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小林可夢偉選手はベルギーGPで予定されるアップグレードに大きく期待
ファミリーシート限定の見学ツアーなどでさらに家族で楽しめるF1日本GPを目指す
(2014/7/31 21:24)
ケータハムF1チームからF1世界選手権シリーズに参戦している小林可夢偉選手は、先週末の7月27日に行われたF1ハンガリーGPからF1が夏休み期間に入ったことを利用して帰国。報道関係者を集めて記者会見を行った。
この中で小林可夢偉選手は「(8月24日に行われる次戦)ベルギーGPではアップグレードが入る予定で、その出来によってはチャンスがあると考えている。2年ぶりとなる日本GPでは、2012年の時のように表彰台に登るなどとは言えないが、F1の人気は落ちてきていると言われている中で、そうではないということをファンに見せていきたい」と述べ、10月に三重県の鈴鹿サーキットで行われる予定のF1日本GPに向けて、引き続き頑張っていきたいと述べた。
今回の記者会見は鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドの主催で行われ、F1日本GPをアピールするセッションも実施。この中でモビリティランド 取締役 鈴鹿サーキット 総支配人 荒木正和氏は「今年はファミリーシートを増設するなどさらに家族連れでも楽しめるGPを目指したい」と述べ、家族連れでも楽しめるファミリーシートを充実させるなどによってさらなる集客につなげていきたいとアピールした。
ファミリーシートの充実や“可夢偉応援グッズ”配布などの施策で日本GPを盛り上げる
今回の記者会見は、鈴鹿サーキットやツインリンクもてぎなどを運営するモビリティランドの主催で行われており、基本的には10月3日~5日に鈴鹿サーキットで開催されるF1日本GPのプロモーションの一環として開催されたものだ。このため、会場として東京 日本橋にある三重県のアンテナショップ「三重テラス」のイベントスペースを利用して行われた。会見には地元三重県を代表して、三重県 雇用経済部 観光・国際局長 加藤敦央氏が同席したほか、モビリティランド 取締役社長 曽田浩氏、モビリティランド 取締役 鈴鹿サーキット 総支配人 荒木正和氏の2人のモビリティランド幹部が出席して行われた。
冒頭で鈴鹿サーキット 総支配人 荒木正和氏が今年のF1日本GPの概要を説明。荒木氏は「2009年に鈴鹿サーキットでのF1が復活して以来、地元の自治体とは積極的に協力してプロモーションを行っている。今回も三重県が行っているキャンペーンである“みえ旅パスポート”にF1専用スタンプを用意していただくなどの共同キャンペーンを行っている」と述べ、三重県の観光キャンペーンとF1を絡めることで、地元自治体と協力してキャンペーンを行っていくとした。
また、荒木氏はF1でのシャトルバスについて触れ「お客様の利便性向上を目指すため、シャトルバスの効率を毎年改善しようと努力している。2013年は未開通だった中勢バイパスを利用したが、今年はすでに開通したので、これを国などの関係機関にご協力いただいて、シャトルバスで一部を占有利用する予定だ」と述べ、今年3月に鈴鹿サーキットの新しい周辺道路として開通した中勢バイパス(関連記事)の一部を占有して、シャトルバスで来場するファンの利便性向上を図るとした。
さらに荒木氏は「鈴鹿のF1は2009年に復活して以来、ファミリーで楽しめるレース観戦を重視してきた。2013年の日本GPではファミリーシートを用意して好評を博したので、今年は最終コーナーにもう1区画増やした。さらにファミリーシート限定で、コース上から表彰式を見ることができる見学ツアーも計画している」と述べ、2013年に引き続いてファミリーシートを充実させ、ファミリーで観戦できるイベントを目指すとした。
荒木氏は今年のF1日本GPでのイベントとして、1992年にウイリアムズ・ルノーでワールドチャンピオンになったナイジェル・マンセル氏が来日し、トークショーやデモ走行を行う予定であることにも触れ「来年ホンダがF1に復帰することもあり、そのホンダエンジンを搭載したマシンを走らせてもらい、盛り上げたい」と述べ、マンセル氏がウイリアムズ・ホンダ FW11(1986年のコンストラクターズチャンピオンを獲得した車両、実際にマンセル氏が1986年に同型車をドライブしていた)を走らせる予定であることなどを紹介した。
今回の記者会見の主役である小林可夢偉選手は、そのマンセル氏と先日行われたイギリスGPで顔合わせを行っており、日本GPではトークショーを行う予定だ。その可夢偉選手について荒木氏は「2012年に小林選手が表彰台を獲得した時には、スタンドが文字通り揺れたのに感動した。その小林選手が戻ってきてくれたことを応援する意味でも、来場していただくお客様全員に“可夢偉応援グッズ”を配布する予定。また、可夢偉応援サイトを用意し、ファンからの質問を受け付けるなど相互にコミュニケーションできる環境を整えていきたい」と述べ、さまざまな施策で小林可夢偉選手の2年ぶりとなる日本GP参戦を盛り上げていきたいとした。
「ベルギーGPで入る予定のアップデートに期待している」と小林可夢偉選手
荒木氏の日本GPに向けての施策紹介後、小林可夢偉選手が登場して記者会見を行った。記者会見は2部構成となっており、前半はCar Watchでもおなじみのモータージャーナリスト 小倉茂徳氏による代表質問、後半は記者全員による囲み会見となった。
──19戦のうち11戦が終わったが、その感想は?
小林可夢偉選手:前半戦は厳しい戦いだった。チームが安定しなくて、よく生き残ったというのが正直な感想。ただ、イギリスGPでチームオーナーが替わり、その新オーナーからスパ(ベルギーGP)でアップデートを入れるという方針を聞いており、今後に向けて開発を頑張っているところ。彼らのビジョンとしては、まずはチームの成績を上げて、分配金を増やすことで来年の予算をしっかり確保することだろうと考えている。そのためにはパフォーマンスを上げるドライバーを彼らも必要としているのは理解している。
──ベルギーでアップデートが入るというのはよいニュースですが、それ以降の戦いはどうなると予想しているか?
小林可夢偉選手:F1で戦っていくためにはアップデートは必要。これまではそれがなくて戦わざるを得ない状況だったので、それが入る後半戦には希望が持てる。大事なことはそのアップデートをどのように生かしていくかということ。僕らのクルマはエアロだけでなく、それ以外の部分にも課題を抱えており、そうした見えない部分がしっかりと動くようになれば、よい力を発揮することができると思う。
──鈴鹿で行われる日本GPは母国GPになる。その母国GPへの思いは?
小林可夢偉選手:日本のファンがいる環境でレースができるのは、1年に1度しかない。表彰台を獲得した2012年シーズンでは、それまでもチャンスがあったのに、さまざまなことが起きてうまくいかなかったのに、鈴鹿でだけそれが実現できた。それは僕にとっても特別なこと。歴史がある鈴鹿サーキットは日本人にとってだけでなく、外国人ドライバーにとってもトップ3に入るような特別なサーキット。そこでレースができることを楽しみしている。
──イギリスGPでナイジェル・マンセル氏と対談されたそうですが、どうでしたか?
小林可夢偉選手:まさかのマジックを披露されて、マジシャンかと思いましたよ(笑)。みなさんマンセル氏に会うときはマジックを見せてあげると喜ぶと思いますよ。マンセル氏に会ったのは実は初めてではない。以前、イギリスGPでマンセル氏がスチュワードしている時に、僕がピットでクルーを引いてしまった時に呼び出されてお会いしている。そのときは、結局、僕のレースはそれで台無しになってしまったのに、さらに罰金を200万円ぐらい取られたので、なんでやねんと思った(笑)。マンセル氏はホンダとのつきあいも長くて、ホンダエンジンには力があるから来年が楽しみだとおっしゃってました。そのマンセル氏が、ウィリアムズFW11かな、僕もどんなクルマかはよく知らないんですが、それを走らせるってことなんで楽しみにしている。今年はエンジン音が低いという人も多いので、すごかった当時の音が聞けるのは楽しみだ。
──マンセル氏は気むずかしい人だとされていますが、割とすぐに打ち解けていたように見えました。鈴鹿で再会しますが?
小林可夢偉選手:もちろん楽しみは楽しみですが、今回はレースしに行くのでそれを楽しみにしちゃいけないんですが(笑)。マンセル氏も20年ぶりに日本に来るということで、20年前とは大分変わっていると思うので、そこを楽しんでほしい。彼も鈴鹿サーキットを走るのは楽しみだと言ってましたが、ちょっと心配なのはレジェンドレースとかでもいつでも本気で走っているので、大丈夫かな、と(笑)。
──今回は来場者全員に“可夢偉選手応援グッズ”が配られたり、ドライバーパレードでも可夢偉選手だけの時間というのが用意されていると聞いていますが?
小林可夢偉選手:レースできますかね、僕?(笑)。実はドライバーパレード中に降りてファンとふれ合うということをしたのは僕が最初らしいのですが、今では母国GPのドライバーはみんなそうするようになっている。今回も日本GPのドライバーパレードで、僕だけの時間帯というのが用意されるらしいので、将来的にはそれがほかのGPでも行われるようになるかもしれない。ただ、日本GPではマーシャルの人が忍者の格好をしていたりとか、変な服を着て踊ってたりとか、本当に楽しいGPだ。
──F1に乗り続けて次の世代につなげていくことが大事だと常におっしゃってますが、日本GPではそうした子供たち向けにファミリーシートも用意されています。
小林可夢偉選手:そうした子供たちが5年以内にF1に乗ってくれるというのは無理だと思うが、10年、20年、30年というレンジで見ていけば、大事なことだと思う。この国の人たちに、日本にとって自動車産業がどれだけ大事な産業であるのかということ伝えていきたいと思っている。モータースポーツそのものは趣味かもしれないが、自動車産業と直結しており、世界で日本のクルマが売れるためにはやはり技術が重要。F1で磨かれた技術が普通の市販車にも反映されていくと思うので、そういうことが子供たちに理解してもらえることは非常に嬉しい。
──鈴鹿サーキットの地元でもある三重県についてはどう思われますか?
小林可夢偉選手:今回の会見も三重テラスで行われると聞いていたので、テラスがあるのかと思ってきたら、ないんやって(笑)。冗談はさておき、三重県には小さいころからずっと通ってますので、色々な思い出があります。ぜひみなさんググってもらって、いろいろな観光地を探して行ってみてほしい。僕もここに来る前に検索してみたんですが、例えば伊勢神宮があるって出てきました。実は僕が生まれ育った兵庫県では修学旅行とかで伊勢神宮に行くんですが、(当時)僕はカートがあって参加できていない。なので、今年はぜひ伊勢神宮に行ってみたい。
──ファンへのメッセージをお願いします。
小林可夢偉選手:今回2年ぶりに日本GPに戻ってくる。残念ながら、2012年の時みたいに表彰台を狙えるなんてことは言える状況ではない。ただ、今はF1の人気が落ちてきていると言われているが、そうではないことを日本のファンに伝えていきたい。もちろん、自分としても楽しみたいが、やはりF1はスポーツなので、その中で楽しいストーリーを作っていきたいと考えている。今年のF1はメルセデスが強いけど、見所としては昨年まで4連覇を果たしているレッドブルがどれだけ巻き返すかだと思う。ぜひとも鈴鹿サーキットに来て、生のレースを見てほしい。
鈴鹿サーキットの小林可夢偉選手お気に入りのコーナーはS字
後半部分の囲み会見は、詰めかけた報道関係者からの質問に小林可夢偉選手が答えるという形で進められた。
──厳しいシーズンになっていますが?
小林可夢偉選手:厳しいシーズンだけど楽しんでやっている。例えばブレーキがなくなっても大丈夫なようにとか(苦笑)。僕にとっては結果を残すことはもちろんだけど、F1にいることが大事。ほかのカテゴリーに行くことはいつでもできるので、焦る必要はないと考えている。
──開幕前にはここまで厳しい戦いになると考えていたか?
小林可夢偉選手:クルマが遅いだろうというのは理解していたけど、経済面で思ったより厳しいというのは正直ここまでとは思っていなかった。ただ、それもオーナーが変わったことで上向きになると考えている。これからの展開としては、アップグレードが入ってマルシアが食えるようになるとよいと思っている。あとは、運次第で上位が崩れるレースがあれば……。
──その意味ではモナコGPは惜しかったですね。
小林可夢偉選手:モナコGPではクルマが壊れたのが非常に痛かった。
──夏休みはとれるんですか?
小林可夢偉選手:まだ僕も把握していないが、2週間ぐらいの予定。当初は外国に行く予定だったが、ロシアで行われる(10月の)GPのためなどにビザの手配などもしなければいけないので日本にいる予定。あまり休めなそうだ。
──アップデートに期待するところはどこですか?
小林可夢偉選手:見た目は結構変わると思う。僕としてはエアロはあまり重視していなくて、それ以前のところが大事。あのクルマはどこが悪いとかじゃなくて、全部が……。
──新体制になって、最終戦までのドライブは保証されているのでしょうか?
小林可夢偉選手:うちのマネージャーも保証が保証がと言ってるけど、僕にとっては保証なんて必要ない。僕はビジネスをするためにここにいる訳じゃなくて、結果を残すためにこのチームにいる。だから保証なんて正直聞いてもいない。これまでの結果を見れば、僕が明らかにしっかりとした結果を出していると誰が見ても分かると思うので、そのあたりはどうでもいいと考えている。
──来年のシートに関して交渉は行われているのか?
小林可夢偉選手:来年の交渉については時期的にはそろそろだが、今のタイミングでは何もお答えしない方がよいと考えている。
──ハンガリーGPでは「麻衣さん」という日本人の女性がチームのスポンサーになったことが話題になりましたが?
小林可夢偉選手:麻衣ちゃんが誰だか僕にも分からなくて、チームも教えてくれないし。ただ、本当に感謝している、天使みたいな人やなと。
──鈴鹿サーキットで最も好きなコーナーとその理由を教えてください。
小林可夢偉選手:S字。ちゃんとリズムをとって走ると、しっかりとタイムを稼げるのがここだから。すごく難しいコーナーなので、逆に攻めがいがあるコーナーだ。
──日本GPでの目標は?
小林可夢偉選手:それは宝くじを当てるようなことと同じなので、今は言えない。スパから鈴鹿までかなり時間があり、その間にもアップデートが入るかもしれないのでそれ次第ということもある。目標を言うときには現実味があることを言いたいので、今の段階では言えない。