ブリヂストン、スポーツフラッグシップ「POTENZA RE-11A」説明&試乗会(前編)
「サーキットでのDRY性能の進化」を目指したタイヤ


 ブリヂストンは5月9日、フラッグシップスポーツタイヤ「POTENZA RE-11A(ポテンザ アールイー イレブン エー)」を発表。発売サイズは、185/60 R14 82H~265/35 R18 93Wの19サイズで、5月9日より順次発売していく。

 本記事では、富士スピードウェイで開催されたRE-11Aの説明&試乗会を前編、後編に分けてお届けする。

ブリヂストンの一般公道向けスポーツタイヤの頂点に立つRE-11AトレッドパターンはRE-11と同じ。手前がアウト側になり、ジグザグ形状のシームレスステルスパタンが刻まれるRE-11とRE-11Aの外観の識別点は、このロゴのみ。RE-11Aは、RE-11のスペシャルコンパウンド版だと考えれば間違いないだろう

 POTENZAと言えば、ブリヂストンのスポーツタイヤブランドとして圧倒的な知名度を誇る製品。1979年に初代となるPOTENZA RE47が発売され、1990年には大ヒット作のPOTENZA RE71が発売。このRE71は、ポルシェやフェラーリの標準装着タイヤになるなど、国産タイヤの優秀さを世界に知らしめたタイヤだ。

 現在、一般公道向けPOTENZAブランドのタイヤは、ドライ&ウエット性能の両方を重視する「S001」と、ドライグリップを最重要視する「RE-11」の2ラインがあり、RE-11Aは製品名からも分かるようにRE-11の後継製品。トレッドパターンは、全く同一で、コンパウンドをよりハイグリップ志向のものに変更し、タイムアップを狙ったタイヤとなる。

POTENZAの歴史POTENZAの現行ラインアップRE-11Aの製品概要

ブリヂストン PSタイヤ開発第1部長 渡辺信幸氏

 ブリヂストン PSタイヤ開発第1部長 渡辺信幸氏は、RE-11Aを、RE-11と、サーキット専用タイヤ(通称Sタイヤ)「RE-11S」の間に位置するタイヤであると紹介。より速さを狙ったタイヤとなっている。

 開発目標は、「サーキットでのDRY性能の進化」。そのために、タイヤの横力(摩擦力)向上を目指し、新コンパウンドを開発した。この新コンパウンドは、RE-11のものより路面の凹凸に対する追従性が向上しており、それが接地性の向上、グリップ力の向上に結びついている。

 ただ、グリップ力に優れるコンパウンドを単純に投入すると、接地面の剛性が低下してしまう。そのためタイヤ構造を見直し、接地面の剛性を引き上げている。

 その結果、富士スピードウェイのショートコースでは、1周目ラップタイムを2.4%短縮、最速ラップ、平均ラップとも1.7%短縮し、初期からグリップ力を発揮するタイヤになった。

開発の背景開発の方向性RE-11Aのポジショニング
新開発のコンパウンドを投入ソフトコンパウンドとなるため、タイヤの剛性バランスを最適化ドライでのラップタイムは確実に向上した

 とくにコーナリングスピードの向上がラップタイム短縮に寄与していると言い、ある区間の平均速度も4.2%向上したと言う。

 トレッドパターンの変更はなく、RE-11の特徴である「シームレスステルスパタン」や、サイドウォールの形状をイン側・アウト側で最適化する左右非対称形状などは継続採用。外観からの識別点は、サイドウォールに刻まれた「RE-11A」のロゴのみとなる。

 いわばRE-11のスペシャルコンパウンド版と言えるRE-11Aだが、その効果は顕著で、ドライのラップタイムやドライのコーナリング性能が向上。ウエットコーナリング性能も向上している。

 その分、摩耗ライフについてはRE-11より悪化。転がり抵抗の9割を占めると言われるヒステリシスロスも増えていることから、転がり抵抗係数も悪化し、RE-11よりも燃費では不利になると思われる。RE-11Aは、ドライでのグリップ向上を何よりも優先したタイヤとなっており、結果としてウエットグリップも向上という、割り切ったタイヤと言えるだろう。

RE-11Aはコーナリングスピードも向上しているタイヤ外観の変更点RE-11との比較レーダーチャート。摩耗ライフは下回っているが、グリップ関連項目は優れたものになる

ブリヂストンタイヤジャパン 消費財マーケティング本部長の鈴木将人氏

 タイヤサイズやブランディング戦略については、ブリヂストンタイヤジャパン 消費財マーケティング本部長の鈴木将人氏が説明。185/60 R14 82H~265/35 R18 93Wの19サイズを展開していくことで、インプレッサ、ランサー、シビック、86/BRZ、RX-7/8、S2000など主なスポーツ車をカバー。14インチも2サイズラインアップすることで、ロードスターや、ワゴンR/ムーヴ/ミラなどのユーザーに応えていく。

 また、RE-11Aの顔となるのは、SUPER GTドライバーの本山哲選手と山野哲也選手。この2人による情報発信をPOTENZAのWebサイトで行っていくと言う。


POTENZAブランド概要サイズ一覧本山哲選手と山野哲也選手による情報発信を、POTENZAのWebサイトで行う


開発ドライバーの山野哲也選手

 山野選手も開発ドライバーとして登壇。実際にラップタイムの向上を実現できたこと、新コンパウンドのコントロール性が高いことなどを紹介。印象的だったのはタイヤの摩耗ライフについてで、「実際にサーキットを走った際は、ライフが(RE-11より)よくなることもある」と言う。これは、RE-11ではグリップを失う領域においても、RE-11Aはグリップしており、それゆえに過剰な摩耗が起きにくいことにある。RE-11Aのグリップ力の高さが、限界域においては、摩耗に関して有利に働くようだ。平均ラップの向上にもつながっていく部分なのだろう。

 後編では、モータージャーナリストの岡本幸一郎氏による、RE-11Aのサーキットレビューをお届けする。



タイヤサイズ一覧

インチ(リム径)タイヤサイズ発売日
18265/35 R185月9日
245/40 R186月以降
235/40 R188月以降
225/40 R187月以降
17255/40 R17
245/40 R17
235/45 R17
225/45 R17
215/45 R175月9日
16225/50 R166月以降
205/50 R16
205/55 R167月以降
205/50 R155月18日
15195/50 R156月以降
165/50 R15
195/55 R155月18日
185/55 R15
14165/55 R146月以降
185/60 R14

(編集部:谷川 潔/Photo:瀬戸 学)
2012年 5月 21日