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日産、社内体制を強化して「ニッサン・グリーンプログラム」をさらに推進

「環境への取り組み」に関する説明会を実施

説明会で解説する日産自動車 経営企画本部環境企画室 今西朗夫室長
2013年7月4日開催

 日産自動車は7月4日、「日産 環境への取り組み説明会」を横浜のグローバル本社で行い、「ニッサン・グリーンプログラム2016」の2012年度における実績、CO2削減に向けた取り組みという2テーマについて担当者が解説した。

 2012年度の活動実績については、日産自動車 経営企画本部環境企画室の今西朗夫室長が解説。日産は2002年1月から企業全体での環境対策活動に「ニッサン・グリーンプログラム」(NGP)という名称を与え、4~5年先までの中期行動計画として取り組みをスタート。初期段階となる「NGP2005」に続き、2006年12月に「NGP2010」、2011年10月に「NGP2016」を策定し、現在はこのNGP2016で掲げたさまざまな目標をクリアするべく取り組みを続けている。

 NGP2016では、「ゼロ・エミッション車の普及」「低燃費車の拡大」「カーボンフットプリントの削減」「新たに採掘する天然資源の最小化」の4項目を大きな柱として活動を実施。「低燃費車の拡大」では、日産は「2050年に、2000年の数値をベースにCO2排出量を90%削減する」という大きな目標を持っており、NGP2016でも車両の企業平均燃費を35%改善することを目標としているが、2012年度は2005年度比でCO2排出量を24.9%改善し、目標達成に向けて加速している。2012年度に発売された新車では、日本ではノート(JC08モード燃費で25.2km/L)、アメリカではアルティマ(Combine燃費値で31.0mpg)、ヨーロッパではシルフィ(NEDCで6.3L/100km)とティアナ(NEDCで7.3L/100km)といったモデルがそれぞれの市場で好評を受け、数値改善に貢献しているという。

4つの大きな目標と、それぞれに具体的な対応策を用意し、NGP2016の目標達成に向けて活動を続けている
日産は2000年からの半世紀で、CO2排出量を1/10にまで削減するという高い目標を掲げている。「低燃費車の拡大」は、この目標達成に向けた極めて重要な手段だ
燃費が良好ということに加え、それぞれの市場でヒットすることも数値改善に貢献する1つの条件。逆に言えば、ヒットモデルの燃費を改善することが、CO2排出量を大幅に低下させる結果を生む

「ゼロ・エミッション車の普及」では、2010年12月のリーフ発売当初は販売台数の伸びが鈍かったものの、2012年からはアメリカのスマーナ工場、イギリスのサンダーランド工場でも生産を始めたことで普及が加速。累計台数が約7万台となり、EVのグローバルシェアでもトップを維持している。走行時にCO2を排出しないEVだけに、今後の販売推移がNGP2016の計画実現に向けた大きな鍵になるのは間違いないだろう。

日産はリーフを普及させるため、2年目でのマイナーチェンジや先日行われたバッテリー容量保証など、矢継ぎ早に施策を繰り返して商品性をアピール。グローバルEV販売における2009年7月から2013年3月までの累計シェアで、ほぼ半数の49%を占めるまでとなっている
ローンチの追浜工場に加え、2012年度からはアメリカ、イギリスでの現地生産をスタート。グローバルでの生産能力は20万台/年にまで高められている

 このほかに「新たに採掘する天然資源の最小化」では、すでに行なっている使用済みバンパーを新車用バンパーとして生まれ変わらせる樹脂製品の再利用に加え、クルマに使った素材を回収・再利用してクルマを作る「クローズド・ループリサイクル」の考え方を鋼材、アルミにまで広げ、2016年までに新車1台あたりの再生材使用率を25%まで高めるというロードマップを示している。こうした数々の取り組みが評価され、インターブランド社が行った企業イメージ評価「ベスト・グローバル・グリーンブランド2013」で、前年度の21位から5位に大きく躍進。最も飛躍したブランドとなったと紹介している。

バンパーのリサイクルでは、樹脂と表面に塗られたペイントをリサイクル工程できれいに分離して樹脂だけを回収する技術が必要となる。同じように、鋼材やアルミなどでも回収技術をしっかり確立し、新規天然素材の使用率を下げることが計画されている
EVであるリーフの普及と認知度向上、車体の軽量化目標の公開、量産型FCEVの発売計画などが評価され、一挙に16位も順位を向上させトップ10入りしている

今年度から計画立案と実行体制を強化

日産自動車 車両生産技術本部環境エネルギー技術部 岸雄治エキスパートリーダー

 車両生産技術本部環境エネルギー技術部の岸エキスパートリーダーからは、CO2排出の要因分析や、2012年度に行ったCO2排出量削減に向けた具体策などが紹介された。

 日産全体でのCO2排出量は、2005年度を基点とした数値で、2011年度が92.0%まで削減していたのに対し、2012年は91.7%と、わずか0.3%の削減にとどまっている。この大きな要因になっているのは、2011年3月に起きた東日本大震災から連動する原子力発電所の停止。これによって電力係数に含まれるCO2排出量が大きく増加してしまい、日本国内での生産、販売など他方に影響して排出量削減のハードルとなっているという。原子力発電所の多くは現在でも停止状態で、この影響は2013年度も続くものと見られている。

 電力問題では、グローバル規模では「再生可能エネルギー」へのシフトが始まっており、世界各地で風力発電、太陽光発電などの導入が進められている。また、日本では日産が「特定規模電気事業者」(PPS)の免許を取得。現在は再生可能エネルギーを購入して利用する段階にとどまっているが、今後は発電にも乗り出し、周辺にある販売会社などで使う電力も供給する予定としている。このほか、NGPの中核となる日産の社内組織が、2013年度から環境企画グループが環境企画室に格上げ、環境エネルギーグループと環境リサイクル統括部は統合されて環境エネルギー技術部になったこともこのなかで発表された。これにより、環境企画と実行体制が強化されるとしている。

自動車の生産には電気は欠かせないだけに、再生可能エネルギーの導入、普及推進にも積極的に取り組んでいる

 CO2排出量削減に向けた具体策としては、国内と海外でそれぞれ1例を紹介。国内での取り組みでは、2010年に始まった日産自動車九州の「3Wet塗装技術」を例として挙げ、従来技術では塗装面の平滑化で必要となっていた中塗り工程での焼付けを最後の上塗り工程に集約。ライン上での作業時間を大幅に短縮し、CO2排出量を30%以上削減する効果を発揮していると解説した。同様の生産技術は他社にも採用する工場が存在するが、日産の場合、既存の工場で内部の配置入れ替えなどを行ないながら実現したことに大きな意義があるとしている。また、今後は2013年にメキシコ日産のアグアスカリエンテス第2工場、2014年稼動予定のブラジル新工場でも「3Wet塗装技術」を導入し、日産の全工場に「3Wet塗装技術」が展開できれば、全体で10%のCO2排出量削減につながると説明された。

日産自動車九州で行われている「3Wet塗装技術」は、下地処理後の「フラッシュ」と呼ばれる工程も省略を可能とした第4世代の塗装技術。このほか、上塗りのカラーベースに水性塗料を採用しており、VOC(揮発性有機化合物)も大幅に低下させた環境負荷の低い工場となっている

 海外の事例では、メキシコ日産が推し進めている電力会社の選択について報告。メキシコにあるアグアスカリエンテス工場では2007年から天然ガスによって発電された電力の使用を開始。2012年からは生ゴミを使った「バイオガス発電」の購入も加えられ、さらに2013年から風力発電事業による電力利用を大規模導入。これにより、2013年以降はバイオガス発電、風力発電などの再生可能エネルギーの使用率が50%を超え、2016年には80%以上を再生可能エネルギーとする計画だ。

 最後に岸エキスパートリーダーは、「われわれがサスティナビリティな会社になるために環境は非常に重要な項目。今後も様々なことを学んでいき、環境問題に真摯に取り組んでいきたい」と語った。

メキシコ日産の電力選択では、生産コストはそのままに、CO2排出量削減を実現していることも注目点。早い段階から「バイオガス発電」を導入している点もユニークだ

(編集部:佐久間 秀)