役員は開会の挨拶で「EVを単に生産販売するのでなく、ゼロ・エミッションを根付かせたいという考えから、EVの普及に向けた様々な取り組みを進めている。その一環として、今日のNATを企画し、全国を縦断している。リーフに実際に触れていただいて、“EVっていいね”という“賛成の連鎖”を日本全国に広めていきたい。EVの普及、ゼロ・エミッション社会の実現に向け、皆さんと一緒に行動を起こし、“賛成の連鎖”を広げていただければと考えている」とNATの開催意図を述べている。

 また横浜市からは出席予定だった林文子市長に代わって大場茂美副市長が来場。「自動車は今から250年前に誕生、人々が夢としてきたことを、次々と自動車が実現してきた。人々の街や暮らしを変える、大きな原動力になってきた。EVが量産される時代になり、都市の姿も大きく変わっていくと考えている。横浜市としても、これからの都市社会をEVを見据えながら考えていきたい」と、EVが交通だけでなく都市も変容させるとの考えを示し、「横浜は海外からの文化が伝わる地として、新しいものを受け入れる窓口になってきた。EVも、新しい横浜の街づくりという視点でも、内外に発信していきたい」とした。

川口常務大場副市長

 

試乗コース

リーフで初めて公道に
 リーフの試乗は、グローバル本社を出発し、マリノスタウン、中央卸売市場、国道15号線を経てまたグローバル本社に戻る、1周約3.5kmのコース。希望者は、自らドライブすることもできるし、係員の運転に同乗するだけでもいい。

 これまで一般向けだけでなく、メディア向け、株主向け、予約者向けと度々行われてきたリーフの試乗会だが、公道で開催されるのはこれが初めて。「本日ご試乗いただく皆様は、公道でリーフに乗る初のドライバー」(川口執行役員)ということで、横浜を走る一般車両に混じって、リーフでのドライブを楽しんだ。

 試乗を終えた参加者は一様に「加速がスムース」「(バッテリーが低い位置にあって)安定している」「静か」といった、EVならではのドライブ感覚が味わえることを挙げていたが、もっとも多かったのは「普通のクルマとまったく違和感なく運転できた」というもの。

 実際、記者も運転してみたところ、アクセルペダルを踏んでもエンジン音などは高まらず、ブレーキを踏んで回生が効くと、少しつっかかりを感じるものの、これ以外は操作も感覚もまったく同じだった。

試乗用に3台のリーフが用意された
グローバル本社からいよいよ公道へ
会場にはたま電気自動車も登場、こちらも希望者は試乗できた
日産ギャラリーに展示されているリーフにも、細部を確かめる人だかりがリーフとゼロ・エミッション社会の概要を映像とブリーフィングで学ぶ

EVが社会を変える
 12月5日のNATには事前に募集した100名が参加し、リーフの試乗のほかに、「EV普及による街づくりアイデア」というワークショップを行った。

 このワークショップは、「EVの普及は、単に自動車の動力源が内燃機関から電池に変わるというだけでなく、私たちのコミュニティーを変える可能性がある」という考えから、市民自身がEVによってどのような社会が可能になるかを考えるもの。

 グローバル本社の社員食堂で行われたワークショップは、2部制。第1部は、「未来の社会でEVはどこでどのように役に立ちたいと思っているのだろうか」というテーマの議論が、4人ずつの組を作ってディスカッションする「ワールドカフェ」という形式で行われた。

 第2部は、「EVから始まる街、暮らし、コミュニティの未来をみんなでデザインしよう」をテーマとしたディスカッション。参加者の中から希望者が議題をいくつか提案し、、その議題に関心のある参加者で自由にグループを作ってディスカッションする形式。

 参加者からは、「EVを使った高齢者の生活」「EVで建築物の型がどう変っていくのか」「“もらい電”から生まれるコミュニケーション」など、10のテーマが出され、これに希望者を募ってグループを作り、各グループで討論。1時間でこの日の結論を各グループでまとめ、その概要を発表した。

 提示された意見には、「EVのバッテリーを日本の主力産業に」「EVなら高齢者が外に出やすくなる」「EVはリビングにも置ける。クルマが外に置かれなくなると景観が変わり、街区の作り方も変わる」「充電器を一人暮らしのご老人の家に置いて、地域の人との交流の契機に」といったように、EVが社会に及ぼす影響に期待するものが多く見られた。

第1部はワールドカフェ形式でのディスカッション。意見をテーブルの模造紙に書きつけていく第2部
希望者が議題を提案、10の議題が決まった
興味のある議題にほかの参加者が加わり、討論する。討論のまとめかたはグループで好きなように
1時間の討論でまとまったことを全員の前で発表する最後に、参加者全員が興味深かった議題に赤く丸いシールを貼って評価した

(編集部:田中真一郎)
2010年 12月 6日