インプレッション
レクサス「GS&LS 2013年秋一部改良モデル」
Text by 岡本幸一郎(2014/3/31 15:02)
2.5リッター直列4気筒+モーターの「GS300h」が追加
2013年秋、GSシリーズの一部改良と同時に、ハイブリッドに2.5リッター直列4気筒エンジンを搭載する「GS300h」が追加された。もともと設定されるというような情報はあったので、こちらを待っていた人もかなりいることと思う。すでにラインアップされていた「GS450h」と合わせ、これでレクサスのハイブリッドモデルのなかで唯一、GSだけが2種類のパワートレーンから選択できるようになったわけだ。
GS300hのJC08モード燃費は21.4~23.2km/Lと、GS450hの18.2km/Lを圧倒した。さらに車両価格でもGS450hが704万円~804万円のところ、GS300hは580万円~670万円と、上限、下限とも130万円ほど低くなった。
GS300hに搭載されるのは、基本的にはクラウン ロイヤルおよびアスリートのハイブリッドと同じシステムだ。クラウンともども、この車格のクルマに4気筒エンジンというのは少し前なら考えられなかったことだと思うが、ダウンサイジングの時代が到来したことで、クルマ自体の完成度に不満さえなければ、価格が安くて燃費に優れるこちらを選ぶという発想はごく当たり前のものとなったといえる。
4気筒ということで気になるのは静粛性だが、これが問題なく仕上がっているだろうことはクラウンの完成度からも想像できたとおり。車内の会話明瞭度は高く保たれている。GS300hもこれだけできていれば不満に感じる人はまずいないと思われる。静かなキャビンに聞こえてくるエンジン音は、やはり6気筒の上質感を超えることはできないものの、音や振動は十分気にならない程度に抑えられている。
動力性能について、この新しい2.5リッターエンジンと組み合わせたハイブリッドシステムは、ベースとなる横置きエンジンのカムリに乗ったときから好印象で、そのよい印象は縦置きにしても変わることはない。小排気量エンジンや旧世代のシステムを搭載するほかのトヨタ/レクサスのハイブリッド車で見受けられる出足の鈍さはあまりなく、比較的リニアに仕上がっている。踏み込めば、まずまず不満のない加速力を示す。
実力からするとこれで十分という見方もできるとはいうものの、GSという車格とキャラクターからすれば物足りなさを感じなくもない。そこはまさに、GSは2つのハイブリッドから選べるのだから、求めるものに合わせてユーザーが決めればよいのだと思う。
GS450hより軽さとバランスのよさを感じる
今回はGS300hの“Fスポーツ”と“バージョンL”に試乗した。いずれもダンパーの減衰力を電子制御により最適に制御する「AVS(Adaptive Variable Suspension system)」を標準装備しており、専用サスペンションが与えられる“Fスポーツ”はイメージどおりやや引き締まった感覚となるのだが、ともに快適性への大きな不満はない。
車両重量はガソリン車並とまではいかないものの、GS450hと比べると90kg~100kg軽く、前後重量配分も50:50に近い。実際に運転しても、そのとおり鼻先を軽く感じる。“Fスポーツ”同士で考えると、後輪操舵も含めた各種デバイスを統合制御する「LDH(レクサス・ダイナミック・ハンドリングシステム)」がGS450hだけの装備となり、GS300hには設定されないのだが、乗り味には素のバランスのよさが感じられる。
また、GSは4人乗車でゴルフに出かけるような使われ方もするクルマだが、静粛性や快適性は十分に確保されているし、ハイブリッドシステムの駆動用バッテリーを搭載していながらトランクの奥行きが長い。タイヤハウス後方が広く確保されているので、ゴルフバッグを楽に積めるところもよい。加えて、現行型のGSは後席の乗降性や居住性に優れることもあらためて確認できた。
ここでGS300hの追加と同時にGS全車に施された一部改良の変更内容に触れると、運転席まわりではヘッドアップディスプレイがカラー表示になった。これにより視認性が向上した。また、今回試乗した“バージョンL”に装着されていたバンブーのオーナメントパネルの設定が拡大されるとともに、ウォールナット/縞杢の本木目オーナメントパネルが“Fスポーツ”にも設定された。バンブーの質感は好みが分かれるかもしれないが、新鮮味があり、個人的にはけっこう好みだ。
このほか、車内の空調などを制御して快適性を確保しながら燃費の低減を図る「レクサス クライメイト コンシェルジュ」が一部を除き標準装備とされた。また、今回は試乗しなかったが、ガソリン車の「GS350」の2WD(FR)車に待望の8速AT「8-Speed SPDS(8速スポーツダイレクトシフト)」が与えられたのも朗報である。
エクステリアでは、フロントフォグランプをLEDタイプに変更したほか、LEDクリアランスランプにデイライト機能が追加され、“バージョンL”にも19インチホイールがオプション設定されている。また、ボディーカラーでは“Fスポーツ”に専用色「ホワイトノーヴァガラスフレーク」が新設された。
安全装備では、走行中に自車の後側方を走行する車両をレーダーで検知して注意喚起する「ブラインドスポットモニター(BSM)」がオプション設定された。
あらためて感じたLS600hの価値
LSが2012年10月にビッグマイナーチェンジを実施して現行モデルのデザインになったのは既報のとおり。2013年9月に一部改良が行なわれ、LEDクリアランスランプに昼間の被視認性を高めるデイライト機能を追加したほか、シャークフィンアンテナのデザインが新しくなった。また、ボディーカラーに新色「ソニックチタニウム」が設定された。
今回試乗したのは、LS600hの最高峰“エグゼクティブパッケージ(4人乗り)”である。あらためて感じたのは、レクサスのハイブリッドモデルのなかでもLSだけは別格な感じがすることだ。GSやISもよくできているのだが、走り出す瞬間の動きの滑らかさや、アクセルを軽く踏んで徐々に速度を増していくときのスムーズさなどにおいて、LSは次元が違うように感じられるのだ。ほかの車種が足りないのではなく、LSが優れているという意味であり、考えうるすべてを尽くした感じがする。
運転しても、加速の仕方やブレーキ回生についてLSが最も違和感がなく、乗り心地は極めて快適だ。路面からの入力を不快に感じないよう、すべての入力が丸く包まれている。それらの点でもほかのレクサス車とは一線を画する。
車両価格が1550万円という“エグゼクティブパッケージ”のインテリアは、見た目や触れた感覚においても非常に高い満足感を与えてくれる。LSのなかでも頂点に位置するモデルだけに相当に力が入っているわけだが、これは価格帯が同程度かもっと上まわるくらいのドイツ製高級サルーンをもしのぐ高級感を備えていると思う。ロングホイールベースにより、ニースペースは500mm以上あるのではないだろうか。足を組んでもなお余裕があるほど広大だ。
「AVS」を備える電子制御エアサスペンションは、「スポートS+」モードを選んでも快適性が損なわれることはない。とにかく、現状で考えうる快適装備と安全装備がすべて盛り込まれているクルマである。
惜しむらくは、ハイブリッドに関する表示については、ほかの後発モデルではもっと進んだことをやっているので、そこには古さが感じられる。また、現行モデルの「スピンドルグリル」を使ったフロントマスクは、LSの場合、“Fスポーツ”はまだしも、今回試乗した“エクスクルーシブパッケージ”のように上級感を訴求するモデルについては、いささか不似合いのように思える。
LSの現行モデルであるF4#系は2006年秋の登場なので、すでにかなりの時間が経過している。まだ次期モデルの情報もあまり聞こえてこないのだが、現状でも十分にその卓越した完成度を世界に誇れる日本発のラグジュアリーサルーンであることには違いない。