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【第13回 JAF鈴鹿GP】スーパーフォーミュラ最終戦鈴鹿の予選はPETRONAS TOM'Sの2人が1/1000秒まで同タイム

SF14のコンストラクター創業者であるジャンパオロ・ダラーラ氏は、「F1の2%のコストでしかないのに、F1に比べて4%遅いだけ」と語る

2014年11月8日~9日開催

レース1のポールポジションを獲得したアンドレ・ロッテラー
レース2のポールポジションを獲得した中嶋一貴

 日本最高峰の格式を誇るトップフォーミュラカーレースとなるスーパーフォーミュラは、今週末(11月8日~9日)に最終戦となる第7戦が“JAF鈴鹿グランプリ”の名称で行われている。2013年までスーパーフォーミュラとSUPER GTのノンタイトル戦にかけられていたJAF GPのタイトルは、2014年はこのスーパーフォーミュラ最終線にかけられており、ドライバーはJAFグランプリ勝者の称号と、7人に可能性が残されているスーパーフォーミュラチャンピオンの称号をかけて、激しいレース展開が予想されている。土曜日にはノックアウト形式の予選が行われた。3回の予選の結果、2回行われる日曜日の決勝レースのうち、第1レースはアンドレ・ロッテラー(PETRONAS TOM'S SF14)が、第2レースは中嶋一貴(PETRONAS TOM'S SF14)がそれぞれポールポジションを獲得した。

 予選開催に先駆け、スーパーフォーミュラを運営する日本レースプロモーション(JRP)の記者会見が行われ、新型車として導入したSF14の設計、製造元であるレーシングカー・コンストラクター ダラーラ(Dallara)の創業者ジャンパオロ・ダラーラ氏がゲストスピーカーとして呼ばれ、同社と日本のつながりについて、そしてSF14の設計についてなどを語った。

1/1000秒まで同タイムだったPETRONAS TOM'Sの2人、日曜日の決勝はドラマティックなレースの予感?

 11月8日の午後に行われた予選では、Q1、Q2、Q3という3回のノックアウト方式の予選が行われ、Q1の結果がレース1のスターティンググリッドに、Q2、Q3の結果がレース2のスターティンググリッドになる。

 Q1で最速タイムを記録したのは、ペトロナストムスのアンドレ・ロッテラーと中嶋一貴。なんと、2人とも1/1000秒までまったく同タイムで、先にタイムをだしたロッテラーがポールポジション、中嶋が2位という劇的な展開で、サーキットは大いに盛り上がることになった。3位は国本雄資(P.MU/セルモ・インギング SF14)で、この順で明日のレース1をスタートすることになる。引き続き行われたQ2、Q3でもトムス勢の勢いは続き、Q3でも中嶋一貴がトップタイムを記録し、見事にレース2のポールポジションを獲得した。2位はロイック・デュバル(Team KYGNUS SUNOCO SF14)で、3位はロッテラーという結果になった。

 この結果、両レースのポール・ポジションを獲得したロッテラー、中嶋に1点ずつが追加され、シリーズタイトル争いは、中嶋34、ジョアオ・パオロ・オリベイラ(Lenovo Team IMPUL SF14)29、ロッテラー27.5、デュバル26.5とチャンピオンを争う上位4人のポイント差は変動している。通常の2レース制では、通常ポイントの半分(1位5点、2位4点、3位3点……)だが、この最終戦では優勝者にはそれぞれ3点のボーナスポイントがつくルールになっているので、仮に中嶋一貴がレース1で優勝すると、レース2を待たずしてチャンピオンが確定する計算になる。これによりレース1が2位、レース2がポールというグリッドからスタートする中嶋一貴にとって有利な展開ということになりそうだ。

 ただし、明日の鈴鹿市の天気予報は雨で、レースは雨がらみの展開となる可能性が高い。このため、晴天のレースでは考えられないような波乱の展開も当然考えられるので、中嶋一貴が一方的に有利かと言えばそうとは言い切れないところだ。明日のレースは、かなりドラマティックな展開になることも予想され、必見のレースとなる可能性が高いだろう。

ダラーラが製造したSF14の設計に役立ったシミュレーション技術

 スーパーフォーミュラは昨年からスタートした選手権だが、昨年までは旧フォーミュラ・ニッポン時代に導入されたスィフト製のSF13が利用されてき。2014年から完全に新型のシャシー、新型のエンジン(2.0リッター直列4気筒直噴ターボ)が導入されるなど新しいスタートを切った年になった。新型シャシーは、SF14と呼ばれ、イタリアのレーシングカーコンストラクターのダラーラにより設計、製造され、各チームにデリバリーされている。

 そのダラーラを創業し現在もオーナーとして経営しているのが、ジャン・パオロ・ダラーラ氏だ。まもなく78歳になるダラーラ氏は、かつてはフェラーリF1チームのエンジニアとして活躍した後、マセラティの設計デザイナーとして、その後はランボルギーニへ移り有名なミウラのデザイナーとして活躍した。

 その後ダラーラ氏はダラーラを設立し、複数のコンストラクターが性能を競っていたF3で大きなシェアを誇るようになり、現在ではF3は事実上のフォーミュラ・ダラーラとなるほどの成功を収めた。さらに、1999年にホンダがフルコンストラクターとして自チームを作って参戦を検討していたときに、そのホンダチームと協力してRA99というシャシーの制作にもかかわったのは有名な話だ。現在では、F1直下のカテゴリーとして知られるGP2、GP3、日本でも行われているF3、インディカー・シリーズなど世界各地のフォーミュラレーシングシリーズにシャシーを供給している。

 ダラーラ氏は「日本に来るのは初めてだけど、今回は技術系の人とだけでなく一般の方ともお話をする機会があって日本の文化を学ぶことができ興味深かった」と日本の印象を語った。今回ダラーラは、鈴鹿サーキットのホスピタリティラウンジにブースを設けているが、そこには同氏がかかわったクルマということで、ランボルギーニミウラとホンダ RA099が展示されている。その感想を聞かれると「昨日、それを見たときは実に印象深かった。実に50年近く前のクルマになるミウラは、今のように保守的になってしまった自動車メーカーではなかなか作ることが難しいクルマかもしれない。ホンダのRA099を作る時には、ホンダ側の責任者だったハーベイ・ポスルスウェイト氏と一緒に作った。確かスペインのバルセロナで最初のテストを行ったのだけど、ヨス・フェルスタッペンに乗ってもらって初日に2番手のタイムを出すことができた。そのヨスも今や、マックス・フェルスタッペンのお父さんというのだからね……」と久しぶりに会った“自分の子供”達の印象を語ってくれた。

 なお、ダラーラと日本の関係というのはホンダF1だけではない。実は1990年代後半に行われていた、トヨタのル・マン挑戦(トヨタ GT-One TS-020)の時にもダラーラがかかわっており、空力開発を担当していたのだとダラーラ氏は述べた。

 自社で設計・製造を担当したSF14が実際に走っているのを見た感想を問われたダラーラ氏は「実際に全部のクルマがこうやって走っているのを見るのは初めてだったので、感嘆した。格好もよく、しかも速く、メンテナンス性も信頼性もよいとチームの方にも、ドライバーにも、メディアの皆さんにもご好評をいただいているようで非常に嬉しい。このシリーズの年間コストは80万ユーロだとうかがっているが、それはF1の2%のコストでしかないのに、F1に比べて4%遅いだけというのはものすごいことだと考えている。そうしたいいバランスを実現できたことを誇りに思っている」と述べた。

 次いで実際に設計を担当したダラーラ チーフデザイナー ルカ・ピニャーカ氏にも同じ質問がされたが「SF14は現在あるシングルシーターのレーシングカーの中で最先端のマシンと言ってよい。このSF14を設計する上で我々は2つのトライをした。1つはイタリアンスタイルのボディーワーク。もう1つがシミュレータを利用した設計だ。このクルマではパワステを導入することに決めたが、それは中嶋さん、伊沢さんという2人のドライバーが弊社に来てくれて、シミュレータをドライブした結果からそうすることにした。もしそれをやっていなかったら、間違った選択をしていたところだった」と述べ、SF14を設計する上でシミュレータが非常に重要な役割を果たしたことを強調した。

 それを受けてダラーラ氏もシミュレータについて一言追加したかったらしく発言を求め、「今回のSF14の設計におけるシミュレータの果たした重要性は非常に大きい。レーシングカーの設計というのは非常に難しく、1つのミスが高くつくことがある。実際、インディカーのクルマをチームに配送した後、サスペンションのデザインに問題が見つかり、結局弊社でサスペンションを製造し直して全チームに配布するということになったことがある。その問題も、きちんとシミュレータ上で確認しておけば避けられた問題で、SF14はそれが最初からできていた例として、我々は大変誇りに思っている」と述べ、SF14がダラーラ社としても次のステップへと進む重要な製品だったと強調した。

ダラーラ社創業者のジャン・パオロ・ダラーラ氏
ルカ・ピニャーカ氏
記者会見はCar Watchの連載でおなじみのモータースポーツジャーナリスト 小倉茂徳氏の進行、通訳により行われた(右から2人目)

合同テストを11月の半ばと12月頭に開催し、新人オーディションには実力派の海外のドライバーも参加へ

 ダラーラ氏が退場した後は、スーパーフォーミュラにエンジンを供給するトヨタ自動車、ホンダ(本田技術研究所)のエンジン開発責任者2人と、JRPの白井社長によるシーズンを振り返っての感想が語られた。トヨタ自動車 モータースポーツユニット開発部 永井洋治氏は「目指したパッケージがきっちり機能して、まだ終わっていないが無事に1年が終えられそうで、その点は嬉しい。先ほどのダラーラ氏のセッションの中で、シミュレータの話が出てきていて思いだしたのだが、当初ダラーラとしてはできるだけ軽くしたいのでパワステはつけないでという意向だった。しかし、日本から2人のドライバーに行ってもらってテストしたところ、クルマはクイックなのに、ステアリングがスローになってしまって、運転できなくはないけど、趣旨と違うんじゃないかというフィードバックがあって、みんなで尽力して今の形に落ち着いた。いい方向になってよかったと思っている」と述べ、トヨタとしてはターゲット通りの性能を出せ、結果もついてきてよい1年だったと振り返った。

 これに対して本田技術研究所 MS開発室 佐伯昌浩氏は「前半戦は、ほんの少しの開発の遅れがチームに迷惑をかける結果になった。非常に大きな差があるように見られているとは思うのだが、もっとパワーを絞りだしていきたいと思う。わるいところが分かっているのでそれを改善して頑張っていきたい」と述べ、前半戦の出遅れを認めつつ、後半戦には大分盛り返してきたと状況を分析していた。

 記者からはホンダ勢4台がこの最終戦においてエンジン交換になったことに関しての質問が出たが、ホンダの佐伯氏によれば「菅生でトラブルが発生しているクルマがあり、エンジンの内部で1年間使っている部品の中に問題がある部品があり、それが封印シールを破らないと交換できない箇所であったため、封印を破って交換するということになったため、エンジン交換というペナルティになった」と述べ、菅生戦でエンジンに不具合が発生した車両があり、エンジン交換を行うことになったと説明した。

トヨタ自動車 モータースポーツユニット開発部 永井洋治氏
本田技術研究所 MS開発室 佐伯昌浩氏

 また、来年に向けての取り組みについてはトヨタの永井氏は「ホンダさんが大分伸びてきたので、再び引き離せるように頑張りたい、それなりにいろいろなことを考えている」と説明し、ホンダの佐伯氏は「来年のエンジンの開発は進んでいる、熱効率を上げていく方向にしていきたい」と述べ、どちらのメーカーも開発が進んでおり、来年のエンジンがさらに進化したモノになると説明した。

 最後にJRPの白井社長から「現時点で想定しているスーパーフォーミュラのカレンダーがWECやF1日本GPと競合しているが、まだ正式な決定ではない。できるだけ世界選手権とバッティングしないように努力したい。また、来年に向けた施策として、11月の中旬に菅生で、12月の頭に岡山で合同テストを行い、そこで新人ドライバーのオーディションを行っていきたいと考えている。アンドレやロイクなどがWECで活躍していることで、欧州のドライバーからの認知度が高まっており、今年GP2を走っていたドライバーでも参戦したい意向を示しているドライバーもいる」と述べ、菅生や岡山で年末に新人オーディションを兼ねた合同テストを行い、そこに欧州など海外のドライバーも含まれていることを示唆した。

(笠原一輝)