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【鈴鹿8耐】決勝直前、ヤマハファクトリーライダーインタビュー

中須賀克行選手、ポル・エスパルガロ選手、ブラッドリー・スミス選手に直撃

2015年7月23日~26日 開催

YAMAHA FACTORY RACING TEAMの3人

 「2015 FIM世界耐久選手権シリーズ第2戦“コカ・コーラ ゼロ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第38回大会」(以下、鈴鹿8耐)が、7月23日に開幕した。全日本で圧倒的な強さを見せる中須賀克行選手と、現役MotoGPライダーのポル・エスパルガロ選手、ブラッドリー・スミス選手の3人が手を組んだYAMAHA FACTORY RACING TEAMは、初日の練習走行でトップタイムをマークし、24日に行われた予選も3位で通過。その後、25日の最終予選「トップ10トライアル」では見事ポールポジションを獲得し、優勝の期待も高まる。その「トップ10トライアル」を前に、3人にインタビューを行った。

中須賀選手

──昨日の予選を3位で終えて、これからTOP 10トライアルと決勝を迎えますが、ここまでの感触を教えていただけますか?
中須賀選手:今年は全日本選手権をファクトリーとして参戦し、その流れで8耐もファクトリー参戦ということで、勝てる体制が整っている状態です。今年YZF-R1がブランニューされたんですけど、国内のレースをやりながらしっかりデータを取り、マシンを開発しながら、8耐に向けてきました。全日本に関しては前半戦はちょっと苦労したんですけども、8耐に入る前に(全日本で)3連勝して、ポテンシャルの高さを証明して、乗り込んできている状況です。

8耐マシンのベースとなっている2015年モデルの新型YZF-R1M

 そのポテンシャルの高さを、今回の8耐のレースウィークでもしっかり発揮できているんじゃないかなと。というのは、昨日の予選ではタイムこそ3番手になっていますが、アベレージが非常に高い。ライダーが3人とも速いというのももちろんなんですけども、これはベースとなっている今年のR1の車両が強いことが証明されているんじゃないかと。ここまでは非常にいい形で、チーム一丸となって来れてますし、決勝が非常に楽しみなレースウィークになっています。

──MotoGPライダーのポル・エスパルガロ選手とブラッドリー・スミス選手、この2人の走りはいかがですか?
中須賀選手:僕自身がMotoGPの開発ライダーもやっていまして、彼らとはウインターテストでも会っています。彼らはMotoGPの世界レベルでシングルフィニッシュして表彰台に上がるライダーなので、非常にベースの能力も高いですし、ここ鈴鹿は初めて走るコースで、初めてのR1なのに、その中でもすぐ順応しています。非常にいいアベレージで走っているというのは本当に驚きですし、世界のレベルの高さというのを感じさせられますね。

──昨日は転倒がありましたが、ポル・エスパルガロ選手の体とマシンの方は大丈夫でしょうか?
中須賀選手:ポル選手に関しては体はノーダメージですし、全然問題ない。元気よくやっています。マシンはもう修復しました。今日のトップ10トライアルはその車両で挑みます。

──トップ10トライアルと本選に向けて、マシンセッティングや走り方、戦略など、改善すべきところはありそうですか?
中須賀選手:マシンのセッティングに関してはもうほぼ変えることはないです。それだけマシンはいい状態にあるというのは分かっていて、あとは自分たちがマシンに合わせる必要があります。(決勝では)気温も天候も変わるので、その中でいかに対応できるかがこの8耐のキーポイントになってくるんじゃないかなと。

 このレースウィーク、今日はこれまでになく暑いですし、これによってタイヤのフィーリングも変わってきます。タイヤ自体は決まったものを使うことになるので、本当に自分たちがいかにマシンに、タイヤに、状況にどう合わせていくのかが勝負になると思います。

──最後に、本選に向けての抱負をお聞かせください。また、ここが見どころだ、というのがあれば教えていただければ。
中須賀選手:8耐の一番の見どころというのは、やっぱりピットイン作業。そこでチームワークがいかに連携できているかが分かると思う。スプリントレースとは違ったレース展開になるし、ナイトランなんかはライトオンの光を楽しむというのもあります。あとはライダー交代だったり、そういうのを見てほしいと思います。

 本選に向けては、もちろんファクトリー体制で挑んでいますから、優勝の2文字しかないんですけど、そこにライダー・チーム一丸となって目指して頑張りたいと思います。

ポル・エスパルガロ選手

──これからトップ10トライアル、そして明日は本選です。昨日は残念ながら転倒してしまいましたけれども、初めての鈴鹿、チーム、そしてYZF-R1の感触はどうでしょうか?
ポル選手:フィーリングはすごくいい。この酷暑のコンディションだとライディングはかなり難しいけれど、バイクは本当に面白いから乗れるのがとてもハッピー。すごく速くて、MotoGPバイクにけっこう似ている。パワーがちょっと少ないおかげでグリップはかなり高いから、ひらひらできて速く走れる。ストリートバイクではなくて、MotoGPバイクですね。

 チームもすごくいい。メカニックは素晴らしいし、ファクトリーチームのパフォーマンスはいつもグッド。一生懸命動き回っている。昨日はクラッシュしてバイクを壊してしまったけれど、今朝には修理が終わっていた。これはすごいことです。チームメイトである中須賀さんは才能のあるハイレベルなライダーだし、ブラッドリーも今年MotoGPでいい成績を挙げているライダーだから、圧倒的にすごいチームですよ。

──レース前、鈴鹿8耐についてはどういう印象を持っていましたか。また、予選を終えた今はどんな印象になったでしょうか?
ポル選手:以前はテレビかビデオで見るだけでした。で、もう走ったわけですけれど、どんなレースなのか、ここで何が起こるのか、それを目にするのを楽しみにしてここへ来たら、たくさんのファンがいて、すごく歓迎された。走ってみたら、自分のパフォーマンス、このサーキット、このバイク、全てが違っていた。

 ここにいるのはいい人たちばかりで、親切で、レースを愛している。ヤマハは広報も、ピットスタッフも、本当に素晴らしい仕事をすることが分かっているから、レースはとっても面白くなるはず。もう予選で成果を出している通り、明日(決勝)もビッグな1日になると思います。

──中須賀選手はどんな人ですか?
ポル選手:彼は素晴らしい人だし、とんでもなく速い。いつもは彼はMotoGPのテストライダーなんですが、まさしく本当のライダー。速いうえに、特にこのバイクについては豊富な経験があるから、追いつくのは難しい。本当に強い。チームメンバーの1人でありリーダーでもあって、何かを聞けばどうすべきか的確に教えてくれる、最高のチームメートですね。

──最後に、決勝に向けての意気込みを。
ポル選手:優勝に向けて戦いたい。8耐は単に速ければいいわけではないから、勝つのが難しいことは確か。クラッシュせず、あまりミスをせず、チームも失敗することなく、バイクも良い状態で、コンスタントに走らないと。MotoGPみたいに速く走るのとは違う話。レース中にいろんなことが起こるだろうし、僕らが走り終えた時には、ピットにしっかり戻って祝福されたいし、チームとともに祝福したい。そして、トップ3までに入ることはできるはず。ライバルは速いから難しいことは分かっていても、頑張ります。

ブラッドリー・スミス選手

──これからトップ10トライアル、そして明日は本選です。初めての鈴鹿、チーム、そしてYZF-R1の感触はどうでしょうか?
ブラッドリー選手:このフェスティバルは文句なしにファンタスティック。ヤマハファクトリーチームの一員となって走るのは素晴らしい経験です。今のところのテストや予選ではみんないい仕事ができています。参戦しているライダーは全員がハイレベルですね。

 トップ10トライアルに向けては、そんなに緊張はしていません。1ラップだけ速く走ればいいんだから。もちろんポールポジションを獲れればいいに決まっているけれど、それはさほど重要じゃなくて、一番重要なのは明日の決勝レース。その決勝レースに向けてはすごく緊張しています。暑くてフィジカルに厳しいコンディションの中、大勢のライダーが走るトラックを、ミスなく200ラップ以上をこなさなきゃならない。そうですね、それを考えるとすごく緊張しますね。

──レース前、鈴鹿8耐についてはどういう印象を持っていましたか。また、予選を終えた今はどんな印象になったでしょうか?
ブラッドリー選手:鈴鹿が素晴らしいサーキットなのは言うまでもないから、ここに来るのはとても楽しみでした。しかも耐久レースということを考えると、フィジカル的にエキサイティングなことは間違いない。こういうチャレンジは大好きなんです。

 数日走った今、コースは思っていた以上にいいし、楽しく走れてコースも大好きになったから、期待はさらに高まっています。ちょっとだけ不安なのは、いつも乗っているMotoGPのYZR-M1ではなく、一度も乗ったことのないプロダクションバイクのYZF-R1であること。でも問題はありませんでした。パフォーマンスも高いですね。

 ネガティブ要素を1つ挙げるとしたら、大勢のライダーでコースが混雑することです。84チームが参加していて、そのうち決勝では70チームくらいが走る。でもこれが耐久レースだし鈴鹿でもある。だからここに来られて本当にうれしいですね。

──中須賀選手はどんな人ですか?
ブラッドリー選手:中須賀は非常に才能豊かな選手。ただ彼にとってアンラッキーなのは、33歳という年齢。もしそうじゃなかったら(もっと若かったら)、MotoGPのテストライダーや新しいYZF-R1のプロジェクトに取り組むというよりも、World Super BikeやMotoGPのような、もう少しいい舞台にいられたんじゃないでしょうか。知っての通り、全日本選手権では他のライダーよりも先んじています。彼のしていることには感銘を受けているし、親しみやすい人で、チームのいい雰囲気も作っています。全日本でもチャンピオンになるでしょうね。

──最後に、決勝に向けての意気込みを。
ブラッドリー選手:ヤマハとともにいいレースをするために来ています。いいレースというのは、つまり勝つ必要があるということ。何カ月も前からこのレースにフォーカスしてきて、100人以上のスタッフがプロジェクトに関わっています。明日は必ず表彰台の頂上に登ります。

(安田 剛/日沼諭史/Photo:Burner Images)