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トヨタ、東京オリンピックを含む2024年までIPC ワールドワイド・パラリンピック・パートナーに就任

豊田社長「“移動の自由”の実現と“スポーツの感動”を広げる活動にチャレンジしたい」

2015年11月26日発表

写真左からトヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏とIPCのフィリップ・クレイヴァン会長

 トヨタ自動車は11月26日、東京パラリンピックを含めた2024年まで「ワールドワイド・パラリンピック・パートナー(Worldwide Paralympic Partner)」スポンサー契約をIPC(国際パラリンピック委員会:International Paralympic Committee)と締結した。

 今回、契約が締結されたIPC「ワールドワイド・パラリンピック・パートナー」スポンサーは、パラリンピックの最高位レベルのグローバルスポンサーシッププログラムとなり、夏季・冬季パラリンピック大会および関連活動について、スポンサー企業がグローバルで支援を行うというもの。

 対象期間は2016年~2024年(2016年の権利対象国は日本のみ。2017年からはグローバルの権利)で、今回の契約には2017年から2024年の期間、すべてのNPC(National Paralympic Committee)と活動する権利も含まれる。

 対象となる製品は、モビリティ、Vehicles(乗用車、小型モビリティ、商用車等)、Mobility Services(ITS、テレマティクスサービス等)、Mobility Support Robots(移動支援ロボット、リハビリテーションロボット、ウェアラブルロボット等)となる。

 同日、東京都内でIPCのフィリップ・クレイヴァン会長とトヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏が出席する記者発表会が開かれた。

IPCのフィリップ・クレイヴァン会長

 発表会で、クレイヴァン氏は「IPCとトヨタは、“全ての人にモビリティを提供することでより多様な社会が生まれる”という同じ価値観と情熱を持っています。長期にわたるパートナーシップ契約を結べることを喜ばしく思います」と挨拶。

 加えて、クレイヴァン氏は「IPCはパラリンピック競技を通じて、“すべての人が参加できる社会の実現”を目指しており、そのためにはすべての人に移動の自由があることが必要だと考えています。トヨタとのパートナーシップによって移動の自由が実現できれば、多くの人の人生をよりよいものにすることが可能になります。パラリンピックは社会の変革をもたらす最も大きなスポーツイベントとして、このムーブメントを更に社会にとって意義のあるものにしていきたいと思います」と述べた。

トヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏

 一方、豊田氏は「私たちは“すべての人が参加できる社会を目指す”というIPCの理念に深く共感しています。その実現のためには、移動の自由が鍵を握っております。トヨタは、移動がチャレンジするための障がいではなく、夢を叶えるための可能性になってほしいと願っております」と話した。

 さらに会見の中で豊田氏は、自身が戦うアスリートの姿に心を揺さぶられたことについて触れた。東日本大震災やタイの大洪水が発生した2011年、トヨタの女子ソフトボール部は日本リーグ優勝をかけて戦い劇的なサヨナラ勝ちを決め、豊田氏は「会社が戦っている時だったからこそ、決してあきらめない姿に勇気づけられた」とその時のエピソードを紹介。

 このエピソードを踏まえて、豊田氏は「パラリンピアンは、自分の限界を超え可能性を広げるために戦い、さらに自分を支えてくれている誰かのために戦っています。パラリンピアンがもたらす強い“感動”や“尊敬”の感情によって、私たちの心はひとつになります。クレイヴァン会長の言われる“One World, One Dream, One People”に、私たちは近づくことができるのだと思います」と話した。

 最後に豊田氏は「私たちトヨタはパラリンピックを通じて、“移動の自由”の実現と“スポーツの感動”を広げる活動にチャレンジしたいと思います。グローバルトヨタ34万人がバッターボックスに立つこと。それこそが、私たちのパラリンピックへの関わり方だと考えております。できないことはないと信じております」と会見を締めくくった。

記者会見場で契約書の調印が行われた
パラリンピック関係者とのフォトセッション

 また、会見後の質疑応答では「移動の自由」に対する方向性について質問が出され、豊田氏は「パラリンピアの方々からは、移動の自由の妨げとなっているのはモビリティを含めた未整備なインフラ、障がい者との接点が少なく“どのように接していいか分からない”という、心の部分ではないかという声も伺っている」と現在の課題について話した。

 そのうえで、豊田氏は「私どもは100年後も自動車を“愛”のつく乗り物にしていきたいとこだわりを持って、自動運転や人工知能の研究に取り組み始めている。こういった研究によって、誰もがワクドキを楽しめる、移動の自由を得られる、モビリティの会社として貢献できる点が多々あると思っている。いずれにしても、2020年が近場のゴールになると思うが、いろいろな人の協力を得ながら、誰もがよりシームレスに自由に移動できる空間を作っていきたい」との考えを示した。

 2017年度に発売予定の「次世代タクシー」に関する質問に、豊田氏は「街の景色を決めるのはタクシーのカタチだと思う。これを東京オリンピックに向けてカタチを変えていこうというプロジェクトが出てきた。今のカタチでは、車いすで乗られる方や海外から大きな荷物を抱えて乗られる方に、100%の利便性があるかというと、まだまだ改善の余地がある」と話した。

 続けて「私たちはカタチから入り、ユニバーサルデザインとし、ひいてはエコまでいきますと欲張りすぎになりますので、現実をよく見ながら、今タクシーを製作しています。タクシー業界の声を聞きながら、普及のスピードが上がるように順次進めていきたい」との見通しを示した。

 豊田氏は「今までいろんなパラリンピックの会場がありましたが、パラリンピアの方が、空港から選手村まで“いちばん快適に移動できた”という都市になれることが、我々の1つのチャレンジになる」との考えを示した。

会見会場には、パラリンピアンが使用する競技用の車いすなどが展示された

(編集部:椿山和雄)