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メルセデス・ベンツ、自動運転実験に関する説明会

自動駐車は2015年ごろ、高速道路の自動運転は2020年ごろを予測

自動運転について講演する、ラルフ・ヘアトヴィッヒ氏
2014年4月14日開催

 メルセデス・ベンツ日本は4月14日、来日したダイムラーグループリサーチ 先進技術開発部門 ドライバー支援/シャシーシステム統括 ラルフ・ヘアトヴィッヒ氏による自動運転実験に関する説明会を開催した。

 説明会の冒頭、メルセデス・ベンツ日本 代表取締役副社長 マーク・ボテル氏が登壇。メルセデス・ベンツが2013年夏に行った「ベルタ・ベンツ・ルート」での長距離自動運転実証テストを軽く紹介したほか、自動運転技術を取り込んだ「レーダーセーフティパッケージ」がすでに多くの車種に搭載していることに触れ、自動運転がそれほど遠くない未来に起こりえるものであるとした。

マーク・ボテル メルセデス・ベンツ日本 代表取締役副社長
「レーダーセーフティパッケージ」には自動運転技術が活かされている
多くの車種に設定されている

 続いて登壇したラルフ・ヘアトヴィッヒ氏は、自動運転「インテリジェントドライブ」に関するプロジェクトの詳細を説明。メルセデスの自動運転車は、高価なセンサーを用いず、また通信を前提とせずに走行できるという。ラルフ氏は、125年前にカール・ベンツの妻ベルタ・ベンツが世界で初めて自動車による長距離走行を成功させた道のり「ベルタ・ベンツルート」を紹介。メルセデスの自動運転車も、約100kmのベルタ・ベンツルートを2013年8月に完走し、そこで得られた知見などについて語った。

 従来、自動運転に関する技術は「コストが高く未成熟」「違法である」などと考えられていたが、その考えは古いという。現在は、顧客の考え方に変化があり、楽しくない運転である「渋滞」を自動運転に任せる、難しい運転である「駐車」を自動運転に任せるなどのほか、若い世代ではスマートフォンを操作したいので自動運転に任せるなどの意見があるとする。

ダイムラーグループリサーチ 先進技術開発部門 ドライバー支援/シャシーシステム統括 ラルフ・ヘアトヴィッヒ氏
自動運転プロジェクトの目標
既成概念
ユーザーの考え方に変化
メルセデス・ベンツの自動運転「インテリジェントドライブ」

 メルセデス・ベンツが目指す自動運転は、事故を防止する「安全性」と、ドライバーを支援する「快適性」を実現するもので、ブランドにとってもカギとなる技術であるという。すでに新型Sクラス、Eクラスにおいては、渋滞時低速で自動運転するほか、前後方向・横方向制御(カーブでの車線維持)などを行う「ストップ&ゴー・パイロット」が導入され、今後日本でも発売が予定されている新型Cクラスにも搭載されるなど、自動運転の技術の一部は市販車にも入り始めている。

 ラルフ氏は、自動運転を法的な側面からレベル1~4に分類し、複数の自動コントロールがあるレベル2までは運転責任はドライバーに存在し現行の道路交通法で対応可能であるとした。ほとんどの時間をクルマがコントロールするレベル3からは、誰が運転者なのかなど道路交通法にかかわる問題が発生。一部米国では法制化が進んでいるものの、解決すべき点があるという。また、自動運転車には、実際に事故が起きた際に、“誰がどのように運転していたか”を記録するイベントデータレコーダなどが必要であると語った。

新型Sクラス、Eクラスにおける自動運転
法的問題
自動運転の段階を説明
自動運転の複雑性
自動運転車に搭載したセンサー

 ベルタ・ベンツルートを走行して得られた知見としては、センサーやアクチュエーターについては現状のものでも十分な性能を持つことを確認。しかしながら、さらなる性能向上が必要であるという。

 また、社会的相互作用については改善の余地があるという。この社会的相互作用とは、たとえば交差点を右折時にクルマが横断歩道を渡る歩行者を認識し一時停止、しかしながら歩行者は手を振ってクルマに先に行くように促した場合などを指す。現段階では、クルマはプログラムに従い法律を守って一時停止するしかなく、今後の改善事項であるとした。

 とくにわるかったのは、位置決定やマッピング、交通信号について。自動運転を行うためには、車線の位置や信号の位置、横断歩道、停止線などの情報を正確に持つ必要があるという。その辺りに、足りないところがあったと語った。今後、自動運転車が普及していくにあたっては、「地図の作り込みが1つのポイントになるだろう」といい、自動運転車を、欧州、米国、日本の順で導入していく。中国も大きな市場だが、マッピング調査を行うには政府の許可が必要で、この点から導入は難しいとの見方を示した。

ベルタ・ベンツルート
都市間走行
市街地
駐車車両を避ける
動く障害物を回避
信号で自動停止

 今後の導入スケジュールについてだが、自車速度が低く周囲の交通状況が単純な渋滞時の自動運転に関しては「ストップ&ゴー・パイロット」などで実現段階にあるとし、2015年ごろに駐車、2020年ごろに高速道路、そしてベルタ・ベンツルートのような複雑性の高い自動運転に関しては2025年ごろに実現できるだろうとの予測を示した。

ベルタ・ベンツルート走行で得られた知見
自動運転の複雑性
予想されるロードマップ

 日本では、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業らが自動運転のデモなどを公開している。また、IT企業のGoogleも自動運転車を研究中だ。ラルフ氏は、メルセデス・ベンツの強みを、自社で自動運転時の画像解析を行い、自社でアルゴリズムを作成していることとし、それらを一般の民生レベルのデバイスで実現しているのもポイントであるとする。自動運転の実現方法にはさまざまなものがあるが、メルセデス・ベンツとしては、通信状況に依存する車車間通信・路車間通信に頼ることなく、クルマに高精度なイメージマップを持つ形での自律自動運転を目指しているように思えた。イメージマップによる位置決めを完全にした上で、各種センサーによる環境把握を行い、動きを修正していくのだろう。自動運転は、クルマの1つの未来であるのは間違いなく、今後各社による熾烈な開発競争が続けられていく。

(編集部:谷川 潔)