【ナビレビュー】三菱電機 2DIN 7型メモリーナビ「NR-MZ50」


NR-MZ50

 カーナビで利用されるメディアはCDからDVD、そしてHDDへと変遷を遂げてきた。そして、それに次ぐ第4のメディアとして採用が増えてきているのがSSDに代表されるフラッシュメモリー。PND(Portable Navigation Device)ではすでに当たり前のように使われているけれど、インダッシュタイプの据え置き型ナビでは高級機を中心にHDDが一般的となっている。だが、機能を絞った普及機を中心にフラッシュメモリーを使ったメモリーナビへの移行は確実に進行中だ。

 そんな中、昨年8月にリリースされたのが三菱電機のメモリーナビ「NR-MZ50」だ。同社のメモリーナビといえば、一昨年夏にNR-MZ10がリリースされているけれど、2DINモデルとしては小さめの6.1V型モニターを採用するなど、機能面ではかなり抑えられており、あくまでもベーシックモデル的な位置づけ。純正ではなくあえて市販カーナビを購入しようとする層には、ちょっと物足りないスペックだった。

機能満載の豪華なスペックを実現
 そんな不満を一掃してくれたのがNR-MZ50だ。本体はNR-MZ10と同じ2DINサイズながら、モニターは7V型と大型化するとともにWVGA(800×480ピクセル)へと解像度をアップ。加えてバックライトにLEDを採用することで輝度と色再現性も向上している。つまり、地図の見やすさはもちろん地デジをはじめとした映像を、これまで以上に美しく再現できるようになっているのだ。

 地図の記録メディアはSDカードを採用しており、容量は従来の4GBから8GBへと倍増。さらに音楽用としてもうひとつSDカードスロットが備えることで録音、再生が可能とHDDナビと同様の利便性を確保している。そのほかAV系では2チューナー、2アンテナの地デジチューナーのほか、家庭用レコーダーなどで記録したCPRMディスクの再生にも対応するCD/DVDプレーヤーを搭載する。

 さらに新機能としてBluetoothを標準搭載し、ハンズフリー通話や音楽再生だけでなく、携帯電話を利用したデータ通信にも対応。同社が運営する交通情報システム「OpenInfo」サービスにより渋滞情報の取得、渋滞データを利用したルート探索などが可能となった。

 また、ハードウェアも一新。新開発となるナビ専用LSI「SH-NaviJ3」や、映像処理用LSI「Cammue(カミュー)」の採用により高速&高精細な映像も実現している。

モニター背面にはCD/DVD、デュアルSD&B-CASカードスロットが備わる地デジチューナーは本体に内蔵。B-CASカードはミニタイプ
地図を含めデータはSDカードに。羽田空港の国際線ターミナルや北関東道が収録されるなど、わりと新しいデータが用意されている

リアルタイムの渋滞情報は実用性満点
 ナビ機能の目玉となるのが「OpenInfo」サービスによる渋滞情報取得だ。これはカロッツェリア(パイオニア)の「スマートループ渋滞情報」とリアルタイムプローブデータを共有したもので全国約70万kmにおよぶ道路に対応。VICSでは情報機器が設置された約7万kmしかカバーできないが、こちらは走行したクルマから情報を収集するため、道幅5.5m以下の細街路などをのぞく道路の情報を取得することが可能になっているワケ。

 すでにカロッツェリアのカーナビを使っているユーザーにはおなじみだと思うけれど、スマートループ渋滞情報の効果は相当に大きい。VICSのみを利用する一般的なカーナビではせっかく渋滞を避けたルートを選んだと思っても、実は情報がなかっただけで同じように混んでたなんてことがままある。が、こちらなら、ほぼ全道路の情報を網羅&リアルタイム情報を活用するため、そういったリスクはかなり少ないのだ。

 この情報はメニューから任意に取得できるほか、設定をしておけばルート案内時に定期的に情報を取得、それに基づいてより早く目的地に着けるルートを見つけてくれる。実際、レビューのために都内を走り回ってみたけれど、距離的には遠くなるルートを示されて「?」と思っていると、実は渋滞なくスムーズに走れるルートだった、なんてことが度々。通信費用が必要となってしまうものの、都市部を走る機会が多いなら実用度Maxの便利機能といえる。

 また、オンデマンドVICSにも対応。オプションのビーコンユニットと組み合わせることで、旅行時間情報の活用などにより都道府県をまたがるルート探索時などにも、より高い精度で渋滞を回避することが可能だ。

 そのほか「OpenInfo」サービスには高速道路と主要国道の開通道路情報、および電気自動車用(EV)の充電スタンド情報をダウンロードできる機能も。こちらは試すことはできなかったが、道路情報が追加されるのは間違いなく便利なハズだ。

VICSメニューにはFM、電波、光に加えてオンラインの項目を用意。最下部の「オンラインで受信する」ボタンを使えば、好きなときに「スマートループ渋滞情報」が取得できる情報が多いため渋滞表示はちょっと複雑。まず基本として実線が一般道で高速が点線。さらに線または点線のみのものがVICS、片側にピンクの補助線がつくのがオンデマンドVICS、両端に黄色の補助線がつくのがスマートループ渋滞情報となる
オンライン受信は10分ごと、20分ごと、手動に設定化。自動受信にしておけば、最適なルートを見つけると自動的に経路を変更して案内してくれる。が、画面上では文字だけなので、どこがどう変わったのかは分からないその後、通ったのがこのルート。自車位置はオンデマンドVICSによる渋滞表示がされているけれど、実際はスムーズに走行できた通信機能を利用して開通道路情報や充電スタンド情報の更新ができる
充電スタンドは周辺検索などで探せる。詳細情報も用意されている

一体型ならではの充実ナビ機能
 ナビ機能は基本機能を網羅しつつ、ブラッシュアップを行ったというイメージ。操作はタッチパネルがメイン。中央下部に用意された「AV」「INFO」「NAVI」の専用キーで基本項目を選び、その先はパネルで詳細項目を選んでいくという流れ。メニュー構成も一部を除いてわかりやすく整理されており、カーナビを使ったことがあるなら迷わず操作できるハズ。

 また、オプションとしてステアリングに装着できる丸形の「ドラコンIII」が用意されている。縮尺の変更などの際に、いちいち画面に触らずに済むので便利。……ではあるものの、目的地検索での項目移動時など、カーソル移動ができない場合がある。これはちょっと煩わしい。

 カーナビのもっとも基本となる地図表示は、WVGAモニターの採用に伴って一新。従来モデルではごちゃごちゃしてちょっとクセのある表現となっていたが、すっきりと見やすく、そして分かりやすい地図に仕上がっている。低価格帯のPNDとは異なり、市街地図がきちんと収録されているのも嬉しいポイントだ。時間に限りがあったので数地点しか確認していないけれど、収録範囲はHDDナビ並かな、といった印象。住所検索の精度にも関わってくるため、これは結構重要なポイントだ。

 で、その目的地検索の項目は名称、住所、ジャンル、周辺検索などごくごく標準的なラインアップ。電話番号検索はメディア容量が8GBということもあって企業や施設のみの対応で、個人宅は省略されている。もっとも、住所データは充実しているようなので、必要とあればそちらを利用すればいいだろう。

 ルート探索は推奨、高速優先に加え、新たに過去の渋滞統計データを元にした「渋滞予測考慮探索」と、燃料を節約できるルートを選択する「省エネルート探索」を搭載。探索されたルートを眺めてみると「推奨」より「省エネ」のほうが距離も時間も余分にかかるルートを選ぶなど、なかなか興味深い結果に。同条件での比較ができないため実際に走り比べてはいないけれど、アップダウンやストップ&ゴーが少ない、なんて要素が考慮されているのかもしれない。

画面下中央部の専用キーでそれぞれのメニューが呼び出せるのは、とても分かりやすいオプションのドラコンIII。便利だけど全機能に対応しているわけではないので使いづらい部分も「NAVI」ボタンを押した際のメインメニュー。アイコン部分はアニメーションで表示される。が、ちょっと表示がもたつく感じ
100mスケールの地図表示。モニターがワイドVGA化されたことで、文字やアイコンがとても見やすく、分かりやすい地図になった右下の地点メニューからは地図上からの目的地設定や周辺検索など、「▲」マークはサブメニューでルート案内時なら全ルートの表示などができる
市街地図は50/25/10mスケールで表示可能
一方通行表示は市街地図スケールのみ
100m以上のスケールでの地図表示。基本的に道路の表現を重視した地図といえる
3Dタイプの地図表示。市街地図では建物を立体的に表示する
左上のコンパスをタッチすることで地図表示の切り替えが可能異なる縮尺の地図を左右に表示できるスタンダード2画面表示。左画面は3D表示も可能地図とAVソースの画面を同時に表示するPsidePも用意
地図からは全部で4パターンが用意されており好みのセッティングが可能だ
名称検索時は2タッチタイプの文字入力パレットを使用。文字数が多いと面倒ではあるものの、候補表示が行われるので若干手間が省ける
and(アンド)検索も可能なので複数のキーワードからの絞り込みも可能。「▲」ボタンを使えば地域やジャンルでの絞り込みもできる周辺検索は施設リストに加え左画面に地図を表示。自車との位置関係が分かりやすく実用的だ
住所検索からルート探索までの流れ。番地レベルはリストから、数字入力のどちらでも可能。ルート探索はデフォルトでは「推奨」で行われ、「5ルート」ボタンにより他のルートを選択することができる
ルート探索は推奨、省エネ、有料優先、一般優先、距離優先の最大5ルート
この例では推奨より省エネルートが0.5km遠回り。それでも画面下に葉っぱの数で表示される省エネ度は中ぐらいの「節約できる」だ探索速度は東京駅から大阪駅で7秒4となかなかのスピード。5ルート時は53秒7と少し長めだったが、推奨ルート探索後は裏で探索を実行してくれるので、ルートの確認などをしているといつの間にか終わっている感じ
全国各地のオススメ観光ルートを収録。最大5個所の立ち寄りスポットが用意され、それぞれ立ち寄り/通過の指定ができる。各スポットの詳細情報も確認可能だ

分かりやすく実用的なルート案内
 ルート案内のメインとなるのは交差点拡大図。見た目の派手さはないもののレーンガイド&推奨レーン、交差点名、ランドマークと必要なものは揃っている。加えて、住宅地などの細街路でも拡大図&音声による案内が行われるのは実用性という意味からもポイントが高い。さらに都市部では実写をベースにしたイラストが用意されており、分かりやすさでは文句ナシ。ただ、今回走行した印象だと、収録されている交差点はあまり多くないようだなのが残念。まぁ、メディア容量との兼ね合いもあるから、仕方のないところかも。

 本機は平面だけでなく傾斜角の検知が可能な3Dジャイロセンサーを搭載しているため、自車位置精度は100%とまではいかないものの、まずまずといえるレベル。都市高速と一般道が上下に重なっているようなシチュエーションでも、安心してナビ任せにしておくことができる。

ルート案内中、交差点では拡大図による案内が行われる。シンプルだがランドマークも大きく分かりやすい拡大図には推奨レーンガイドも。複雑な道路でも安心して走れそうだ
細街路ではルート表示の色が変わる。細街路でも拡大図が表示されるので、住宅地の先にある分かりづらい目的地でも安心だ一部交差点にはイラストを用いた拡大図が用意されており、こちらの分かりやすさは抜群。収録数が少ないのが残念
都市高速入り口はイラストにより案内都市高速の分岐点もイラストで案内。車線や分岐の様子が分かりやすい
都市高速および都市間高速にはJCT(ジャンクション)やSA(サービスエリア)、IC(インターチェンジ)などを表示する専用モードを用意。予想通過時刻のほか、SA/PAに用意されている施設も分かる精度の検証として地下を走る都市高速から一般道に移動してみた。ご覧のように地図が都市高速から通常に変化、高低差をきちんと認識していることが分かる
ルート案内により目的地に到着した後にはエコスコアを表示してくれる。このエコスコアは「INFO」メニューから確認可。履歴を見ると急発進や急加速、急減速と判断された場所を見ることができる

多彩なソースに対応するAV機能
 基本的なAV機能はCD/DVDプレーヤー、フルセグ地デジチューナー、AM/FMチューナーなど、と最近の一体型ナビとしては平均的。+α的な部分はUSB接続および、メモリーナビながら専用スロットを設けることでSDカードへの録音機能を可能としている点だ。

 まず、前者はUSBメモリーに記録したMP3/WMA/AACファイルの再生に加え、オプションケーブルによりiPod/iPhoneの接続が可能で、音楽だけでなく映像ファイルの再生にも対応している。後者は音楽CDを再生することで自動的にSDカードに録音。録音速度は録再同時なら最大2倍速、録音のみなら最大4倍速となる。最近はSDカードの価格が安いため、交換可能という点を考えればHDDナビより使い勝手はいいかも。さらにBluetoothを使った携帯電話やポータブルオーディオからのストリーミング再生も可能と、このクラスのモデルとしては高いAV能力を持っているといえる。

 高音質化を図る機能として、MP3化の際に失われた中高域の復元、低域の強調を行う「PremiDIA-HD」、音に広がり感を持たせる「PremiDIA-WIDE」を搭載。このあたりは装着するクルマや好みによって是非が分かれる部分なので、販売店などで実際に自分の耳で確かめてほしい。

「AV」ボタンを押した際のメニュー画面USB端子を利用したiPod/iPhone接続にも対応。iPodを接続した場合はメニュー表示も変わる
iPod再生時はジャケット表示が可能。プレイリストなど選局項目の多さはiPod/iPhoneならでは専用スロットにSDカードを挿入しておけば音楽CDの録音が可能
こちらはSDカードに録音した曲の再生画面。CDDBにも対応しているため、曲名なども自動的に付加されるBluetoothによる音楽データのストリーミング再生もできる「PremiDIA-HD」と「PremiDIA-WIDE」は効果を2段階で設定可能
音の設定はポジションやフェーダーなどが用意されている地デジはフルセグ対応。2チューナー×2アンテナのため、ハイエンドモデルより受信感度は落ちるようだ

オプションによる機能追加もアリ
 ベーシックモデルに位置づけられることが多いメモリーナビの場合、オプションによる機能拡張が省略されていることが多い。しかし、本機の場合はかなり充実した内容を持っている。

 これからの注目株といえそうなのが「DSRC」だ。以前は価格が高く、ETC車載器とは別に装着が必要だったため手が出しにくかったが、両対応となるハイブリッド車載器「EP-4011DSB」が登場。VICSよりも広域な交通情報を得られるなど以外と便利。現状ではまだまだ道路側の整備が進んでいないため受信場所が限られてしまうものの、ETC車載器としても使えることを考えれば装着するメリットは十分ある。

 もうひとつ装着をオススメしたいのがバックカメラ。普通にバックカメラとして使えるのはもちろん、高速走行時のレーン逸脱を画面とアラームで教えてくれる。同様の機能をもつ製品はほかにもあるけれど、一般的にはフロントカメラが必要になるため、ちょっとハードルが高め。こちらはバックカメラだけでいいので、セーフティ度のアップだけでなくちょっとトクした気分にもなれる。

DSRCの受信にも対応する車載器。見た目は普通のETC車載器とほとんど差がないDSRCの内容は前方障害物情報や合流支援情報、高域情報など。合成音による情報の読み上げもある
バックカメラは後方確認用アイテムとして便利。さらにそれを利用して車線の逸脱をアラートしてくれる機能も。余計な出費なしで使えるのが嬉しい

扱いやすくコストパフォーマンスも良好!
 さて、長々と書いてきたが、買いか否か。これまで同社のナビといえば純正向けのイメージが強く、前にも書いたように以前はちょっとクセがあった。だが、NR-MZ50はそれらをほとんど解消。メモリーナビならではの軽快な操作感も相まって、とても使いやすいナビに仕上がっている。

 最近ではPNDやスマートフォンをカーナビとして使うユーザーが増えているけれど、目的地検索やルート探索などのレスポンスのよさ、2DINサイズならではの7インチの大画面、据え置き型ならではの自車位置精度の高さなど、やはり一体型ナビならではメリットは少なくない。

 それらにプラスしてスマートループ渋滞情報にも対応するなど、機能面ではフルスペックといえる充実度を誇る。価格はオープンプライスとなっているが市場価格を見る限り、ベーシックモデル並な雰囲気。となれば、お買い得度はかなり高いといってもよさそうだ。

(安田 剛)
2012年 5月 31日