写真で見る三菱「RVR」


初代RVR

 初代RVRが登場したのは1991年。ワゴンと乗用車の特徴を兼ね備えた“トールワゴン乗用車”という新ジャンルを作り出し、クロスオーバーモデルとして新しい価値をユーザーに提案した。後席用スライドドア、あるいは後席のロングスライド機能などを盛り込み、使い勝手のよさや広大な室内空間が特徴だった。

 そして、2月に発売された新型RVRを開発するにあたっては、「時代にあったクロスオーバーは何か」を再考したと言う。高いアイポイントによる運転のしやすさや、乗降性のよさといった機能性を考慮し、三菱自動車工業はSUVとパッセンジャーカーの融合という答えを出した。

新型RVRのスケッチ。スタイリングコンセプトを「コンパクトダイナミズム」とし、ジャストサイズの中にアクティブな要素を詰め込んだと言う

 同社のマーケティング担当者は、「街中を走る車を見ると、1人ないしは2人で移動しているケースが多い」と言う。そこで、日常で使用するのが2名程度であれば、過度に大きいサイズのSUVは必要ないのではないかと考え、ジャストサイズのSUVの開発に着手した。

 同社は、アウトランダー、パジェロミニといった大小サイズのSUVモデルをラインアップするが、その間に位置する中型サイズのSUVが不在だった。その穴を埋めるモデルが、この新型RVRとなる。

 新型RVRのボディーサイズは4295×1770×1615mm(全長×全幅×全高)。これは同社のオンロードSUV「アウトランダー」と比べて345mm短く、30mm狭く、65mm低いが、ホイールベースは同じ2670mmとし、取り回しのよさと広い居住空間を確保した。

 近年、車を購入する際に燃費性能は非常に重視されるポイントとなり、新型RVRの開発段階でも、燃費性能に直結する空力性能は大きなテーマになったと言う。

 そのため、ルーフ後端を下げるとともに、リアに向かってボディーを絞り込むといったデザインを取り入れることで、Cd値0.33という空力特性を確保した。しかし、空力性能を求めるあまり、極端なデザインを施すと後席の居住性は低下してしまう。この空力性能とプロポーション、そして居住性の折り合うポイントを探すのに苦労したと言う。

 また、空力性能のほかに、燃費を稼ぐにはボディーの軽量化も欠かせないファクター。新型RVRの特徴の1つとして、柔軟性・復元性の高い樹脂フェンダーを採用したことが挙げられる。この樹脂フェンダーにより、軽量化のほかにもフェンダーの張り出しを強調するデザイン面の向上にも一役買う。

 搭載する直列4気筒DOHC 1.8リッターエンジンはフリクションの低減が図られた。また、低燃費化とドライバビリティの向上を両立する燃費向上レシオパターンの6速スポーツモード付きCVT「INVECS-III」を採用するとともに、高効率の発電制御を行う減速エネルギー回生システムや電動パワーステアリングなどを採用した。これらにより、RVRは全車が「環境対応車 普及促進税制」(エコカー減税)の50%減税に適合している。

 撮影車両は新色のカワセミブルーメタリックとホワイトパールで、いずれもグレードはG。カワセミは綺麗な水辺に生息する鳥で、主食とする魚を捕らえる際に水中まで行動範囲を広げる俊敏さを持つと言う。これはRVRの持つ“俊敏コンパクト”というコンセプトにぴったり合致するとともに、エコのイメージにも直結するとして選ばれた。

 価格は178万5000円~244万9650円。E、M、Gの3モデルで、それぞれに2WD(FF)と4WDを設定。トランスミッションは全車CVTを採用する。

全長はコンパクトながら、ロングホイールベースを実現。取り回しのよさを確保するとともに、広い居住空間を実現した。横から見るとウェッジの効いたサイドキャラクターラインが目立ち、ルーフラインが後方に緩やかに下がっていることが分かる
逆スラントノーズの台形グリル「ジェットファイターグリル」を新型RVRにも採用通常のHIDと比べて約1.4倍もの光量を誇ると言う「スーパーワイドHIDヘッドライト」はGに標準装備、Mにオプション設定する。また、これまでのプロジェクターヘッドライトでは有効活用できていなかった光を、側方にも照射することを可能とした。これにより配光の左右アングルは80度を確保。同じ新型RVRのEやMに標準装備するハロゲンランプは30度フロントフォグランプはGに標準装備し、Mにオプション設定
サイドアンダーミラーを標準装備ミラー部はサイドターンランプを内蔵Gは17インチアルミホイールに215/60 R17サイズのタイヤを組み合わせる。EとMは16インチホイールに215/60 R16タイヤ
ランプ類やナンバープレートは、リアビューを必要以上に厚く見せないように高い位置にレイアウトし、軽快感を持たせたと言うルーフラインをなだらかに後方へ下げるとともに、キャビン側面をしぼり込むことで空力特性を向上させた。一方で居住空間も確保しなければという課題は大きなハードルだったと言う
フロントフェンダーは、デリカD:5でも採用される樹脂製のものを採用。軽量化に大きく貢献するほか、高い柔軟性と復元性を併せ持ち、軽い衝突程度のダメージでは元の状態に戻るのだと言う。両側に採用してスチールと比較して約3kgの軽量化に成功している全グレードとも直列4気筒DOHC 1.8リッターエンジンを搭載。最高出力は102kW(139PS)/6000rpm、最大トルクは172Nm(17.5kgm)/4250rpm
インパネ前面部~ドアトリムアッパーにかけて、手の触れやすい個所にはソフトパッドを採用するとともに、部品の分割ラインを減らすことで上質感を演出。随所に配されるシルバーの加飾が上品さも生んでいるアイポイントが高いため、運転席からの見晴らしがよい。フロントシートのシートバックを肉薄化することで、後席の居住性を高めるという工夫もなされている。シート地は3Dエンボス&クロスファブリック、エンボスファブリック&プレーンニット、本革シートの3パターンを用意。本革シートはGにのみオプション設定
ハンドルの左側にオーディオの選択ボタンやボリューム調整ボタン、右側にクルーズコントロールボタンが配置される
Gは標準でマグネシウム合金製のパドルシフトを装備する。右側がシフトアップ、左側がシフトダウン運転席側のドアにパワーウインドースイッチと電動ミラー調整スイッチがある
トランスミッションは6速スポーツモード付きのCVT「INVECS-III」を採用4WDモデルにはドライブモードセレクターを採用。より燃費を重視した「2WD」モード、オールコンディションで適切な制御を行う「4WD」モード、4WDモードに比べて後輪の駆動力配分を増やして悪路での走破性を高める「4WDロック」モードから選べるエアコンダイヤルにもシルバーの加飾。Gはフルオートエアコン、EとMはマニュアルエアコンを標準装備
7インチワイドディスプレイHDD ナビゲーションシステム「MMCS」。HDD容量は40GBフロントドア下部の物入れ。ドリンクホルダーもあるセンターコンソールボックス内にはDC12Vのアクセサリーソケットのほか、音声入力/映像入力端子やUSB端子を設ける
シートヒータースイッチ。シートヒーターは全グレードにオプション設定する意外だが三菱車で初採用となるプッシュ式エンジンスタートボタン。Gに標準装備、Mにメーカーオプション
オプション扱いのパノラマガラスルーフは、アンバー色のLEDイルミネーションがつく。サイズは954×860mm(縦×横)で電動サンシェードを備える。イルミネーションは3段階で明るさを調整できるほか、ON/OFFも可能
照明輝度の高いハイコントラスト文字盤を採用したメーター。中央のマルチインフォメーションディスプレイは全グレードに標準装備するが、Gのみカラー液晶で、そのほかは単色液晶となる。モニター下段は水温計、ギアポジション表示、燃料計、ODOメーターを固定で表示、上段はトリップメーターや平均燃費など必要な情報をセレクトして表示することが可能トリップメーター次回定期点検を知らせる画面。撮影車は設定されていなかったためOFFの文字を表示していた
航続可能距離の表示。すぐ下のバーは瞬間燃費を表示するが、停車中のため何も表示しない平均燃費と瞬間燃費の表示平均車速と瞬間燃費の表示
ラゲッジルーム。6:4分割可倒式のリアシートを倒せば、さまざまな形状の荷物を積載することができる。リアゲートの最大荷室幅は1350mm、リアシートを倒したときの奥行きは1510mm
リアシートのセンターアームレストを前に倒せば、4名乗車でも長尺物を積むことができるラゲッジルーム下には中折れヒンジ構造の折りたたみ式カーゴボードを用意。ボードを折りたたむと670×315×135mm(幅×奥行き×高さ)のカーゴフロアボックスが出現。ボックス内は防水加工が施される撮影車はロックフォードフォズゲート プレミアムサウンドシステム装着車で、ラゲッジルームの脇にサブウーファーを組み込む
こちらはラリーアート製のパーツを装着したモデル。エクステリアではスポーツフロントグリルやフロントバンパーカバー、リアルカーボンピラーガーニッシュなどを装着するほか、エンジンルームではプラグカバー、オイルフィラーキャップ、ストラットタワーバーなどが取り付けられていた

(編集部:小林 隆 / Photo:中野英幸)
2010年 3月 15日