ホンダ、ハイブリッド車「フリード」「フリード スパイク」「インサイト」発表会
「来年3月ごろには、およそ半分がハイブリッド車に」

「フリード」「フリード スパイク」「インサイト」のハイブリッド車を同時発表

2011年10月27日発表



 本田技研工業は10月27日、「フリード」「フリード スパイク」のマイナーチェンジとハイブリッドモデルの追加、ハイブリッド車「インサイト」のマイナーチェンジについて発表。同日発表会を東京・青山の本社ビル内で開催した。

 フリード、フリード スパイクは、10月28日に発売。インサイトは11月11日に発売する。それぞれの車両の詳細については、関連記事「ホンダ、『フリード』『フリード スパイク』のハイブリッドモデル」「ホンダ、『インサイト』をマイナーチェンジして燃費向上」を参照していただきたい。また、この発表会の最後に、新型軽自動車「N BOX」を公開。NBOXについては、「ホンダ、新型軽自動車『N BOX』を12月に発売」を参照のこと。本記事では、フリード、フリード スパイク、インサイトに関する発表の模様をお届けする。

フリード ハイブリッドインサイト発表会の最後に公開された新型軽自動車「N-BOX」

本田技研工業 常務執行役員 日本営業本部長 峯川尚氏

「来年3月ごろには、登録車の約半分がハイブリッド車に」
 発表会の冒頭、本田技研工業 常務執行役員 日本営業本部長 峯川尚氏は、2011年の販売実績について触れた。2011年の前半は、震災による生産遅れなどで計画を下回る実績となったが、後半は急回復しており、年当初の計画をなんとか達成したいと言う。ホンダの工場が、タイの洪水で被災しているものの、「洪水による生産の影響は、現在精査しているところ」と言い、まだ具体的な影響について語れない状況であるとした。

 その販売台数の中で、とくに大きな割合を占めるのが、軽・スモール・コンパクトに分類するクルマ。2011年1月~9月期の世界販売実績では71%を占め、このトレンドはこれからも続くと言う。またハイブリッド車についても、フィット ハイブリッド、フィット シャトル ハイブリッドとラインアップを増やしたことから、国内同期では33%を占め、フリード、フリード スパイクへのハイブリッド車の追加、インサイトのマイナーチェンジにより、「来年3月ごろには、登録車の約半分がハイブリッド車になるだろう」との見通しを示した。


2011年の世界販売実績。軽・スモール・コンパクトで71%2011年のハイブリッド車販売実績(国内)。すでに33%を占めているフィット シャトルは3カ月で約4万5000台の受注
フィットは、国内登録車で上半期1位フリードシリーズは10月28日発売、インサイトは11月11日発売。いずれも国内生産車ホンダのハイブリッド車は、6車種に

 車種の特徴については、それぞれの開発責任者がプレゼンテーションを行った。

フリード、フリード スパイクの開発責任者である安木茂弘氏

ちょうどよいクルマを目指した「フリード」「フリード スパイク」
 新型フリード、フリード スパイクの開発責任者である安木茂弘氏は、ファミリー層や、小さいクルマを求める“ダウンサイザー”へ、ちょうどよいクルマを提供することにこだわったと言う。バッテリーやインバーターなどを必要とするハイブリッド車では、ラゲッジルームが狭くなりがちだが、「人・荷物の空間との両立を図った」とし、荷室床面高さが65mm上がったものの、3列目シートレッグ位置を65mm下げることで、3列目の快適空間を確保。3列目、2列目シートを倒せば、27インチ自伝車の積み込みを可能とした。

開発コンセプトはちょうどよいクルマフリードは、27インチの自転車を積載可能ハイブリッドモデルでも、3列目空間を確保

 また、マイナーチェンジにあたって、フリード、フリード スパイクに求められているニーズを分析。旧モデルの8人乗りでは、2列目のベンチシートが、7人乗りではフリーウォークスルーが評価されていたことで、フリードの7人乗りとフリード スパイクの5人乗りには2列目ベンチシートを、フリードの6人乗りには2列目キャプテンシートによる、フリーウォークスルーを採用した。

ユーザーニーズを分析し、各車種に最適なシート配置を設定3列目シートに、センター独立型アームレストを装備
フリードの6人乗りモデルでは、2列目はキャプテンシートフリードの7人乗りモデルでは、2列目はベンチシート。中央席にもヘッドレストを備える

 デザインについては、フリード G ジャストセレクションがベースデザイン、フリード G エアロがエアロデザインとなり、フリード ハイブリッドはそれらを統合した上位のデザインであると語った。また、ハイブリッドモデルでは、クリアブルーの素材を用いた専用フロントグリルやリアコンビネーションランプ、専用ホイールキャップなどが装着されている。

デザインテーマは、クリーン&ダイナミックデザインのベースとなっているG ジャストセレクションダイナミックさを増した、G エアロ
ハイブリッドモデルは、専用のフロントグリルやリアコンビネーションランプを装備

 フルフラットになるラゲッジルームがウリとなっているフリード スパイクだが、ハイブリッドモデルでもその点は変わりない。1700×1070×1010mm(荷室長×荷室高×荷室幅)の荷室で、大人が寝ることができる空間を確保。荷室後方をたたむスロープモードにすれば、26インチのマウンテンバイクを2台積載できる。

 フリード スパイク ハイブリッドにおいても、ハイブリッド専用のフロントグリルやリアネーションランプなどが装備され、ガソリンエンジンモデルとの差別化が図られている。

 フリード、フリード スパイクとも、ハイブリッドとモデルには専用ボディーカラーのプレミアムブルーオパール・メタリックが用意される。

フリード スパイクにもハイブリッドモデルが追加された荷室下にバッテリーなどを搭載するハイブリッドモデルでもフラットな荷室を確保
荷室後部を一段下げるスロープモードにすれば、26インチのマウンテンバイクを2台積載できる軽量かつコンパクトなIMAシステムだからこそ、このスペースが実現できたという
フリード、フリード スパイクともに、ハイブリッドモデルでもガソリンエンジンモデル同様のパッケージレイアウトを実現。フリードでは、地面からのトランクフロア高さが65mm上がり、フリード スパイクでは、フラットモードでは変わりないものの、スロープモードでは35mm上がるフリード スパイク ハイブリッドも、クリーン&ダイナミックなデザインテーマを持つ
ハイブリッドモデルは、専用のフロントグリルやリアコンビネーションランプなどを装備ボディーカラー一覧。ハイブリッドモデルには専用色を用意

 両ハイブリッドモデルに搭載するハイブリッドシステムは、直列4気筒SOHC 1.5リッター i-VTECエンジンにIMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)を組み合わせたもの。エンジンには、気筒あたり2つのスパークプラグを備えて点火時期を個別に制御するシステムや、減速時に全気筒休止することでポンピングロスを低減し、電力回生率を高めるVCM(バリアブル・シリンダー・マネージメント)などを採用。その結果、10・15モード24.0km/L、JC08モード21.6km/Lの燃費を実現している。

 低速域はもちろん、実用域のトルクをモーターでアシストし、力強くスムーズな走りを実現したと言う。エンジンとモーターを組み合わせたシステム全体では、最高出力73kW(99PS)/5400rpm、最大トルク159Nm(16.6kgm)/1000-1500rpmを発生する。そのほか、ハイブリッドモデルだけに、静粛性の向上にも注力しており、スモールカーでありながら2リッタークラスの静粛性を達成。音色変化については、2リッタークラスを上回る変化の少なさだと言う。

VCMを搭載する直列4気筒SOHC 1.5リッター i-VTECエンジン+IMA10・15モード24.0km/L、JC08モード21.6km/Lの燃費を実現エンジン性能曲線
デザインは異なるものの、色使いは同様となるエコアシスト表示ハイブリッド車に求められる静粛性には、とくに気を使っている。ボディー各所に防音材や遮音材が追加されている
フリード ハイブリッド

インサイト開発責任者 大窪毅氏

ハイブリッド専用車「インサイト」は最高の燃費性能を
 ビッグマイナーチェンジとなったインサイトに関しては、開発責任者の大窪毅氏が解説。ハイブリッド専用モデルとなるインサイトでは、従来同様の直列4気筒 SOHC 1.3リッター i-VTEC+IMAシステム搭載モデルでは、最高の燃費性能を追求し、新たに加わった直列4気筒 SOHC 1.5リッター i-VTEC+IMAシステムを搭載した「インサイト エクスクルーシブ」では。さらなる加速レスポンスを重視していると言う。



1.3リッター+IMA、1.5リッター+IMAの位置づけ燃費性能。ハイブリッド専用車種として、1.3リッター+IMAモデルは最高値を実現

 1.3リッター+IMAモデルの燃費は、10・15モード31.0km/L、JC08モード27.2km/L。1.5リッター+IMAのエクスクルーシブは、10・15モード26.5km/L、JC08モード23.2km/Lとなる。1.3リッター+IMAのインサイトの燃費は、「フィット ハイブリッド」の10・15モード30.0km/L、JC08モード26.0km/Lを超え、ホンダのハイブリッドモデルとして最も優れたもの。1.5リッター+IMAのエクスクルーシブの燃費も、同じシステムを搭載する「CR-Z」の10・15モード25.0km/L、JC08モード22.8km/L(CVT車)を超え、同システム搭載車では最高の値となる。

 これに関しては、「フィット ハイブリッドの開発から1年間の時間が経っており、その途中でフィット シャトル ハイブリッドも開発してきた。それらで得られた省燃費技術を採り入れている」とし、エンジンに関してはピストンコーティングなどのフリクション低減、ボディーに関しては空力性能の向上、ハイブリッドシステム制御に関しては消費電力の削減を図った。

エクステリアデザインコンセプト
インテリアデザインコンセプト

 動力性能については、1.3リッター+IMAモデルが、最高出力65kW(88PS)/5800rpm、最大トルク121Nm(12.3kgm)のエンジンに、最大出力10kW(14PS)1500rpm、最大トルク78Nm(8kgm)/1000のDCブラシレスモーターを組み合わせ、従来同様。1.5リッター+IMAのエクスクルーシブは、最高出力82kW(111PS)/6000rpm、最大トルク142Nm(14.5kgm)のエンジンに、同仕様のモーターを組み合わせている。1.5リッターエンジンは、CR-Z(CVT車)より、最高出力で1kW(2PS)、最大トルクで2Nm(0.2kgm)下げられており、車重に応じた調整が行われている。

 また、インサイトの発売以来2年が経ち、その間に得られた要望を反映。ハイブリッド車に特に求められる静粛性に関しては、ボディー各部にインシュレーターを追加。従来からあったインシュレーターに関しても密度の向上を図っている。空力に関しては、バンパーまわりを作り直したことで、新たなリップをリアバンパー下の左右に追加。ディフューザー形状の新設などが、大きく燃費低減に寄与していると言う。

 ボディーカラーに関しては、プレミアムディープロッソ・パールとプレミアムダイナミックブルー・パールを両モデルに追加。スーパープラチナアクア・メタリックを1.3リッター+IMAモデルに、プレミアムブロンズ・パールを1.5リッター+IMAモデルにそれぞれ追加している。


燃費向上のために投入された各種の技術走りと燃費のポジショニング。1.3リッター+IMAモデルは燃費を、1.5リッター+IMAモデルは走りを重視
ビックマイナーとなるため、ハイブリッド車ならではの静粛性を追求。多数の防音材などが追加された。しかし、1.3リッター+IMAモデルの車重は従来同様と、アルミスイングアームの採用など各部で軽量化が行われている
マイナーチェンジにあたり、バンパーなどをデザインし直している。リアバンパーサイドの裁ち落としや、下部のサイドリップなどで、空力性能を向上
1.5リッター+IMAモデル(写真左)と、1.3リッター+IMAモデル(写真右)。フロントフェンダー形状や、パンバー部の加飾の違いにより印象が異なる
1.5リッター+IMAモデル(写真左)と、1.3リッター+IMAモデル(写真右)。インテーク形状などが異なっている
1.5リッター+IMAモデルの室内。エクスクルーシブと名付けられるだけあり、これまでのインサイトとは雰囲気の異なる室内空間が作り上げられているメーターパネルにも加飾が施された


発表会終了後、「Honda Hybrids」と書かれたホンダ本社前に、ハイブリッドモデルがずらりと展示された。ハイブリッドラインアップ構築の容易さが、同社独自のIMAシステムのメリットになると言う

 ホンダは、シビック ハイブリッドからモーターの薄型化、バッテリーモジュールあたりの出力向上でバッテリーの小型化を図ったIMAシステムを搭載する2代目インサイトを2009年2月に発売。その後、CR-Z(2010年2月発売)、フィット ハイブリッド(2010年10月発売)、フィット シャトル ハイブリッド(2011年6月発売)と矢継ぎ早にコンパクトクラスのハイブリッド車のラインアップを強化している。フリード、フリード スパイクのハイブリッドモデル追加により、同社のコンパクトカーは、すべてハイブリット車を選択できるようになった。

 早期にハイブリッドラインアップを構築できたことについて峯川氏は「コンパクトで効率のよいIMAシステムが貢献している」と語り、ガソリン価格の高止まりなどによる、ダウンサイジングの流れ、環境意識の高まりなど、市場の要望に応えていくとした。



(編集部:谷川 潔)
2011年 10月 28日