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ヤマトHD、「国際クール宅急便」開始など「バリュー・ネットワーキング構想」発表会

「止まらない物流」体制の構築で、物流コストの引き下げへ

「バリュー・ネットワーキング構想」を発表したヤマトホールディングス 社長 木川眞氏
2013年7月3日発表

左から、ヤマト運輸 社長 山内雅喜氏、ヤマトホールディングス 社長 木川眞氏、ヤマトロジスティクス 社長 金森均氏

 ヤマトホールディングスは7月3日、ヤマト運輸、ヤマトロジスティクスと共同で次世代物流ネットワーク「バリュー・ネットワーキング構想」に関する発表会を開催した。ヤマトホールディングス 社長 木川眞氏、ヤマト運輸 社長 山内雅喜氏、ヤマトロジスティクス 社長 金森均氏が出席し、その構想について説明を行った。

 クロネコヤマトの宅急便で知られるヤマト運輸は1919年に創業。当初は貸し切りトラックによる運送業を行っていたが、創業10年目に東京~横浜間で本格的な定期便を開始。これが日本初の路線運送事業となる。その後、1976年に小口貨物の特急宅配システム「宅急便」を開始。2005年には、ホールディングス制の企業形態へと変更している。

 ヤマトホールディングス 社長 木川眞氏は、この新しい「バリュー・ネットワーキング構想」を、路線事業の開始、小口貨物事業の開始に続く、第3の事業イノベーションと位置づけている。この新しい貨物輸送形態により、「安倍総理が進めている、日本の成長戦略をインフラとして支えていく」と言う。

 その特徴は、物流全体の最適化をすることで、物流コストを下げ、もの作りを行う企業の国際競争力を向上させること。大手通販業者などは独自に物流システムを作り上げ、当日配送や翌日配送を実現しているが、中小の業者でもヤマトの物流システムを使うことで、国内の当日配送、アジア地域との翌日配送が実現でき、国際クール宅急便でもその配送スピードを得られるようになる。

バリュー・ネットワーキング構想の概要

 ヤマトは、価値を付加しながら物流ネットワークを結節する「止まらない物流」、出荷場所・形態・量を問わない「クラウド型のネットワーク」、国際クール宅急便の開始、グローバルな物流の見える化、荷物の受け手視点の「デマンド・チェーン視点」の物流システム構築を行っていく。

 そのために、羽田空港近くに1400億円を投資して6万坪の敷地面積を持つ物流拠点「羽田クロノゲート」を建設。アジア地域との物流拠点として那覇空港近くに「沖縄国際物流ハブ」を構築。さらに、国内三大都市圏の都市間物流拠点も建設する。関東圏は「厚木ゲートウェイ」として建設中で、中京圏は三河地区(豊田市)に用地を取得済み、関西圏は用地選定をしている最中だと言う。

現在建設中の羽田クロノゲート
羽田クロノゲート完成イメージ
羽田クロノゲートの役割
ほぼ完成している厚木ゲートウェイ
厚木ゲートウェイの役割
沖縄国際物流ハブ
沖縄国際物流ハブは、ANAの貨物便を全面的に活用している
沖縄国際物流ハブの役割

 ヤマトのイメージするバリュー・ネットワーキング構想は、これら物流拠点に付加価値機能を持たせることで、在庫の圧縮、配送の高速化・効率化を実現する。たとえば、羽田クロノゲートでは保税や通関・ローカライズを実施。チラシの封入や各種メンテナンスを請け負うことで、中小の業者でも大手通販業者並みのスピード出荷を低コストで実現できるようになる。

 とくに羽田クロノゲート、沖縄国際物流ハブの利用では、アジア地域への翌日配送をイメージしており、夕方までに羽田に集荷し、ANA(全日本空輸)の貨物便を使って24時に羽田から那覇へ空輸。2時40分頃那覇に到着し、そこからアジアの各地域に航空便で荷物が運ばれていく。たとえば、北海道のカニや長野のリンゴが、翌日の夕方にはアジアの市場やレストランに並んでいると言う。これだけのスピードを実現するには、相手国の通関の速度向上も必要で、当初は香港からサービスを開始。次は台湾など、徐々に国際クール宅急便を含むアジア地域への翌日配送を広げていきたいとした。

 そのほか、これら物流拠点では荷物のマージ作業も行う。たとえば、全国各地のメーカーから出荷されたある小売店向けの商品を物流拠点でマージすることで一括配送でき、またあるメーカーからざまざまな小売店向けに発送される商品を一括で引き受けることもできるとする。多対多のネットワークを、多対1対多というネットワークに作り替えることで、全体の物流コストを抑制する。

 さらに、この速度と仕組みを国際物流にも適用でき、アジア地域に組み立て工場を持つ自動車メーカーに対し、日本全国から沖縄をハブにしたJIT(ジャストインタイム)の物流ネットワーク構築も、コストや速度面で可能であると言う。

クラウド型の物流ネットワークを構築する
活用事例1:スピード通販
活用事例2:分散在庫型スピード通販
活用事例3:国際クール宅急便
活用事例4:ジャストインタイム一括店舗納品
活用事例5:複数サプライヤーからの部品調達
活用事例6:スピード・メンテナンス
活用事例7:高額医療機器のローナー事業

 ヤマトでは、このバリュー・ネットワーキング構想によって、小口・多頻度、そしてグローバルなボーターレス化が進む企業間物流の需要に応えていく。

(編集部:谷川 潔)