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ヤマトグローバルエキスプレス、羽田空港内の物流拠点「YGX羽田空港ベース」リニューアル

“食材の鮮度や美味しさ”を保つために物流拠点を強化

YGX羽田空港ベースで採用された最新機材「クロスベルトソーター」
2014年7月1日開催

「クロネコヤマトの宅急便」でおなじみのヤマト運輸と同じヤマトホールディングスの一員であるヤマトグローバルエキスプレス(YGX)は7月1日、羽田空港(東京国際空港)国内貨物地区に持つ集荷拠点「YGX羽田空港ベース」をリニューアル。同日に報道機関向けの発表説明会と施設見学会を実施した。

 ヤマトグローバルエキスプレスは、もともとはヤマト運輸内の「エキスプレス事業本部」という位置づけであったが、2007年に分社化され、これを機会に国内航空貨物だけでなく国際航空貨物も取り扱うことを目指して現在のヤマトグローバルエキスプレスという社名となっている。

 YGX羽田空港ベースは法人向けのスピード輸送に必要不可欠な国内航空貨物輸送の基幹施設として、エキスプレス事業部時代の1993年に稼動を開始した施設。これ以来、現在まで大幅なリニューアルは行われていなかった。しかし、近年は「食の安心・安全」への興味が高まっていて、鮮魚や野菜などの生鮮食品は「鮮度やおいしさを保ったまま手に入れたい」というニーズも非常に高くなり、今後はその傾向がさらに強くなるという予測から、航空貨物一貫のコールドチェーン機能をさらに高度化するため、初めてのリニューアルを行うことになった。

ヤマトグローバルエキスプレス 代表取締役社長 広田敏克氏
ヤマトグローバルエキスプレス 法人営業担当ゼネラルマネージャー 神宮努氏
ヤマトグローバルエキスプレス 羽田空港ベース長 中谷秀行氏
リニューアルされたYGX羽田空港ベース。敷地面積は約2556坪で上屋面積は約1597坪。クール仕分け室の該当面積は約310坪、自動仕分け機の該当面積は約871坪。特徴的な多目的スペースの面積は約218坪となっている

 そのリニューアル内容では、まず保冷設備のスペース拡張。従来から比べてなんと約100坪もの拡張され、保冷スペースだけで約310坪という広さになっている。それだけに、保冷設備スペース内にある「クール仕分け室」は最大72個のエアコンテナが収容可能になった。さらに室内には一時留め置きが可能な「冷蔵庫」と「冷凍庫」も完備されているので、荷物が大量に集まる時期など、様々な状況下でも集荷した荷物が外気温から守られる「コールドチェーン機能」を保てるのだ。

 ちなみに、この保冷設備内の室温は、空調管理と2重構造の扉が持つ保温性の高さによって常時10.5℃に保たれている。この10.5℃という設定の理由は、生鮮食品などの鮮度を保ちつつ、設備内で作業する従業員の健康状態にも影響のない温度ということで、YGX内の規則として設定された数値だという。見学当日は晴天で現地の気温は30℃近くとなっていたが、保冷設備内は入った途端にすぐ寒さを感じる環境。10.5℃という温度は、季節の気温に置き換えると東京の真冬にあたり、外出にはコートを着用するレベルである。

食の安全と安心を保つための保冷設備内。扉は2重構造になっていて、室温は10.5℃に保たれている。このスペースがクール仕分け室で、このほかに冷蔵庫と冷凍庫を完備していて、生鮮食品などはここで扱われる

 この保冷設備の充実に加えて、スピーディな仕分けと配送を実現させるために、物流貨物の仕分けなどの作業に用いる「マテリアルハンドリング機器」にも最新機材を導入している。この仕分け用設備の該当面積も約871坪と広大で、1階の荷捌き所に到着した荷物はベルトコンベアーで2階に運ばれる。その2階には最新のマテリアルハンドリング機器である「クロスベルトソーター(コンピュータ制御のベルトコンベアー式の仕分け機)」が設置されている。この機械では荷物ごとに貼られている仕分け用コードをスキャナーで読み取って、対象の仕分け用シュートの場所に荷物の載ったキャリアが来ると、キャリアのコンベアが動いてシュートに荷物を送り出す。これで1階の配送用のスペースに送られるという仕組みだ。

 荷受所からクロスベルトソーターへは3系統、クロスベルトソーターから仕分けシュートへは6系統のルートがあるので、1度に大量の荷物が処理可能になっていた。ちなみに、クロスベルトソーターが動く速度は約10㎞/hと高速なので、1時間に9000個の荷物を仕分けることが可能だという。また、安全性や保安のためにX線検査装置がクロスベルトソーターに合流する前のコンベア上に設置されている。

 そしてもう1つ。今回のリニューアルでは約218坪という床面積の「多目的スペース」も用意。ここでは温度管理の必要がない荷物のまとめ作業や、一時止め置き荷物の引き取りなどに利用できるところで、こういったフレキシブルに対応できるスペースを使うことで、より早くユーザーに荷物を配送できる態勢が作れるのだ。

こちらが荷捌き所。ここから荷物が2階の自動仕分け機「クロスベルトソーター」に送られる。荷捌き所のとなりが多目的スペース。リニューアルしたこの日から稼働開始となった施設なので、取材時にはまだ利用されていない状況だった
2階のクロスベルトソーター。1つのキャリアに1つの荷物が載せられる仕組みなので、荷物同士がぶつかる心配がない。仕分け場所に来るとコンベアが回転し、荷物をシュートに落とす。ルート上には荷物の片寄りを修正するゲートや赤外線装置もある
クロスベルトソーターで仕分けされた荷物は、それぞれ配送や航空機に積むためのコンテナに送られる。パレットの高さは空港で使用するフォークリフトに最適な高さとなっているという

 このように機能が充実したYGX羽田空港ベースを活用する流通ビジネスの例として、以下の3点が挙げられた。1つ目が各地の産地で採れた「朝どれ食材」を当日便でまとめて出荷するということ。2つ目は各産地の食材を集めて催事を行う場合でも、すべてが揃うまで品物を新設の保冷施設内で適切に管理し、指定された日時に一括配送を行うという方法。3つ目は輸入商材の扱いで、海外から輸入された食品や医療機器などは取り寄せまでに時間が掛かるものなので、国内に来てからのリードタイムはなるべく短くしたいところ。そこで「多目的スペース」や保冷設備内の「クール仕分け室」を活用。ここから宅急便、及びクール宅急便に切り替えてスピーディに発送するという方法である。

 このYGX羽田空港ベースは、ヤマトホールディングスにおける「国内航空貨物輸送に関わるハブ機能」も担っていて、ヤマトホールディングスが保有する「羽田クロノゲート」「厚木ゲートウェイ」「沖縄物流ハブ」といった施設と連携させて、スピード輸送とネットワーク強化を図る拠点でもある。とくにこれからはお中元シーズンのため、取り扱う荷物の量もグンと増加する。また、夏場ということでクール宅急便の需要も増えてくるだけに、YGX羽田空港ベースはリニューアル早々からフル稼動することになるだろう。

ヤマトグローバルエキスプレスはヤマトホールディングス内のデリバリー事業に属する「最速、最短のスピード輸送」を提供する企業で、宅急便の便利さを作り出している部門でもある
新しくなったYGX羽田空港ベースを活用することで、例えば複数の産地から早朝に採れた食材を航空機輸送。それを保冷施設内のクール仕分け室で仕分けして、クール宅急便で当日配送ということも可能になる。こういった機能に加え、最新式の仕分け装置や多目的スペースの利便性を生かして、国内航空貨物輸送における中心的存在になるのがYGX羽田空港ベースであると紹介された

(深田昌之)