パイオニア、AR ヘッドアップディスプレイを搭載した新型「サイバーナビ」発表会 スマートフォン連携可能な2DIN車載機「アプリユニット」も実機展示 |
パイオニアは5月8日、カロッツェリアブランドより5月下旬から7月下旬にかけて発売する新型「サイバーナビ」の発表会を開催した。この発表会においては、5月下旬に発売するスマートフォン連携可能な2DIN車載機「アプリユニット」についても、その詳細が説明された。
サイバーナビは、2011年モデルにおいてARスカウターモードを搭載。約31万画素のCMOSイメージセンサーと画像解析ユニットからなる「クルーズスカウターユニット」を接続することで、ナビ画面とイメージセンサーから取り込んだ映像を合成して、AR(拡張現実)表示を実現していた。
2012年モデルの新型サイバーナビでは、AR HUD(ヘッドアップディスプレイ)ユニットを用意。サイバーナビ、クルーズスカウターユニット、AR HUDユニットを組み合わせることで、ナビ画面をフロントウインドーの前方に映し出す。
1DIN+1DINモデルの「AVIC-VH99HUD」 | 2DINモデルの「AVIC-ZH99HUD」 |
この新型サイバーナビは、1DIN+1DINモデルと2DINモデルを用意。1DIN+1DINモデルの「AVIC-VH99HUD」、2DINモデルの「AVIC-ZH99HUD」は最初からAR HUDユニットがセットとなったモデルだが、「AR HUDユニット ND-HUD1」(10万5000円)として別売もされており、「AVIC-VH99CS」「AVIC-ZH99CS」「AVIC-VH99」「AVIC-ZH99」では、このオプションを購入することでAR HUDが利用可能になる(AVIC-VH99、AVIC-ZH99では、別途クルーズスカウターユニット ND-CS2が必要)。
また、2011年モデルのサイバーナビ(AVIC-VH09CS、AVIC-ZH09CS、AVIC-VH09、AVIC-ZH09、AVIC-ZH09-MEV)でも、「12年春 全データ更新」を行うことで、AR HUDユニットが使用可能となる。
製品形態 | 商品名 | 型番 | 店頭予想価格 | 発売時期 |
1DIN+1DIN | 7V型ワイドVGA地上デジタルTV/DVD-V/CD/Bluetooth/USB/SD/チューナー・5.1ch対応・DSP AV一体型HDDナビゲーションクルーズスカウターユニット・AR HUDユニットセット | AVIC-VH99HUD | 32万円前後 | 7月下旬 |
7V型ワイドVGA地上デジタルTV/DVD-V/CD/Bluetooth/USB/SD/チューナー・5.1ch対応・DSP AV一体型HDDナビゲーションクルーズスカウターユニットセット | AVIC-VH99CS | 24万円前後 | 5月下旬 | |
7V型ワイドVGA地上デジタルTV/DVD-V/CD/Bluetooth/USB/SD/チューナー・5.1ch対応・DSP AV一体型HDDナビゲーション | AVIC-VH99 | 20万円前後 | ||
2DIN | 7V型ワイドVGA地上デジタルTV/DVD-V/CD/Bluetooth/USB/SD/チューナー・5.1ch対応・DSP AV一体型HDDナビゲーションクルーズスカウターユニット・AR HUDユニットセット | AVIC-ZH99HUD | 30万円前後 | 7月下旬 |
7V型ワイドVGA地上デジタルTV/DVD-V/CD/Bluetooth/USB/SD/チューナー・5.1ch対応・DSP AV一体型HDDナビゲーションクルーズスカウターユニットセット | AVIC-ZH99CS | 22万円前後 | 5月下旬 | |
7V型ワイドVGA地上デジタルTV/DVD-V/CD/Bluetooth/USB/SD/チューナー・5.1ch対応・DSP AV一体型HDDナビゲーション | AVIC-ZH99 | 18万円前後 | ||
7V型ワイドVGA地上デジタルTV/DVD-V/CD/Bluetooth/USB/SD/チューナー・DSP AV一体型HDDナビゲーション | AVIC-ZH77 | 15万円前後 |
パイオニア 取締役 カーエレクトロニクス事業統括部長 黒崎正謙 |
■日本ではカーナビのフルラインアップ戦略を採用
パイオニア取締役 カーエレクトロニクス事業統括部長 黒崎正謙氏は、発表会の冒頭中期事業計画を紹介。欧米、新興国、日本と各市場にあわせてカーナビをグローバルに展開していくとし、とくに日本では、PND(Portable Navigation Device)タイプ、メモリータイプ、高機能タイプ、スマートフォン連携タイプをフルラインアップ展開をしていく。
国内のカーナビ市場では、これまでPNDが急速な伸張を示してきたが、地デジに対応しない機種がほとんどであること、そして簡易なナビゲーションであればスマートフォンで事足りることから伸びが鈍化。パイオニア調べによる2011年度の国内販売台数ではA/V/N(AV+ナビゲーション機能一体型カーナビ)が対前年比108%となっており、総販売台数は減ったものの、地デジも視聴可能なA/V/Nタイプが伸びている。
パイオニアの企業ビジョン | 中期事業計画では、2014年3月期に純利益210億円を計画 | 市販事業、OEM事業、新規事業が3つの柱となる |
カーナビの地域別展開マトリックス。日本市場では、フルラインアップのナビを揃えていく | 国内市販カーナビ市場の推移。2011年度は、PND市場が小さくなり、A/V/N市場が伸びた。今年度も同様の傾向が続くと見ている |
黒崎氏は、エコカー補助金やエコカー減税による新車台数の増加、地デジ視聴可能な機種への乗り換え、震災からの復興需要などがあることから、2012年度も総販売台数は増えないものの、A/V/Nタイプが前年比105%になるとの見方を示した。
そのために同社がラインアップするのが、先進性と高付加価値をあわせ持つサイバーナビ、ボリュームゾーンに向けたメモリーナビである「エアーナビ」「楽ナビLite(ライト)」、EV(電気自動車)市場へ向けた「EVナビ」、そしてスマートフォンとの連携機能を持つアプリユニットになる。
スマートフォンの出荷台数は右肩上がり。このスマートフォンをクルマで使いたいというニーズが高まっていると言う | スマートフォン連携可能なアプリユニット |
高機能タイプのナビとして新型サイバーナビを用意 | 4ジャンルのカーナビで市場を活性化していく |
■AR HUDユニットは4つの表示モードを用意
新型サイバーナビについては、AR HUDユニットを担当するカー事業戦略部 スマートビジョン事業開発室の橋田雅也氏、ナビを担当するカー市販事業部 マルチメディア事業企画部 企画1課 枝久保隆氏から詳細な説明が行われた。
カー事業戦略部 スマートビジョン事業開発室の橋田雅也氏 | カー市販事業部 マルチメディア事業企画部 企画1課 枝久保隆氏 |
橋田氏は、これまでHUDが飛行機や一部の高級車などに搭載されていたことを紹介。パイオニアが手がけるAR HUDの特徴は、レーザーでナビ情報を描いていくことにあり、世界初の車載用レーザーHUDになる。これは、同社がこれまでLD(レーザーディスク)やDVD、Blu-rayで蓄積してきた光学・レーザー技術を応用しており、「液晶で描くHUDと異なり白浮きのない浮遊感のある映像が見られる」と言う。
また、現実の風景にAR HUDの映像を重ね合わせて投影するのだが、ずれのない重ね合わせのためにはサイバーナビならではの高精度測位技術があると言う。
AR HUDのイメージ映像。フロントウインドー越しの景色とAR HUDの画面を同時に見ることができる。左下は、カーナビ本体の表示 | 新型サイバーナビは、未来のカーナビを現実にしたもの | 2011年モデルと比較しての強化点 |
一般的なHUDに関しての説明 | AR HUDはレーザーを使用して、情報の描画を行っている |
AR HUDは、映像を描くスクリーン部が収まったユニット、映像を反射し透過風景と重なりあって見えるようにするコンバイナー部から構成されている。映像はレーザービームによってスクリーン部にラスタースキャン方式で描かれ、いわば電子ビームで映像を描くブラウン管テレビと同様の走査を行っている。書き換え周期は20~24Hzで、3m先に37インチ相当(90cm×30cm)の画面が広がって見える。3mにした理由は、「2mでは近すぎるため3mにした」と言い、部署でのテストを行って実際の見え方の確認もしている。
これだけのユニットをサンバイザーの位置に取り付けると安全面が気になるところだが、コンバイナーの端部が頭部方向を向いていないこと、事故の際に衝撃を逃がす設計になっていること、頭部衝撃に関する法定基準を満たし、公的機関による試験でも確認していることなどから安心して使えるものであると言う。
AR HUDユニットの仕組み。スクリーン部とコンバイナー部から構成されている | 3m先に37インチ相当の虚像が浮かび上がる | サンバイザーを撤去して取り付ける。簡易的な遮光機能も装備する |
AR HUDユニット | AR HUDユニットを横から。右がフロントウインドー | やや緑がかって見えるのがスクリーン部 |
スクリーン部のアップ | ドライバー側から見たところ | 下から見たところ。左側には、ARスカウターユニット用のイメージセンサーが取り付けられている |
安全面への配慮 |
また、ナビ画面の位置に比べて視点移動時間を半減させられることや、3m前方に虚像を投影するため焦点をあわせる時間を低減できることなどを実証実験によって確認しているほか、描画に使用しているレーザーも安全規格のクラス1以下となっており、人体への影響はないものであるとした。
このAR HUDユニットに描かれるナビ情報は、「HUDドライバーモード」「HUDマップモード」「HUDハイウェイモード」「HUD交差点リスト表示」の4モードが用意されている。
HUDドライバーモードでは、ルート案内矢印や案内地点までの距離、到達予想時刻、交差点レーン情報などが表示される。HUDマップモードは、シンプルな地図表示が行われるモード。国道および都道県番号、周辺道路地図などが表示され、自車が中心部に表示されている。
HUDハイウェイモードは、高速道路走行時に表示されるもので、直近3施設の情報が表示され、各区間の渋滞状況が表示される。また、HUD交差点リスト表示は、HUDドライバーモードから自動切り替え可能なモードで、交差点停車時に3つ先までの案内表示を行ったり、赤信号の検知表示を行い、青信号への変化時などに注意を促したりする。ある程度情報量を制限しているのは安全のためでもあり、運転に必要な情報のみに限定しているものであると言う。
HUDドライバーモード画面 | 実際に走行中に表示されたHUDドライバーモード画面 |
HUDマップモード画面 | 実際に走行中に表示されたHUDマップモード画面 |
HUDハイウェイモード画面 | HUD交差点リスト表示 |
新型サイバーナビではARスカウターモードも進化しており、道路脇にある速度制限表示を認識。速度制限標識を認識すると、効果音とともに画像を抜き出して左下に一定時間表示する。また、それらの速度制限表示が自動的に登録され、地図画面上に表示されるようになる。速度制限標識には、制限の開始や終わりを示す補助標識が伴っている場合もあるが、これについては現時点では認識していないとのことだ。
そのほか、新型サイバーナビでは2011年モデルに比べ、パフォーマンス面での強化も図られている。2011年モデルでは約30秒だった起動時間を約10秒に高速化。ルート探索時間も、東京都庁から静岡県庁で比較した場合、約17秒から約13秒に高速化されている。これらの機能は、ハード面への変更によって実現されている部分もあり、2011年モデルをバージョンアップした場合は、必ずしも新型サイバーナビと同等になるわけではない。
カー市販事業 マルチメディア事業企画部 企画1課 千葉隆夫氏 |
■スマートフォンをとことん楽しむための車載器「アプリユニット」
新型サイバーナビの発表会では、昨日発表された2DIN車載機「アプリユニット」に関する説明も行われた。カー市販事業 マルチメディア事業企画部 企画1課の千葉隆夫氏は、ベースモデルの「SPH-DA05」と地デジ&DVDモデルの「SPH-DA09」を紹介。いずれもマルチタッチ可能な7V型のワイドVGAパネルを搭載し、スマートフォンのiPhoneやAndroidとは専用ケーブルで接続(Android端末は、別途Bluetoothでの接続も行う)。専用のアプリをインストールすることでスマートフォンを、アプリユニットから操作できるようになる。
ベースモデルのSPH-DA05 | 地デジ&DVDモデルのSPH-DA09 |
会場で流されたイメージ映像 | スマートフォンと同様の操作を、2DIN車載機で実現できる | 専用アプリで、ジャケット表示しながらの曲再生も可能 |
上下左右にスワイプ可能 |
CANデータを利用するアプリを入れれば、クルマの情報を表示できる | コンパス機能を持つアプリ | |
グルメ情報アプリ | カーナビアプリ | フリーワード検索が可能だ |
地図の縮小拡大もスマートフォンと同様の操作 |
用意されるアプリは、カーナビアプリのほか、インターネットラジオやYoutubeなどを視聴可能なAV系のアプリ。グルメ情報紹介アプリや天気情報アプリ、別途Wi-FiタイプのOBDIIコネクターを利用してクルマの情報を取得するアプリなど。もちろん、スマートフォンの基本機能である、連絡先や写真なども表示でき、対応アプリではスマートフォンと同様のマルチタッチによるピンチイン・ピンチアウトなどが行える。
アプリユニットとスマートフォンの接続方法 | スマートフォン側に「Linkwith」ランチャーアプリをインストールする | iPhone、Androidそれぞれに用意された別売の接続ケーブルで接続する |
音楽系のアプリ | 音楽・映像系のアプリ | 便利・エンタメ系のアプリ |
ナビアプリ | グルメアプリで見つけた店舗の住所をナビアプリでルート案内するといったシームレスな連携が可能 |
アプリの処理はスマートフォン側で行い、アプリユニットは表示のみを行う仕組みになっている。また、このアプリユニットは車載用のGPSセンサー、クリスタル3Dハイブリッドセンサー、車速センサーを装備。カーナビアプリとの連動が可能なため、スマートフォン単体動作時よりも、より高精度なナビゲーションが可能となっている。
スマートフォンとの画面連動規格としてはパイオニアもコアメンバーとなっているMirrorLinkがあるが、同社独自規格として連動しているとのこと。また、アプリユニット本体は、仕様上もMirrorLinkに対応していない。
【お詫びと訂正】記事初出時、会場での質疑応答の結果MirrorLink対応可能と記していましたが、訂正が入り、アプリユニットはMirrorLink非対応機となります。お詫びして訂正致します。
このアプリユニットと連動するアプリの開発を、欧州、日本、米国の3地域で促進しており、世界中の価値あるアプリを増やしていく予定であるとした。
車載機は2機種をラインアップ | 欧州、日本、米国で対応アプリ開発を働きかけていく | 新着の対応アプリの案内機能も備えている。ダウンロードは、iPhoneならAppStore、AndroidならGoogle Playからとなる |
■AR HUDユニットに表示される要素
記事の最後に新型サイバーナビのAR HUDユニットに表示される要素を画面で紹介していく。イメージ映像からとなるので、実際に表示される画面とは異なる部分があるかもしれない。情報要素としては同一となるので、参考にしていただきたい。なお、HUD交差点リスト表示は、HUDドライバーモードと一体になって表示されており、交差点停車時にリスト表示に切り替わっていた。
●HUDドライバーモード
●HUDハイウェイモード
●HUDマップモード
(編集部:谷川 潔)
2012年 5月 9日