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日本デザイン振興会、「ロードスター」や「ミライ」など2015年度の「グッドデザイン・ベスト100」発表

11月4日に2015年度の「グッドデザイン大賞」発表

2015年9月29日開催

グッドデザイン・ベスト100のトヨタ自動車「ミライ」
グッドデザイン・ベスト100のマツダ「ロードスター」

 日本デザイン振興会は9月29日、2015年度のグッドデザイン賞受賞プロダクトについて情報を公開し、東京ミッドタウンで記者向けの発表会を行った。

 暮らしや社会を形作る「すぐれたデザイン」を選ぶことを通じ、生活や産業を支援して豊かな社会を築きあげていく活動として、来年で60回目を迎える「グッドデザインアワード」。2015年度は、過去10年で最多の3658件のデザインの応募があり、2014年を上まわる1337件をグッドデザイン賞として選出、エントリー総数に対して36.6%の受賞となった。

日本デザイン振興会 理事長の大井篤氏は「これからの暮らしや社会をかたちづくる鍵や種となり得るものを見出す」と語った

 記者発表会に登壇した日本デザイン振興会 理事長の大井篤氏は「より多くの皆様がデザインに対して大きな期待を寄せるとともに、社会の中でデザインの果たす役割が益々大きくなってきていることを示しているものと思う」と語った。

 また、今年度の取り組みについて、大井氏は「新たな試みとして社会や私たち一人ひとりが解決しなければならない課題を12の“フォーカス・イシュー”としてとりまとめ、このフォーカス・イシューにデザインがどのように働きかけるかに目を向けることで、デザインの今日的な役割はもとより、これからの暮らしや社会をかたちづくる鍵や種となり得るものを見出すことに努めた」と話した。

 大井氏は「受賞発表後は、グッドデザイン賞はプロモーションという次の重要なステップに移行する。1つひとつのデザインに込められた真意、それぞれのデザインが見すえる課題を、受賞者とともにグッドデザイン賞を通じて社会と共有しながら、デザインが社会を前進させるうえで無くてはならないものであることを、様々な活動を通じて幅広くかつ力強く訴求して行く」と、社会の中でのデザインの在り方をアピールした。

「グッドデザイン・ベスト」100の発表

 記者発表会では、2015年度グッドデザイン賞受賞対象の中で、審査委員会により特に高い評価を得た100件を「グッドデザイン・ベスト100」として発表した。

日本デザイン振興会 事業部 部長の矢島進二氏

「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれたプロダクトの代表例について、日本デザイン振興会 事業部 部長の矢島進二氏が、「丁寧」「根源」「変革」「協創」「厚意」「寄与」などのキーワードごとに分類し、そのデザインの優秀さと選出理由について述べた。

 このなかで自動車関連では、マツダ「ロードスター」やトヨタ自動車の「ミライ」が選ばれている。マツダ「ロードスター」は「丁寧」なデザイン。デビューから25年、単なる4代目へのモデルチェンジではなく、伝統的なライトウェイトスポーツカーのデザインを継承しながらすばらしいデザインがされているとの評価だったことが示された。

グッドデザイン・ベスト100のブリヂストンの「エコピアE500」

 トヨタ「ミライ」は「変革」。インフラ整備を本気で進め、水素社会を構築していこうとする姿勢が評価されたと語った。また、自動車用タイヤのブリヂストン「エコピアE500」も、電気自動車専用タイヤとしてカーメーカーに積極的な提案を行い「タイヤメーカーがクルマ造りを変えた」ことによって先進性が評価され「変革」にカテゴライズされていた。

 また、交通の分野では「協創」をキーワードに、道の駅「道の駅 FARMUS木島平」について紹介された。閉鎖された旧デルモンテ工場の敷地及び工場建物を取得し、「農の拠点施設」として再生活用。工場が持つ空間性や特殊な構造設備などをできるだけ残しながら、まるでビニールハウスのような小屋を工場内部へと貫入させることで内部への採光や通風を確保し、構造補強としても機能させていることから、矢島氏は「新築では作りえない空間と新しいデザインが相乗効果を発揮するデザイン」と述べた。

 また、道の駅「ソレーネ周南」については、「オール周南」で取り組むこの道の駅では「出せる人」「持って来れる人」だけが直売所への出荷対象者でなく、高齢化が進む小規模農家及び加工所、交通弱者の方々にも道の駅に出荷してもらうことが公共施設として道の駅には重要との考えから、ヤマト運輸とのタイアップによる集荷がされていることがポイントとなっていた。

旧デルモンテ工場の敷地と工場建物を「農の拠点施設」として再生活用している「道の駅 FARMUS木島平」
ヤマト運輸とのタイアップにより、高齢化が進む小規模農家や交通弱者の方々にも道の駅に出荷してもらうことを可能とした「ソレーネ周南」

 その他、安全運転支援システムのスバル(富士重工業)「アイサイト」や、2007年にスタートして「わるい運転を叱るのではなく、よい運転を褒めよう」というスローガンを掲げ、ドライバー同士のコミュニケーションの力で首都高の交通事故を減らす交通安全運動「東京スマートドライバー」も、グッドデザイン・ベスト100に選ばれていた。

ロングライフデザイン賞にはトヨタ「ハイエース(バン、コミューター、ワゴン)」「レジアスエース」

 続けて、発売から10年以上にわたり市場へ提供され続け、ユーザーの支持を得ているものに与えられる「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」が発表された。

グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞したトヨタ「ハイエース(バン、コミューター、ワゴン)」「レジアスエース」(ハイエースシリーズの登場は、なんと1967年)

 矢島氏からは、ロングライフデザイン賞について、賞の対象となるのは現在生産・販売されている商品で「10年以上前にグッドデザイン賞を受賞している」「発売から10年以上にわたり市場へ提供され続け、ユーザーの支持を得ている」、これらのいずれかを満たすもので、広く一般のユーザーから推薦された商品を対象に審査を実施したことが示された。

 自動車関連では、グッドデザイン・ロングライフデザイン賞にトヨタ「ハイエース(バン、コミューター、ワゴン)」「レジアスエース」が選ばれている。

社会とデザインの関係が変わってきている

2015年度グッドデザイン賞 審査委員長 永井一史氏
2015年度グッドデザイン賞 審査副委員長 柴田文江氏は「消費者側の目線に立って審査をしていくのがGマークだ」と語った。

 2015年度グッドデザイン賞 審査委員長 永井一史氏は「デザインという概念が社会で広く扱われるようになり、さまざまな分野でデザインが見立てられるようになっている今、社会とデザインとの関係を如実に反映しているのがグッドデザイン賞である」と語った。

「今回のグッドデザイン賞では、デザインがいま向き合うべき重要な領域を“フォーカス・イシュー”として定め、さまざまな社会課題とデザインとの関わりに評価のポイントを置くととともに、応募されたデザインの意義や価値をこれまでにも増して深く読み解くことを心がけた」とのこと。

 また、「デザインが芽吹くところに社会の新たな可能性が生まれるのであって、それぞれのデザインがいま社会に対して訴求すべき内容を携えていることを、受賞した1つひとつのデザインを通じて理解していただきたい」とも述べていた。

グッドデザイン特別賞各賞の発表は10月30日、グッドデザイン大賞の発表は11月4日

 今後、今回発表されたグッドデザイン賞とグッドデザイン・ロングライフデザイン賞の受賞対象は、東京ミッドタウンで10月30日~11月4日の期間に開催される受賞展「グッドデザインエキシビション2015(G展)」に出展される。

 10月30日に「グッドデザイン金賞」などの特別賞各賞を発表するとともに「グッドデザイン大賞」候補を発表。グッドデザイン賞の審査委員と受賞者、受賞展来場者による投票が実施され、11月4日に「グッドデザイン大賞」が発表される。

(酒井 利)