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シェフラー、日本法人の機能強化で2015年に新たな研究開発拠点を栃木県宇都宮市に開設

自動車メーカーの技術者が集まる「シェフラー技術シンポジウム」を日本初開催

2014年10月29日開催

 シェフラージャパンは10月29日、東京都・有明の東京コンファレンスセンター・有明で同日から30日にかけて開催している「シェフラー技術シンポジウム」と連動して、同社の日本国内での活動の強化などに関する記者説明会を実施した。

 シェフラーは世界でトップクラスに入る大手軸受けメーカーで、自動車産業においてもさまざまな自動車メーカーにエンジン、シャシー、トランスミッションなどの部品を供給している。身近なところでは、マツダの新世代クリーンディーゼルエンジンである「SKYACTIV-D」と新世代高効率直噴ガソリンエンジンの「SKYACTIV-G」、本田技研工業の1モーターハイブリッド技術のキーテクノロジーである「i-DCD」などは、それぞれシェフラーと自動車メーカーが共同開発して生み出した技術となっている。

シェフラー 副最高経営責任者(CEO)兼最高技術責任者(CTO) ペーター・グッツマー氏

 そんなシェフラーだが、これからは日本の自動車メーカーに向けて、エンジン、トランスミッション、シャシー、ハイブリッド技術、電気自動車(EV)などに関連するさまざまな提案を行い、共同開発についても重視していくことが、シェフラー 副最高経営責任者(CEO)兼最高技術責任者(CTO)のペーター・グッツマー氏から発表された。

 とくに近年、自動車産業では急速に革命的な変化が起こっていて、とくにパワートレーンの効率改善について軽量化やダウンサイジングが進み、今後はさらに個々の改善が求められていくようになるが、この分野についてはシェフラーが強みを持っている部分だ。

 現在、世界各地の新興国ではGDPの伸びがよい国が増えていて、それにあわせて個人の自動車所有率も上がっている。そして統計では、GDPが伸びると個人がクルマに乗る距離も増えるという傾向もあるので、新興国でも燃費のよいクルマは注目を集める存在になっていくと予想される半面、技術的、インフラ的な面から、今後もあと15~20年は現在と同じくエンジンがパワートレーンの主役になると予想されている。しかし、それは電動化を組み合わせたハイブリッドとなる方向だ。

 このエンジンや電動化についてもシェフラーは新しい技術を提供していくが、今後に設定されている排出ガスの削減目標を達成するにはさらなる技術革新が必要になる。そこで重要視されるのがより効率のいいトランスミッションで、シェフラーではさまざまなトランスミッションを開発していくと語られた。

シェフラーは世界でトップクラスの軸受けメーカーだが、それ以外の製品も自動車分野で幅広く研究、開発を行っている。グラフはドイツ国内での特許出願数が2013年に全体の2位になったことを示している。ちなみに、1位はボッシュである
2020年までのCO2の削減目標はかなり厳しい数値。それだけにパワートレーンだけでなく、トランスミッションを含めた技術の進化が必須。シェフラーではさまざまなトランスミッションを開発しているとのこと

 もう1つ、シェフラーがヨーロッパで進めている技術として紹介されたのが「48Vハイブリッド化」について。この方式はフルハイブリッドに比べてコストが40~60%削減でき、燃費向上のためにブレーキ回生システムが使えるので、シンプルなハイブリッドシステムながら大幅な効果を発揮する可能性を持っている技術だ。

 こういった新しい技術を開発し、市場投入していくことは環境保護だけに止まらず、若い世代に向けて技術の魅力をアピールするものとなるので、将来の技術者を生むためにも大切な役割があるという。その一環として行っているのが「FIA フォーミュラE選手権」という、世界各地の大都市やリゾート地といった市街地コースを走るEVレースカーの開発などである。

 このように、シェフラーはグローバルサプライヤーとして自動車産業に対してさまざまなサービスを提供していくという言葉でグッツマー氏の発言は締められた。

シェフラー オートモーティブ部門 アジア太平洋地域CEO アンドレアス・シック氏

 続いて登壇したのは、シェフラー オートモーティブ部門 アジア太平洋地域CEO アンドレアス・シック氏。内容はシェフラーにおけるアジア太平洋地域重視の戦略についてだ。まず、シェフラーは日本という地域の重要性をこれまで以上に意識するとのこと。その理由については、グローバルに事業を展開する日本の自動車メーカーとのつながりを持つためで、そのための改革として、シェフラージャパンは拠点の規模を拡大する。主に研究開発機能を強化することが発表された。また、自動車メーカーとのつながりも強化するため、まずは栃木県に新たな開発拠点を設けるとのこと。これはホンダとの協業を意識したものである。

 シェフラーはイノベーションが成長の原動力となっている企業なので、未来のモビリティ技術の成長が期待できるアジア太平洋地域に非常に高い興味を持っているという。とくに日本と韓国の自動車は世界で乗られている台数が年々増えていて、今後は世界で走るクルマの約40%がアジアの国のクルマとなるという試算を紹介。それだけに、この地域は自動車メーカーとの共同開発についてやり甲斐があるところといえる。これがアジアに注目する理由の1つと説明している。

 アジアでは日本の軽自動車をはじめとして小型のクルマが主流になるので、ここにシェフラーの技術を生かして、小型化によって実現するCO2の排出量軽減をさらにレベルの高いものに変えていくことが大きな目標であるという。また、日本はハイブリッド技術において世界で最も進んだ技術を持っている国であり、今後もその地位は続くはずである。そこでシェフラーもその技術発展に協力していく予定ということだ。

2011年から2020年に変化する自動車技術のトレンド予測。アジア地域では小型車が今後も主流になるという。内燃機関も残るが、多くはモーターと組み合わさるハイブリッドに変化していく。EVに関しては2020年から本格的に動き出すという予測
日本国内の拠点は順番に規模を大きくして、技術者の数も増やしていく。2015年中に栃木県宇都宮市に大規模な研究拠点を作る予定だ

 また、今回日本で初開催となった「シェフラー技術シンポジウム」は自動車メーカーの技術者を対象にしたイベントで、シェフラーは1978年から4年に1回のペースで開催してきている。そのイベントを日本でも開催したのは、前述したとおり、今後の日本重視策の一環である。これについては、シェフラージャパンのマネージング・ディレクター兼代表取締役自動車事業部プレジデントの四元伸三氏から説明された。

 最近は自動運転、運転補助機能、さらにハイブリッドやEVなど、クルマに組み込まれる技術が高度で複雑化している。そのため、世界中のパーツサプライヤーが日本での研究開発に力を入れる傾向が高まっている。これについてはシェフラーも同様だが、こうして世界中の技術が動員され、日本の自動車メーカーから新型車として登場するのだ。また、これとは逆に、日本のパーツサプライヤーが海外の自動車メーカーの技術を提供し、それが核になる海外メーカーの新型車も増えてくるだろう。そうなると、従来からの「国産車」「輸入車」とクルマを区分する認識も、今後は変える必要が出てくるのかもしれない。

 グッツマー氏が説明の冒頭で口にしていたように、急速な革命はクルマ作りだけでなく、ユーザーの価値感も変えていく可能性もある。自動車技術の進化の歴史のなかで、いま起きているこういった変化は過去に例がないものだけに、これからは「どんなクルマが発売されるか」だけでなく、「どんな方向に向かっていくのか」についても、ぜひ注目してほしい。

シェフラージャパン マネージング・ディレクター兼代表取締役自動車事業部プレジデント 四元伸三氏
1978年から開催している「シェフラー技術シンポジウム」が日本で初開催。参加しているのは自動車メーカーの技術者が中心という内容の濃いイベントである

(深田昌之)