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三菱自動車、新型「アウトランダーPHEV」のメカニズムについて解説
環境技術/安全技術説明会を開催

アウトランダーPHEVのカットモデル

2012年9月5日開催



 三菱自動車工業は9月5日、都内の本社で報道機関向けの「環境技術/安全技術説明会」を開催した。

 この説明会では、この秋に発売が予定され、9月27日〜10月14日に行われるパリモーターショーで初公開となる新型「アウトランダーPHEV」のプラグインハイブリッドEVシステムや、次期アウトランダーに搭載される予防安全技術「e-Assist(イーアシスト)」についての技術解説が行われた。

アウトランダーPHEVのカットモデル

中尾龍吾取締役

 それぞれの技術解説に先立ち、同社の開発統括部門長の中尾龍吾取締役から、三菱自動車における環境/安全技術開発に対する取り組みにについて解説が行われた。

 この中で中尾取締役は、地球温暖化防止のためにCO2排出量抑制は自動車メーカーの責務であり、今後は電気自動車(EV)やハイブリッドカー(HV)といった環境対応車の需要が増加。旧Global Insightの予測では、2015年に市場規模が約350万台、2020年には約560万台まで拡大することに触れ、「三菱でもすでに市場投入しているEVを活用したハイブリッド、プラグインハイブリッド技術を確立し、電動システム搭載車の選択肢を広げていく」と語った。

 また、安全技術では、先進国では従来から法規化されている衝突安全技術に加え、予防安全技術が拡大していくと予想。これを踏まえ、さまざまな方向から予防安全技術の開発を推進し、次期アウトランダーで採用する3つの技術のほか、歩行者を検知して衝突を回避するブレーキ、標識を認識するカメラなどに取り組んでいることを紹介。「先進技術の拡大によって地球環境とクルマの共生を図り、ユーザーの安全や快適性の向上でカーライフを楽しんでもらうことを責務と考えている」とコメントした。

EVは軽自動車などのコンパクトな車両で、プラグインハイブリッドはCセグメント以上の車両と、使い分けていくと言う 2014年度から2016年度までに7車種の電動システム搭載車が投入予定と発表された 新型アウトランダーに搭載される3技術のほか、さまざまな新システムを開発中

プラグインハイブリッドEVシステムの解説をする久米建夫副本部長

 プラグインハイブリッドEVシステムの技術解説は、開発本部の久米建夫副本部長が行った。

 SUVとして初めてのプラグインハイブリッドモデルとなるアウトランダーPHEVでは、キャビンのフロア下に総電圧300V、総電力量12kWhというリチウムイオン電池を使った大容量の駆動用バッテリーを設置。車両前後にそれぞれ最高出力60kWのモーターを搭載し、JC08モード燃費で55km以上のEV航続距離と、最高速120km/hを実現している。

 これに加え、直列4気筒2.0リッターの MIVECガソリンエンジンと発電量70kWのジェネレーター(発電機)をエンジンルーム内に備え、フルタンク状態での航続可能距離はJC08モードで880km以上、複合燃料消費率は61km/Lを目標としている。

アウトランダーPHEVの外観。通常モデルとはフロントグリルの意匠などが異なる アウトランダーPHEVのエンジンルーム
モーター、エンジン、ジェネレーターはトランスアクスルで一体化
大容量の駆動用バッテリーを床下に設置
リアタイヤ側にはモーターのほか、ガソリンタンク、駆動用バッテリーに給電するためのDC/DCコンバーターなども搭載される リア側のモーターとトランスアクスル

 つまり、一足先にデビューを果たしたトヨタ「プリウスPHV」とは方向性が異なり、アウトランダーPHEVは「EVから派生したクルマ」という基本スタンスを持っている。これを端的に表しているのがトランスミッションで、「i-MiEV」や日産「リーフ」といったEVと同じく、アウトランダーPHEVはトランスミッションを持っていない。その代わり、前後タイヤ間にトランスアクスルが設置され、フロント側はモーター、エンジン、ジェネレーターがトランスアクスルを介して組み合わされている。

 システム全体としては3種類の走行モードを設定。走行状況に応じて自動的に切り替えられ、通常の市街地走行から120km/hまでの高速走行では、モーターだけで走る「EV走行モード」を利用。登坂や急加速など、アクセルが大きく踏みこまれるようなシーンではエンジンがスタートし、ジェネレーターで発電した電力を使ってモーターをアシストする「シリーズ走行モード」に切り替わる。

 また、エンジンの熱効率が高い高速巡航時や追い越し加速、電池残量が少なめになってきた状態などではエンジンを使って走行する「パラレル走行モード」にシフトする。

ハイブリッド走行もシリーズ、パラレルを使い分けて高効率化 SUVながらプリウスPHVに並ぶ複合燃料消費率を実現 重量1810kgという巨体だが、合計120kWのモーターがレスポンスよく加速させると言う

 また、昨年の東日本大震災以降、にわかに注目されるようになったバッテリーの電力利用にもしっかり対応。

 車内にAC100V電源のコンセントを2カ所設定し、最大1500Wまでの出力を可能とした。フル充電状態では一般的な家庭での電力利用を約1日分まかなえるという。ガソリンタンクの燃料をすべて発電に使えば、最大で約10日間の非常用電源に変身する。

 さらに走行モードには、スイッチ操作で任意選択できる「バッテリーセーブ」、「バッテリーチャージ」の2モードも用意され、目的地に到着してからの外部給電に向けたバッテリー温存も可能になっている。

ドライブ先でも便利な電化製品を手軽に利用できる。EVとは違い、電気を使いすぎて帰れない、なんて心配とも無縁だ 積極的にエンジンを利用する2つのモードも設定 バッテリーの外部出力利用のイメージイラスト

 前後2つのモーターで構成される「ツインモーター4WD」は、同社が誇る車両運動統合制御システム「S-AWC(Super All Wheel Control)」と組み合わされ、さらにAYC(Active Yaw Control)のブレーキ制御で左右駆動力配分もコントロールすることで、旋回性能とトラクション能力、走行安定性を高め、エコモデルながらSUV性能もしっかり確保している。

 説明の最後に久米副本部長は、「プラグインハイブリッドEVは、上質な走りと電力を活用する新たな可能性をクルマに与える技術だと期待しています」とコメントし、解説を締めくくった。

ランサーエボリューションシリーズでなじみの深いS-AWC、AYCなどを採用している EVの環境性能とガソリン車の気軽さをいいとこ取りするプラグインハイブリッド
アウトランダーPHEVのカットモデル 車両の左リアにはCHAdeMO規格対応の充電コネクターを装備
リアタイヤ&ホイール フロントタイヤ&ホイール
リアゲートに貼られたエンブレム フロントフェンダーに貼られたエンブレム
カットモデルの車内 カットモデルのシート
アウトランダーPHEVの利用イメージイラスト

 予防安全技術の「e-Assist」は、電子制御技術によって安全運転を支援する商品で、技術の総称する三菱のコミュニケーションワード。2代目アウトランダーにはフロントグリル内の電波レーダー、フロントガラス内側のカメラの2つがセットで設置され、全速度域で利用できる。

 e-Assistは、高速巡航から渋滞でのノロノロ運転まで先行車に追従走行してくれる「レーダークルーズコントロール(ACC)」、30km/h以下なら衝突回避も可能で、逆行や霧など視界不良時も作動してドライバーをサポートする「衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM)」、カメラがウインカーなどを使わない状況で車線からはみ出そうになると、警告音を鳴らして注意を促す「車線逸脱警報システム(LDW)」の3種類で構成される。

e-Assistにつてい解説する電子技術部の原 徹部長 e-Assistはエレクトロニクスのeに加えて、日本語の「よいアシスト」という気持ちを含めたものとのこと
新型アウトランダーに設定される電波レーダーとLDW用カメラ
ACCは電波レーダーを使うことで200m先の先行車も感知。渋滞中のストップ&ゴーから高速巡航まで対応する 眠気や脇見運転などでの車線逸脱を警報音で知らせるLDW
30km/hh以下では停車して衝突を回避するFCM。車間距離が詰まると初期では音と画面表示でドライバーに警告し、距離が近づくとブレーキが自動的に作動する

(佐久間秀)
2012年 9月 6日