自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2012」が開幕

2012年5月23日~25日
パシフィコ横浜



 自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2012」が5月23日、横浜市のパシフィコ横浜で開幕した。会期は25日までで、入場は無料。

 今年で21回目を迎える、自動車技術会が主催する自動車技術の専門展。自動車メーカーはもとより、パワートレーンやシート、カーエレクトロニクス、素材などのサプライヤー、製造機械や計測器メーカーなど400社以上が出展している。

 基本的に自動車の技術者・研究者ためのイベントだが、誰でも無料で入場できるので、自動車技術に関心がある向きには興味深いイベントと言える。ここでは会場で目についた展示を、写真を中心にリポートする。

トヨタは「アクア」と「プリウスPHV」のカットモデルを展示
スバルは「BRZ」とそのパワートレーンを展示。また、アイサイトがどのように画像を認識しているかのデモも見られる
CX-5を展示したマツダ。CX-5のクリーンディーゼルエンジン「スカイアクティブ-D」のピストンと、従来型ディーゼルのそれを手にとって比較することができる(下段の写真)。低圧縮比のスカイアクティブ-Dのピストン(左)は従来型(右)より肉薄で軽く、シリンダーと接する面が狭い(側面の黒い部分)ためフリクションが小さいことが分かる
「アルト・エコ」を展示するスズキ。写真中は開発中の軽量アクスルハウジング。溶接でなくハイドロフォーミングで一体成型してある。どの車種に採用されるかは明らかにされていないが、サイズから見て軽自動車用。写真右は大型船外機「DF300AP」。船外機を2機装着する際には、左右でプロペラの回転方向を変える必要があるが、従来は回転方向の違うモデルをそれぞれ用意する必要があった。DF300APはこれをワンタッチで変えられるようにしたため、1モデルで済む。アメリカマリン工学会の技術革新賞を受賞した
日産はリーフto Home。ブースの照明をリーフから給電している
英国の自動車関連企業が集まった英国パビリオン。中央にはザイテックが開発した「モーガン+E」を展示。モーガンのエンジンルームに90kW/350Nmのモーターを収め、リチウムイオンバッテリーで駆動するEV。トランスミッションはそのまま残されている
英国パビリオン。リカルドが開発したマクラーレンMP4-12CのV8 3.8リッター ツインターボエンジンリカルドのハイブーストエンジン。電動ターボを備える
東京R&Dのデミオ改造EV。つくば市の実証実験「グリーン・クロスオーバー・プロジェクト」でカーシェアリング車両として3台が使用されている。リチウムイオンバッテリーで航続距離は60km。トランスミッションはそのまま残されているが、2速に固定されている
ホンダはN BOXを中心に展示。写真中は125ccのスクーター用エンジン(左)と「ニューミッドシリーズ」バイク用のパラレルツイン700ccエンジン。写真右はニューミッドシリーズ用エンジンのクランクシャフト。位相角0度で鋳造してから、冷める前に90度ひねって270度とすることで、製造コストを下げている
三菱自動車はプラグインハイブリッドのプラットフォームとMiEV power BOXを展示
SIM-Driveは先行開発車2号「SIM-WIL」(上段)と同1号「SIM-LEI」を展示。両開発事業に参加した各社の技術も一緒に展示されている
関東自動車工業がドレスアップしたアクア
関東自動車工業の車椅子ドライバー向け移乗補助装置「ウェルライド」。ミニバンなど車高の高いクルマに乗るのを補助すると同時に、後席に車椅子を格納することができる
UDトラックスの車両に標準装備されている「多目的ディスプレイ」。ドライバーに省燃費/安全走行のアドバイをするほか、運行管理者のPCやスマートフォンにトラックの状態を送信し、トラブルなどに迅速に対応できるようにする
東芝は同社のバッテリー「SCiB」を採用したミニキャブMiEVとそのバッテリーモジュールなどを展示
デンソーのドラバステータスモニタ。ステアリングコラムのカメラでドライバーの表情を画像認識で検知し、眠気やよそ見を警告する。顔の向きや頭の位置と動き、目の開度から判定する
デンソーの、SiCによる小型インバーターの試作品(左)。これ4つで従来品(右)と同等の出力を得るデンソーのスマートフォン連携カーナビ。スマートフォンで検索した場所を、カーナビの目的地に設定する
デンソーのアクア用モーターの小型ステーターデンソーのディーゼル用次世代コモンレール燃料噴射システム試作品。噴射圧を乗用車用で250Mpaまで高め、排ガスのクリーン化と省燃費を図る。同社の現行燃料噴射システムはマツダのスカイアクティブ-Dにも採用されている
ボッシュのエクストリーム・ダウンサイジング・ガソリン直噴エンジン。ごく普通のシングルターボチャージャーと直噴システムで、低コストにダウンサイジングエンジンを実現。2.4リッターから1.2リッターへダウンサイジングして燃費を32%改善しつつ、同等のトルクを維持している
ZFのFF車用9速AT。アメリカの工場で生産されるZFのFR用8速ハイブリッドAT。トルクコンバーターの代わりにモーターやクラッチ、ダンバーを収め、モジュラーシステムにより、マイルドハイブリッドからフルハイブリッドまで、柔軟に構成できる。アウディQ5ハイブリッド、BMW アクティブハイブリッド7などで採用されているZFの軽量ストラット。ナックルを一体化し、CFRP製とした
シェフラーの7速ハイブリッドAT。日産向けシェフラーの6速デュアルクラッチトランスミッション。フィアット向け
シェフラーのインホイールモーターシェフラーの電制油圧駆動フル可変バルブリフトシステム「ユニエアー」。フィアットが「マルチエア」として採用している
ジヤトコの次世代中・大型FF車用CVT「CVT8」(左)と、それをベースとして1モーター2クラッチのハイブリッドシステムとした「CVT8ハイブリッド」。CVT8がスチールベルトなのに対し、CVT8ハイブリッドはチェーンを採用している。チェーンは伝達効率が高いが、音が大きいのがネック。ハイブリッドシステムとの組み合わせでこれを解消したと言う
エクセディのスカイアクティブ-ドライブ用低速ロックアップトルクコンバーター。より低速からロックアップできるようにしたことで、トルコンATのロックアップ領域を広げ、燃費とドライブフィールを改善した
エクセディの子会社、ダイナックスのレアアースレス・インホイールモーターを搭載した「スマート」。北海道大学と共同開発した
アイシングループの6速MT(左)と6速AT(中)、ドアスタビライザー。いずれもトヨタ「86」用。ドアスタビライザーは、ドアと車体の隙間を埋めることで、車体のねじれを防ぐ
アイシングループの展示。上段が低比重アンダーコート、下段がスポット溶接と構造用接着剤の組み合わせ。いずれも手にとって従来型と比較できる
アイシングループのスマートフォン連携カーナビ。スマートフォンで検索した地点をカーナビの目的地として設定できる
アイシングループのわき見・居眠り検出システム。ステアリングコラムのカメラでドライバーの顔を画像認識し、目の開度や顔の向きで判定する
マクセルの高透明熱戦反射フィルムと通常のガラスで、熱さの違いを体感できるデモ。フィルムをアフターマーケットで販売する可能性もあるやはりマクセルの展示。RF IDで工具を管理する
日本精機の「Defi VSD HUD」。アフターマーケット向けのHUDユニットで、OBDからのデータを表示する。将来はスマートフォンのカーナビアプリからのガイドなども表示する日本精機のBMW 6シリーズ向け大型HUD
人とくるまのテクノロジー展初登場のドルビー ジャパン。アルファ147内にリア・エンターテインメント環境を作って、ドルビーデジタルプラスをデモ。ドルビーデジタルプラスは、従来より圧縮比が高く高音質で、7.1chもカバーできる音声コーデックで、欧州のモバイル機器にはすでにサポートしているものがある。デモでは、ノキアのスマートフォン内のコンテンツを147内のシステムに出力している
ドルビー ジャパンのもう1つのデモは「JPEG-HDR」。JPEGと互換性のある画像フォーマットで、26bitデータを保持しつつ、ファイルサイズ増は20%に抑えた。トンネルの出口や夜の街中など輝度差の大きな状況でも、通常のJPEG最大なら黒つぶれ、白とびしてしまう部分のデータをクリアに残せるため、ドライブレコーダーに最適としている
ZMPは次世代自動車用情報システムの開発環境「ロボカーHV」を展示。これは現代美術家の原神一氏がイーサネットのプラグで“デコ”ったスペシャルモデル。ロボカーHVとテストコース、開発環境などを年間500万円でシェアするメンバーシップなどが紹介されている。シェアすることで開発コストを抑え、通信や家電といった異業種が自動車業界に参入しやすくする
主催の自動車技術会による企画展示。ホール外にコースを作り、スタビリティコントロールや自動ブレーキの動作を実際に見せている。同乗も可能ロールオーバーシミュレーター。シートベルトの効果を体感できる
大型トレーラーの運転席からの視界(死角)を体感できる

(編集部:田中真一郎)
2012年 5月 23日