日産自動車とNISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル、以下ニスモ)は12月1日、富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)でファン感謝イベント「NISMO FESTIVAL at FUJI SPEEDWAY 2013」を開催した。
ニスモフェスティバルは年末恒例のイベントとして1997年から開催されているが、2012年は東京都・大森から横浜市鶴見区に社屋の移転が行われたことに伴ってスキップされたため、2年ぶりの開催となった。当日は「コース」「メインスタンド裏/ステージ」「パドック/ピット」の3エリアを使い、さまざまなイベントが分刻みのスケジュールで実施された。
ステージでは開催に先立ち、直前の11月27日に逝去した初代ニスモ社長 難波靖治氏に哀悼の意を込めて1分間の黙祷を実施。続いて行われたオープニングセレモニーには、柿元邦彦総監督をはじめ日産系のドライバーやチーム監督が全員集合した。
マイクを握った柿本総監督は「2年ぶりにニスモフェスティバルが戻って参りました。2年のあいだに富士山は世界遺産に格上げになりましたが、我々のSUPER GTの結果は昨年と一昨年はチャンピオンを取りましたが、今年はチャンピオンどころか12号車の1勝だけというさんざんな結果でした。我々も悔しい思いをしておりますが、ファンの方々はもっと悔しいだろうと思っております。来年はこの悔しさを晴らすべく、気合いを入れて開発を進めています。今のところ、新型の14年型GT-Rは順調な開発状況にあります。頑張って来年は必ずチャンピオンを奪回したいと決意しております」と今年を振り返りつつ、来年に向けた意気込みを語った。
続いてドライバー代表としてマイクを握った柳田真孝選手は「今シーズンの応援ありがとうございました。残念な結果に終わってしまいましたが、来シーズンに向けて着々と準備を進めています。今日はチーム関係者全員でみなさんが楽しんでいただけるよう頑張りたいです」と挨拶してオープニングセレモニーを締めくくった。
オープニングセレモニーには監督や選手など40人あまりが登場 「来年はチャンピオンを奪回したい」と語る柿本総監督 柳田選手はスピーチで「みなさんをおもてなししたい」と言うところを「もてあます」と言い間違えてしまい、星野一義監督から突っ込まれる場面も コースイベント
レースファン必見といえるコースイベント。2013年は日産自動車の創立80周年ということもあり、ポルシェを破って1966年の第3回日本グランプリで優勝を果たした「R380」を始めとしたヒストリックカーによるデモランからプログラムがスタート。その後、「スカイライン(KPGC10)」「サニー(B110)」「ブルーバード(B310)」による「エキシビジョンレース」、SUPER GTやスーパー耐久に参戦する車両が速さを競う「NISMO GP 2013」など、多くのレースマシンによる競演が披露された。
コースイベントのラストを飾ったNISMO GP 2013は、さまざまなレースカテゴリーの車両が混走。周回ペースが異なるためクラス毎の集団となったが、走行周回数がわずか10周ということに加えてタイヤ交換&ドライバーチェンジも義務づけられていたため、混沌としたレース展開になった。
2014年のGT500参戦予定となっているGT-Rのプロトタイプ車両も走行した ポルシェを破って日本GP優勝を果たしたR380とJSPC(全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権)のシリーズタイトルを目指して開発されたR92CP サニークーペ(KPB110、1973年)と今年のGT500クラスの車両であるREITO MOLA GT-R 1969年の日本GPで優勝したR382を追い抜いていくスーパー耐久参戦のZ34 3.5リッター自然吸気エンジンを積むNP35。レース活動の中断により1レースに出場したのみで現役を終えた悲運のモデル 1998年のル・マン24時間レースに出場し、総合3位を獲得したR390 GT1 1992年のJSPCでダブルタイトルを獲得する原動力となったR92CP 1992年のデイトナ24時間レースで日本人初、日本車初の総合優勝を果たしたR91CP 1999年のル・マン24時間レースに挑戦したR391 1968年日本GPのために開発されたR381。左右独立して動作する大型リアウイングが特長 大森ファクトリーのテストカーとなっている240Z。エンジンはクロスフロー仕様のL28型を搭載 2013年のSUPER GT GT500に参戦したREITO MOLA GT-R 同じく2013年のSUPER GT GT500に参戦したMOTUL AUTECH GT-RとカルソニックIMPUL GT-R スーパーシルエットレースに参戦したトミカスカイライン 2003年の全日本GT選手権にニスモワークスとして参戦したMOTUL PITWORK GT-R 1999年の全日本GT選手権にニスモワークスとして参戦したペンズオイル・ニスモ GT-R 1990年の全日本GT選手権に参戦したカルソニックスカイライン Gr-A仕様のSTPタイサンGT-R(1993)。オートポリスで開催された第2戦で優勝している SUPER GT GT300クラスに参戦したIWASAKI OGT Racing GT-R(2013) SUPER GT GT300クラスに参戦したNISMO ATHLETE GT-R GT3(2013) FIA GT1世界選手権に参戦したR35GT-R GT1 2013年のスーパー耐久に参戦したGT NET ADVAN NISSAN GT-R 2013年のスーパー耐久に参戦したasset テクノ Z34 2013年のスーパー耐久に参戦した岡部自動車DIXCELチームテツヤZ34 2013年のスーパー耐久に参戦したB-MAX・Z33 2013年のスーパー耐久に参戦した85 TERANISHI 34Z ヒストリックカーデモランの開催中には、観光バスを使った「サーキットサファリ」やレースマシンの助手席に来場者が座ってコースを走る「レーシングカー同乗走行」も同時に行われた ヒストリックカーエキシビションレースのペースカーを務めたスーパーシルエット仕様のニチラインパルシルビアターボ エキシビションレースではハコスカやサニー、ブルーバードがエキシビションとは思えないほどの白熱したレース展開を繰り広げた ちょっと写真を加工すると1970年代のレースシーンを彷彿とさせるカットに 「TEAM ORANGE」によるドリフトショー。単純にドリフト走行するだけではなく、シンクロナイズドスイミングのような息の合った走りを披露して観客を沸かせた グリッドウォークも実施され、コース上のレース車両やドライバーを間近で見ることができた 「NISMO GP 2013」でSUPER GTのGT500勢の集団を引っ張った23号車 メインスタンド&ステージ
メインスタンド裏に設置されたステージでは、ドライバーや監督によるトークショーなどが実施された。
GT500ドライバートークショーに参加したのは、MOLAの本山哲選手と関口雄飛選手、TEAM IMPULの松田次生選手とジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手、ニスモのロニー・クインタレッリ選手と柳田真孝選手、KONDO RACINGのミハエル・クルム選手と安田裕信選手の合計8人。
GT500ドライバートークショーに参加した選手たち 最年少となる関口選手は「デビューシーズンだったが思ったより結果が出せなくて悔しい」と語ると、一方で本山選手は「去年、クルムと組んでいたときは最年長2人で“おじさんコンビ”と呼ばれていたのが嫌で、今年は一番若い関口選手に変えてもらった」と裏話(?)を披露。「(関口選手とは)20歳ぐらい違うのでいろいろ噛み合わなかった。生活環境とか食べ物とか」と笑いを誘うと、関口選手も「各サーキットの美味しいご飯を知っているので勉強になりました」と返した。
23号車のロニー選手は「今シーズンを振り返ってどうでしたか?」という質問に「去年はニスモフェスティバルがなかったので2011年シーズンの結果でもいい?」とボケつつ「ラウンド4(鈴鹿)まではよかった。そのあとは全然ダメ」と語ると、パートナーの柳田選手も「ラウンド4まではまぁまぁよくて、ラウンド6はキツかった」と言葉少なめ。各ドライバーとも今シーズンの話題は微妙に避ける雰囲気だったが、チームを超えて仲のよさを披露するシーンもあり、集まった観客から終始笑いが絶えない楽しいセッションとなった。
TEAM IMPULの松田次生選手(左)とジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手(右) ニスモの柳田真孝選手(左)とロニー・クインタレッリ選手(右) KONDO RACINGの安田裕信選手(左)とミハエル・クルム選手(右) ドライバートークショーのあとにはSUPER GTの監督によるトークセッションも実施。このセッションには柿元邦彦総監督のほか、ニスモの鈴木豊監督、MOLAの大駅俊臣監督、TEAM IMPULの星野一義監督、KONDO RACINGの近藤真彦監督に加え、スペシャルゲストとしてARTAの鈴木亜久里監督も参加した。最初にコメントを求められた柿本総監督は「今年はみなさんの期待に応えられなくて申し訳ありません。3連覇を狙ったけれどまったく結果が出なかった。原因は分かっているのでそこに対策して頑張りたい」と語った。その後は話題が脱線していき、服装について聞かれた鈴木亜久里監督は「今着ているのは星野監督のレーシングスーツで、足が足りないけどお腹まわりがピッタリ同じなのがショック」と口にして会場の笑いを誘った。次いで近藤監督が「なんで後ろに亜久里さんがいるのかと思ったら、スターティンググリッドではいつも横にいたなと。もうグリッド上では会いたくない」と話すと、鈴木亜久里監督は「来年はもう友達止めるよ。でも、後ろを見るとGT300みたいな」と返し、笑いを誘いつつちょっと自虐的な会話に。
今年のレース内容について尋ねられた各監督は「みんな一生懸命やっているんだけど結果が出なかった。来年はよいことあるでしょ(星野監督)」「本当にだめでしたね。噛み合いませんでした。途中まではよかったけど、後半沈んでしまった。でも、来年は大丈夫です(大駅監督)」「(開発や設計の担当もしているので)こういう場に来ると懺悔の場になってしまう。来年に向けて今仕込んでいるので、結果が出るよう頑張ります(鈴木監督)」とそれぞれに感想を語った。
スケジュールの都合で星野監督が途中退席し、来年について聞かれた各監督は「レース中は日産と戦うこともあるけれど、来年もモータースポーツを盛り上げられるように頑張ります(鈴木亜久里監督)」「シリーズ前半は厳しい戦いだったけれど、後半は来年が見えてくるレースができた。来年はマシンが新しくなってみんないっしょにスタートすることになるので、グリッドで亜久里さんに会わない順位からスタートしてゴールしたい(近藤監督)」「今年の1号車はよくない成績で、戦うのは難しいと感じた1年だった。来年は車両もレギュレーションもリセットされるので今年以上にはチャンスがあると思っています。来年も頑張りますのでよろしくお願いします(大駅監督)」「今年はふがいないシーズンで申し訳なかった。来年に向けて準備は始まっている。必ずよいクルマを作って星野さん、近藤さん、大駅さんにありがとうと言われるよう、頑張ってクルマを開発するのでこれからもよろしくお願いします(鈴木監督)」「今年はさんざんな結果だったが、谷もあれば山もある。来年は山のトップに上りつめられるよう頑張ります。期待して下さい(柿本総監督)」と意気込みを語った。
息の合ったトークを披露する近藤真彦監督と鈴木亜久里監督 前日はホンダのイベントに参加していたこともあり「節操ないね」と言われたと笑う鈴木亜久里監督 トークショー後にはチャリティーオークションも行われた 「World of NISMO CARS」のブースには、ニュルブルクリンクで「量産車最速タイム」を記録したタイムアタック車両とGT-R NISMOなどが展示された ニスモ仕様の車両に試乗できるコーナーも設置。一番人気はやっぱりGT-R グッズ売り場も人気のコーナー。オープン直後に完売するアイテムが続出した バンパーやボンネット、ホイールなど、実際にレースで使われたパーツを販売するガレージセールコーナーも こちらは「せっかく作ったのに使われなかった」という超レアなレース車両の新品フェンダー ブリヂストンブースではSUPER GTで使われるタイヤなどを展示 BNR32 V-specをベースとしたClubman Race Spec車両 ピット&パドック
パドックには各走行セッションに出場するレース車両を展示。貴重な車両やピット作業を間近で見学できたほか、ピットレーンの一部を開放して通常のレース中には立ち入ることのできないピットレーンの迫力を体験できる「エキサイティングコーナー」が設けられていた。
MOTUL PITWORK GT-R(2003年JGTC) R33型をベースとした1998年モデル(左)とR34型をベースとした1999年モデル(右)という、JGTCに参戦した仕様の異なる2台のペンズオイル・ニスモ GT-R NISMO ATHLETE GT-R GT3(2013年SUPER GT) XANAVI NISMO Z(2004年JGTC) asset テクノ Z34 34号車(2013年スーパー耐久ST3) asset テクノ Z34 35号車(2013年スーパー耐久ST3) B-MAX・Z33(2013年スーパー耐久ST3) 85 TERANISHI 34Z(2013年スーパー耐久ST3) 岡部自動車メーカーズZ34(2013年スーパー耐久ST3) 岡部自動車DIXCELチームテツヤZ34(2013年スーパー耐久ST3) アップスタートMOLA Z(2010年SUPER GT) カルソニックIMPUL GT-R(2013年SUPER GT)。こうした整備中の姿も公開されていた D'station ADVAN GT-R(2013年SUPER GT) MOTUL AUTECH GT-R(2013年SUPER GT) 2014年SUPER GT GT500仕様のNISSAN GT-R NISMO GT500 NISSAN R391(1999年ル・マン24時間レース) NISSAN R390 GT1(1998年ル・マン24時間レース) ニッサンR91CP(1992年デイトナ24時間レース) カルソニックニッサン R92CP(1992年JSPC) YHP ニッサン R92CP(1992年JSPC) トミカスカイラインとニチラインパルシルビアターボ(1983年スーパーシルエット) プリンス R380(A-I型)(1966年日本グランプリ) カルソニックスカイライン(1990年JTC)とSTPタイサンGT-R(1993年) ゼクセル スカイライン GT-R(1991年スパ24時間レース) スカイライン2000 GT-R(1969年JAF GP)。1969年のJAFグランプリで優勝した車両のレプリカ スカイライン2000 GT-R(1972年)。この車両は東京モーターショー用の展示車両で実際のレースに参加することはなかった サニー1400クーペKPB110(1973年日本GP TS-aレース) ピットビル3階展示車両および体験コーナー
ピットビルの3階には、コクピットライド可能な展示車両や体験コーナーが設けられており、多くのファンで賑わっていた。
XANAVI NISMO Z(2007年SUPER GT) XANAVI NISMO GT-R(2003年JGTC) フェアレディ 240Z。1971年に開催された第19回サファリラリーで総合優勝を果たしたマシン サニー RZ-1 TWINCAM NISMO(1986年) ハイパーミニ(2000年)。シティコミューターとして開発された小型EV 2014年のル・マン24時間レースに参戦予定の「ZEOD RC」。モーターと小型ターボエンジンを搭載し、任意で駆動切り替えが可能な構造を採用する XANAVI NISMO GT-R(2008年SUPER GT)はピット作業時のジャッキアップを運転席で体験できた 2006年のSUPER GT GT500参戦のMOTUL AUTECH Zにラッピングを施した「マジで速いんだーZ号」ではコクピットライドを実施 パドックエリアには数多くのメーカーやショップがブースを展開。ミシュランマンが出迎えるミシュランブースではタイヤなどを展示した ヨコハマのブースでは市販車向けのタイヤやホイールをアピール レースで使用したホイールやローターなどの使用済みパーツを販売するブースも 7代目スカイラインを中心に取り扱うR31ハウスの展示車両 KONDO RACINGのブース前にはゆるキャラが登場 フィナーレは現役車両によるパレード
2013年のニスモフェスティバルを締めくくるフィナーレでは、現役車両全車とGT-R NISMO、そして2014年仕様のGT-R SUPER GT参戦車両によるパレードランを実施。全車がホームストレート上に整列したあと、全日本F3選手権のF3-Nクラスでチャンピオンになった高星明誠選手と長谷見昌弘監督、そしてブランパン耐久シリーズでチャンピオンになったルーカス・オルドネス選手とチームプリンシパルのボブ・ネビル氏が挨拶を行い、それぞれに花束が贈呈された。
最後にマイクを握ったニスモの宮谷正一社長は「来年はニスモが30周年を迎える年。2月のGT-R NISMOの発売を皮切りにいろいろな活動をしていきます。レースについては、SUPER GTはもちろん優勝。GT3、GT300、ロシア、アメリカなど、全力で駆け抜けていく展開になります。来年のニスモフェスティバルは、30周年をみんなで笑顔で祝いたいと思います」と締めくくった。
イベントの最後には、監督やドライバーなどがスタンドに向けてグッズなどの記念品を投げ込み、最後まで会場に残った観客にプレゼントされた。
歴代GT-Rがパレードする「Advent of NISSAN GT-R NISMO」でグランドスタンド前を走行するGT-Rのニュルタイムアタック車両 タイムアタック車両はクルム選手がドライブして助手席にニスモの宮谷社長が、市販車両は田中哲也選手がドライブして助手席に日産自動車の加藤博義氏が座っていた フィナーレでの走行に向け、スタッフに押されてコースインする2014年仕様のGT-R SUPER GT参戦車両 グランドスタンド前を走行する2014年仕様GT-R 夕暮れを迎えつつある時間になってもスタンドには多くのファンが残っていた 全日本F3選手権のF3-Nクラスで年間優勝を果たした高星明誠選手 長谷見監督はF3-Nクラスの「NDDP RACING」のチーム監督も務めている ルーカス・オルドネス選手とチームプリンシパルのボブ・ネビル氏 「来年も全力で駆け抜ける」とファンの前でアピールする宮谷社長 ニュルアタック車の車内を見ながら前で談笑する選手と監督たち