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ヤマトHD、多機能スーパーハブ「厚木ゲートウェイ」を公開

「スパイラルコンベア」「クロスベルトソータ」などの設置で当日配達エリア拡大

厚木ゲートウェイの外観
2013年8月6日竣工

 ヤマトホールディングスは、7月に発表した次世代物流ネットワーク「バリュー・ネットワーキング構想」の一環として立ち上げる都市間物流拠点「厚木ゲートウェイ」を8月6日に竣工。8月13日に報道機関向けの内覧会を実施した。

 厚木ゲートウェイは、関東、中部、関西という日本国内の経済活動における中核都市圏を多頻度幹線輸送で繋ぎ、宅配サービスの当日配達を実現することを目的とした「ゲートウェイターミナル」の第1弾。また、バリュー・ネットワーキング構想で海外市場との玄関口として建設が進む「羽田クロノゲート」に届いた海外からの荷物を、国内のベース(各地にある流通拠点)に振り分けるハブ拠点としての役割も与えられた「多機能スーパーハブ」となっている。

トラックで運んできた荷物を搬入する「着車バース」は34カ所を用意
建物の外壁には太陽光発電用のパネルが設置されている
敷地内にはガソリンスタンド、機械式洗車機なども備えている
施設概要
名称厚木ゲートウェイ
所在地神奈川県愛甲郡愛川町中津字桜台4001-8、4001-9
延床面積/敷地面積90,499.97m2(27,376坪)/36,580.36m2(11,065坪)
構造鉄骨造8階建
竣工/営業開始2013年8月6日/2013年8月11日
入居会社ヤマト運輸株式会社、ヤマトロジスティクス株式会社、ヤマトフィナンシャル株式会社
その他(環境対応設備・事業継続対応)太陽光発電、非常用発電設備、一部LED照明、免震構造

関東の玄関口である厚木に建設

ヤマトホールディングス 広報戦略担当マネージャーの片桐章裕氏

 施設見学の前後では、7月に行われたバリュー・ネットワーキング構想の再説明、厚木ゲートウェイのアウトラインと特徴的なポイントの紹介、見学内容に関する質疑応答などが行われた。このなかでヤマトホールディングス 広報戦略担当マネージャーの片桐章裕氏は、この場所にゲートウェイターミナルを設置した理由について「ゲートウェイ構想は関西、中部との連携が重要です。そこで、関東の西側の玄関口としての立地を重視して厚木を選びました。東名高速道路とも近く、圏央道の真ん中であることもメリットになります」と説明する。厚木ゲートウェイは圏央道の相模原愛川IC(インターチェンジ)からクルマで5分ほどの場所にあり、海老名JCT(ジャンクション)から東名高速道路を利用できるほか、将来的に圏央道の開通が進めば埼玉県や茨城県といった北関東ともスムーズなトラック輸送が可能となる。これにより、3都市圏の当日配送エリア拡大が実現されるという。

24時間体制で荷物の仕分けを行い、3都市圏を多頻度輸送で連結。海外から羽田クロノゲートに届いた荷物の国内配送も担当する
荷物を扱うフロアをコンベアで繋ぐ「スパイラルコンベア」が厚木ゲートウェイの大きな特徴
バリュー・ネットワーキング構想における一般ユーザー向けの「分散在庫型スピード通販」、製造業向けの「クロスマージ」などの拠点になる
スライドによる解説を受けたあと、ヘルメットを着用して施設見学がスタート

 最初に見学したのは、トラックによって運ばれてきた荷物を受け取る1階の「宅急便荷搬エリア」。ここでは新たに導入した「前詰め搬送機」という装置について紹介された。これまではトラックで運ばれてきたロールボックスパレットを1つ1つ作業員が押して集荷ベルトの前まで移動させていたが、このパレットは1つが600kg前後の重量があってかなりの重労働であることに加え、ときに作業員が怪我をする原因にもなっていた。前詰め搬送機を利用した場合、作業員はトラックから出されたパレットを少し移動させて搬送機床面のローラーにセットすれば、あとは自動的に奥までパレットが移動していく。これにより作業員の人数と労力を大幅に削減可能で、ゲートウェイ構想の24時間稼働に欠かせない装置となっている。

ロールボックスパレットの移動を機械化する「前詰め搬送機」。わずか5mほどの距離だが、重いパレットを次々と処理するために導入されている
預かった荷物を安全に効率よく運ぶために利用されるロールボックスパレット。600kg前後の重さになり、男性作業員が両手で押してやっと動くほど重量がある。段ボール箱だけでトラックに積む場合と比べて4割ほど運べる荷物が減ってしまうが、荷物の安全と効率を優先して採用している
見学では空の段ボール箱によるダミーを載せた状態で作業デモを実施。1人の作業員の手で3列並んだパレットが次々と奥に進んでいく
1階で紹介されたもう1つの省力化の取り組み。花などコンベア上で安定しない荷物はゴムベルト付きのトレーに乗せて運んでいるが、従来は使ったトレーを定期的に回収して運搬する必要があった。厚木ゲートウェイではコンベアを2段式にして下にトレーを配置し、トレーも常に循環して必要なときに使える体制を整えている

 2階では厚木ゲートウェイが実現した「発着同時スピード仕分け」について紹介。1階からコンベアに乗せられてきた荷物は、2階フロアを縦横に走るコンベアで移動するうちに送り先エリアごとに高速で仕分けされていく。

コンベアのレーン上に荷物の表面に貼られた伝票を瞬間的に読み取るスキャナーを設置
ベルトコンベアのレーンには分岐時に床面を支える「クロスベルトソータ」や「大物スライドソータ」「フラットソータ」など多彩な技術が投入されている
2階フロアには段ボール箱に入っていないメール便などの小口荷物の仕分けスペースも設置。小さな荷物はグリーンのボックスに入れて運ばれる
コンベアのレーン脇にはレーンの状況をチェックするためのモニターが定期的に設置されている
2階フロアのようす

 厚木ゲートウェイの大きな特徴である上層階と下層階を連結させる「スパイラルコンベア」。厚木ゲートウェイでは上層階を「付加価値機能エリア」と定め、バリュー・ネットワーキング構想で目指す「分散在庫型スピード通販」「クロスマージ」などの在庫保管、カスタマイズアッセンブルなどを行うスペースとなっている。送られてきた荷物を上層階に運び、上層階で流通加工が行われた荷物を1階からトラックで送り出す作業が日常化することから、各階を繋ぐスパイラルコンベアが採用され、これを利用することでエレベーター搬送の手間を削減し、作業員などが荷物に触れる回数を減らして高品質化とスピードアップを実現するという。

交互にスパイラルしながら上下のフロアを連結するスパイラルコンベア。これは上層階から荷物が降りてくるコンベアとなる
グリーンに塗られているのがスパイラルコンベアのレーン

 3、4階はクール便を扱うクールエリア。バリュー・ネットワーキング構想で予定される「国際クール便」やゲートウェイ構想の当日配送などでクール便の取扱量が増えると予想されるため、仕分け用のクール室も広大なスペースが充てられている。

オレンジ色のロールスクリーンの奥が仕分け室。内部の冷気を逃がさないよう、出入り口にはエアカーテンが設置されている
広々とした仕分け室
クール便の荷物は専用の充電式クールボックスで運ばれてくるため、ベルトコンベアではなく専用のエレベーターで1階から届く
充電式クールボックスからコンベアに乗せられ、中2階状態のフロアで送り先ごとに仕分けされる
ベルトコンベアのレーン下には緊急停止用のワイヤー式停止スイッチが設置されている
キャスターを備える充電式クールボックス。温度設定は-20℃
クールボックスは充電用のソケットを持ち、仕分け作業中にコンベアレーンの上に設置されたケーブルから給電する

 最後に見学したのは5、6、8階に設定された付加価値機能エリア。とはいえ、まだ入居するテナントが5社の決まっただけの段階で、5、6階が各3100坪、8階2400坪の合計8400坪という広大な貸し出しスペースがなにも置かれない状態で広がっていた。将来的には入居予定の健康食品、化粧品、百貨店といった通販事業者などが利用することになるという。

 今後もヤマトホールディングスは、今年9月下旬に稼働開始予定の羽田クロノゲート、2015年以降に完成予定の中部、関西のゲートウェイなどを活用して事業イノベーションを進めていくとしている。

(編集部:佐久間 秀)