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フォルクスワーゲン、5ナンバーサイズEV「e-up!」日本導入、366万9000円

ゴルフのEV仕様「e-Golf」は2015年年央に発売予定

フォルクスワーゲン グループ ジャパンの庄司茂代表取締役社長と新型EV「e-up!」(写真右)、「e-Golf」(写真左)
2014年10月14日発表

e-up!:366万9000円

e-Golf:価格未定

 フォルクスワーゲン グループ ジャパンは10月14日、新型電気自動車(EV)「e-up!」「e-Golf」を日本に導入すると発表した。e-up!は2015年2月1日から受注を開始し、価格は366万9000円。e-Golfは2015年年央発売の予定となっており、価格は未定。

 14日に東京 秋葉原のベルサール秋葉原で発表会を行い、同社の代表取締役社長である庄司茂氏、マーケティング本部長の正本嘉宏氏が両モデルの概要を紹介した。

モデル原動機駆動方式価格
e-up!EAB(3相交流モーター)2WD(FF)3,669,000円
e-GolfEAG(3相交流モーター)未定
e-up!、e-Golfの発表会は東京 秋葉原のベルサール秋葉原で行われ、同時に10分程度のミニ試乗会も行われた
ヒューマンビートボクサーが会場を盛り上げた

唯一の5ナンバーサイズEV「e-up!」

e-up!は2015年2月1日に受注開始、e-Golfは2015年年央発売の予定

 同社ラインアップのエントリーモデル「up!」をベースとしたEV「e-up!」は、国内EV市場で唯一の5ナンバーサイズという4ドアハッチバック車。ボディーサイズはup!(4ドア)とほぼ同寸の3545×1650×1520mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2420mmで、車高のみ25mm高くなっている。

 一方、重量はフロア下にレイアウトされる230kgのリチウムイオン電池などの影響により、up!(4ドア)の920kgからトータル240kg増の1160kgとした。その204個のセルで構成される総電力量18.7kWhのリチウムイオン電池は82PS/210Nmを発生する小型モーターに最大374Vの電圧を供給し、0-100km/h加速12.4秒、最高速130km/hというスペックを持つ。

 充電に関しては200Vの普通充電ポート(ボンネット内)に加え、日本の急速充電規格「CHAdeMO(チャデモ)」用の充電ポート(右リアフェンダー)も標準装備。満充電時の走行可能距離は185kmと発表されている。

 エクステリアでは、ガソリン車と異なる専用デザインのフロント&リアバンパー、サイドスカート、15インチアルミホイール(タイヤサイズ:165/65 R15)を装着。フロントバンパーの両サイドには、EVであることを強調するアルファベットの「C」字型形状となるLEDランプを装備する。

国内EV市場で唯一の5ナンバーサイズとなる4ドアハッチバック車e-up!のボディーサイズは、3545×1650×1520mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2420mm。ガソリン車と異なる専用デザインのフロント&リアバンパー、サイドスカート、15インチアルミホイールを装着
ボンネットフード内に普通充電用のポート(中央バルクヘッド側)を用意。通常のエンジンヘッドカバーにあたる個所にうまく充電コードをはわせることで、ボンネットフードを閉めた状態でも充電を行うことができる
日本の急速充電規格「CHAdeMO」用の充電ポートは右リアフェンダーに用意
こちらはe-Golf。ボディーサイズは4265×1800×1480mm、ホイールベースは2635mm。空力性能が高そうな16インチアルミホイール(タイヤサイズ:205/55 R16)を装着する

 またインテリアにおいては、フォルクスワーゲンEVのイメージカラーとなるブルーのアクセントをシート、シフトブーツ、ステアリングなどにあしらった。計器類もガソリン車と異なり、従来メーターまわりの左側に配置されていたタコメーターに代わり、バッテリーの充放電状況を示すアナログメーターに変更。右側に配置される燃料メーターもバッテリーの残量計にスイッチしている。

 そのほか、本国仕様のe-up!では走行中のエネルギーフローやバッテリー残量、カーナビ画面の表示などが可能なオンダッシュタイプのガーミン製モニターを装備していたが、日本仕様ではセンターコンソール下部にEV専用ディスプレイ「touch+more(タッチアンドモア)」を装備。カーナビはパイオニア製のオンダッシュタイプを用意する。

e-up!のインテリア。フォルクスワーゲンEVのイメージカラーとなるブルーのアクセントをシート、シフトブーツ、ステアリングなどにあしらう
パイオニア製のオンダッシュカーナビを用意
メーターまわり。スピードメーターを中心とし、バッテリーの充放電状況を示すメーターを左側に、バッテリーの残量計を左側にレイアウト
ラゲッジスペースはガソリン車とほぼ同等を確保
e-up!の乗車定員は4名だ
センターコンソール下部にEV専用ディスプレイ「touch+more(タッチアンドモア)」を装備する

“いつものフォルクスワーゲンらしさ”が大切

フォルクスワーゲン グループ ジャパン代表取締役社長の庄司茂氏

 発表会の冒頭に登壇した庄司社長は、フォルクスワーゲンがEVへの取り組みを1970年代から開始するとともに、1989年に「ゴルフ2 CityStromer」、1993年に「ゴルフ3 CityStromer」というEVをわずかの台数ながらドイツ本国で販売しており、同社がEVに古くから携わってきたことを説明するとともに、「EVは今の時代が求めるモビリティ」であるとしてe-up!、e-Golfという2モデルを日本に導入することを紹介。

 そして「フォルクスワーゲンはEVを未来の特別なクルマとして位置付けていない。お客様がクルマを選ぶ際、ガソリンかディーゼルか、あるいはEVという選択肢の1つとして提供している」(庄司社長)ため、EVを強調するような特別な内外装デザインを与えなかったという。そんなe-up!、e-Golfでもっとも大事にしたことは、「なによりフォルクスワーゲン車らしいこと。基本的な操作系はEVだからといって特別なものではなく、バッテリーを搭載しているからといって居住空間やトランク容量が犠牲になってはならない。クルマの使い勝手において“EVだから”という妥協は許されない」「どんなスキルのドライバーも、違和感なく安全に楽しく運転することができるという、“いつものフォルクスワーゲンらしさ”はフォルクスワーゲンのEVにとってとても大切なこと」と解説を行った。

 加えてEVの魅力については、「EVにはガソリン車にはない別次元の静粛性や特別な加速がある。以前にe-up!で一晩過ごしたあとにガソリンのup!に乗ることがあったが、『こんなにうるさいクルマに乗っていたのか』というのが正直な感想だった。例えいつもと同じ道でも、e-up!やe-Golfでは聞こえる音や見える世界が新しく感じる。さらに家で充電したり、ガソリンスタンドに行かないなどという新しいライフスタイルが始まる」と述べるとともに、e-up!、e-Golfでは「“e-drive for everyone”-電気自動車を特別なものにしない-」というコンセプトを掲げ、「お客様とクルマとの間に発見や気づきを与え、今までとはちょっと違うカーライフを体験できるモビリティと考えている」と、その魅力について語っている。

フォルクスワーゲンのEVへの取り組みは1970年代に始まった
フォルクスワーゲン グループの会長Drヴィンター・コルン氏は、2013年のジュネーブショーで「2018年までに環境適合性において世界をリードする自動車メーカーになる」と発表
フォルクスワーゲン グループの環境戦略ビジョン

新しいインテリジェントでスマートなドライビングを提供

フォルクスワーゲン グループ ジャパン マーケティング本部長の正本嘉宏氏

 正本氏からは日本のEVマーケットの現状や同社EVの特徴などについて語られた。

 現在日本政府は、PHVを含むEV市場のシェア率を2020年までに20%にするとの目標を掲げているが、「現時点では3万台/年規模であり、まだハイブリッド車のような普及段階にあるとは決して言いづらい状況ではあるが、折からのガソリンの高騰、そして国や地方自治体の積極的な補助政策、さらにはメーカー各社の積極的な商品展開もあり、ここ数年でこの(3万台/年規模という)環境は大きく変わってくるものと予測している」と語るとともに、「モノ・サービスを購入するときは、環境への影響を考えてから選択する」という人が2008年調査時の23.8%から41.2%(2013年調査時)へと倍増するなど、環境に配慮する人が増えていることを紹介。

 このような状況下で発表されたe-up!、e-Golfでは、既存モデルを電動化したこと、EV専用のデザインを持っていないユニバーサルデザインであること、新感覚のドライビングプレジャーを備えること、CHAdeMO規格に対応していることが特徴点として挙げられたほか、「EVであることを特別視していないフォルクスワーゲンにとって、up!、ゴルフというフォルクスワーゲンを代表する渾身のプロダクトデザインをあえて踏襲することで、真のユニバーサルデザインを一人でも多くの方にご提供したいと考えた」と、内外装デザインをあえて大きく変更しなかった理由について語った。

 またe-up!、e-Golfともに「Normal」「ECO」「ECO+」という3つの走行モードを備え、モードによってアクセルレスポンス、エアコン、最高出力/最大トルク、最高速を変更することで航続距離の調整が行える「ドライビングプロファイル機能」を備えること、そして「D1」「D2」「D3」「B」の順に強くなる、シフトレバーで操作可能な「回生ブレーキ機能」を持つことで、「EVならではの静かでダイナミックな走りに加え、お客様にエネルギーマネジメントという新しいインテリジェントでスマートなドライビングをしていただくことが可能」と、両車の特徴点などが紹介された。

ドライビングプロファイル機能

モードNormalECOECO+
モデルe-up!e-Golfe-up!e-Golfe-up!e-Golf
アクセルレスポンスノーマルやや緩やかに穏やかに
エアコンディショナーノーマルパワー抑制機能停止
最高出力(kW)608550704055
最大トルク(Nm)210270167220133175
最高速(km/h)1301401201159590
現在日本政府はPHVを含むEV市場のシェア率を、2020年までに20%にするとの目標を掲げている
環境に配慮する人が2008年よりも増え、その意識は「特別なこと」から「日常のあたりまえ」に変化しつつある
EV/PHVの購入意識は、年を追うごとにガソリン車に近づきつつある
e-up!、e-Golfの特徴点
e-up!、e-Golfは既存モデルの高い完成度を受け継ぐEV
両車とも航続距離の調整が行える「ドライビングプロファイル機能」を備える
4段階調整が可能な回生ブレーキシステム
e-up!、e-GolfそれぞれにEV専用ディスプレイを装備
スマートフォンを活用したEVサポートアプリを導入
e-up!、e-Golfともに200Vの普通充電ポートとともに、CHAdeMO用の充電ポートを標準装備する
ボディー構造とバッテリーレイアウトなどについて。バッテリーの保証は8年/16万km
e-up!の価格は366万9000円
フォルクスワーゲンが想定するターゲット層のEVに対する価値観
e-up!、e-Golfでは「“e-drive for everyone”-電気自動車を特別なものにしない-」というコンセプトを掲げる
e-Golfについて

e-up!/e-Golf主要諸元

e-up!e-Golf
乗車定員4名5名
駆動方式2WD(FF)
全長×全幅×全高3545×1650×1520mm4265×1800×1480mm
ホイールベース2420mm2635mm
トレッド(前/後)1430/1425mm1545/1515mm
車両重量1160kg1530kg
駆動用バッテリーリチウムイオン電池
駆動用バッテリー総電圧374V323V
駆動用バッテリー総電力量18.7kWh24.2kWh
モーター型式EAB(3相交流モーターEAG(3相交流モーター)
モーター最高出力60kW(82PS)/3000-12000rpm85kW(116PS)/3500-7000rpm
モーター最大トルク210Nm(21.4kgm)/0-2500rpm270Nm(25.5kgm)/0-2500rpm
トランスミッション1段固定式
一充電走行距離(JC08モード)185km215km
タイヤ(前/後)165/65 R15205/55 R16

(編集部:小林 隆)