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等級据え置き事故が廃止、事故に厳しくなった自動車保険
三井ダイレクトの指定修理工場で保険を使わずに修理する選択肢
(2013/12/6 00:00)
自動車の保険には新車購入時や車検時に加入・継続が法律で義務付けられている自賠責保険、それに文字どおり任意での加入となる任意保険がある。自賠責保険ではまかないきれない部分をカバーしてくれる任意保険は、物損事故、人身事故を問わず、日常的に運転するドライバーにとっては加入必須といえる状況だ。
そんなドライバーを陰で支えるサポート役と言ってよい任意保険だが、2013年から「より公平な保険料負担を目指し」て、大きな改訂が始められている。メスが入れられることになったのは、ノンフリート等級別料率制度だ。ノンフリート等級別料率制度なんて書くと難しく感じてしまうが、要は保険使用の有無によって割引や割増になる制度のことだ。
事故を起こしたドライバーへのペナルティを強化
これまでは契約期間中に保険を使わなければ次回の契約は1等級上がり(割引率がアップ)、逆に保険を利用した場合は3等級下がる(割引率がダウン)、もしくは内容によってはノーカウントや据え置きという考え方がベースになっていた。契約者個人個人で見ると妥当な判断に思えるが、逆に言えば等級が同じなら事故の有無で割引率は変わらなかった。つまり、あるドライバーは事故を起こして等級が下がったが、別のドライバーは無事故で等級が上がった、なんて場合でも等級自体が同じなら割引率は変わらなかったワケ。
だが、改訂後は新たに「事故有係数」という概念が導入されることになった。これは等級ダウンに加えて付加されるもので、事故件数1件につき3年間(1等級ダウン事故の場合は1年)適用されることになる。例えば2013年に13等級で契約したドライバーが契約期間中に追突事故を起こしてしまった場合、2014年は3等級ダウンの10等級になり、その上で事故有の割引率になる。そこから無事故で過ごしたとしても、毎年1等級ずつ等級はアップするものの、2016年までは事故有の割引率になってしまうワケだ。
割引率で言うと、従来ならば、13等級47%割引だったものが、3等級ダウンにより10等級37%割引となり、翌年は40%割引、翌々年は44%割引となるだけだったが、改訂後は3年間ずっと事故有係数付きの割引きとなるため、23%、25%、27%と割引率が大幅ダウン。4年後にようやく「無事故」の13等級の割引率に戻る。もちろん、この間に事故を起こしてしまえば、事故有係数の適用期間はさらに伸びることになってしまう。
また、これまで等級据え置きだった火災や盗難、落書きなどによる保険利用も1等級ダウン&事故有係数1年プラスとなった。
この変更を具体的な数字で見てみよう。例えば継続の6等級で年間保険料が22万2670円の契約だった場合。無事故なら翌年は7等級になり、ベース金額が変わらないとすれば年間保険料は約18万1900円に下がる。しかし事故を起こし保険金の支払いを行うと、3等級ダウン&事故有係数で割増となり、年間保険料は約30万800円にアップ。その差はなんと11万円以上にもなってしまう。
さらに、翌年以降も4、5、6等級の場合は事故有で付加される割増は設けられていないものの割引は少なく、逆に無事故だった場合は8~10等級では30%~40%を超える割引となるため、3年間では20万円以上も支払額に差が出ることになる。さらに4年目以降も事故有係数こそつかないものの、上限の20等級(つまり10年以上だ)になるまでずっと割引率に差が付くのは従来と変わらない。つまり、軽い接触で板金で済むといった程度の事故なら保険を使わない方が負担が少なくなる事例が今まで以上に多くなるのだ。
もちろん、保険を使わないで済むに越したことはないが、万が一事故を起こしてしまった際は将来のことまで見据え、今まで以上にシビアな目で保険使用の有無を考える必要があるのだ。
今こそ保険会社のサービスをフル活用すべし
このように、今後安く直せる修理であれば、保険は使わない方がお得だとなると、悩ましいのは事故を起こしたときの修理工場だ。もちろんきちんと直してもらわなければ困るが、たとえばリサイクルパーツなどを使って安く済ませられるなら、保険を使わないという選択肢も出てくるだろう。もちろん馴染みのお店や頼れるディーラーがある人ならば、そこにお任せすればよいだろうが、たとえば中古でクルマを買った人など、頼れるお店がない人は困ってしまう。
ダイレクト系自動車保険会社の三井ダイレクト損保の場合、全国に指定の修理工場のネットワークを持っており、そこを利用すれば様々なメリットがあるほか、希望すればリサイクルパーツを活用して、修理を安く済ませるようなこともできるという。とは言え、「保険会社指定の工場だと適当な修理で安く上げられちゃいそう」なんていう勘ぐりもしたくなる。特にネットで手軽に申し込める通販型の自動車保険だと、実態がわかりづらいだけに心配する気持ちが強くなってしまう。そこで三井ダイレクト損保に、そのあたりがどうなっているのかを尋ねてみた。
まず、そもそもちゃんとした工場なの? という不安だが、同社の場合、どんな工場でも指定修理工場にできるというわけではなく、条件として、資格や設備面で、以下の3つが設けられているという。
・地方運輸局長による「認証工場」もしくは「指定工場」の資格を有する
・フレーム修正機、塗装ブース(簡易型ブースは不可)の施設があり、事故車引き取りが可能で、原則キャリアカーを保有している
・「代車として使用可能であり、賠償保険に加入している」車両を所有または手配できる
これらの条件からわかるのは、ある程度の規模の工場が必要ということ。車検設備が必要となる認証工場はもちろん、指定工場でも整備士の人数や資格に条件がある。加えて塗装ブースが必要となると、整備士が2~3人レベルの工場では厳しいはずだ。さらに代車を用意できなければならないというのも、小さな工場では難しいだろう
なぜこのような条件を設けているのかというと、修理に対する責任と個人情報保護の観点から、基本的にはその工場だけで修理が完結できるようにしたいという狙いがある。つまり、できるだけ何でも直せる大きな工場が望ましいわけだ。
とはいえ、クルマを預ける側から見ると、それだけなら別にディーラーでもよいよね、ってことになってしまう。そこで三井ダイレクト損保の指定修理工場で修理する場合には、
・事故車両の無料引き取り、納車
・修理個所のワンオーナー永久保証
・修理期間中の無料代車
・納車時の無料洗車
などの特典が受けられる。
なかでも代車無料は、本来「レンタカー費用補償特約」などを付ける必要がある。この特約をつけていない人でも、指定修理工場に出すだけで、必ず修理期間中は代車を用意するとのことなので、これだけでも大きなメリットだ。さらに車両の引き取りにレッカー代がかからないのというのも魅力だろう。
加えて修理箇所のワンオーナー永久保証。つまり中途半端な手抜き修理はしませんということであるが、この保証が、結果的によいサービスを提供することにつながっているという。
同社の指定修理工場となっている吉岡自動車興業。その代表、樫村氏によれば「修理の状態がよくないと保険会社様にクレームが上がる可能性があります。逆にお客様からよい評価を受けることができれば、車検などでリピーターになっていただける場合もあります。ですから1台1台、まったく気を抜くことができません」とのこと。
数ある指定修理工場の中からどの工場を選ぶのかは、三井ダイレクト損保の事故担当者が契約者との相談した上で行う。たとえばクレームがあった場合、その情報は担当者に伝わるので、担当者もクレームの少ない工場を選ぶようになる。つまり修理工場にとっても、手を抜くことにメリットはないというわけだ。
修理工場にとっては、宣伝費をかけずにお客さんが集まるという利点があり、保険会社にとっては、修理の信頼性や事故車の状態チェックなど、指定修理工場が中心になることで省力化が図れるという利点がある。もちろんユーザーにとっても前出の様な特典があるわけだ。
さらに、もう一つユーザーにとってメリットがある。三井ダイレクトの指定修理工場は、いずれもリサイクルパーツも扱える工場になっている。リサイクルパーツのネットワークとつながっているので、全国からリサイクルパーツを取り寄せることが可能なのだ。もちろんケースにもよるが、リサイクルパーツを使うことで修理費を安く抑えることも可能だ。
ちなみに無料代車や永久保証などのサービスは、その指定修理工場で修理さえすれば受けられるので、事前に見積もりを出してもらった上で、保険を使わずに修理することも可能だ。加えて自分の車両保険を使って直した場合は、臨時費用保険金として2000円が支払われるというメリットもある。
今回の改訂によって事故を起こした際には大幅に負担が大きくなる任意保険。これからは、ただ何となくで決めてしまうのではなく、自分の保険会社のサービスをフルに活用して、保険を使うべきかどうかも含めて選択するのが、カシコく節約できるドライバーといえそうだ。