インプレッション
フォルクスワーゲン「ゴルフ トゥーラン(2016年フルモデルチェンジ)」
2016年8月4日 00:00
まさしく“正常進化”
初代が登場した2004年というと、日本中がすっかりミニバンだらけになったころだ。ミニバンは便利だけど、走りには我慢を強いられる部分が少なくなかった中で、小柄ながら比較的しっかり使える3列のシートと、乗用車とそん色ないドライバビリティを身に着けた走りには舌を巻いたものだ。
その後、いくたびかのエンジンやトランスミッションの換装、内外装デザインの変更などを経て、実に12年も現役であり続け、しかもその間あまり販売台数は落ちなかったというあたりも、このクルマがいかに優秀であるかを物語るわけだが、そんな初代からバトンを受けた2代目も、まさしく“正常進化”という表現がぴったりハマりそうなモデルチェンジを遂げた。
ジェネレーションとしては、初代が5代目ゴルフをベースとしていたのに対し、ひと世代飛び越えて7代目と共通性の高い、すなわち次世代プラットフォーム「MQB(モジュラー トランスバース ツールキット)」を採用したのもトピックだ。
従来の面影を踏襲しながらも、パッと見で上級イメージが高まったように目に映る外観は、あたかも上級の「シャラン」をサイズだけ小さくしたかのような質感を持っていて、遠目にはどちらか分からないくらいになった。
従来どおり2-3-2レイアウトの車内は、2列目に3座の独立したシートを備えており、横3人掛けがしやすいのもトゥーランならでは。日本のミニバンに同様の設定はないのだが、こうなっていた方が重宝するシチュエーションは少なくないものだ。
外見からイメージするよりも広く感じられる室内空間や、さまざまなシーンに合わせて自在に使える多彩なシートアレンジ、豊富に設定された収納スペースなど、初代の優れた部分をしっかり受け継いでいる。
その上でホイールベースは110mm拡大し、リアドア開口部が大きくなっただけでなく、座面がワンタッチで前後にスライドするイージーエントリー機能が備わったことで、3列目へのアクセス性も飛躍的に向上した。
広く使いやすいラゲッジスペースもさらに進化した。初代はフルフラットにするには2列目シートを取り外さなければならなかったところ、2代目は折り畳めばフラットな空間になるので、わざわざ重いシートを外す作業をしたり、置き場のことを考えたりする必要もない。使い勝手においてどちらが便利かは言うまでもない。
3列目も、前倒しすると連動して座面が下がって低い位置でフラットになるなど、一連のアレンジ操作が非常に簡単にできるところもよい。逆に、3列目シートを立てると荷物を置けるスペースはわずかしか残らないので、3列目にはあまり人を乗せる機会のないユーザーの方が向いていそうだ。
スポーティな「R-Line」も仲間入り
そんなトゥーランは、「コンフォートライン」の下にさらに質実剛健な「トレンドライン」という受注生産のグレードが新設されたのも特徴だが、日本発売から約半年、いよいよトゥーランにもフォルクスワーゲンの他モデルでも人気を博している「R-Line」が設定されたのも朗報だ。
「R-Line」は上級グレードの「ハイライン」をベースに、フォルクスワーゲン R GmbHが企画開発したR-Line専用アイテムが内外装の随所に与えられている。写真のけっこう目立つ新色「ハバネロオレンジメタリック」も、アグレッシブになったエクステリアをさらに引き立てている。
専用のファブリックシートやステアリングホイール、ドアシルプレート、アルミ調ペダルクラスターなどの与えられたインテリアも、R-Lineらしさを演出している。ミニバンといえどもスポーティモデルの人気が高い中、これまでは控えめな印象だったトゥーランでも、こうしたモデルが選べるのを待ち望んでいた人も少なくないことだろう。
持ち前の走りのよさは健在だ。MQBを得たことで、フットワークはこれまでにも増して軽快で一体感のあるものとなり、ワインディングに持ち込んでもミニバンらしからぬその走りっぷりには感銘を受けるほど。操舵に対する応答遅れが小さく、微少舵域からリニアでなめらかな操舵感を持つステアリングなど、ゴルフでも感じたよさをそのまま持ち合わせている。
一方で、ホイールベースの延長が効いてか、高速巡行時のスタビリティも増したように感じられた。そうした走りの優位性と併せて横風にも強いのは、日本の道にあふれる背高ミニバン各車に対してトゥーランが誇れる部分に違いない。
ワイドリムの専用18インチアルミホイールとモビリティタイヤを履く「R-Line」のDCCパッケージ装着車の走りは、よりグリップ感が高く骨太な印象となる。一方で、16インチタイヤを履く「コンフォートライン」は、17インチの「ハイライン」に対しても、路面への当たりがマイルドになることが分かる。
乗り心地全般としては、初代に比べると足まわりが引き締められた印象で、スポーティ志向になったように感じられた。そのことは後席に乗るとより顕著であり、やや硬さを感じる。また、車内にこもるロードノイズ系の音が初代よりも大きくなったような気もしたのだが、これには新しいボディ骨格が影響しているのかもしれない。
1.4リッターTSIエンジンは、走り系以外のゴルフでもっともスペックの高い「ハイライン」と最大トルクが同値で、最高出力は10PS高められており、動力性能は十分。燃費の公表値も初代に対して大幅に向上している。
ただし、7速DSGを搭載するトゥーランは、世界的にも数少ないDCTを持つ3列シート車でもあるわけだが、ゴルフよりも200~300kgかそれ以上に重たい車体との組み合わせになると、トルコンを持たないためスムーズに発進させるのが難しくなるせいか、出足でややもたつきを感じる。これはゴルフではあまり感じられないのだが、車両重量の重いトゥーランでは少々感じるのは否めない。発進停止の多い日本の交通事情においてはなおのこと、気になる面もなくはないことを指摘しておこう。
一方で、車速が乗ってしまえば、むろんダイレクト感のある走り味や素早いシフトチェンジなどといった恩恵にあずかれるのも、DCTならではに違いない。
装備面では、クラストップレベルといえる先進安全装備や、最新のコネクティビリティを備えているのも2代目トゥーランの強みとなる。3列シート車の人気の高い日本において、こうして国産ミニバンにはない価値をいくつも身に着けたトゥーランは、国産ミニバンでは飽き足らない人たちにとって、非常に有力な選択肢となることだろう。