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ヤマト運輸、トヨタ、日野が協力してEV小型トラックを実証運行

2011年東京モーターショー出展のコンセプトカーがベース

EV小型トラックの前に立つ、ヤマト運輸 執行役員 芦原隆氏(中央)、トヨタ自動車 常務理事 小木曽聡氏(右)、日野自動車 専務取締役 遠藤真氏(左)
2013年3月1日発表

 ヤマト運輸、トヨタ自動車、日野自動車は3月1日、EV(電気自動車)小型トラックの実証運行を協力して行うと発表した。これは、EV小型トラックによる環境負荷の低減、集配業務の効率化を確認するためのもので、EVトラックを日野が開発し、ヤマト運輸が運用。トヨタ自動車はこの実証運行に協力するものとなる。

 同日、ヤマト運輸 東京主管内で説明会と実車が公開され、今回の実証運行の狙いなどの説明が行われた。

 今回の実証運行は、2013年3月から2014年4月まで1年間にわたって行われ、東京都板橋区と町田市のヤマト宅急便センターにそれぞれ1台のEVトラックを配備。車両の使い勝手の評価を図るとともに、春夏秋冬1年間を通しての消費電力・バッテリー性能を評価。1年後のバッテリー性能を確認するものとなっている。

EV小型トラック
項目内容
ボディーサイズ(全長×全幅×全高、mm)4695×1830×2600
床面地上高(mm)440
荷台 内寸法(長さ×幅×高さ、mm)2980×1685×2100
荷室内容(3室)冷凍室、冷蔵室、ドライ室
車重(kg)2690
最大積載量(kg)1000
乗員(人)2
車両総重量(kg)3800
モーター 最高出力(kW)70
モーター 最大トルク(Nm)280
バッテリーリチウムイオンバッテリー
バッテリー容量(kWh)28
バッテリー電圧(V)350
最高速度(km/h)60(市街地走行に限定し、速度リミッターで制御)
充電時間 普通充電約8時間(200V)
充電時間 急速充電約45分(CHAdeMO方式、50kW)

ヤマト運輸がEV実証運行に参加する意図

ヤマト運輸 執行役員 芦原隆氏

 ヤマト運輸 執行役員 芦原隆氏は、ヤマト運輸がこの試験に参加する意図を解説。「ヤマト運輸は4万400台の車両を運用しており、その85%が街中で走っている集配車」「創業100周年(1919年創立)までの経営計画を定めており、4つの満足を実現したい」と言い、経営計画で目指す4つの満足「お客さまの満足」「社会の満足」「社員の満足」「株主様の満足」に「EVは有効なツールなりうるのではないかという期待を持っている」と語る。

 現在、ヤマト運輸は1人のドライバーが次々に集配していくワンマンの軒先集配から、駐車個所(ドッキングポイント)を決め、そこにトラックを停車。そこからは、自転車や台車などで集配するFC(フィールドキャスト)に荷物を渡すチーム集配への取り組みを行っている。今回実証運行するEVトラックは、従来のディーゼルトラックと比べて、床高さは860mmから440mmへと低床化されていることから、荷物の積み卸しが容易になり、女性が多いFCの負担が減るのではないかと予想している。また、従来、個別に行っていた荷物の受け渡しを、コンテナごとにできるため、その面でも作業性の向上が期待できるとした。

ヤマト運輸のネットワーク
経営計画で目指す4つの満足
ヤマトグループが取り組むネコロジー
CO2削減に取り組んでいる
チーム配送にすることで配送の効率化に取り組む
EVトラックのメリット
EVトラックによる配送イメージ
EVトラックに期待する価値

 ヤマト運輸は、安全性、高品質、作業性、利便性、公共性の面で、EVトラックの導入価値を検証していく。

FF超低床プラットフォーム

日野自動車 専務取締役 遠藤真氏

 EVトラックについては、日野自動車 専務取締役 遠藤真氏が解説。日野では低公害車を実用低公害車のHV(ハイブリッド車)、次世代低公害のEV・PHV(プラグインハイブリッド車)・FCV(燃料電池車)と分類しており、今回のような短距離ルートの集配用途ではEVが適していると位置づけている。ベースとなったのは、2011年の東京モーターショーに出展したコンセプトカーで、それを発展させ、前輪をモーターで駆動するFFで、超低床のプラットフォームを開発した。

 プラットフォーム単体では100km程度の航続距離を持っているが、荷室などの上物を架装した状態では、数十km程度。とくにクール宅急便用の冷蔵庫などを搭載するので、気温や荷物の状況などでも航続距離が異なってくるため、それらを含めて実証運行で確認していく。

 充電コネクターは、普通充電コネクターとCHAdeMO方式の急速充電コネクターを装備。そのほか、冷蔵庫をあらかじめ冷やしておくための電力を得る200Vコネクターを装備する。

低公害車の種類と構造
次世代低公害車の特徴
将来モビリティの棲み分けイメージ
宅配事業車両の将来
EVトラックの概要
EVトラックの構造
上物仕様
床面地上高の比較
実証運行の計画と狙い

 車両の価格については「思索的な部分が多いため、驚くような価格」(遠藤氏)と言い、従来のディーゼルトラックを置き換えていくような存在になるかどうかは、実証走行試験の結果が影響してくるのだろう。

 説明会の後、実際に荷物の積み卸しデモが行われたが、低床を活かした荷物の積み卸しは、明らかに工数が少なく、スタッフの負担も軽そうに見える。EVトラックの普及については、今後のバッテリーやモーターの進化&低コスト化などもあるだろうが、超低床のパッケージのもたらすメリットは意外に大きいのではないだろうか。3社は1年を通じて実証運行を行っていくことで、EVトラックのメリットを実際に確認していく。

EVなので、走行音はとても静か。クルマの接近を歩行者に知らせる両接近通報装置の音だけが聞こえる
灯火類もLED化されているようだ。排気管はEVのため存在しない
荷室。クロネコマークの入っているケースが、コンテナ
伝票などを書く場所
クール宅急便の冷蔵庫など
床の低さがポイント。床高さ440mmと従来の約半分
充電コネクターなどは車両右側に配置されていた。下の2つが普通充電と急速充電のコネクター。上のコネクターは冷蔵庫をあらかじめ冷やしておくための200V給電コネクター。保冷車で使われている一般的な形状のもの
運転席まわり
スピードメーターは160km/hまで刻まれているものの、60km/hのリミッターが設定されている
アクセルとブレーキの2ペダル

●従来のチーム配送オペレーション

従来のチーム配送オペレーション。台車を取り出し、そしてコンテナを組み立て、個別の荷物を手渡ししていく荷物の個数が増えれば、さらにステップ数が増えていく。ちなみに、現在はこの作業を倍の床高さの車両で行っている

●超低床EVトラックで可能になるチーム配送オペレーション

台車を下ろして、コンテナを乗せれば配送準備完了
横から見たところ

(編集部:谷川 潔)