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石浦宏明選手が初のスーパーフォーミュラ王座獲得! 2015スーパーフォーミュラ最終戦リポート

「第14回JAF鈴鹿グランプリ」はレース1でロッテラー選手、レース2で山本選手が優勝

2015年11月7日~8日レース開催

スーパーフォーミュラの年間王座を獲得した石浦宏明選手の38号車
SC先導でのレーススタートとなった「第14回JAF鈴鹿グランプリ」のレース1

 日本最高峰のフォーミュラレースシリーズ「スーパーフォーミュラ」のシーズン最終戦となる「第14回JAF鈴鹿グランプリ」が、11月7日~8日の2日間にわたり三重県鈴鹿市にある鈴鹿サーキットで開催された。11月8日には決勝レースが2レース制で行われ、午前中にレース1、午後にレース2が行われた。

 午前中に行われたレース1では、ポールポジションからスタートしたアンドレ・ロッテラー選手(2号車 PETRONAS TOM’S SF14)がそのまま優勝した。2位はポイントランキングトップの石浦宏明選手(38号車 P.MU/CERUMO・INGING SF14)が入り、この時点でチャンピオン争いに残っていたロッテラー選手、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手(19号車 LENOVO TEAM IMPUL SF14)は脱落。石浦選手と、レース1で4位に入った中嶋一貴選手(1号車 PETRONAS TOM’S SF14)の2人に絞られることになった。レース1の3位は予選4位から1つ順位を上げた小林可夢偉選手(8号車 Team KYGNUS SUNOCO SF14)。

レース1は雨が降り続くなかでの争いとなった

 午後に行われたレース2では、ポールポジションからスタートした山本尚貴選手(16号車 TEAM 無限 SF14)が、ホンダエンジン搭載勢として今シーズン初優勝を決めた。注目のチャンピオン争いは、中嶋選手が2位、石浦選手が4位となったことで石浦選手がそのまま逃げ切り、悲願のスーパーフォーミュラ初タイトルを獲得した。

ロッテラーが独走でレース1優勝。2位石浦、3位可夢偉、4位一貴で王者決定はレース2へ

 晴天とまでは言えずとも雨は降っていなかった11月7日の予選とは異なり、決勝日の鈴鹿サーキットはあいにくの雨。とくにスタート時にはずっと雨が降り続く状況で、レースはセーフティカーの先導でスタートすることが決定された。セーフティカー先導の場合はスタートでの順位変動が起こりにくく、予選で上位を獲得したドライバーが有利になりやすい。

 今回もそれがあてはまり、2周目の終わりにセーフティカーがピットロードに入ってスタートが切られたときもそんな展開になった。スタートで飛び出したのはポールポジションのロッテラー選手で、予選2位の石浦選手、3位のジェームス・ロシター選手(3号車 FUJI×D'station KONDO SF14)、4位小林選手、5位中嶋選手と予選どおりの順番に1コーナーを通過した。

2周でセーフティカーがピットインしてレースがスタート。予選順位どおりにレースが進み、トップのロッテラー選手が後続を引き離す展開

 この後、ロッテラー選手は後続をみるみる引き離していき、結局そのまま誰にも脅かされることなくレース1を優勝した。レース自体では早々にロッテラー選手が後続を引き離したため、見所はチャンピオン争いの方に移行し、ポイントリーダーである石浦選手が2位を維持してゴールできるかどうかに注目が集まった。

 というのも、2位石浦選手、3位ロシター選手、4位小林選手はいずれもコンマ数秒~数秒のタイム差でひとかたまりになって走行しており、仮にロシター選手や小林選手が石浦選手の前に出ると、チャンピオン争いの動向が大きく変わるからだ。

ロッテラー選手が独走状態でレース1をポール・トゥ・ウィン

 このころ、石浦選手とチャンピオンを争う中嶋選手は5位を走行していたが、その石浦、ロシター、小林の3選手の集団からは置いていかれた状況で、そのままの順位でゴールすると、石浦選手の初タイトルが決定する状況になっていた。その後方では、レース2ポールの山本選手とオリベイラ選手の争いが展開されていた。速さではオリベイラ選手に分があるものの、前車の巻き上げる水煙などでオーバーテイクは非常に難しい状況。それでも8周目終わりのシケインで、オリベイラ選手が山本選手のオーバーテイクを試みてインに飛び込むが、山本選手の右リアタイヤとオリベイラ選手の左フロントが接触。オリベイラ選手はフロントウイングと右フロントタイヤを傷めてリタイア。山本選手はそのまま走り続けたものの、最終周にその右リアタイヤに異常が発生してピットインしてレースを終えることになった(完走扱い)。これにより、オリベイラ選手はチャンピオン争いからの脱落が確定する。

 レースが大きく動いたのは16周目。前の石浦選手を激しく追いかけていたロシター選手がダンロップコーナーの先でコースアウトし、そのままリタイアとなった。これを受けて後方にいた選手の順位が繰り上がり、3位小林選手、4位中嶋一貴選手となって石浦選手のレース1でのチャンピオン決定はなくなり、決着はレース2に持ち越されることになった。また、ロッテラー選手は優勝したものの、石浦選手が2位で4点を加算してポイント差が9点以上となり、チャンピオン争いからの脱落がここで決定した。

1位のアンドレ・ロッテラー選手(2号車 PETRONAS TOM’S SF14)
2位の石浦宏明選手(38号車 P.MU/CERUMO・INGING SF14)。後方を走るジェームス・ロシター選手(3号車 FUJI×D'station KONDO SF14)は15周走行でリタイアとなっている
3位の小林可夢偉選手(8号車 Team KYGNUS SUNOCO SF14)

レース1結果(正式)

順位カーナンバードライバーマシンエンジン周回数時間
12アンドレ・ロッテラーPETRONAS TOM’S SF14トヨタ2042'03.785
238石浦宏明P.MU/CERUMO・INGING SF14トヨタ2042'09.680
38小林可夢偉Team KYGNUS SUNOCO SF14トヨタ2042'10.417
41中嶋一貴PETRONAS TOM’S SF14トヨタ2042'40.564
540野尻智紀DOCOMO DANDELION SF14ホンダ2042'51.163
634小暮卓史DRAGO CORSE SF14ホンダ2042'55.028
739国本雄資P.MU/CERUMO・INGING SF14トヨタ2042'57.529
811伊沢拓也REAL SF14ホンダ2042'58.688
910塚越広大REAL SF14ホンダ2042'59.724
107平川亮ACHIEVEMENT Team KYGNUS SUNOCO SF14トヨタ2043'03.446
1165ベルトラン・バゲットNAKAJIMA RACING SF14ホンダ2043'04.484
1241ナレイン・カーティケヤンDOCOMO DANDELION SF14ホンダ2043'05.423
134ウィリアム・ブラーFUJI×D'station KONDO SF14トヨタ2043'09.497
1416山本尚貴TEAM 無限 SF14ホンダ1941'29.363
リタイア18中山雄一KCMG Elyse SF14トヨタ1736'58.155
リタイア3ジェームス・ロシターFUJI×D'station KONDO SF14トヨタ1532'21.923
リタイア20アンドレア・カルダレッリLENOVO TEAM IMPUL SF14トヨタ1023'13.348
リタイア64中嶋大祐NAKAJIMA RACING SF14ホンダ1023'13.594
リタイア19J.P.デ・オリベイラLENOVO TEAM IMPUL SF14トヨタ819'03.935
レース1の表彰式のようす
レース1で優勝したロッテラー選手は、結果的にドライバーポイントで年間3位となっている

山本選手が2年ぶりの優勝! 4位に入った石浦選手が自力でチャンピオンを決める

雨量の減ったレース2は通常どおりのスタンディングスタート

 午後のレース2でも引き続き雨が降り続いていたが、午前中に行われたレース1のときよりは雨量が減っており、レース終盤には雨が上がるという回復傾向。このため、レース2は通常どおりのスタンディングスタートでレース開始となった。ただし、メインストレートの奇数グリッド側は通常の走行ラインとなっていて水の量が少なくなっていたが、偶数グリッド側は水の量が多く、スタート時にやや不利だと予想されていた。

 しかし、いざスタートという段階になって、5番グリッドでスタートを待つ小林選手の8号車でブレーキから火が出ていることが確認され、オフィシャルの判断によりスタートは中止に。スタートを中断する原因を作った車両は最後尾に回るという規定により、小林選手は最後尾に移動して再スタートとなった。

 ここで抜群のスタートを切ったのは、予選4番手と不利な偶数グリッドからスタートした中嶋選手。中嶋選手は予選2番手のロッテラー選手が出遅れたことも受け、1コーナーまでにポールスタートの山本選手に並びかける。ここは山本選手がギリギリでポジションを守り、トップのまま1コーナーに入った。その後、中嶋選手は、同じく偶数グリッド側だが抜群のスタートを決めた6番手スタートのオリベイラ選手と接触するが、なんとかコースに踏みとどまってそのまま2位を維持することに成功した。3位は野尻智紀選手(40号車 DOCOMO DANDELION M40S SF14)、4位オリベイラ選手、5位ロッテラー選手、6位石浦選手という順位になった。

抜群のスタートでポールスタートの山本選手にイン側から並びかける中嶋選手。最初の1コーナーは山本選手がポジションをキープする
6番手スタートから4位に順位を上げたオリベイラ選手

 2位では逆転チャンピオンに手が届かない中嶋選手は、是が非でも山本選手を追い抜きたいところなのだが、逆にどんどん離されていく展開。これに対して、スタート後の6位キープでも自力チャンピオンという石浦選手は、前も後ろもどんどんいなくなっていくというラッキーな展開。

 まず、3位を走っていた野尻選手が前の2台から徐々に遅れだし、最終的にはマシントラブルでピットインしてそのままリタイア。これでオリベイラ選手が3位、ロッテラー選手が4位、石浦選手が5位、小暮卓史選手(34号車 DRAGO CORSE SF14)が6位となった。ところが、4位だったロッテラー選手にもマシントラブルが発生し、スプーンカーブの手前でストップ。これで4位に順位を上げた石浦選手は、さらに後方でいずれも石浦選手より速いラップタイムで追い上げてきていた小暮選手とロシター選手がシケインで接触し、ロシター選手はそのままピットに入ってリタイアとなってしまった。これによって石浦選手は前にも後ろにも他車がいない単独4位となり、確実に走り切ってチャンピオンを目指すという展開になった。

2位以下を置き去りにしていくトップの山本選手。最後尾スタートの小林選手はオーバーテイクを積み重ねて順位を上げていく

 結局、上位の3台(山本、中嶋、オリベイラ)は差が縮まることもなくそのままゴール。山本選手のスーパーフォーミュラ優勝は、チャンピオンを獲得した一昨年の鈴鹿での最終戦以来で、ホンダエンジン搭載勢の優勝は今シーズン初めてとなった。単独4位だった石浦選手もそのままチェッカーフラッグを受け、自身初となるスーパーフォーミュラのチャンピオンを獲得した。所属チームであるP.MU/CERUMO・INGINGもドライバータイトルの獲得ドライバーを排出するのはこれが初めて。なお、チームタイトルはすでに前戦で決定済みで、2年連続でPETRONAS TEAM TOM’Sが獲得している。

1位の山本尚貴選手(16号車 TEAM 無限 SF14)
2位の中嶋一貴選手(1号車 PETRONAS TOM’S SF14)
3位のジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手(19号車 LENOVO TEAM IMPUL SF14)

レース2結果(暫定)

順位カーナンバードライバーマシンエンジン
116山本尚貴TEAM 無限 SF14ホンダ
21中嶋一貴PETRONAS TOM’S SF14トヨタ
319J.P.デ・オリベイラLENOVO TEAM IMPUL SF14トヨタ
438石浦宏明P.MU/CERUMO・INGING SF14トヨタ
57平川亮ACHIEVEMENT Team KYGNUS SUNOCO SF14トヨタ
618中山雄一KCMG Elyse SF14トヨタ
734小暮卓史DRAGO CORSE SF14ホンダ
839国本雄資P.MU/CERUMO・INGING SF14トヨタ
98小林可夢偉Team KYGNUS SUNOCO SF14トヨタ
1064中嶋大祐NAKAJIMA RACING SF14ホンダ
1110塚越広大REAL SF14ホンダ
1220アンドレア・カルダレッリLENOVO TEAM IMPUL SF14トヨタ
134ウィリアム・ブラーFUJI×D'station KONDO SF14トヨタ
1441ナレイン・カーティケヤンDOCOMO DANDELION SF14ホンダ
1511伊沢拓也REAL SF14ホンダ
リタイア65ベルトラン・バゲットNAKAJIMA RACING SF14ホンダ
リタイア3ジェームス・ロシターFUJI×D'station KONDO SF14トヨタ
リタイア2アンドレ・ロッテラーPETRONAS TOM’S SF14トヨタ
リタイア40野尻智紀DOCOMO DANDELION SF14ホンダ
レース2の表彰式のようす
ホンダエンジン搭載車で今シーズン初勝利を飾った山本尚貴選手。自身としては一昨年の鈴鹿最終戦以来のトップチェッカーとなる

ドライバーポイント(暫定)

順位カーナンバードライバーポイント
138石浦宏明51.5
21中嶋一貴45.5
32アンドレ・ロッテラー40
419J.P.デ・オリベイラ34
516山本尚貴26
68小林可夢偉20
740野尻智紀19
87平川亮13
939国本雄資7.5
964中嶋大祐7
1041ナレイン・カーティケヤン6
123ジェームス・ロシター5
1311伊沢拓也4.5
1420アンドレア・カルダレッリ4
1534小暮卓史2.5
ドライバータイトルを獲得した石浦宏明選手
チームタイトルは2年連続でPETRONAS TEAM TOM’Sが獲得

 来シーズンのスーパーフォーミュラは、新しいワンメイクタイヤとしてパートナーに横浜ゴムを迎えて、新たなスタートを切ることになる。

スーパーフォーミュラ最終戦予選日に、オフィシャルタイヤサプライヤー発表会

http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20151107_729467.html

 11月6日にJAFから発表された最新情報(PDF:http://www.jaf.or.jp/msports/msinfo/image/ms_news273.pdf)によれば、来年のスーパーフォーミュラは4月15日~17日に鈴鹿サーキットで開幕戦が行われる予定になっている。今年も激しいチャンピオン争いが展開されたが、来年もより激しく面白いレースが展開されることを期待したいところだ。

(笠原一輝/Photo:大森総一)