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ヤマト運輸とANA Cargo、沖縄国際物流ハブ活用のためパートナーシップを強化

クール宅急便をシンガポールに拡大し、日本からシンガポールへの国際便を翌日配達

共同会見を行ったヤマト運輸 代表取締役社長の山内雅喜氏(左)とANA Cargo 代表取締役社長の岡田晃氏(右)
2014年5月30日開催

 ヤマト運輸とANA Cargoは5月30日、共同会見を行って沖縄国際物流ハブの活用を拡大すると発表。ANA Cargoの航空貨物ネットワーク拡大に合わせてヤマト運輸のサービスを拡充する。

 まずは5月14日に就航した沖縄-シンガポール線を活用し、2014年中にシンガポール向けの冷蔵・冷凍輸送の「クール宅急便」を開始する。また、通常の「国際宅急便」についても日本、香港、上海、台湾発のシンガポール向け荷物を、現在の翌々日配達から翌日配達に時間短縮を実現する。

 ヤマト運輸の山内雅喜社長は「拡大が期待できるアジア市場で、日本が持つ農水産業の力、日本のお家芸ともいえるモノづくりの製造業の力のプレゼンスを高めていく必要がある。クロスボーダーの物流需要にしっかりと応え、それが、日本の成長戦略に質する」「ヤマトグループは2019年に100周年を迎える。100周年に向け、物流は“コスト”だと思われたものを“バリューを生み出す手段”に進化させていく」と今回のパートナーシップ強化の背景を語った。

 ANA Cargoの岡田晃社長は「昨今の国際貨物需要は、日本は厳しいマーケットだが、アジア、中国に旺盛な需要があり、エクスプレスやeコマースの需要は期待できる」「ANA Cargoの海外売上比率が70%、日本以外の3国間取引が40%」とアジア諸国の需要の高まりを説明するとともに、沖縄の展開については「2009年から沖縄貨物基地をスタートさせ、パートナーとしていろいろな企業を待ち望んでいた」とヤマト運輸との関係強化を歓迎した。

ANA Cargo 代表取締役社長の岡田晃氏
ヤマト運輸 代表取締役社長の山内雅喜氏

 発表会では今回の沖縄国際物流ハブの活用強化により、農林水産製品の輸出拡大にもつながると解説。ヤマト運輸の山内雅喜社長は「カニ、イカ、そして果物。成熟したももやいちごなど、日本の果物が喜ばれている」と語り、海外の富裕層を中心に、日本から越境eコマースによる“お取り寄せ”が拡大しているという。

 また、製造業においてはパーツセンターを沖縄国際物流ハブに設置。保守パーツの供給体制を低コストで強化できると説明している。保守パーツは短期間での供給を行う必要があり、従来であれば在庫を各国に分散配置するところだが、新たな事業モデルでは中国、台湾、タイ、シンガポールに対する保守パーツ供給は沖縄に集約して出荷。深夜に受注したパーツを翌日に配送可能になるので、分散配置の必要がなくなる。

 現在は東芝関連の1社のみの稼働だが、今後は製造業だけでなく、医薬品などの出荷も含めて拡大を見込んでいる。クール宅急便のような冷蔵・冷凍輸送は、温度管理が重要な精密機器や医薬品の輸送にも適しているという。

日本産品のお取り寄せモデル。海外から直接eコマースを通じて生鮮品を注文するケースが増えている
翌日中の配送が可能になったエリアは分散在庫の必要がなくなり、沖縄に在庫を集約してトータルコストを削減。海外だけでなく国内も同様
ANA Cargoで沖縄をハブとした接続。就航都市12地点、73路線となっている

 一方、沖縄国際物流ハブは国内輸送にも活用される。パーツセンターは海外だけでなく国内向けの出荷にも利用が可能。国内の拠点間輸送を航空輸送にモーダルシフトすることにより、トラックドライバー不足にも対応できる。現在、ヤマト運輸では個別の配達を担当するセールスドライバーの人員は確保できているが、拠点間の長距離輸送はドライバーの確保が厳しくなりはじめているという。ANA Cargoの航空機のパイロットはANAグループで確保していることもあり、特に問題はないという。

 そのほか、パートナーシップの強化により、今後両社で新たなサービスや航空物流資材の共同開発も行う。ANAでは旅行者の手荷物を預かって輸送する「手ぶらサービス」をヤマト運輸のサービスを使って提供しているが、現在は国内発の旅行者だけが対象になっている。これを海外発国内向けの旅行者にも提供する検討を進める。提供時期などは未定だが、ヤマト運輸が宅急便を展開している国から行われる見込みとなる。

 また、航空物流資材の共同開発では、冷蔵・冷凍コンテナの開発を予定している。現在は冷蔵、または冷凍と、温度設定によって別々のコンテナを使っているが、荷物の量によっては無駄が生じている。これを解消するため、冷蔵と冷凍をまとめて1つのコンテナで輸送できる新しいコンテナの開発を行う。効率を高めることで輸送コストの低下を実現できるとしている。

 さらに、今回のパートナーシップ強化に先駆け、ANA Cargoの10号機に「クロネコマーク」のラッピングを行っている。10号機は5月14日就航のB767-300F(JA605F)で、クロネコマークのほか、沖縄県の県章と「OKINAWA」の文字も記されている。

5月に就航したANA Cargoの10号機、B767-300Fの模型
クロネコマーク、沖縄県の県章と「OKINAWA」の文字がラッピングされる。実機にも同様のラッピングが施されている

(正田拓也)