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コンチネンタル、将来の自動運転に向けた最新車載技術を披露

リアルタイム情報収集、サラウンドカメラ、高速テレマティクスなど

2015年7月2日開催

コンチネンタルの最新車載技術を公開

 コンチネンタル・オートモーティブは7月2日、将来的な自動車の自動運転を見据えた最新技術を公開した。刻々と変わる交通状況のデータをほぼリアルタイムで受け取ることができる「Dynamic eHorizon」、車両に接近する障害物を認識して周囲360度の立体映像で表現する「センサーフュージョン」、複数のLTE回線やWi-Fiなどを同時に用いて広帯域のデータ通信を可能にする「スマートテレマティクス」という3つのシステムをデモンストレーションし、2015年末から順次ローンチしていくことを明らかにした。

 一般ユーザーにとってはタイヤで有名なコンチネンタルだが、車両の安全装置、トランスミッションなどのエンジン関連部品、その他内装・外装に関わるさまざまなオートモーティブ製品を開発、供給しているメーカーでもあり、近年ではインフォテイメントやコネクテッドカーに絡むソリューションにも積極的に関わっている。

コンチネンタルが手がける幅広い事業
インフォテイメントとコネクティビティに関わる製品

安全、効率的な運転を実現する「Dynamic eHorizon」

「Dynamic eHorizon」は、車載カメラやセンサー、インターネット上のクラウドなどと連携して、地図に関連するデータをほぼリアルタイムに受信し、安全で効率的な運転に活かすことが可能なソリューション。海外におけるトラックなどの車載システムとして従来から採用されている安全運転と低燃費走行を目指したナビゲーションシステム「Static eHorizon」と「Connected eHorizon」の次世代版に位置付けられる。

「Dynamic eHorizon」のシステム全体像

 公道において自動車の自動運転を実現するには、精度の高い最新の地図データが必要となるだけでなく、周囲やルート上の詳しい交通状況、通行規制などの情報がリアルタイムのデータとして必要になる。「Dynamic eHorizon」では、そうしたあらゆるデータをクラウド上で管理し、ドライバーに対して適切な情報を提示する。将来の自動運転に向けた技術の第一歩となる。

 具体的には、「Dynamic eHorizon」搭載車のカメラとセンサーから得られた位置、走行車線、標識などの情報を多くの車両から収集し、LTEネットワークなどを介していったんIBMが管理するバックエンドシステムにデータを送信。別の地図データとも連携して、多数の車両から得た標識、渋滞状況といった情報を地図に関連付ける形で車両の「Dynamic eHorizon」にフィードバックし、ドライバーの運転の助けになる情報として表示する。

 デモンストレーションでは、「Dynamic eHorizon」を利用した場合の一例として、走行車両が道路標識をカメラで読み取ってその道路の制限速度を認識し、クラウド上で地図データに「制限速度」という新たな地図要素を付加したうえで、他車も含めた「Dynamic eHorizon」搭載車両にその情報を共有する様子を披露した。より細かいデータのやりとりを行うようにすることで、自動運転の基盤プラットフォームとして広く活用される可能性を秘めている。

「Dynamic eHorizon」採用車が、走行した道路の制限速度に関する情報を収集
集められたデータは画面右側のように正規化され、少ない量のデータで各車両にフィードバックして地図表示する
他の例では、道路の車線ごとの混雑状況を把握
どの車線で走るのがベストなのか判断し、レーンチェンジを提案。スムーズな運転につなげる

 ここで重要になるのは、センサーをはじめとするハードウェアの有無やインターネットの常時接続環境だが、センサーやネットワーク帯域など車両の個々の装備、状況に合わせて適切なデータをクラウド側で判断して送信・受信するため、ドライバーはその車両において利用可能な最大限の情報・データを活かすことができるという。

 なお、デモでは現在同社のパートナーとなっているHEREの地図データを利用しているが、出荷する地域に合わせてベストな地図会社と提携していくとのこと。ソリューションとしては2017年中にローンチを予定している。

360度の視界を再現し、障害物の接近を検知する「センサーフュージョン」

「センサーフュージョン」は、車両に搭載した4つ以上のカメラの映像をもとに360度の視界を生成することで、車両の周囲の状況を把握できるようにするソリューション。車両のセンターコンソールなどに埋め込む新規開発のインフォテイメント端末上で動作し、他にはカーナビゲーション、動画・音楽・ラジオの再生、TwitterのようなSNS、その他サードパーティ製アプリなども利用できる。プラットフォームはLinux GENIVIをベースに独自開発したもので、チップセットの詳細は明かさなかったが、Cortex-A11ベースのクアッドコアプロセッサだという。

車両の周囲360度を3Dグラフィックで映像化

 360度の視界は3Dグラフィックスで再現され、車両の真上から見た映像だけでなく、斜め上からの視点やサイドからの視点など、あらゆる角度から風景を含めた形で車両を眺められる。さらにPark Distance Controlセンサーを組み合わせることにより、障害物の接近を検知してドライバーに接近を知らせるだけでなく、その検知したものにカメラが追尾するように映し続けることも可能となっている。

実際のクルマに搭載されるカメラを4つ用いた模型でデモ
障害物が接近すると……
障害物を検知し、その物体にフォーカスして映し出す
障害物が横切って離れていくと……
このように映像がパンし、その後真上からの視点に戻る

 このインフォテイメント端末自体は2015年末に欧州でリリース予定。「センサーフュージョン」については、さらに先の次世代車に搭載される。現在は独自プラットフォームだが、ニーズや市場環境を考慮して、OSをAndroidやWindowsなどに変更することもあり得るとした。

複数ネットワークの同時利用で高速通信を可能にする「スマートテレマティクス」

「スマートテレマティクス」は、より大容量の通信が可能なコネクテッドカーを実現するモジュール。現在出荷しているコネクテッドカー向けのモジュールは、リモートからのエンジンスタートやロック・ロック解除の機能を備え、3Gネットワーク、Wi-Fi、Bluetoothといった通信機能も搭載しているが、「スマートテレマティクス」ではLTE通信に対応する。

 さらに、周辺のWi-Fiスポットを利用した通信と、ドライバーが所有しているスマートフォンのモバイルネットワークを使った通信も、同時に利用することができる。つまり、2本のLTEと1本のWi-Fiを同時に使った広帯域の通信により、自動運転に必要となる大容量のデータ通信をスムーズに行えるというわけだ。

大きなモジュールが3G対応の現行製品。右下が4Gにも対応する小型化された新しいモジュール

 これらの通信は同時利用できるだけでなく、いずれかのネットワークが切断された時に他のネットワークで通信を継続するようシームレスに切り替えることもでき、冗長性を持たせることが可能。将来的には5Gにも対応していくとしている。SIMはカード型ではなく、耐久性を考慮してSIM ICを採用。接続先のモバイルネットワークは基本的に自動車メーカーなどが決定する。

 2015年中には、現在供給しているコネクテッドカー向けモジュールを4Gに対応させ、小型化したものを出荷予定。「スマートテレマティクス」対応製品は2018年のリリースを計画している。

 なお、これらインフォテイメント、テレマティクスに関わるコネクテッドカー分野は、自動車メーカーも含めさまざまな企業が参入している。例えばトヨタ自動車はカーナビやオンラインサービスなどでカーライフをトータルサポートする「T-Connect」を、スマートフォン向けのチップセットなどを開発するクアルコムは、カメラを含めた車載機器のコントロールや、インフォテイメント、テレマティクスなどを1個のチップセットで実現する車載システムを発表している。

 これに対してコンチネンタルのソリューションは、上記3つが独立したシステムとなっており、組み合わせて利用することも、単独で利用することも可能で、メーカーやユーザーのニーズに応じて取捨選択してクルマに搭載できることが利点だとした。

(日沼諭史)