日産、エネルギー診断専門チームで事業所のCO2削減

生産事業本部 NPW推進部 環境エネルギーグループの岸雄治 主管

2011年11月25日発表



 日産自動車は25日、同社の企業活動におけるCO2削減の取り組みと、今夏の節電の取り組みについて、神奈川県横浜市の同社グローバル本社で報道関係者向けに説明会を開催した。

エネルギー診断専門チームが改善提案
 同社は10月に6カ年中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム 2016」(NGP2016)を発表したが、その重点目標には「再生可能エネルギーへの転換」「低炭素化」がある。

 NGP2016の前の環境行動計画「NGP2010」では、CO2排出量を2010年までに、2005年比で1台あたり7%削減する目標を掲げていたが、これを大幅に上回って19%/台の削減に成功。2005~2010年の生産台数増加にともない、CO2排出総量も20%増大したがほぼ相殺され、2005年と同レベルの総量を維持した。

 NGP2010では生産工程でのCO2削減が目標とされていたが、NGP2016では対象の範囲を生産だけでなく物流、オフィス、販売にも拡大。連結対象のグループ会社全車の生産拠点と、北米・欧州・中国・日本の物流と主要オフィス、日本の販売会社が対象となる。

NGP2010は目標を大幅に上回って達成NGP2016の目標は2016年までにトータルで20%削減。長期的には80%の削減を目指す全世界で取り組む

 とくに企業全体の排出量の約7割を占める生産部門では、2005年比で27%/台の削減目標を設定。NGP2010で削減した19%/台に8%/台を上積みすれば達成できるように見えるが、CO2削減の遅れている新興国で生産増が見込まれているため、実際には17%/台の削減が必要になるという。

 CO2削減には今ある設備の運用方法を変えて削減する方法と、設備を入れ替えて改善する方法がある。前者の方法では、日産社内のエネルギー診断専門チーム「N-ESCO」(Nissan Energy Service COmpany:ネスコ)が当たる。このチームはエネルギー管理や分析のエキスパートで構成され、生産拠点に約1ヶ月半入り、サーモグラフィーなどを駆使してエネルギーの流れを分析、可視化し、具体的な改善案を出す。これにより毎年1.5%のCO2削減に成功していると言う。

 N-ESCOは現在のところ日本にのみ設置されているが、2011年度は中国、メキシコの生産拠点での診断を行っており、年度内にスペイン、イギリス、アメリカ、ルノーに派遣されて診断する。今後は各海外拠点でN-ESCOを育成し、日本から派遣しなくてもよい体制にする予定。

生産部門での目標は27%削減専門チームN-ESCOが診断し、CO2を削減するN-ESCOは海外でも活動

節電にはスマートメーターが奏功
 一方、今夏の節電は、15%の電力使用制限に対し、約30%削減に成功した。これは休日の振替、勤務時間の変更、自家発電の活用、スマートメーター導入によるピーク電力量の管理などで達成した。

 勤務時間の変更は、工場などでのシフトの組み方を変えること。1直、2直、2直夕継ぎの3種類のシフトがあり、通常は9~13時にこの3つのシフトが重なる。しかしこれは9~20時の電力制限時間内に入っており、ここに3つのシフトが重ならないよう、シフトの時間帯を変えることで、ピーク電力を下げた。

 また、各工場、事業所に、電力使用量をリアルタイムで通信回線経由で監視できるスマートメーターを設置。社員のPCでいつでも見られるようにしておいた。これにより、各工場や事業所が使用量を見ながら、操業を自発的に調整するようになり、使用量が削減できたという。

 このほか、従業員の節電マインドを高めるために、家庭での節電コンテストも開催。エアコンを使わない、冷蔵庫の設定温度アップなどの節電により、平均で17.6%の削減ができたと言う。

30%の節電に成功したピーク時間帯にシフトが重ならないよう調整スマートメーターで使用量を可視化したことが、自発的な節電の提案に結びついた

(編集部:田中真一郎)
2011年 11月 25日