SUPER GT第5戦鈴鹿「エヴァンゲリオンレーシング」リポート
初号機は6位。チャンピオン獲得は厳しい状況


 8月21日、2011 AUTOBACS SUPER GT第5戦「第40回 インターナショナル ポッカ GT サマースペシャル」の決勝が鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催された。レース結果などはすでに別記事で紹介しているので、本記事ではCar Watchの読者に人気の高い、エヴァンゲリオンレーシングの各セッションの詳細、マシン、ドライバー、レースクイーンのフォトギャラリーなどをお届けする。

 SUPER GTシリーズは全8戦で行われ、今回の鈴鹿から後半戦に突入する。前半戦を終えて2号車 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電(高橋一穂/加藤寛規)のドライバーズポイントは5ポイント、7号車 エヴァンゲリオンRT弐号機DIRECTION(カルロ・ヴァン・ダム/水谷晃)はポイントが獲得できていない。ポイントランキング1位は11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458(田中哲也/平中克幸)の49ポイントで2勝(40ポイント)以上の差があり残り4戦ではかなり厳しい状況だ。

 第5戦の舞台は鈴鹿サーキット。日本のモータースポーツの聖地だ。2008年までは1000km、2009年からは700kmで争われてきたが、今年は震災の影響もあり500kmに短縮となった。短くなったとは言え、ほかのレースが250kmなので倍の距離を走ることとなる。2度のドライバー交代が義務付けられていることも普段のレースとは異なっている。第3ドライバーの起用が可能で、弐号機はポルシェ・カレラ・カップ・ジャパンなどで活躍する横幕ゆぅ選手が起用された。

公式練習(8月20日)
 例年は灼熱のレースとなる夏の鈴鹿決戦だが、今年は前戦のSUGOと同様、2日間とも曇りと雨が入り交じる天候となった。公式練習の天候は曇り、路面はドライで行われた。

 初号機は加藤選手のドライブで2分07秒309、4番手タイムを出し高橋選手に交代。高橋選手は20周ほど走行し2分10秒630がベスト。安定して2分10秒台をマークし、レースラップとしてはわるくないタイムだ。データーが豊富な鈴鹿なので、走り出しからセッティングを大きく変えることもなくマシンも特に問題はない。

 弐号機はカルロ・ヴァン・ダム選手のドライブで2分07秒903を出しこの時点で5番手タイム。タイムは出ているが、マシンには強いオーバーステアがあり暴れるマシンをねじ伏せてのドライビングとなった。セッティングを変更し横山選手がコースイン。慣れないマシンではあったが2分12秒171とまずまずのタイムを出した。最後は水谷選手がステアリングを握り2分13秒310でラップ。セッティング変更でオーバーステアも収まり午後の予選に臨むこととなった。

公式練習を走る初号機と弐号機

予選Q1(8月20日)
 今回の予選はノックアウト方式。Q1の上位16台がQ2に進出、Q2の上位10台がQ3進出となる。Q2、Q3は同じドライバーが走る事ができない。Q1からQ2に進むにはもう1つ条件がある。チームのドライバー全員が基準タイム(クラストップ3の平均タイムの105%以内)をクリアしなければならない。

Q1ではトップタイムをたたき出した

 初号機は高橋選手からタイムアタック。3周目に2分09秒956を出しピットへ。あっさりと基準タイムをクリアした。代わった加藤選手は2周目に2分07行273を出しこの時点でトップタイム。そのタイムを88号車 JLOC ランボルギーニ RG-3が更新したので再びタイムアタック。Q1での順位は大きな意味を持たないが、そこはレーシングドライバー。2分06秒873を叩きだしトップの座を奪い返した。

 弐号機は3人のドライバーが基準タイムをクリアしなければならないので、1人の走行時間が限られてくる。まずは水谷選手からタイムアタック。最初の1周で新品タイヤの皮むきと熱入れを行い2周目に2分13秒575、3周目に2分13秒374を計測。4周目はセクター3までをベストタイムで通過、2秒ほど短縮して130Rを抜けたところで赤旗中断、2分11秒台が狙えたがピットに戻りドライバー交代を行った。この時点では基準タイムをクリアしているが、上位陣がタイムを上げると厳しい状況だ。

 代わった横幕選手は慣れないSUPER GTということもありクリアラップがなかなか取れない。2分14秒423のタイムでは基準タイムをクリアできないが、ヴァン・ダム選手の走行時間も確保しなければならないので一旦ピットイン。ヴァン・ダム選手のタイムアタック終了後に再び横幕選手に交代する作戦を取った。

基準タイムをクリアできず最後尾スタートへ

 元F3チャンピオンのヴァン・ダム選手はあっさりと2分07秒897を出しQ2進出の16位以内を確保、横幕選手の2回目のアタックが開始された。残り時間はわずか、何とか1ラップでも計測しようとコースに出たがアタックラップに入る前にチェッカー。計測ラップに入れぬままQ1は終了となった。

 最終敵にヴァン・ダム選手のタイムは13番手でQ2進出が可能な16位以内を確保したが、基準タイムの2分13秒249を水谷選手、横幕選手がクリアできず予選通過は認められず、最後尾からのスタートとなってしまった。1000kmの決勝レースの頃は第3ドライバーを起用するチームは多かったが、500kmとなった今回のレースでは第3ドライバーの起用が裏目に出た形となった。


予選Q2(8月20日)
 Q2は16台が10台に絞り込まれる。Q2を走ったドライバーはQ3の走行ができない。高橋選手のタイムではQ2突破は難しいため、加藤選手がQ2突破をすれば、高橋選手がQ3最後尾でも10番手グリッドは確保できることになる。

雨の中Q2を走る初号機

 Q1までは路面はドライだったが、インターバル中に雨が降り、路面は完全にウェット。Q2の走行時間はわずか10分。ウェットでのラップタイムはおよそ2分半。コースインしたラップを3分とすると計測できるラップは3周となる。早めにコースインしアウトラップと計測ラップ次第でギリギリ4周のアタックが可能だ。

 3周計測で充分と判断した加藤選手は、殆どのマシンがコースインしてから充分なインターバルを取ってコースイン。計測2周目に2分24秒094を出しこの時点で5番手。だがマシンの走行によりコース上の水がはけ、このままでは他のマシンのタイムが更に上がると予想し更なるタイムアップを目指しそのままアタック。しかしペースを落したマシンに引っかかり加藤選手の最終アタックは不発。案の定、他車のタイムが伸び初号機は11番手へ、想定外のQ2敗退となった。


ピットウォーク・キッズウォーク
 鈴鹿でも土曜、日曜にピットウォーク、土曜のセッション終了後にキッズウォークが行われた。特に日曜のピットウォークは前売りで完売になるほどの盛況ぶりだった。今回のエヴァンゲリオンレーシングはレースクイーン5人が勢揃いとなった。土曜のキッズウォーク、日曜のピットウォークはあいにくの雨となったが、エヴァンゲリオンレーシングのピットはいつもどおりの人気で多くのファンが集まっていた。

5人が勢揃い
雨のキッズウォークで弐号機のドライバーはファンサービス整備が続けられる初号機と弐号機

フリー走行(8月21日)
 日曜日の天候は雨。朝のフリー走行は直前のサポートレースが雨で赤旗中止になるほどの豪雨。岡山と同様中止が懸念されたが、直前に雨足が弱まり予定通り走行が開始された。

 初号機は高橋選手からコースイン。ウェット路面で他車のラップタイムも2分30秒前後だが、高橋選手は2分35秒前後。あまりにも遅い。マシントラブルかと思いピットから無線で確認すると「マシンは問題ない。オレの問題」との返事。その後2分31秒台まで縮めるがどうもリズムがつかめないようだ。最後に加藤選手に代わると2分25秒台でマシンには問題がなさそうだが、決勝に向けやや不安が残ることとなった。

 弐号機はヴァン・ダム選手が2分25秒台、水谷選手が2分27秒台、横幕選手が2分28秒台とまずますのラップタイムで周回。決勝は最後尾からヴァン・ダム選手のオーバーテイクショーが期待できそうだ。

決勝(8月21日)
 決勝直前までやや強めの雨が降っていたため路面は完全にウェット。レースがスタートする頃には雨はやや弱くなっていた。500kmのレースは約3時間。ゴールまで天気とにらめっこの決勝となりそうだ。

グリッドへのスタートを待つ加藤選手走行中にドアを閉められるようにバーが取り付けられたグリッドへのスタートを待つヴァン・ダム選手

 初号機は加藤選手がスタートドライバー。その後高橋選手に交代し、最後は加藤選手が担当となる。加藤選手は深溝のレインタイヤを装着してスタートに臨んだ。

 スタートは水しぶきが舞い上がり何も見えない状態。1コーナーは26号車 Verity TAISAN Porscheにアウトから抜かれ12位に後退するが逆バンクで抜き返し11位、スプーンで86号車 JLOC ランボルギーニ RG-3を抜き10位で1周目を終えた。

水しぶきを上げながらスタートが切られた(Photo:Burner Images)26号車に抜かれ12位でS字を通過

 予選Q2で敗退し予想外の11番グリッドからのスタート。ここからいつも通り加藤選手の快進撃が始まった。2周目のヘアピンで27号車 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリをパスして9位。4周目にはダンロップへの登りで87号車 リール ランボルギーニ RG-3を抜きイタ車を3連続で料理して8位までポジションアップ。7周目のシケイン進入で25号車 ZENT Porsche RSRを抜き7位へ浮上した。

27号車を抜き9位へ87号車を抜き8位へ25号車を抜き7位へ

 路面の水がはけストレートでは各車が水のあるラインを走行しタイヤ温存を図っている。無線で加藤選手に確認すると「大丈夫!大丈夫!」と心強い返事。加藤選手の快進撃はまだまだ続いた。

 10周目にはペースの落ちた4号車 初音ミク グッドスマイル BMWに2コーナーで迫り、S字で並びかけ逆バン進入で抜き去り6位。続く11周目はS字で14号車 SG CHANGI IS350、シケインで33号車 HANKOOK PORSCHEをまとめて抜いて4位。いよいよ表彰台圏内が見えてきた。

4号車に追い付き、S字で並びかけ、逆バンクで6位浮上

 この時点でトップは62号車 R&D SPORT LEGACY B4、2位は43号車 ARTA Garaiya、3位は88号車 JLOC ランボルギーニ RG-3。さすがにトップ3はラップタイムも速く簡単には追いつけない。15周にわたり4位をキープする走行となった。

33号車、14号車を抜き4位へ

 雨は時々降る程度でスタート時と比べると路面の水はかなり減っている。とは言えレコードラインも乾くまでには至らず微妙は路面コンディションだ。すでにピットインを行ったマシンもあり、深溝から浅溝のレインタイヤに変更するチームが多かった。

 26周目に88号車 JLOC ランボルギーニ RG-3、31周目に62号車 R&D SPORT LEGACY B4、32周目に43号車 ARTA Garaiyaがピットインし初号機はいつも通りトップまで浮上した。

 38周目に初号機もピットイン。タイヤ選択に迷ったが、まだまだ雨が降る可能性が高いと判断し深溝のレインタイヤを選択した。給油も済ませ高橋選手にドライバー交代を行った。

 ここでコース上では大きなアクシデントが発生した。ヘアピンからスプーンに向かう200Rで、100号車 RAYBRIG HSV-010がクラッシュしスポンジバリアに乗り上げてしまった。これでセーフティーカーが入ることとなってしまった。

 高橋選手がコースインするとポジションは5位。セーフティーカーランが3周続きレースは再開。1コーナーで11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458抜かれ6位となった。4位の88号車 JLOC ランボルギーニ RG-3がS字でスピンし5位に戻すが33号車 HANKOOK PORSCHEと74号車 COROLLA Axio apr GTに抜かれ7位へ後退した。

 朝のフリー走行では35秒台と苦しんでいた高橋選手だが、ラップタイムは2分26秒台。その後は2分25秒台へとペースアップ。46周目のスプーンで74号車 COROLLA Axio apr GTを抜き返し6位と徐々に調子を上げてきた。ところが48周目のシケインでアクシデントが発生した。

レース再開直後に11号車に抜かれ33号車と74号車に攻め立てられる74号車は抜き返した

 GT500のトップを走る1号車 ウイダー HSV-010がシケインの進入でアウトからかぶせる形で抜いていった。高橋選手はイン側をキープ。抜き去ったと思った1号車 ウイダー HSV-010はインに切り込んだため2台は接触しスピン。どちらもダメージはなかったが初号機は8位に後退した。この接触はレーシングアクシデントと判断されペナルティの対象にはならなかった。

 接触により順位は落としたが、ラップタイムは2分25-26秒台をキープしレースは終盤へと向かった。2回目のピットインが近付き、路面はかなり乾いてきた。とは言え空には厚い雲が広がりいつ降り出してもおかしくない状況だ。スリックタイヤに代えて雨が降り出したらレースを失うことになる。難しい選択が迫ってきた。

 後方へ落ちた4号車 初音ミク グッドスマイル BMWが早々にスリックタイヤでギャンブルに出た。レインタイヤを履く他車を圧倒するラップタイムで後方から順位を上げてきた。これを見て上位陣もスリックタイヤを選択。無線で高橋選手に路面コンディションを確認すると「加藤ちゃんなら大丈夫。ライン1本は乾いてる」と返事がきた。

 63周目、高橋選手から加藤選手に交代、タイヤももちろんスリックタイヤに交換、最後のスティントが始まった。タイヤも温まり2分17秒、15秒、14秒とラップタイムも上がり順調な滑り出し。さらにタイムを上げ11秒台へ。70周目には74号車 COROLLA Axio apr GTを抜き7位。さらに14号車のドライブスルーペナルティで6位に浮上した。

 今回は特別ルールで周回と無関係にレース終了は18時30分となっていた。ウェットレースでペースが遅く、セーフティーカーが入ったこともありGT500クラスでは87周が86周に短縮。GT300クラスも78-79周でチェッカーとなりそうだ。

汚れたボディーで疾走する初号機雨が降り出した中スリックタイヤでゴールを目指す

 残り5分くらいで雨が降り出し各車ペースダウン。上位陣は全てスリックタイヤなので条件は同じ。そのままゴールとなり初号機は6位、5ポイントを獲得した。目指すは優勝、悪くても表彰台と思っていただけに満足とは言えないが、今期最高順位でゴールとなった。

 一方の弐号機は最後尾スタートなのでヴァン・ダム選手のオーバーテイクショーでレースは始まった。1周目に22号車 R'Qs Vemac 350Rと15号車 ART TASTE GT3Rを抜き21位。2周目に5号車 マッハGOGOGO車検RD320Rと69号車 サンダーアジア MT900Mを抜き19位。

最後尾スタートなのでフォーメーションラップはマーシャルカーを引き連れて周回69号車、22号車を抜き15号車に迫る

 4周目のシケイン立ち上がり。前を行く31号車 ハセプロMA イワサキ aprカローラが急なブレーキングでピットイン。予期せぬブレーキングのためヴァン・ダム選手は避けきれずに追突。そのままコースに留まり走行を続けた。

31号車をロックオン追突前のフロントは傷なし

 5周目には34号車 ハルヒレーシングHANKOOKポルシェを抜き17位、さらに86号車 JLOC ランボルギーニ RG-3に迫ったが、無線で「水温が徐々に上昇している」と連絡が入る。7周目に86号車 JLOC ランボルギーニ RG-3を抜き16位までポジションアップしたがここで緊急ピットイン。

34号車に迫る弐号機86号車を抜いたが直後に緊急ピットイン。フロントに傷が見える

 追突によりラジエーターが損傷したため、レース中にラジエーターの交換を行うこととなった。この修理に1時間弱を要し大幅に周回遅れとなってしまった。スタート時のフライングの裁定も出て、ヴァン・ダム選手は長時間の修理が終わってコースに戻るとすぐにドライブスルーペナルティを消化し、19周を走って横幕選手に交代した。

長い修理を終えコースに復帰。完走扱いにはならなかったが最後まで走り続けた

 横幕選手は24周、最後は水谷選手がステアリングを握りゴールを目指した。長いピットインもあったので53周でチェッカーを迎えた。トップから26周遅れ、規定周回数の55周に2周足らなかったため完走扱いにはならなかった。事実上のデビュー2戦目。まだまだ経験不足は否めないが、次戦は直線の長い富士スピードウェイなので、飛躍となるレースを期待しよう。

 初号機は6位、5ポイントを獲得し年間ランキングは14位。残り3戦となりかなり厳しい状況となってきた。次戦の富士スピードウェイは初号機は決勝で早々のリタイヤ、弐号機はマシントラブルで予選すら走っていない。ともにリベンジしたいレースだ。

 次戦、2011 AUTOBACS SUPER GT 第6戦 FUJI GT 250km RACEは9月11日、12日に開催される。開幕戦でその勇姿を見逃した方はぜひサーキットに足を運んでいただきたい。

エヴァンゲリオンレーシング フォトギャラリー
 以下に、エヴァンゲリオンレーシング関連の写真をフォトギャラリー形式で掲載する。画像をクリックすると、フルHD解像度(1920×1080ピクセル)などで開くので、その迫力の写真を楽しんでほしい。また、拡大写真については、Tv(シャッター速度)、Av(絞り数値)などのEXIF情報を一部残してある。撮影時の参考にしていただければ幸いだ。


(奥川浩彦/Photo:奥川浩彦、Burner Images)
2011年 8月 31日