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ボルボ、2014年モデルに「サイクリスト検知機能」を搭載

ボルボの2014年モデルは自転車に乗る人も見分けるようになった
2013年8月27日発表

 ボルボ・カー・ジャパンは8月27日、ミドルレンジモデルの60シリーズの2014年モデルに関する発表会を開催。新たに走行中の自転車を検知する「サイクリスト検知機能」を搭載することを明らかにした。このサイクリスト検知機能を搭載した車両では、一定の条件下において接近中の自転車を認識し、衝突が予測される場合には自動でブレーキを効かせて衝突を回避、もしくは衝突によるダメージを軽減する。

スカンジナビアン・スポーツセダン「S60」
スカンジナビアン・スポーツワゴン「V60」
コンパクトプレミアムSUV「XC60」

 オプション設定される「セーフティー・パッケージ」(20万円高)に含まれる装備の1つとして提供されるもので、S60、V60、XC60のほか、2014年モデルの70シリーズやS80にも装着が可能。すでに日本国内で販売が開始されているV40シリーズにも対応している。近年は通勤などに自転車を利用する人が増えていることもあって、市街地での安全性をより高めることができる装備として日本市場に売り込む。

自転車に乗って登場したボルボ・カー・ジャパン代表取締役社長 アラン・デッセルス氏

 発表会では、ボルボ・カー・ジャパン代表取締役社長のアラン・デッセルス氏が自転車に乗って登場し、挨拶に立った。日本では2009年に前方車両への追突を回避する「シティ・セーフティ」を、2011年に歩行者を検知する「ヒューマン・セーフティ」をそれぞれ開発・搭載したことを紹介し、さらに今回の「サイクリスト検知機能」の実現により、ボルボの安全技術が「新しいステージに到達した」と同氏は胸を張った。

2014年モデルの各シリーズ
XC90を除く全車種に「サイクリスト検知機能」を装備可能
自転車事故では追突による死亡率が極めて高い
ボルボ・カー・コーポレーション セーフティエンジニア ヤン・イバーソン氏

 その後、ボルボ・カー・コーポレーション セーフティエンジニアのヤン・イバーソン氏が登壇。「新しいボルボでの交通事故による死亡者や重傷者を、2020年までにゼロにする」というビジョンのもとに進められている、同社の安全に対する取り組みを詳しく解説した。同氏によると、過去40年にわたって4万件の車両衝突に関するデータと、その事故に関連する6万人のデータを収集し、新しいテスト手法や安全技術の開発に役立てているとのことで、今回の「サイクリスト検知機能」もそういった活動から生まれたものだという。

2020年までにボルボ車による事故の死亡・重傷者ゼロを目指す
事故データを検証し、製品開発に活かす体制が整えられている
2006年から高い安全性を実現するさまざまな“自動ブレーキ技術”を開発してきた
日本における死傷事故では、2輪車相手のものが16%となっている
サイクリスト検知機能の仕組み
一定の条件下で衝突を防止、または衝突時の衝撃を軽減してくれる
ボルボ・カー・ジャパン マーケティング部の若林敬市氏

 最後に、ボルボ・カー・ジャパン マーケティング部の若林敬市氏がボルボの2014年モデルについて紹介。サイクリスト検知機能をはじめ、合計4000カ所に及ぶという「ボルボ史上過去最大規模の変更および改良」を施している点を強調した。ヘッドライトやフロントグリルのデザインを変更してボンネットを彫り込んだようなV字形状にしたほか、ボディー前方下部にLEDライトを新設して“地を這うような”イメージとしたことで、「個性的なスカンジナビア・デザイン」を実現した。

安全性に関する技術だけでなく、2014年モデルにはさまざまな変更が施された
デザインが一新されたフロントまわり

 プレゼンテーションの合間には、「サイクリスト検知機能」の効果が分かるデモビデオを放映。走行中の自転車が車両の前方に飛び出してきた瞬間の反応や挙動を映像で確認できた。なお、「サイクリスト検知機能」の作動には下記のような一定の要件がある。

3種類のセンサーを組み合わせて自転車を認識。同時に歩行者も検知する
スタントマンによる「サイクリスト検知機能」のデモンストレーションビデオ
ドライバーはブレーキペダルに一切触れていないにも関わらず、クルマが自動で危険を感知して自動的にブレーキングする

サイクリスト検知機能の作動要件
・大人用の自転車で、地上70cm以上の高さにリフレクターを装備していること
・車両と同一車線で同じ方向に進む自転車を真後ろからのみ検知する
・作動するのは自車が4km/h~80km/hで走行中の場合
・車両が50km/h以下で、自転車の相対速度が15km/h未満では衝突を回避
・相対速度が15km/h以上では衝撃を軽減

 自転車に装着されるリフレクターに必要な大きさについて規定はないものの、ヤン・イバーソン氏によると「一般的なサイズ」であれば検知可能としている。前方から向かって来たり、車線を横断しているような自転車については検知しないが、条件が合えば検知した瞬間に音声とヘッドアップディスプレイで警告を行い、それでも運転手が対処しなかった場合は衝突のおよそ1秒前と予測されるタイミングでフルブレーキ。衝突を回避したりぶつかったときのダメージを緩和してくれる。

 自転車の検知には、ルームミラーの近くに備えられたレーザーセンサーとカメラ、フロントグリルに設置されたレーダーの3つが用いられ、レーザーセンサーのみを使うシティ・セーフティや、カメラとレーダーを使うヒューマン・セーフティよりも高度な画像解析処理が行われているという。

ルームミラー近くに埋め込まれたセンサー類。左の2つがレーザーセンサーの送信部と受信部、中央がカメラ、右上はレインセンサー
フロントグリルにはレーダーを搭載

 同時に検知可能なのは車両、歩行者、サイクリストを全て合わせて“15物体”まで。それより多い場合は自車に近い物体を優先して検知する仕組みになっている。ヤン・イバーソン氏によれば、現在はオートバイも含め、あらゆる車両や物体、挙動パターンなどに対応できるよう開発を進めているとのこと。2020年の「死亡者・重傷者ゼロ」宣言を現実にするべく、引き続き安全性に注力した車両開発を行っていくと語った。

(日沼諭史)