ニュース
【日産360】米カリフォルニアでグローバルイベント「日産360」開催
「ジューク-R」など世界で販売する130台の試乗車を用意。各ブランドの取り組みを説明
(2013/9/12 13:13)
日産自動車は、米カリフォルニア州においてグローバルイベント「日産360」を8月19日から開催している。
同イベントは世界各国のメディアや自動車ジャーナリスト、投資家などに向けて行われているイベントで、およそ1カ月にわたり行われる。日本向けは2便に分けられ、Car Watchは後半の日程(9月6日~10日)で参加。その模様をいくつかに分けて紹介する。
4つのクローズドコースと市街地を走行できた日産360
この日産360では、日本のみならず世界各国で販売されている日産車(インフィニティブランド含む)およそ130台を試乗車として用意するほか、「スカイライン 2000GT(S54)」「フェアレディ 1200 ロードスター」などのヒストリックカーや、「Friend-ME」「エッセンス」「エセレア」といったコンセプトカーの展示、日産、インフィニティ、ダットサンのブランド戦略を説明するプレゼンテーション、同イベントの目玉の1つとなる自動運転技術を搭載した電気自動車(EV)「リーフ」の技術解説などが行われ、日産の過去、現在、未来を体感できる内容となっていた。この自動運転技術は2020年までに実用化することがアナウンスされており、現時点で分かったことについては別記事で紹介する。
試乗車においては、新型「スカイライン」と目されるインフィニティ「Q50」(ガソリン、ハイブリッド)や、欧州日産が手がけた「ジューク」にGT-Rのパワートレーンを搭載したワンオフモデル「ジューク-R」が用意されたほか、女性レーシングドライバーの井原慶子さんがドライブする「GT-R NISMO GT3」への同乗走行なども設定。これらのモデルは米海兵隊航空基地跡に設置されたクローズドの特設コースでの試乗だったわけだが、この特設コースは「パフォーマンスコース」「アドベンチャーコース」「コマーシャルビークルコース「ハイパフォーマンスコース」の4つのコースが設定され、それぞれのコースに合ったモデルに乗ることができた。
例えばQ50は、ステアリングの操作を機械的なリンクでタイヤに伝達して操舵するのではなく、ステアリングの動きを電気信号に変えてタイヤを操舵する「ステア・バイ・ワイヤ」技術を搭載する。これにより、機械的なシステムよりも路面からの情報などをより速く、分かりやすくドライバーに伝えられるメリットがあるとしており、これらを体感するべく「パフォーマンスコース」は80km/h程度のスラローム走行ができるコース設定となっていた。実際、クイックにステアリング操作を行っても違和感がなく、Q50の運動性能を十分に体感できた。
また、ジューク-Rの試乗やGT-R NISMO GT3への同乗走行は、最高速160km/hに設定されたストレート区間を有する「ハイパフォーマンスコース」で行われた。コース幅はやや狭く、全長もそれほど長いわけではないのでGT-R NISMO GT3のパフォーマンスを如何なく発揮するのは難しかったようだが、それでも井原さんのドライブが丁寧かつ限られた中で攻めのドライビングを見せてくれたのは言うまでもない。
そのほかにも「ノート」「ジューク」のディーゼル車や、“これぞアメリカ!”を存分に体感できる大柄ボディーのSUV車「QX70」「QX80」「パスファインダー」などで市街地を走行(30分または45分枠)することもできた。パスファインダー、ノート&ジュークのディーゼル仕様、ジューク-Rの試乗やGT-R GT3への同乗走行など、普段なかなか乗ることのできないモデルは人気が高くて予約が集中してしまったが、概ね来場者は用意された走行プログラムに満足していたようだ。
さて、先に触れたとおり日産360では同社の各ブランドの戦略などについてプレゼンテーションが行われている。その内容を分けて紹介したい。
日産パワー88の期間中、51車種の新モデル、90以上の新技術を投入
日産360の開始に向け、はじめに挨拶を行った常務執行役員の川口均氏は、日産360についてこれまでの同社の歩みとともに、今後の取り組みについても分かるようさまざまなプログラムを用意したとし、「イベントを通じてイベント名の『360』にあるとおり、360度あらゆる角度から日産自動車についてご理解いただくことを願っている」と述べた。
その中で紹介された昨年度の実績については、グローバルの販売台数で昨年比1.4%増で過去最高となる491万4000台をマークしたと言う。これは新型アルティマ、シルフィ、ノートなど世界で10車種の新型車を投入したことで実現したものと述べるとともに、「2012年度は不安定な中国市場の問題、あるいは欧州での継続的な景気停滞など数々の困難に直面したが、当期の純利益は41.3億ドル(昨年の為替レートで約3420億円)だった。我々は日産パワー88という6年間の中期経営計画を策定し、2016年末までに売上高営業利益率を8%に引き上げ、そのあとも維持すること。そしてグローバルでの市場占有率を8%に伸ばすことを目標にしている。これを実現するため、日産パワー88の期間中、私たちは51車種の新モデルを投入する」と述べるとともに、平均して年間15件の新技術を投入し、同期間中の合計で90以上の新技術を採用すると力強く宣言。
また、人種や国籍、性別、学歴などを問わず人材を活用することを指す「ダイバーシティ」といった取り組みを積極的に採用していることに加え、「クルマをクリーンにするだけでなく、製造工程をよりクリーンにする取り組みも強化している。現在、日産は工場での廃棄物とCO2排出量を削減する取り組みにおいてもトップクラスになっている」「安全への取り組みでは、日産車が関わる死亡・重傷者数を実質ゼロにする『ゼロ・フェイタリティ』という究極の目標を掲げている。この目標は高いハードルとしつつ、これまでに一定の成果を上げているとし、「今後も効果の高い安全技術を開発し、幅広い商品ラインアップを展開することに注力する」と述べた。
そのほか、同社がグローバル企業として力を発揮するには「日本のDNA」が必要であるとし、「日本のDNA」ついては志賀俊之COOがビデオで解説。志賀氏によると、モノづくりを行う企業における「日本のDNA」は「改善」「おもてなし」「人づくり」が柱になると述べるともに、「『コトづくり』(日産のストーリーを語る力)分野におけるブランディング、マーケティング活動も必要で、お客様にとって価値のあるものを提供するためには我々の価値を明確に提示する必要がある」とし、これらが日本のDNAであり、日産の強みであると解説した。
革新、ワクワク感、買いやすさの3拍子が揃った“NISSAN”ブランド
続いて登壇したグローバル広報部長のヴィクター・ナシフ氏は、世界における“NISSAN(ニッサン)”ブランドの概要を紹介した。
NISSANブランドは現在、「イノベーション アンド エキサイトメント フォー エブリワン」をコンセプトに掲げており、リーフ、GT-R、ジューク NISMOといった方向性の異なるモデルでも、誰でも革新とワクワク感を体感できることを目指し開発が進められており、ナシフ氏は「革新だけ、ワクワク感だけであれば他のメーカーでも感じられるかもしれないが、それに“買いやすさ”を加えているのは日産だけでないだろうか。これはチャレンジングな取り組み」と説明する。
また、来年には「キャシュカイ(日本名:デュアリス)、エクストレイル、ムラーノの個性を向上させていく」と、3モデルの新型車投入を示唆(すでにフランクフルトショーで新型エクストレイルは公開)したほか、「0-100km/hを2.7秒で駆け抜けるGT-Rは5倍以上(値段が)高いモデルと同等か、それ以上の性能を提供している」と、ハイパフォーマンスカーにおいても“買いやすさ”という価値を提供していることを解説するとともに、ゲーマーをリアルなレーシングドライバーに育てる「GTアカデミー」、グローバルブランドキャンペーン「WHAT IF」といったさまざまな取り組みを行っていることを紹介した。
ナシフ氏は、「日産はこれからも成長を持続させていく。さまざまな新しいクルマ、新しいコンセプトというものを発表していく。次のフランクフルトショーにも注目してもらいたい。そして来年のル・マン24時間に出るゼロエミッション車も見ていただきたい」と述べ、今後のNISSANブランドの躍進を誓った。