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コンチネンタル・オートモーティブ、将来のアクセスシステムと認証システムの解説
開発が進む「トレンドアクセス」と「スマートアクセス」とは?
(2015/8/21 13:49)
- 2015年8月19日開催
コンチネンタル・オートモーティブ・ジャパンは8月19日、同社のボディ&セキュリティ部門による最新のアクセスシステム・認証システムについてのメディアブリーフィングを開催した。
コンチネンタルにはシャシー&セーフティ、パワートレーン、インテリア、タイヤ、コンチテックという5つのグループおよび事業部があり、ボディ&セキュリティ事業部はインテリアグループに属していて、クルマにおけるボディーエレクトロニクスについてのすべてをここが受け持っている。今回は同事業のヴォルフガング・ピューシュ氏よりアクセス、認証システムの将来のトレンドについての説明が行われた。
さて、現在のクルマにおけるアクセスコントロールシステムは、携帯型キーを身につけているだけでドアロックが解除できたり、エンジンスタートができたりするパッシブスタート・エントリー(PASE)が主流になっている。
ちなみにアクセス、認証システムの分野では1994年に初のイモビライザーを開発し、1999年には世界初のPASEシステムを導入。2002年にはPASEをボディコントローラーに統合、2006年はそれをキーとボディーコントローラーの双方向通信システムへと進化させるなどの実績を持っている。そして、2013年にはクルマとの距離が1000mまで離れていても使える(条件による)長距離通信も可能にしている。加えてキーの生産量でも世界トップのシェアを持っている。
このような実績があるコンチネンタルは、多く自動車メーカーと取引を行っているが、現在のPASEではより多くの機能をユーザーに提供することが重要になってきている。その例としては、駐車中の車両がキーを持つドライバーを認識すると、車体のいずれかのライトを点灯させてドライバーを迎えるウェルカムライト機能がある。さらに最近ではこのウェルカムライトが反応する距離が長いほどよいと言われているので、約6mほど離れた状態でも機能するようになっている。
もう1つ、大変利便性が高いと言われているのがウォークアウェイロック機能で、これはキーを持った人がクルマから離れると、自動的にドアを施錠するもの。さらにドライバーがキーを持って運転席側のドアやトランク前に立つと、自動的にロックが解錠される機能もあるが、これらを導入することでドア側のセンサーが不要になり、便利なだけではなくクルマ側のシステムコストの削減につながる機能でもある。
そして、次に開発されているのが「トレンドアクセス」と「スマートアクセス」と呼ばれる2つのアクセスシステムで、これらに共通するのはスマートフォンが使われていること。理由は市場からの要望が強いからという。
まずは「トレンドアクセス」だが、これはクルマ、無線キー、スマートフォンの3つを結ぶもので、クルマと無線キーの間では従来のRF-LFの無線通信が行われるが、それに加えて無線キーとスマートフォンの間ではNFC(近距離無線通信)やBluetoothによって通信する。
このシステムではキーの施錠や解錠だけでなく、専用アプリをダウンロードしたスマートフォン上でガソリン残量(EV車ならバッテリー充電状態)など、クルマに関する各種情報を見ることが可能になる。また、施錠の状態やメンテナンス情報などもスマートフォンから確認できるようになる。こういった情報は、まずクルマとキーの間で通信が行われ、ユーザーが使うスマートフォンから表示の指示があればそのデータがスマートフォンに送られ、アプリ上で読める形式に直されて画面に表示されるという。
次に「スマートアクセス」だが、これはクルマとスマートフォンが直接やりとりする機能なので、カードキーやリモートキーなど物理的なキーを持たなくてもクルマに乗ることが可能なシステム。そしてキーの代わりになるのが仮想キーアプリ。このアプリをスマートフォンにダウンロードし、クルマに乗り込む際はドアにスマートフォンをかざし、エンジンを掛けるときは所定の範囲にスマートフォンをセットするという具合だ。
この「トレンドアクセス」と「スマートアクセス」のうち、利便性については従来型のアクセスシステムに新しい機能を追加している「トレンドアクセス」が今のところ有利だが、若い世代になるにつれてキーを持たずにすべてをスマートフォンでオペレートできる「スマートアクセス」が支持される傾向にあるとしている。
このほかにも、さらに発展的なシステムとしてスマートフォンと接続したスマートウォッチを使う「ゲートウェイキー」があり、これは操作のたびにスマートフォンをかざす必要がないので、スマートな動作でドアの開閉・エンジン始動が可能になるという。
こういった方法で課題になるのが、キー機能をどのようにスマートフォンに載せていくのかということだが、コンチネンタルでは「OTA keys(オタキーズ)」という仮想スマートフォンキーを扱う合弁会社を設立している。この会社でインフラと信頼できるサービスの提供を行っていくという。
このシステムはまずはカーシェアリング業界への導入を想定していて、スマートフォンのアプリからカーシェアリングの予約をすると、OTA keysから暗号化された仮想キー(データレコード)がスマートフォンに送信される。カーシェアリング用のクルマには仮想キーのデータを読み込む車載リーダーを備え付け、予約した人がクルマに向けてスマートフォンをかざすことで、そのクルマが利用可能になるというもの。このスマートフォンとリーダーの通信方法は近距離無線通信のNFCか、BLE(Bluetooth Low Energy)を使用する。
これからのクルマへのアクセスには、スマートフォンと仮想キーというアイテムが使われるようになっていくようだが、コンチネンタルでは物理的なキーがなくなるとは考えていない。あくまでも物理的なキーに加えてスマートフォンを使っていくというのが市場のトレンドになると考えている。