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ヤマハのスノーモビル(と除雪機)を「スノーモビルランド」で体験してみた
これは立派なスポーツだ!
(2015/1/27 11:00)
ウインタースポーツといえば、スキーとスノーボードが2大勢力と言ってよいだろう。近頃はウェアやブーツ、スキー板・ボードといったアイテムはすべてレンタルして、ほとんど手ぶらで行き帰りできるし、都内と雪山を日帰り往復しながらも、パウダースノーのゲレンデを滑れるツアーが企画されていたりもする。ブーム時のような盛況さはなくなったとはいえ、気軽かつ手軽に楽しめることは間違いない。
しかし、雪山で気軽に遊べるウインタースポーツはまだほかにもあるのだ。雪上のオートバイ、あるいは雪上のジェットコースターとも称されるスノーモビルがそれ。現在国内で唯一のスノーモビルメーカーであるヤマハからスノーモビルの体験会に招待いただいたので、2つ返事で申し込み、雪山のそびえる北へと向かったのである。
ライセンスなしでも当日取得可能
北といっても、東京浅草より東武鉄道特急列車を使って、ほぼ2時間で到着する鬼怒川温泉駅から、クルマで約40分ほどのところにある、栃木県日光市の「きぬがわ高原カントリークラブ」が舞台。ここは春から秋までゴルフコースとして営業しているが、冬のみ「スノーモビルランド」としてオープンしている。
つまり、元はゴルフコースの広大なフィールドで、スノーモビルを好きなだけ乗り回せるというわけ。ただ、そのためには「ヤマハスノーモビルライセンス」の取得が必要だ。スノーモビルを運転するのに自動車等の運転免許証は一切必要ないが、きぬがわ高原カントリークラブをはじめとするヤマハ協力の全国30個所以上あるスノーモビルランドでは、安全に楽しめるよう、独自の認定ライセンスを発行しており、このライセンスがないとスノーモビルを自由に乗ることはできない。
取得費用は、初回の座学・実技講習を含め、今回のきぬがわ高原カントリークラブでは7000円。1度ライセンスを取得すれば、2年間は講習なしでスノーモビルのレンタル費用のみで楽しめる。スノーモビル自体のレンタル費用は排気量にもよるが1000円~4000円となっているので、初めてスノーモビルにチャレンジする人でも1万円ほどあればOKだ。
きぬがわ高原カントリークラブの場合、ヘルメットやウェアといった装備も500円~1500円ほどでレンタルできる。オートバイに乗る人であれば、通常のヘルメットと冬用のジャケット、オーバーパンツ、グローブ、くるぶし以上の丈があるブーツがそのまま使えるし、ウェアについてはスキー・スノーボード用でも十分。場所によって用意しているレンタル品の有無は異なるので、装備について心配な人は、スノーモビルランドに問い合わせてみるのがおすすめだ。
なお、スノーモビルでは法律的にヘルメットの装着は義務づけられていないものの、ヤマハ協力のスノーモビルランドではヘルメットは必須としている。安全だけでなく防寒にも有効なので、いずれにしても装着したほうが心強いのではないだろうか。
オートバイに似ているようで、似ていない独特の操作系
ライセンス取得に必要な座学は、だいたい1時間ほど。発進・停止といったごく基本的な動作に関する手信号の使い方に加え、スノーモビルに乗車するうえで知っておくべき基礎的な知識をビデオで学ぶのみだ。しかし、これをきちんと頭に入れておかないと、そもそも発進すらできなかったり、コーナリングすることも不可能だったりするので、しっかり学んでおきたい。
座学が終わったところで、今度は30分ほどの実技講習に入る。借りたヘルメット、ウェア、グローブなどを装着し、一面が深い雪に覆われたきぬがわ高原カントリークラブの片隅で、講師がスノーモビルの乗車手順、操作方法を一通り説明した後、筆者を含む受講生が1人ずつ同様の手順と操作を確かめる。
スノーモビルは、オートバイに例えると、車両の前輪となるべきところに2枚のスキー板が取り付けられ、後輪となるべきところに「トラック」と呼ばれるラバーを用いたキャタピラ的な駆動部が1つ設けられた、1人用もしくは2人用の乗り物。このあたりはなんとなくご存じの方も多いはずだ。
操作系についても、バーハンドルを手で操り、1人乗りまたは2人乗り可能なシートにまたがって、ステップに足を乗せるというその姿格好から、オートバイに近いのではないかと思うかもしれない。が、実は細かい部分でかなり異なっている。
まずハンドル右側にアクセルを備えているが、オートバイのようにグリップが回転する構造にはなっておらず、グリップの左手前にあるアクセルレバーを操作することになる。これを親指もしくは親指の付け根あたりで引っかけ、グリップと一緒に握り込むことでアクセル開度を調整する仕組みだ。
レバーを握り込むのに握力はそれほど必要ないが、慎重に操作しないと唐突にエンジン回転が上がり、急発進したり、走行中にぎくしゃくしてしまう。スムーズな走行のために一定の開度を保つ必要があるため、そういう意味では握力はそれなりに必要と言えるだろう。
一方のハンドル左側はブレーキ。通常のブレーキレバーの他に、横倒しにして操作するブレーキロック用のレバーもあるが、これはクルマでいうパーキングブレーキと考えておけばよい。停車時は必ず左側に倒してロックし、発進前に右に倒して解除することになる。ギアチェンジは必要なく、アクセルを開けるだけで進むことから、総合的に見ればスクーターに近いと言えるかもしれない。
足元については、操作するようなところはなく、フットレストに足を置くだけ。ただし、足の先端側がポケット状になっていて、そこに足を突っ込んで半固定できる構造になっている。後述するが、スノーモビルでは大胆な体重移動がキモになってくるので、体を支えるためにも足で踏ん張りやすい仕掛けが設けられているのだ。
思った方向に曲がらない!けど楽しい!
その後はいよいよ各自スノーモビルに乗って、発進・停止、コーナリングなどの実技を始めることになる。が、その前に忘れてはいけないのが乗車前点検。オートバイでも残り燃料やタイヤの摩耗状態などをチェックする点検作業が乗車前に必要とされているが、スノーモビルでも同じように確認しておくべき事柄がある。
なかでも重要なのが「凍結解除」という動作。厳寒地に長時間停車することがあるスノーモビルの場合、スキー板やトラックの地面(雪)に触れている部分が、凍結によって貼り付いてしまうことがある。この凍結を解消しないと、発進しようとしてもまったく動かない可能性があるのだ。
そのため、乗車前に必ずスキー板の前方を何度か持ち上げ、後方もキャリアなどを手でつかんでトラック部分を持ち上げる、という作業を行わなければならない。特にトラック部分の持ち上げにはかなり力が必要なので、女性では確実に凍結解除できない場合がある。難しい時は他の人に手伝ってもらうのも良いだろう。
そんなわけで、いざ発進。スノーモビルにまたがり、キーを回してエンジンをかけ、ブレーキロックを解除して、アクセルを少しずつ握り込んでいく。決しておとなしいとは言えないエンジン音と排気音を轟かせながらゆっくり前進するものの、思ったとおりに進みたいだけ進む、というのが難しい。思い切って握り込むと急激に加速し、それに怖くなって緩めると今度はいきなりエンジンブレーキがかかったようになって減速する。そんなドンツキのような繰り返しでギクシャクしてしまうのだ。
なんとか少しずつアクセル操作に慣れると、次に迎える難関がコーナリング。スノーモビルでは雪面を滑る2枚のスキー板で方向転換するが、単にハンドルを切っただけではあまり曲がってくれない。クルマでハイドロプレーニング現象が発生すると、ハンドルを切ってもまっすぐ進んでしまうが、それを想像してもらえれば分かりやすいかもしれない。
しかもスノーモビルのハンドルは、車種にもよるけれど、バイクはもちろんパワーステアリングのないクルマなどとも比較にならないほど重い。ハンドルだけでスノーモビルを操ろうと思ったら、よほどの筋力と体力がないとすぐにバテてしまう。ではどうするのかというと、積極的な体重移動を行うのである。
曲がりたい方向のステップに全体重を乗せるがごとく、体を思い切り内側に入れて、まるでオートバイでいうリーンイン状態を作り出すことで、十分な旋回が初めて可能になる。反対側の足は、甲の部分でステップのポケット状になっているところに引っかけて上方向へ踏ん張る。スキーだと旋回時は外側の足に体重をかけることになると思うが、スノーモビルでは逆。とにかく内側に体を入れる、あるいは内側に体を落とすようなイメージで大胆に姿勢を作らなければならない。
15~20分ほど悪戦苦闘しているうちに、実技講習は終わり、そのまま流れるように「ツアー」へと向かう。講師が先導し、講習を受けている全員が1列になって、きぬがわ高原カントリークラブの敷地を縦横無尽に走る。狭い林道らしきところを縫うように進むところもあれば、広々としたスペースで思い切ってアクセルを開けられるところもある。
ツアーで1周した後は、自由に走り回れるフリータイムも設けられた。まだ誰も足を踏み入れていないふかふかの新雪の上でも、沈んでぬかるむようなことはなく、かなりのスピードで走ることができる。コーナリングには相変わらず慣れることはなく、必死にハンドル操作をしようとして腕が上がって(疲れて)しまっているが、仕事であることを忘れ夢中になってスノーモビルにしがみついていると、あっという間に2時間が経過。終了時刻となってしまった。たっぷり時間はあったはずだが、早すぎる……。
小学生からでも体験OK。日帰りももちろん可能
真冬の山中ということもあり、十分な防寒装備をしていても、じっとしていると凍える。が、スノーモビルに乗っていると不思議と寒さは感じることはない。というか暑くて汗だくになるほどなので、インナーの着替えを用意しておくのがおすすめ。めいっぱい力を入れてハンドルをこじっていた両腕と脇腹は、筋肉痛になること間違いなし。走り終わった後は息切れまでしていた。これぞまさしくウインタースポーツ!ではないだろうか。
きぬがわ高原カントリークラブでは、今回と同内容の「スノーモビルライセンス教室」がシーズン中、予約制で開催されている。午前中に座学を行い、午後に実技講習とスノーモビル体験ができるスケジュールを選べば、日帰りで楽しむことも可能だ。大人だけでなく、小学生からでも操縦が可能となっていて、家族連れで遊べるのもうれしいところ。
これから雪山へスキー・スノーボードを滑りに行こうと思っている人も、たまには趣向を変えてスノーモビルを体験してみてはいかがだろうか。そのスピード感と運動量を存分に味わえるだけでなく、広大なフィールドを散策して、自然や時には動物にもふれ合えるという、スノーモビルの多彩な魅力を感じ取ることができるはずだ。
つらい除雪が楽しくなる、除雪機体験も
今回のスノーモビル体験会では、合わせてヤマハモーターパワープロダクツが提供する除雪機を体験することもできた。
ヤマハグループの中では、除雪機はスノーモビルや四輪バギー、発電機などと並んで「特機」と呼ばれる事業カテゴリーに属する。グループ全体の売上に占める割合は、2013年度はおよそ9.0%。メインである二輪車事業に比べると規模は小さいが、日常生活に密接に関係する部分もあり、安定した需要のある事業領域と言える。
同社の除雪機のラインアップは、2馬力の手押しタイプの小型モデルから、13馬力の中型モデルまで、計7機種。2014年には小型ながらも高機能なスタンダードモデル「YT-660」をリニューアルするなど、継続的な製品の強化も図っている。
当日体験したのは、この「YT-660」の他、最も小型の「YU-240 ゆっきぃ」、そして10馬力の静音設計モデル「YS-1070T」の3機種。YU-240については、近年の都心における大雪に対応するべく「ゆりかもめ東京臨海新交通臨海線」が導入したほか、個人でも購入するユーザーが増え、確実に需要が高まってきているという。YT-660やYS-1070といったやや大きなサイズになると、都心では雪を飛ばす場所がないことから個人で使用する人は少ないようだが、雪深い東北、北海道などでの売れ行きは上々とのこと。
実際に除雪を体験してみたところ、YU-240は自走する機能がなく、手で押す必要はあるが軽々と取り回せる。操作もシンプルなため、力の弱い年配の方や女性でも扱いやすいと思われる。YT-660は自走機能があり、より深い積雪でも気持ちよく除雪していけるが、操作はやや難解に感じた。
より大きいYS-1070Tになると、左右への方向転換機能によって取り回しが楽になり、YT-660よりも慣れれば容易に操作できるようだ。雪国出身の筆者は、体力を一切使わずにあれよあれよという間にきれいに片付けていく除雪機の性能に感動。子どもの頃はほとんど日課となっていてうんざりしていた除雪ではあるけれど、除雪機があれば毎日が楽しくなりそうに思えた。
都心であっても突然の大雪で大がかりな除雪が必要になることもままある昨今、ヤマハの販売店やホームセンターを中心に除雪機の売り上げが伸びているとのことだが、除雪機の扱いに慣れていなかったり、誤った操作方法で使用するなどして事故につながっている例も増えてきており、「動かす前に必ず周囲を確認する」「メンテナンスする時はキーを抜く」など、正しく取り扱うことの必要性をアピールしていた。この冬、除雪機を使っている人、使うことがありそうな人は、改めて注意したいところだ。