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最終周にエンジントラブル、ガス欠とドラマが待ってたスーパーフォーミュラ開幕戦 鈴鹿

優勝は2011年王者のアンドレ・ロッテラー、小林可夢偉は9位

2015年4月19日決勝開催

スーパーフォーミュラ開幕戦を制したアンドレ・ロッテラー(2号車 PETRONAS TOM'S SF14)

 日本最高峰のレースシリーズ「全日本選手権スーパーフォーミュラ」は、4月18日~19日に行われた「SUZUKA 2&4 RACE」で開幕戦を迎えた。4月19日の15時に始まった決勝レースでは、予選3番手からスタートしたアンドレ・ロッテラー(2号車 PETRONAS TOM'S SF14)が抜群のスタートで、予選1-2位を占めたホンダ勢をオーバーテイクし、そのままピットイン直後を除きトップを独走して優勝した。2位はチームメイトの中嶋一貴(1号車 PETRONAS TOM'S SF14)、3位は予選2位からスタートしたナレイン・カーティケヤン(41号車 DOCOMO DANDELION M41Y SF14)。

 レースは最終周まで3位を走り2位の中嶋を激しく追い上げていた山本尚貴(16号車 TEAM 無限 SF14)が、最終ラップのデグナーコーナー手前でエンジンブローしてリタイヤ。さらに5位を走っていたジェームス・ロシター(3号車 FUJI×D'station KONDO SF14)がガス欠とみられる症状で最終コーナーで止まるなど波乱のレースとなり、日本での久々のレースとなった小林可夢偉(8号車 Team KYGNUS SUNOCO SF14)は、予選の10位から1つ順位を上げて9位でゴールした。

レース終盤は、押す必要のないオーバーテイクボタンの効果を試す余裕まで見せたロッテラー

 今回のレースの展開を決定づけたのは、スタートだった。今回のレースで、ホンダ勢の山本、カーティケヤンがフロントローに並んでいたが、どちらもスタートに失敗し、山本は4位、カーティケヤンは5位に落ちる。その2台の真ん中を通ってトップに浮上したのは、予選3位だったロッテラーだ。それに続いたのは予選5位の中嶋一貴で、これによりTOM'Sが1-2位になり、それに山本が続く展開になった。

アンドレ・ロッテラー(2号車 PETRONAS TOM'S SF14)、中嶋一貴(1号車 PETRONAS TOM'S SF14)がスタートで、1位と2位にジャンプアップ

 レースはこの3台によるトップ争いが展開されることになったが、レースを支配したのはスタートでトップに躍り出たロッテラーだ。ロッテラーは2位以下に常に5秒程度の差をつけ、途中ピットストップ時に、まだピットインしていないクルマにトップを譲った以外はトップを独走し、終盤には押す必要のないオーバーテイクボタン(一時的に燃料流入量が増えてパワーが増えるボタンのこと)を押して、その効果を確かめる余裕まで見せ、そのままチェッカーを受けた。

 ゴール後のインタビューでロッテラーは「スタートが鍵だった。あとは、後ろとのギャップを見ながらプッシュした。レースの最後にオーバーテイクボタンを押したのは、もっと速く走りたかったからだよ、レーシングドライバーは常に速く走りたいものだし……押しちゃダメ?(笑)」と余裕のコメントを残し、まさに“クルージング”という表現が的確なレースだったことを印象づけた。

最終ラップで山本尚貴のホンダエンジンから煙が……3位にはカーティケヤンが繰り上がり

 このためレースの焦点はほぼ1秒前後の差で推移した、2位の中嶋一貴と3位の山本の2位争いへと移っていった。途中山本がよいタイムを刻むものの、オーバーテイクするまでに至らず、常に両車の差は1秒前後で推移するという緊張感の高いレースになった。その2位争いの山場となったのは、ピットストップだ。まず28周目に中嶋がピットインし給油とタイヤ4本を交換し13.8秒のロスタイムでピットアウト。すると、その周に山本は猛プッシュ、バックストレートでオーバーテイクボタンを押しながら少しでも時間を稼ごうとして、中嶋の翌周にピットインした。

2位の中嶋一貴と3位の山本尚貴(16号車 TEAM 無限 SF14)による緊迫した2位争い

 しかし、ここでTEAM 無限は、左フロントタイヤのナットがはまらずタイムロスし、中嶋よりも2秒近く遅い15.5秒ものロスタイムとなり、ピットアウト後も逆転はならなかった。中嶋一貴はレース後の記者会見で「このピットストップに関しては後でチームと話あう必要があると思っている」と述べ、前を走っている時には後からピットに入るのがセオリーなのに、山本よりも前に入ったチームの作戦を“課題”と表現した(結果的にはTEAM 無限のピットストップでのミスに助けられた形だが……)。

最終周にエンジン付近から煙を吐き出しながらデグナーカーブの手前でストップした山本

 その後、山本は猛プッシュして、前の中嶋との差を詰めやはり1~2秒差で緊張感の高いレースが展開されていたが、残り5周で差は数秒に開き、これでレースは終わりかと思った最終ラップに、山本は突然スローダウンし、エンジン付近から煙を吐き出しながらデグナーカーブの手前でストップ。最終周に3位表彰台を失うことになった。これにより4位を走っていたナレイン・カーティケヤンが3位に繰り上がり表彰台の一角を確保、ホンダエンジン勢の最上になった。

ホンダエンジン最上位の3位となったナレイン・カーティケヤン(41号車 DOCOMO DANDELION M41Y SF14)

5位争いで後ろを押さえていたロシターは最終周で無念のガス欠

ジェームス・ロシター(3号車 FUJI×D'station KONDO SF14)とジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(19号車 LENOVO TEAM IMPUL SF14)による5位争い。シケインで接触するなど激しいバトルが続いたが……

 開幕戦のもう1つのドラマは、5位争いでも起きた。終盤の5位争いはジェームス・ロシター(3号車 FUJI×D'station KONDO SF14)、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(19号車 LENOVO TEAM IMPUL SF14)、石浦宏明(38号車 P.MU/CERUMO/INGING SF14)の3台によりテールツーノーズで争われていたが、ゴールまで2周を残した日立オートモティブシステムズシケインで、ロシターとオリベイラが接触し、さらにその後ろにいた石浦が加速の鈍ったオリベイラを1コーナーで抜こうとするなど、非常に熱い接近戦が繰り広げられた。

 この間、ロシターは非常に上手にオリベイラをブロックし、そのままの順位でゴールするかと思われたが、最終周の西ストレートで突然失速。クルマを左右にするという動きを見せたため、ガス欠だったと思われる。実はロシターは当初はオリベイラ、石浦の後ろを走っていたが、ピットイン時に給油だけを行い、タイヤ交換はしないという作戦をとっており、給油時間もギリギリにするために最小限の給油だけを行ったものだと考えられ、オリベイラとの激しい争いで予定よりも燃料を使ってしまったのかもしれない。

 いずれにせよ、これによりオリベイラ、石浦は(山本のリタイアも含めて)2つ順位が繰り上がってそれぞれ4位、5位でゴールした。以下6位 中嶋大祐(64号車 NAKAJIMA RACING SF14)、7位 伊沢拓也(11号車 REAL SF14)、8位 野尻智紀(40号車 DOCOMO DANDELION M40S SF14)までがポイントを獲得した。

ロシターの脱落によりジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(19号車 LENOVO TEAM IMPUL SF14)は4位を獲得

 日本復帰レースとなった小林可夢偉は、予選10位からスタートしたが、スタートで2つ順位を落として我慢のレースになった。9周目にいち早く給油、タイヤを済ませた後はコンスタントにタイムを刻んだほか、前のクルマを日立オートモティブシステムズシケインで鋭くインからオーバーテイクするなどの見せ場はあったものの、10~15位を走るレースになってしまった。最終周で上位2台がつぶれたことで最終的には9位となり、入賞に関しては次回以降の課題となった。

活躍が期待された小林可夢偉(8号車 Team KYGNUS SUNOCO SF14)は9位
レース結果
順位カーナンバードライバー車両エンジン周回数タイム
12アンドレ・ロッテラーPETRONAS TOM'S SF14TOYOTA431時間14分01秒371
21中嶋一貴PETRONAS TOM'S SF14TOYOTA431時間14分10秒855
341ナレイン・カーティケヤンDOCOMO DANDELION M41Y SF14HONDA431時間14分29秒077
419ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラLENOVO TEAM IMPUL SF14TOYOTA431時間14分40秒370
538石浦宏明P.MU/CERUMO/INGING SF14TOYOTA431時間14分41秒450
664中嶋大祐NAKAJIMA RACING SF14HONDA431時間14分45秒279
711伊沢拓也REAL SF14HONDA431時間14分46秒146
840野尻智紀DOCOMO DANDELION M40S SF14HONDA431時間14分53秒040
98小林可夢偉Team KYGNUS SUNOCO SF14TOYOTA431時間14分57秒804
1065ベルトラン・バゲットNAKAJIMA RACING SF14HONDA431時間15分11秒156
1120アンドレア・カルダレッリLENOVO TEAM IMPUL SF14TOYOTA431時間15分15秒889
127平川亮ACHIEVEMENT Team KYGNUS SUNOCO SF14TOYOTA431時間15分16秒222
1318中山雄一KCMG Elyse SF14TOYOTA431時間15分29秒955
144ウィリアム・ブラーFUJI×D'station KONDO SF14TOYOTA431時間15分37秒976
1516山本 尚貴TEAM 無限 SF14HONDA421時間12分29秒394
163ジェームス・ロシターFUJI×D'station KONDO SF14TOYOTA421時間12分55秒322
1739国本雄資P.MU/CERUMO/INGING SF14TOYOTA421時間14分35秒747
1834小暮卓史DRAGO CORSE SF14HONDA6DNF
1910塚越広大REAL SF14HONDA0DNF
スーパーフォーミュラ開幕戦の表彰式
優勝したアンドレ・ロッテラー選手
2位を獲得した中嶋一貴選手
ホンダ勢最高位の3位に入った
1-2フィニッシュを達成したトムスの舘信秀監督

 次回の全日本選手権スーパーフォーミュラは5月23日~24日に岡山国際サー
キットで第2戦が行われる。今シーズンも初戦は激しく、ドラマチックなレースになっただけに、今後のシリーズの展開も要注目だ。

(笠原一輝/Photo:奥川浩彦)