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ヤマハ、新ドライブユニット搭載の小径車2015年モデル「PAS CITY-X/CITY-C」
これまでにない軽快感を実現。女性向け「PAS Mina」の参考カスタムモデルも披露
(2015/3/6 14:13)
- 2015年4月10日発売予定
- 10万9260円~11万2860円
ヤマハ発動機は2月26日、電動アシスト自転車の2015年モデル「PAS CITY-X」と「PAS CITY-C」を発表した。前後輪20インチの小径車で、2014年11月に同社が発表した新型ドライブユニットを搭載することで、取り回しのしやすさとパワフルさを両立した。価格はPAS CITY-Xが10万9620円、PAS CITY-Cが11万2860円、発売は4月10日を予定。
また、1月に発表済みのファッション性を高めた女性向けモデル「PAS Mina」の詳細についても解説した。女性目線で「欲しい」と思うファッショナブルさを追求した電動アシスト自転車で、同モデルをベースにヤマハグループの女性社員が自らカスタムした参考車両4種も登場し、PAS Minaの魅力をアピールした。
小径車、シニア向け、未発表の新モデルで売上拡大へ
発表会の冒頭では、同社SPV事業部 事業部長の森本実氏が、2014年通期における電動アシスト自転車の市場状況、販売実績を明らかにした。それによると、国内の全体需要は47万5000台と2013年比106%へと増加し、同社の販売台数は同115%の15万台に伸張。2014年4~12月の消費増税後と前年同期を比較しても99%と大きな落ち込みはなく、安定した販売実績を積み重ねた。
国内シェアは31.6%で同1.5%増、OEM提供なども含めたドライブユニットのシェアは53%で同2%増となっている。特に2014年から力を入れ始めた海外へのドライブユニット出荷台数は5万3000台と、前年から大幅増を果たした。
2015年は電動アシスト自転車の国内総需要が50万台に増えると見ており、同社の販売台数は2014年比107%の16万台に、国内シェアは32%に、ドライブユニットのシェアは54%にと、いずれも増加を見込む。体積削減と軽量化、使用磁石の低減を図った次世代ドライブユニットの採用車種を拡大していくのはもちろんのこと、ユーザーからの要望の多い、軽量で「取り回しが楽な」車種を積極投入することにより、目標達成を目指す。
その筆頭となるのが、今回発表した2015年型の「PAS CITY-X」と「PAS CITY-C」の2モデルだ。それぞれハンドルとフレームの形状、タイヤの太さ、フロントブレーキの形式、その他細かいパーツが異なるが、いずれも前後輪20インチで、新型ドライブユニットを搭載。ギヤ比などの工夫により小径車でも26インチ自転車と同等のGD値(ペダル1回転で進む距離)を実現している。バッテリーは25.2V/8.7Ahで、満充電時間は2.5時間。充電1回当たりの走行距離は、オートエコモードプラス時で最長59kmとなっている。
カラーバリエーションは、PAS CITY-Xにリッチグリーンとエスニックオレンジが新色として加わり、クリスタルホワイト、マットグラファイトの2色は前モデルから継続。PAS CITY-Cはレッドとクリスタルホワイトが新色となり、カカオ、マットオリーブが継続される。
森本氏によると「小径車が今、熱い」とされ、実際にPAS CITYの旧モデルの2014年販売実績が前年比170%と大きく伸びている。2015年モデルとなるこれら2車種は、新型ドライブユニットの採用などによりさらなる軽量化が進み、PAS CITY-Xは20.5kgと、2015年モデルのPASシリーズで最軽量となった(PAS CITY-Cは21.0kg)。
2015年はこの小径車の他に、シニア層向けの「PAS SION」、10代の学生に向けた各種施策、さらには現在開発中で2015年末に発表を予定しているという「新しいカテゴリー」のモデルで顧客拡大につながる「需要創造」を行っていく考えだ。
ニューモデルの女性向け「PAS Mina」、ユニークなカスタム車両も登場
発表会ではPAS CITYシリーズとは別に、2015年1月に発表した女性向けモデル「PAS Mina」の紹介に加え、ヤマハグループの女性社員が取り組んだ、PAS Minaをベースとした参考カスタムモデルも披露した。
同社によれば、PASシリーズ全体としては幅広い層の年代に受け入れられ、なかでも子乗せモデルについては30代、40代のユーザーに多く利用されている。ところがPAS Minaのプロジェクトを担当した同社SPV事業部 マーケティング部の鈴木真理氏の話では、そこから子乗せモデルを除いた後のユーザー数は少ないという。つまり、30代の女性に子乗せモデル以外の電動アシスト自転車が効果的にリーチできていないわけだ。
ユーザー調査でも、「国産製品はデザイン面で海外製品に劣り、わくわくするような国産自転車がない」という意見があったとのこと。これを受け、PASシリーズの中でも女性に人気の高い「PAS Ami」のファッション性を取り入れた、しかも「自分だけの1台」にできる新しいモデルの開発を検討してきた。
プロジェクトはヤマハグループの「組織の枠を超えた女性チーム」で進められ、こだわりのデザインによるファッション性を追求するだけでなく、毎日長く使える実用性も兼ね備えて、あえてカスタムの余地を残した仕様とすることで「自分らしさ」も表現できるものを目指したという。
その結果生まれたPAS Minaは、「北欧テイストの、シンプルで洗練された大人のおしゃれ」をイメージさせる、「クラシカル&ナチュラルモダン」がコンセプト。「Mina」というネーミング自体も、フィンランド語で「わたし」を意味する言葉であり、自分らしさや自分で作り上げる楽しみがある自転車だとした。
女性向けでありつつ、カスタムのしやすさにも配慮したPAS Minaをベースに、プロジェクトに参加したグループ会社の女性社員4人が思い思いのアイデアで形にしたカスタム車両も紹介。
晴れた日のピクニックをイメージさせる天然素材の手提げバスケットと木製ベルを装備したもの、リアキャリアに巨大なバスケットを載せ、フロントに小さなバッグをあしらったもの、子どものいる母親に提案するスタイリッシュな子乗せモデル、カラフルなモザイク柄を全体に敷き詰めた芸術を感じさせるもの、といった個性豊かな4台がそろい、それぞれ担当した女性社員がこだわったポイントを紹介した。
なお、これらの車種は市販の予定はなく、あくまでもPAS Minaのカスタマイズのしやすさと楽しさをアピールするための参考モデル。100円ショップにあるような木の葉型のタイラップで装飾するなど、ほとんどお金のかからない方法で工夫している部分もあり、自分だけのPAS Minaを作り上げることができるかどうかは、まさにアイデア次第だ。
軽快さを求めるならPAS CITY、おしゃれと走り自体も楽しみたいならPAS Minaか
発表会終了後は、PAS CITY-X、PAS CITY-C、PAS Minaをはじめとする最新のPASシリーズ全車種を用意した試乗会が催された。
PAS CITY-Xは、20.5kgという軽量さとタイヤの細さもあいまって、乗り味は軽快そのもの。小径車であるにも関わらず、ペダルを1回こいだだけで進む距離は大きく、走り始めは意表を突かれるような感覚がある。が、すぐにその軽さを楽しみながら走れるようになる。ただし、細いタイヤのせいかハンドリングはクイックで、安定性を求める人にはあまり向かない。もっと安心して乗りたい人は、やや太めのタイヤを装着したPAS CITY-Cがおすすめかもしれない。
PAS Minaも合わせて試乗した。こちらはスタンダードなサイズの自転車で、手前に絞り込まれたハンドルと幅広のペダルにより、リラックスした姿勢で乗車できる。真鍮製のベルやホワイトの変速レバーなど、手元の装備からすでにおしゃれさが際立っており、これだけ見ると男性は少し気後れしてしまいそうだ。しかしながら、タイヤは26x1.9 HEという極太サイズ。このおかげで操縦安定性はきわめて高く、コーナリング時の安定感も抜群だった。
極太タイヤだと軽快感は薄れそうに思うが、そこはパワフルな新型ドライブユニットの恩恵で、全く気にならない。タイヤだけみればマッシブなのに、自転車全体として見れば絶妙にバランスしているのも面白い。女性向けに単におしゃれさを狙った製品ではなく、走りの楽しさもしっかり堪能できるのが魅力の1台と言えそうだ。