新型「アウトランダー」の先進安全技術「e-Assist」を体験してみた e-Assistの動作を動画で紹介 |
この10月にモデルチェンジを行った三菱自動車工業のミッドサイズSUV「アウトランダー」。2代目となる新型の注目装備となるのが「e-Assist(イー・アシスト)」。これは事故の危険を検知し被害を予防・回避・軽減するためのシステムで、各自動車メーカーが近年力を入れている技術だ。
このe-Assistは、「衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM)」「レーダークルーズコントロールシステム(ACC)」「車線逸脱警報システム(LDW)」を総称したもの。
富士重工業は運転支援システム「EyeSight(アイサイト)」でステレオカメラを、ボルボは低速時追突回避ブレーキ「シティ・セーフティ」で赤外線レーザーを、完全停止まで全車速で追従可能なACCではレーダーセンサーとカメラを組み合わせて利用しているが、こちらはミリ波レーダーとカメラを併用するシステム。
具体的にはACCとFCMはフロントバンパー内に設けられた77GHzミリ波レーダーを利用して車間距離や相対速度を検知する。その情報を元にエンジンやブレーキ、トランスミッションを統合制御し加速・減速および停止を行う。ただ、どちらも車両を対象としたもので、歩行者や2輪車に対しては動作しない。
一方、LDWはフロントウインドー上部に装着されたカメラユニットを利用して車線の逸脱を監視するというもの。従来、ミリ波レーダーを使ったシステムは高価なのが弱点だったが、アウトランダーでは標準車(24G)が269万2000円なのに対し、e-Assistを標準装備する「24G Safty Package」は278万7000円。わずか9万5000円アップと普及を目指した低価格に設定されているのが特長だ。
白いステッカーが貼られているのがミリ波レーダー | カメラユニットはフロントウインドー上部に。青いのはオートワイパーとオートライト用のレインライトセンサー |
ACCの設定はステアリングのボタンで行う | FCMとLDWはインパネにON/OFFスイッチが設けられている |
このe-Assistについて、短時間ではあるが駐車場に設けられたテストコースで、e-Assistの動作を体験することができたので動画でリポートしたい。
FCMのテストでは「25km/h程度で」との指示があったが、キッチリと停止してくれた。ただ、このシステム自体が事故を防止する最後の手段として設定されているため、介入するのはギリギリになってから。ダミーが風船ではなく割としっかりしたモノということもあって、眼前に迫ってくるのを見ると「えっ、こんな勢いで止まれるの?」と一度目の走行では思わずブレーキを踏んでしまったほど。
最近ではACCと同様のシステムを採用したクルマが多くなってきた。試乗では前走車が上手い運転をしてくれることもあって、加速から停止までこちらも実にスムーズ。停止時はわずかに「カックン」ブレーキとなるものの、大きな不満はない。LDWも居眠りや一瞬のよそ見など、事故を未然に防止するシステムとして有効だろう。
一番大きなポイントは、このシステムがわずか9万5000円で提供されるということ。イマドキちょっとした修理でもこの程度の金額が掛かってしまうことを考えれば、安心を含めたお買い得感は相当に高いと言えるだろう。
停止した瞬間。障害物との隙間は30cmほど |
■FCM(Forward Collision Mitigation system)
いわゆる「ぶつからない」ためのシステムで、先行車との距離や走行速度を検知し、警報および自動的に制動を行う。走行中に衝突の危険が高まると、
1.警報音およびメーター内表示による警報およびブレーキアシスト
2.弱い自動ブレーキによりドライバーへの回避操作を促す
3.強い自動ブレーキにより衝突回避や被害軽減
の3段階でシーケンスが進行していく。目安としては先行車との相対速度が約30km/h以下の場合、自動ブレーキによる停止が可能と言う。
■ACC(Adaptive Cruise Control system)
従来のクルーズコントロールは走行中、前走車との車間を保った追従を行うシステムだが、ACCでは前走車の減速および停止まで対応し、アクセルやブレーキ操作をせず走行が可能となる。車間距離は3段階で調節が可能となっている。
メーターパネル内のディスプレイ上部に設定を表示。車間距離は3段階に調節可能だ | ACCでの走行は加速、減速、そして停止までかなりスムーズ |
100km/h弱での追従走行。車間距離は一番短い設定 | 前走車がブレーキを掛ければ自車もブレーキを掛け停止まで追従する |
■LDW(Lane Departure Warning system)
約65km/h以上で走行中、車線を逸脱しそうになると警報表示および音で注意するシステム。ウインカーを操作した場合や車線幅が狭い場合は動作が一時停止し、過剰な警告が発せられるのを防ぐようになっている。
(安田 剛)
2012年 10月 26日