GPS衛星「みちびき」による測位精度向上を確認

準天頂衛星初号機みちびき

2011年5月16日発表



実験の概要

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱電機は5月16日、準天頂衛星初号機「みちびき」により、ナビゲーションシステムの精度が向上したことを確認したと発表した。

 みちびきは、日本の真上にGPS衛星を配置し、GPSによる測位率(即位できる場所と時間)と精度の向上を図る「準天頂衛星システム」の衛星。高いビルが多く衛星の見通しが悪い都市部でも、より正確な測位が可能になることが期待されている。2010年9月に打ち上げられ、同12月から実証実験が行われている。

 実験は、みちびきからの測位信号を受信できる端末を計測車両に塔載し、1月18日~3月31日に、新宿の高層ビル街と、細い街路の多い銀座で実施。カーナビなどで利用される「一般測位」と測量に用いられる「高精度測位」を実験した。

 この結果、一般測位の測位率が新宿で2.5倍、銀座で1.7倍に拡大。高精度測位は新宿で4倍、銀座で2倍となった。

測位の種類場所測位率
GPS単独
測位率
みちびき併用
改善度
一般測位新宿28.5%70%2.5倍
銀座39.5%69.1%1.7倍
高精度測位新宿8.8%35.4%4倍
銀座16.2%33.2%2倍

 

銀座での測位可能エリア。左がGPS単独、右がGPS+みちびき
新宿での測位可能エリア。左がGPS単独、右がGPS+みちびき

 今後は、流通やタクシー、教育機関、研究機関、企業と協力し、さまざまな場所や利用形態での実験を行う。

 三菱電機によれば、測位率が向上することで、車線を識別するレーンナビゲーションや車間制御が可能になるほか、高精度の車線地図によりエネルギー効率のよいルート設定やエコ運転支援が可能になるとしている。

 なお、みちびきの測位信号を受けるには、カーナビなどの受信機側で対応する必要がある。しかし信号の構成や周波数は既存のGPSと同じであり、既存の受信機でもソフトウェアの変更など、簡単な改修で受信できると言う。JAXAではみちびきの信号の仕様をすでに公開しており、受信機メーカーの対応を促進している。

(編集部:田中真一郎)
2011年 5月 16日