ニュース

増岡浩氏と片山右京氏、三菱自動車が磨き上げてきた「四輪制御技術」の進化と「懐かしの三菱車」について語る

2025年4月11日~13日 開催
チーム三菱ラリーアート総監督 増岡浩氏(左)と、三菱自動車ブランドアンバサダーを務める片山右京氏(右)

 三菱自動車工業は、幕張メッセ(千葉県美浜区)で開催中(会期:4月11日~13日)の「オートモビルカウンシル2025」に出展し、1989年の東京モーターショーに参考出品したコンセプトカー「HSR-II」や、2024年10月に大幅改良した「アウトランダーPHEV」などを展示している。

 今回の日本車メーカー共通テーマである「過去が見た未来」に合わせて、チーム三菱ラリーアートの総監督である増岡浩氏と、元F1パイロットで現在は三菱自動車のブランドアンバサダーも務める片山右京氏が、三菱自動車の「四輪制御技術」の進化について語りあった。

 片山氏は今現在自身が乗っているアウトランダーPHEVについて、「価格帯からするともう高級車レベルですよね。ただ、PHEVなので電気で走る時間も多く、環境にも配慮しているし、4WDなので走りも安定しています。ただ、先日北海道で雪上ドライブしてきたのですが、4WDだから当然まっすぐならパワフルに走るのですが、やはりコーナリングは厳しい。いくら元F1ドライバーでもタイヤの限界を越えたら曲がれないです。と思っていたら、増岡さんから教えてもらったのですが、ドライブモードをスノーに切り替えると、S-AWC(Super All Wheel Control)がうまく4輪をコントロールしてくれて、とてもスムーズに曲がれるんです。また、前方がほとんど見えないようなゲリラ豪雨に見舞われた際も、ロックモードにしたら安定して走行でき、ひと安心でした」と体験を振り返った。

チーム三菱ラリーアート総監督 増岡浩氏

 増岡氏も、「自動車は曲がるときに前輪を軸に動くけど、S-AWCは4輪すべてバラバラに制御しているので、自動車の中心部分を軸にコーナリングしてくれる。だから安心感が高いし、クルマ酔いもしにくいんです。三菱はこのような安心してコーナリングできる技術を36年以上も前からいろいろと考えていて、コンセプトカーのHSR-IIに搭載しています。当時は電子制御以外にも空力を使うことも考えていて、HSR-IIはトランクにある羽が左右それぞれ動くようになっています。またフロントのほうにも左右に飛び出すウイングなんかもあるんです」とコメント。

三菱自動車ブランドアンバサダーを務める片山右京氏

 HSR-IIが36年前のコンセプトカーと聞いた片山氏は、「ちょっと前にネット動画で映画バック・トゥ・ザ・フューチャーをやっていたので観たのですが、そうしたらHSR-IIが急にデロリアンに見えてきました」と会場の笑いを誘った。

 また増岡氏は、「36年前のコンセプトカーはもちろんですが、三菱は長年WRCやダカールラリーの現場で技術を鍛え続けてきました。その結果、今の高い制御にたどり着きました。自分が乗っていたころの4WDは、今みたいなトルク配分はしてくれなかったですし、ただの切り替えレバーで2駆と4駆を変えていましたからね」と当時を振り返った。

HSR-IIは当時はまだ研究中だった、速度域で可変するアクティブエアロシステム、フルタイム4WD、4輪ABS、4輪操舵、4輪独立懸架式サスペンションといった四輪制御技術、追尾走行や自動車庫入れ機能などの運転支援技術を採用したコンセプトカー
空力を重視したスタイル
後方も空気を抜き出すデザインを採用
タイヤサイズは前後とも245/45ZR17。フロントタイヤは当時のではなく現代の横浜ゴムの「ADVAN Sport V109」に履き替えられている
トランクには独立して動く2枚の大きなウイングを搭載
リアバンパーの内部。「RR VENTURY FLAP」と表記があり中心にある2本の棒が、車体の傾きを利用してトランク上にあるフラップを動かす機構のように見える
ナスカの地上絵のように見えるが、リアウィンドウ内に搭載しているさまざまな制御システムがどのように接続されているかを表現している
シートはモノコック一体型となっている
HSR-IIなどで培われてきた技術が、アウトランダーPHEVなど現代の車両に生かされている

4台の個性的な三菱車も展示

 続いて、4台の個性的な三菱車についても増岡氏と片山氏が解説。当時の思い出も含めて語らいあった。

 1964年に誕生したデボネアは、パワーウィンドウ、3速AT、エアコンなど当時の最先端装備がおごられていた高級モデル。デボネアについて増岡氏は、「当時4歳ですが、だいたい大きな会社の社長さんが乗っていたように記憶しています。あと銀行の裏とかによく止まっていた」と回顧。続けて、「今見ても大きいよね。でもこれで5ナンバーサイズなんだから、不思議な感じ。あと1986年まで22年間ほぼデザインも基本的に変わらなかったというユニークなエピソードもあって、“走る化石”とか“シーラカンス”って呼ばれていたね」と教えてくれた。

1964年に発売した「デボネア」

 三菱自動車のスポーツカーの礎となった2ドアハードトップクーペのギャランGTO MRについて増岡氏は、「これが後に活躍したランエボ(ランサーエボリューション)につながる第1歩ですね。MRは“ミツビシ・レーシング”の意味で、この後はスポーツモデルにはよく付いていましたね。車重も900kg台と今の軽自動車よりも軽くいくらいですから、走れば楽しいに決まってます!」と振り返った。片山氏は「本当にカッコイイですよね。自分はプラモデルでしか作ったことないなぁ~」と子供のころの思い出を語った。

1970年に登場した「ギャランGTO MR」
個性的なダックテールも特徴の1つ

 ギャランΛ(ラムダ)について増岡氏は、「四角いヘッドライトといい、湾曲したリアウィンドウといい、デザイン面でも攻めてますよね。きっと今ガラス屋さんにいって、同じリアウィンドウ作ってほしいと頼んでも、厳しいんじゃないかな? 本当にきれいなスタイルですよね。それにステアリングも1本スポークなので、ぜひ確認してみてください」と改めて当時のデザインに感心した様子。

1976年に発売した2ドアハードトップクーペ「ギャランΛ」
きれいに湾曲させたリアウインドウ
ステアリングは1本スポーク!

 ディアマンテについて片山氏は、「本当に欲しくて、ディーラーまで足を運んだこともあるんだけど、当時ちょうどF1に参戦できることになってしまい拠点が日本じゃなくなったため断念しました」と過去の思い出を明かした。

1990年に発売した「ディアマンテ」

AUTOMOBILE COUNCIL 2025 開催概要

日時:2025年4月11日~13日10時~18時
会場:幕張メッセ 国際展示場(9~11ホール)
テーマ:CLASSIC MEETS MODERN&FUTURE
主催:AUTOMOBILE COUNCIL 実行委員会