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コンチネンタルとシェフラー、共同開発の「48Vマイルドハイブリッド」プロトタイプ車を公開
燃料効率を最大17%向上させ、2017年9月施行の「ユーロ6c」排出ガス規制をクリア
(2015/10/28 00:00)
- 2015年10月27日発表
コンチネンタル・オートモーティブ・ジャパンとシェフラージャパンは10月27日、共同開発した「48Vマイルドハイブリッドシステム」を用いるプロトタイプ車「ガソリン・テクノロジー・カー(GTC)」を公開した。
48Vマイルドハイブリッドシステムは、乗用車で一般的に利用されている12Vを基準とした電力環境を、人体に危険とされる60Vより低い電圧でありつつ、効率化が図れる48Vに変更するという着想からスタートした技術。エンジンルームに備えるオルタネーター(発電機)で発電する電気を効率よく使えるようになるほか、電圧の高さからハーネス類を細くすることが可能になり、車両の軽量化やコストダウンなども狙える。しかし、クルマの環境性能が社会的に大きく注目を集めるようになったことを受け、この高い電圧を生かし、スズキの「S-エネチャージ」「マイルドハイブリッド」のようにオルタネーターを電気モーターとしても使ってエンジントルクをアシスト。発進加速や巡航走行といったシーンでエンジン回転数を抑えることにより燃料効率を高めるシステムとなっている。
一般的なハイブリッドカーでは強力な駆動用モーターを使ってEV走行などを可能とするため、200~400V前後という高い電圧を利用している。これは前出の60Vよりも高い数値であることから万全の安全対策が必要になり、開発も大がかりになることからコスト面に対する影響が大きくなる。一方で既存の12Vで運用されるS-エネチャージなどと比較すればアシスト量を高めることが可能で、燃料効率の向上は48Vの方がインパクトが大きいとしている。
このほか、今回発表されたプロトタイプ車のGTCは、コンチネンタルとシェフラーが包括的に設計の見直しを行い、双方の得意領域を持ち寄りながらシナジー効果を発揮させることで燃料効率を最大17%向上させ、2017年9月から施行される予定の排出ガス規制基準「ユーロ6c」をクリアする高い環境性能を誇っている。
技術試乗会が行われたパシフィコ横浜では、フォード「フォーカス」をベースに48Vマイルドハイブリッドシステムが与えられたプロトタイプ車のGTCが用意され、閉鎖された駐車場スペースで実際にステアリングを握り、試乗することができた。
48Vの電圧で動くコンチネンタル製の48V Eco Driveにより、エンジンは瞬間的に静かに始動。一般的なハイブリッドカーのようにEV走行で静かに走り出すといった能力は持たないが、低いセルモーター音ですばやくエンジンスタートする光景がまず印象的。また、フォーカスに搭載されている直列3気筒 1.0リッターガソリンターボエンジンは「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」も獲得した定評あるエンジンだが、大人4人乗車という高負荷状態でも2速ギヤでするすると発進する点は48V Eco Driveのトルクアシストの恩恵と言えるだろう。このGTCはシェフラー製の「eクラッチ」と呼ばれる電子制御クラッチシステムを搭載しているので、クラッチ操作自体にドライバーの技量は関係なく、またエンストを防ぐ制御も用意されているとのこと。短い試乗時間では試せなかったが、このeクラッチを活用することで、GTCは巡航走行中にドライバーがアクセルから足を離すと、ギヤが入っている状態でも自動的にエンジンを停止してコースティング走行に移行。アクセルを踏み込むとエンジンが再始動して、自動的にクラッチが接続されるという。
高負荷状態でも力強く加速するという以外には取り立てて目新しい部分は無いように感じたが、逆にこれだけさりげなく、コスト増も抑えられるというシステムで最大17%もの燃料効率の向上が期待できるというのは画期的と言えるだろう。両社の説明では、2025年には48Vマイルドハイブリッドシステムが市場シェアでハイブリッドカー、EV(電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッドEV)と肩を並べるという試算も紹介され、今後の展開が楽しみな技術だった。