写真で見る日産「エルグランド」 |
日産の誇る最上級ミニバンがエルグランド。1997年に初代のE50型がデビュー。エアロパーツによるスポーティな外観が特長の「ハイウェイスター」、オーテックジャパンの手によるプレミアムな内外装を施した「ライダー」を追加するなど、スポーティ&プレミアムというキャラクターを確立。累計20万台を超えるヒットモデルとなった。
2002年には2世代目のE51型が登場。大型グリルにより迫力を増したフロントマスクをはじめとした存在感のあるエクステリア、全高を抑えつつも低床化などによりゆとりある空間を生み出したインテリア、V型6気筒3.5リッターエンジン+5速ATの組み合わせによる爽快な走りなど、初代のよさを受け継ぎつつ大幅な進化を遂げた。
それから8年。この8月に満を持してデビューするのが、3代目となるE52型だ。開発そのものはE51型の開発終了直後に始まったが、ユーザー満足度の向上や省燃費性の追求などにより、通常の約2倍ものモデルサイクルになってしまったという。
全体的なエクステリアの雰囲気はE51型を彷彿とさせるものだが、その中身は大幅に変わっている。まず、プラットフォームはこれまでのFRから、専用チューニングが施されたFFパッケージに変更。薄型燃料タンクや新設計のサスペンションにより低床化を図ると同時に、エンジン搭載位置も極限まで下げることで、乗り心地と操安性、さらには静粛性まで大幅に向上させている。
ボディーサイズは80mm長く、55mm広くしつつ、低床化により全高は95mmダウン。同時にホイールベースは50mm、トレッドが前65mm/後60mm広がっているが、最小回転半径は前モデルと同じ5.7m。ワイド&ローのスポーティさを強調したフォルムとなったが、従来モデルと変わらない取り回しのよさを実現している。
環境性能の向上も新型の特長だ。エンジンはV型6気筒3.5リッターの「VQ35DE」を先代から継承するが、スペック面では240PSから280PSへと大きく向上。一方、2.5リッターはV型6気筒から直列4気筒の「QR25DE」に変更、最大トルクが23.7kgmから25kgmへとアップしたことで、ストップ&ゴーが多い市街地などでの扱いやすさを向上させている。
トランスミッションは電子制御の5速ATから6速MTモード付の「エクストロニックCVT-M6」に。このCVTはエンジン回転数の不要な変動を抑えるほか、スムーズな発進をサポートする「発進アシスト」、カーナビ情報を元にコーナー手前で燃料カットなどを行う「ナビ協調変速機能」などにより、アクセル操作の補正やレスポンス、変速スケジュールを制御するECOモードを搭載。
そのほか、パワーステアリングに電動油圧式を、エンジンの負荷を低減する発電電圧可変制御の採用なども行われている。これらの燃費向上対策により、10・15モード燃費は3.5リッターモデルが8.2km/Lから9.4km/Lへ、2.5リッターモデルが8.6km/Lから11.6km/Lへと大幅に向上している。また、運転席・助手席エアバッグをはじめ、SRSカーテンエアバッグ&運転席・助手席カーテンエアバッグ、VDC(ビークルダイナミクスコントロール)、ABS、EBD(電子制御制動力配分システム)、ブレーキアシストなどが全車に標準となるなど、安全性能もハイレベルだ。
ゆとりある室内もエルグランドならでは。シートタイプは従来同様、7人乗りと8人乗りを設定。7人乗りは2列目にオットマンや中折れ機能付のシートバックを採用したコンフォタブルキャプテンシートを採用。長いスライドレールによる自在な位置調整などと相まって、長時間のドライブでも疲れ知らずの空間を生み出している。8人乗りの2列目は6:4分割のベンチタイプとなるが、ロングスライドはそのままに大型のセンターアームレストやホールド感のあるシート形状により、くつろぎ感を獲得している。
インテリアの注目装備となるのが、専用設計となる「プライベートシアターシステム」。ハイウェイスターにオプション設定されるこのシステムは、後席用の電動開閉式11インチワイドモニターを筆頭に、13個のスピーカーで構成されたボーズ5.1chサラウンド・サウンド付システムを採用。室内の吸音や反射など音響特性まで考慮して徹底的にチューニングされ、車内をミニシアター化することが可能。さらにワイヤレスヘッドフォンやリモコンが標準となるなど、ドライバーの集中を妨げない配慮もされている。
ラインナップは従来通り3.5リッター&2.5リッターエンジン搭載車に7人乗り&8人乗りを用意した4バリエーション6モデルで、それぞれにFFと4WDを用意。グレードはハイウェイスターがメインとなり、3.5リッターにはハイウェイスターと、その上位グレードとなる「ハイウェイスタープレミアム」が、2.5リッターはハイウェイスターのほか標準モデルとなる「250XG」が設定されている。
ボディーカラーはイメージカラーとなるファントムブラック(特別塗装色)、ハイウェイスター専用となるオーロラモーヴ(特別塗装色)、ブリリアントホワイトパール(特別塗装色)、ブリリアントシルバー、シェルブロンドの計5色。擦り傷やひっかき傷からボディーを守るスクラッチシールドが全色に採用されている。
インテリアはハイウェイスタープレミアムがダークエスプレッソで、シート表皮やヘッドレストなどが人工皮革を使用したタイプに。ハイウェイスターがブラック/ベイブラウン、250XGがシルキーベージュとなる。
撮影車両は350ハイウェイスタープレミアム(ファントムブラック)、350ハイウェイスター(ファントムブラック)、250ハイウェイスター(ブリリアントシルバー)。
なお、オーテックジャパンの手による「ライダー」も同時にデビュー。「The King of Rider」をコンセプトにライダーならではの横桟基調のグリルデザイン、ボリューム感のあるバンパーグリルなど、存在感のある迫力のあるエクステリアを採用。さらに白本革の華やかなインテリアが選択できるなど、プレミアム感も満点だ。
専用装備はエクステリアがフロントバンパー、フォグランプ内蔵バンパーグリル、ラジエターグリル、ヘッドランプフィニッシャー、リアバンパー、サイドシルプロテクター、クリアコンビランプ、クリアハイマウントストップランプ、18インチ光輝アルミホイール、スポーツマフラー、エンブレム。インテリアがシート地(白本革、黒本革、黒クロス/合皮コンビ)、トリム地、黒和紙調のフィニッシャー。オプションとしてルーフスポイラーも用意される。
エクステリアのデザインはキープコンセプトといった印象。だが、フロントからリアまで連続するサイドウィンドーにはメッキモールが施され、よりスマートな印象となった。また、FFプラットフォームの採用によってワイド&ローのフォルムを強調し、スポーティなムードも強めている |
7人乗りの場合は2列目がコンフォタブルキャプテンシートに。オットマンに加え中折れ式シートバック、アームレスト、ロングスライドレールの採用で快適なドライブが可能だ |
シートサイドにはアームレストを兼ねたカップホルダーと小型のポケット | 2列目のシートバックには降りる際に便利なシートスライド用のレバー |
助手席と2列目、2列目と3列目を使ったセミフラット状態。少しデコボコが大きいので快眠はできそうもない |
350ハイウェイスター。外観はプレミアム仕様と大きな差はない | |
ハイウェイスターのフロントシートは運転席・助手席ともに手動調整式となる。助手席用オットマンは全グレードに標準装備 |
ハイウェイスター8人乗り仕様の2列目シート。ベンチシートだが中央にあるアームレストを倒せば、パーソナル感の強いスペースにもできる | ラゲッジスペースそのものはグレードによる差はない。ただ、プレミアムに採用される電動格納&復帰機構用のスイッチは未装備 |
250ハイウェイスター。350ハイウェイスターとの外見上の違いはない。撮影車両は左右サイドでデザインが異なるニスモ製ホイールを装着 | 2.5リッターの直列4気筒DOHCユニット。最高出力は170PS/5600rpm、最大トルクは25kgm/3900rpm。3.5リッターとは異なりレギュラーガソリン仕様だ |
(安田 剛 )
2010年 8月 5日