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日産、“日本のものづくり”にフォーカスした追浜工場見学会
グローバルマザープラントとして世界に日本のものづくり文化を発信
(2014/9/11 08:50)
日産自動車は9月8日、神奈川県横須賀市にある追浜工場の報道陣向け見学会を開催した。この見学会に先立ち、追浜工場長である高橋徹氏らから追浜工場の概要についての説明が行われた。
同社の主力工場の1つである追浜工場は1961年に操業を開始。以降「ブルーバード」「マーチ」などの生産が行われ、現在は電気自動車(EV)「リーフ」をはじめ「ジューク」「キューブ」「シルフィ」の生産を担っている。追浜工場の生産能力は24万台/年で、1本の生産ラインでガソリン車やEV車という複数の車種を生産する「混流生産」体制をとる。また、同工場は現在タイで生産される「マーチ」「ラティオ」、スペインで生産される「e-NV200」を受け入れ、最終的な品質の確認をしたうえで日本市場へ送り出す役割も担っている。
敷地面積は東京ドームおよそ37個分となる約171万m2で、大きく物流エリア、生産エリア、試乗/テストコース「GRANDRIVE」、そして新しい技術やものづくりの仕組みを作る生産技術部からなる。今回の見学会は、生産ラインの見学とともに“日本のものづくり”にもフォーカスして行われた。
説明会の冒頭、高橋氏は「追浜工場はEVや新技術・新工法の開発・改善のリーダーとしてグローバルのトップを走り続けなければならない工場に位置付けて我々は活動を進めている。『日産のモノづくりは、追浜工場からすべてが始まる』として、グローバルでのトップランナー工場になるべく大きな3つの機能がある」と紹介。この3つの機能とは、EVの生産をはじめとする新技術を導入した生産ライン「MPL(Master Production Line)」、グローバルにおける新工場などの立ち上げ時に中軸となる人材の育成を行う「GTC(Global Training Center)」、追浜工場の量産車ラインで新型車の試作を行い、それをグローバルの拠点に排出することで現地での試作の時間を短縮する「GPL(Global Pilot Line)」の3点を指す。
このうち生産ラインについては、1990年までは車種専用ラインで大量生産を行っていたところ、2006年以降は「集約化・無人化」をコンセプトに物流の集約化を図るとともに、重筋作業の廃止や自動化など人に優しいラインを目指すといった進化を続けているという。また、生産現場と物流の融合、工場とサプライヤーの融合など、安価に行える自動化を導入(同社では日本人が持つ繊細な知識や器用さをこの自動化に取り入れていることから“からくり”と呼んでいる)しているのも特徴の1つとなる。
その一例として、従来では組立作業者が車種やグレードによって部品箱から必要な部品を取ってきて、それを組み付けるという流れだったが、部品の選択や識別、部品を取りに行く歩行といった複雑かつ無駄な部分があった。その無駄を省くべく、必要な部品だけが部品箱に入り、その部品箱が組み付けるクルマとともに流れる「KIT供給」を採用した。こうした改善内容が追浜工場からグローバルに発信され、世界中の日産の工場で改善が行われているという。
一方、人材の育成を行うGTCについては、追浜工場に在籍するグローバルマスタートレーナーを頂点とし、その直下に位置するマスタートレーナーを育成する「マスタートレーナー制度」を導入している。このマスタートレーナーが各拠点のトレーナーを育て、そのトレーナーが作業者を指導するという、いわば“ネズミ算式”の育成方式を採っており、これによって従来のトレーナーが各拠点に出向いて指導する方式と比べ、約20倍のスピードで育成することに成功したという。なお、2013年末時点でグローバルマスタートレーナーは11名、マスタートレーナーは192名在籍している。
また、GPLについて高橋工場長は「量産標準ラインを活用してここ追浜工場で新車の準備をすることで、現地での量産期間を大幅に短縮できた。約3000項目以上の検証を現地の作業員などと一緒に行うことで、そのノウハウをそのまま現地で活用できる」と、そのメリットについて語っている。