レビュー
【ナビレビュー】カロッツェリア2015年モデル「楽ナビ AVIC-RL99」
ますます使い勝手がよくなった「スマートコマンダー」
(2015/10/27 00:00)
- 2015年10月下旬発売
ご存じのとおり、カロッツェリアブランドのカーナビは「サイバーナビ」「楽ナビ」と、コンセプトの異なる2ラインが用意されている。具体的には前者が先進機能を惜しみなく注ぎ込んだフラグシップモデルなのに対し、後者は分かりやすさや使いやすさを重視したボリュームゾーンモデルという位置づけになる。
で、今回のお題となるのは後者、楽ナビの2015年モデル。ラインアップは2014年モデルを踏襲しており、8V型モニターを採用した「ラージサイズメインユニットタイプ」、ワイド2DIN対応の「200mmワイドメインユニットタイプ」、2DIN対応の「2Dメインユニットタイプ」の3タイプ、8機種が用意されている。
楽ナビの名前とは裏腹に基本機能が充実
今回レビューをお届けするのは、8V型モニターを採用する最上位モデルの「AVIC-RL99」だ。もっとも、ワイド2DINサイズの「AVIC-RW99」および2DINサイズの「AVIC-RZ99」も、モニターサイズやボタン配置が異なるものの、機能という点では変わりがない(以下まとめて99系)。愛車に装着できるモデルを選べばよいわけだ。
2015年モデルは2014年モデル(以下09系)のマイナーチェンジ仕様とのことで、スペック面は踏襲。
具体的には、
・スマートコマンダー同梱
・16GB内蔵メモリーに地図データを収録
・CD/DVDプレイヤー内蔵
・SDメモリーカード対応(SDXC、~128GB)
・USBマスストレージクラス対応(~16GB、1A)
・Bluetooth 3.0+EDR
・iPod/iPhone接続対応
・ブリリアントフィニッシュパネル
・4チューナー×4アンテナ採用の地上デジタルTVチューナー(12セグ/ワンセグ)内蔵
といった内容になる。
AVIC-RL99は8V型モニターを採用しているためDINスペースに収まらず、装着には専用フィッティングが必要になる。現在、18種類がリリースまたは発売予定となっており、対応車種はトヨタ「プリウス」や「アクア」、ホンダ「フィット」、日産「セレナ」など人気車種が中心。今回の試乗車はホンダ「N-BOX」で、純正ライクな見た目はもちろんコンパクトな軽自動車のインパネに8V型のモニターが収まると、7V型とは明らかに違った迫力が感じられる。本体の価格差に加え専用フィッティングのコストもプラスされてしまうけれども、対応車種ならこちらを選んでおきたいところだ。
もちろん、カロッツェリアならではのプローブを使った「スマートループ渋滞情報」も利用可能。以前はサイバーナビとの差別化もあり対応道路が限られていたけれど、今はVICSと合わせて約70万kmの全道路対応になっている。この機能自体は目新しくはないけれど、実用性から言えばキラーコンテンツと言っても過言じゃないモノ。この機能を利用するにはオプションのデータ通信専用通信モジュール「ND-DC2」を接続するか、または手持ちのスマホ(要Bluetooth PAN/DUNプロファイル)も利用することもできる。スマホを使った場合、通信経由による地図更新の「マップチャージ」など一部機能は非対応となってしまうものの、余計な出費が不要なのは嬉しい。走行距離が多めなユーザーだけにとどまらず、土日が中心となるサンデードライバーでも、渋滞を避けて快適に走ることができ、到着予想時刻もより正確になるから、大きな恩恵を受けることができるハズだ。
加えてデータ通信が可能になると「フリーワード音声検索」も使えるようになる。クラウドを利用するタイプで発話~認識には5~10秒ほどを要するものの認識率は良好。画面を見ながらタッチパネルをぽちぽちする必要がないため、「羽田空港」程度の文字数でもこっちのほうがスピーディ。一回の発話で検索が決まると変な達成感があったりするのも微妙に楽しい瞬間だ。とはいえ、発声がわるいのか何度か認識できないことが続くと、ちょっとイラッとしてしまうこともなくはない。認識のクセをつかむと認識率も上がるから、諦めずに使い続けるのもポイントかも。
そのほか、文字入力して使う「フリーワード検索」のほか、天気予報や駐車場の満空情報、営業中のATM、ガソリン価格なども調べることが可能と、より便利にナビを使えるようになる。
機能充実! 使い勝手がよくなったスマートコマンダー
モニターサイズは前述したようにAVIC-RL99のみ8インチ、他のモデルは7インチで、どちらも高コントラストで美しい「ブリリアントフィニッシュパネル」を採用。若干アスペクト比は異なるものの、解像度はカーナビで主流のワイドVGA(800×480ピクセル)となる。高解像度化が進んでいるスマホやタブレットと比べると物足りなさは残るけれど、美しさという面では十分満足できるクオリティだ。タッチパネルは従来どおり感圧式でドラッグやフリックによる地図スクロールもOKだ。ただし、マルチタッチには非対応なので、回転や2D/3Dの切換えといった操作はできない。
で、そんな操作面でのちょっとした物足りなさを一掃してくれるのが、楽ナビ独自のアイテム「スマートコマンダー」だ。これは最近の純正ナビに採用されているHMIを汎用化したものと考えると分かりやすい。片手にすっぽり収るコンパクトなボディーに、ジョイスティックとロータリーボリューム、それに「現在地」と「AV」、任意のコマンドを直接実行できる2つの「カスタムダイレクトキー」を装備。機能的にはジョイスティックが地図のスクロール用、ダイヤルでは地図スケールの拡大/縮小またはボリュームの上/下が行える。また、ジョイスティック部分は押しボタンにもなっており、専用の「ダイレクトメニュー」を実行することが可能となっている。
と、コマンダーそのものは09系と同じもの。だが、99系では使いやすさを求めて、いくつかの機能追加が行われている。
なかでも、もっとも実用的と感じられたのが、ダイレクトメニューに追加された「有料道/一般道ルート切換」。ルート案内中にこの機能を選択すると、一般道走行中なら有料(高速)道へ、有料道走行中なら一般道へのルートを即時探索して比較表示。予想時間、距離、料金の違いをひと目で確認することができる。どんなときに有効かと言えば、一般道を走っていて「思ったより時間掛かるなぁ、高速に乗ったら速いかな?」なんてシチュエーション。普通のナビだと「メニューからルート再探索、高速優先、一覧表示と選んで~」なんて面倒な手順が必要となってしまうけれど、これならコマンダーのボタンを押してジョイスティックを上に倒す、と画面に触れることなく2タッチで一連の操作が完了。「やっぱ、じゃあ高速で!」と、スマートにルートを変えることができるワケだ。もちろん、今までどおり「ルート案内中の現在地/任意の地点」「ルート非案内時の現在地/任意の地点」と4パターンのメニューも利用可能だ。
もうひとつは「AV」ボタン。09系では押してもAVメニューを表示するだけで、そこからタッチパネルを使ってソースを選ぶ必要があった。「タッチパネルを使う必要があるなら本体のボタンでもいいじゃん」って声があったかどうかはともかく、新たに専用のAVメニューが用意され、ロータリーボリュームでソースの選択、切り替えができるようになった。地味な改良ながら実用的で嬉しい変更点だ。
さらにカスタムダイレクトキーにも機能が追加された。新たに「ビューモードを切換える」「地図スケール切替え(500m/登録/25m)」「カンタンベース設定を切換える」、オプション装着した「ドライブレコーダーのイベント撮影(手動)をする」の4つが加わったのだ。なかでも個人的にツボだったのは地図スケールの切換え。ちょっと先を見たい時、近くの詳細地図が見たい時、などワンタッチでOK。「もしかしてオレの為に用意してくれた?」なんて思ってしまうほど便利でありがたい機能だった。
2013年モデルで導入された「エアージェスチャー」はランチャーメニューの表示用として残っている。けれども、機能が充実したコマンダーと、デキのイイ音声検索によってタッチパネルを触る頻度は激減。ランチャーメニューはあまり使わないかな、って印象だ。
安全運転をサポートする地図情報が充実
ナビ機能に関しても09系と大きく変わらない。地図表示で変わったのは「一時停止表示」「冠水地点表示」「ゾーン30」に対応したこと。
一時停止表示は信号機表示と同じように進行方向やルート上にある一時停止地点を表示とアラーム音で知らせてくれる。また、冠水地点表示はゲリラ豪雨などにより冠水の危険がある地点を、それぞれ地図上に表示してくれるもの。どちらも即、「便利になった」って感じる機能ではないものの、ドライバーに対する注意喚起という面では嬉しい機能。だた、冠水地点表示は文字どおり表示だけで、回避ルートの探索や案内はしてくれない。これはちょっと残念な感じ。せっかくアメダス情報を取得できるのだから、一定の降水量があったら自動的に冠水地点を避けてリルートしてほしいところ。まぁ、まずは最初の一歩というところか。ゾーン30は住宅地などに新たに設定された交通規制で、最高速度が30km/h未満に制限されるスクールゾーンの拡大版といったもの。要は通過車両には立ち入ってほしくないエリアと言える。これが地図上に表示されることで避けることが可能になるわけだ。
そのほか地図表示の基本的な部分にも触れておくと、画面モードは2Dのほかに3Dタイプの「スカイビュー」、ドライバー目線の「ドライバーズビュー」、2画面で異なる縮尺や視点の地図表示が可能な「ツインビュー」、音楽や映像と地図を同時表示する「AVサイドビュー」を用意。前述した通信モジュールやスマホの接続により、「天気を取得して画面上に反映」なんてことも可能だ。また、「文字拡大モード」「道路重視モード」と、ドライバーの好みによって選べる2つのカスタマイズモードも。これらの切り替えは専用画面に分かりやすくまとめられており、地図上の「ビュー」ボタンを押すことで、いつでもカンタンに変更・選択できるようになっている。
検索機能は約3950万件のデータを収録する住所、約2920万件のデータを収録する電話番号、そのほか名称、周辺、ジャンルといったモードが用意されている。前述した「フリーワード音声検索」を使い分けることで、スピーディに目的地を検索できる。またカロッツェリアならでは、と言える「営業時間考慮検索」も便利な機能。ガソリンスタンドやコンビニ、ATM、ファミリーレストランを検索すると、営業時間内と時間外の施設を異なるアイコンで表示してくれるもので、「行ってみたら開いてなかった」なんて不毛な行動を抑えることがデキるのだ。
と、楽ナビはスタンダードモデルでアリながら充実した機能を持っているけれど、地図や検索データが古いとそれも絵に描いたモチ。だけれども、上位モデルとなる99系では最大3年間、無料で地図更新を行うことが可能なのだ。道路データは毎月、地点データは年10回更新されるため、常に新しい情報や道路を使ったルート探索、ルート案内が受けられるのは嬉しいポイントだ。 毎年2回行われる「全データ」更新はパソコンとSDメモリーカードが必要になるが、地図や検索データ以外の料金データや機能などがバージョンアップする。毎月実施される「道路データ」や「地点情報データ」の更新は通信モジュールでも行える。どちらにせよ、ディーラーやショップに出かける必要がなく、自分の好きなタイミングで行えるのはありがたい。
分かりやすく安心で正確なルート探索&案内
ルート探索は「推奨/有料標準」をベースに「推奨2/有料標準」「推奨/有料回避」「推奨2/有料回避」「エコ優先/有料標準」「幹線優先/有料標準」の合計6パターンを用意。どこが違うのかと言えば「距離」「所要時間」「料金」「推定燃料費」「推定CO2排出量」の各パラメータの優先順位で、実際の数値は探索画面の「6ルート地図」や「6ルートリスト」で確認することができる。探索に要する時間はベースの「推奨/有料標準」だけならほぼ瞬時で、単純に掛かる時間だけならサイバーナビよりずっと短く、「案内開始」ボタンを押せばすぐにルート案内を開始することができるから、まったくストレスを感じない。もっとも、参照している情報量やルート精度が違うから単純比較はあまり意味がないのだけれど……。6ルートを選ぶとサスガに時間が掛かるものの、これは仕方のないところだろう。
ルート案内に関しても09系譲り。サイバーナビにも採用されているオートアングルチェンジやドライバーズビュー、それに交差点拡大図、アローガイドが用意される。一般道では方面看板(約12万2000件)やレーンガイド(約13万4000件)も豊富に用意されている。ルート案内の如何に関わらず表示されるため、慣れない道路でもスムーズにドライブすることが可能だ。
自車位置精度の高さに関しては、いまさら語ることがないほど完璧。高速道路と一般道が上下に並走している場所や、GPS電波を受信できない地下駐車場など、少しの迷いもなく正しい場所を示してくれた。データがある場所に限られるとはいえ、一般道のアンダーパスと側道もキチンと判断してくれるし、ルートを間違った際のリルートもほぼ瞬時なのだから、この点においては不満なんてまったくないと言っていい。
ついでに公式なアナウンスはなかったのだけれども、いつもの駐車場に入ってみると駐車場マップが表示された。今まではサイバーナビにしか収録されていなかったのが「ついに楽ナビにも!」とひとりで盛り上がってしまい、運転していた編集者がドン引きしたのは、まぁまったくの余談。それはさておき、世間的にはあまり評価されていないようだけれども、カロッツェリアナビの高精度があってこその、この機能。あとは収録数が増えてくれることを願いたい。
豊富な音質調整機能を搭載
しつこいかもしれないが、AV機能面においても09系と変わらない。サイバーナビ譲りのタイムアライメントや13バンドグラフィックイコライザーなど音質調整機能が充実。「細かい設定なんてわからん!」って人のためには、「迫力アップ」「音声くっきり」などワンタッチで音場切換えができる「カンタンベース設定」も用意されている。前述したように99系からはスマートコマンダーのカスタムダイレクトキーに同機能を割り当てることができる(順送りになる)から、選ぶのもカンタンだ。
音楽CDを録音して楽しめる「ミュージックサーバー」も便利な機能だ。録音先はサイバーナビがHDDだったのに対し、こちらはSDカード(別途用意が必要)になる。音質はMP3ファイル形式で「高音質(320kbps)」と「標準(128kbps)」が選択可能で、16GBカードなら前者が約1700曲、後者だと約4400曲の収録が可能。ごく一般的なユーザーならカードを入れっぱなしでも、十分に事足りるハズ。「オレはCD品質以外認めん!」って人は、パソコンからSDカードにデータを転送して。ミュージックサーバーで聞くことも可能。ただし、フォーマットはWAVになるので収録数はかなり少なくなってしまうけれど。
対応ソースにも簡単に触れておくと、フルセグ地デジをはじめCD/DVD、Bluetooth、AM/FMラジオ、SDカードやUSBメモリで音楽や映像再生と幅広い。入力端子もHDMIのほか、AUX端子が用意され、オプションの接続ケーブルが必要かつ、iPhone5以降のモデルでは音楽再生のみとなってしまうものの接続、ナビ画面で操作が可能だ。
不満点を着実に克服 さらに満足度が高まった新しい楽ナビ
2015年モデルの99系楽ナビ。2014年モデルの09系とハード的にはまったく変わっておらず、ガワもそのまま(型番のシルク印刷だけ変わった)。つまりソフトウェアのバージョンアップに主眼が置かれたわけだ。
メインとなったソフトウェアの改善点も、数えていくと実はそれほど多くない。だけれども、しかし! なのである。実際に使ってみると、実に使いやすくなったと感じられた。メニュー選択に使えればと思っていたスマートコマンダーも、AV系についてはキチンと対応。「なんでナビ系には対応しないの?」って歯がゆさはあるものの、それでも十分に使いやすさは向上している。09系モデルのレビューでも書いたけれど、今回のモデルも間違いなく「買い」の1台と言える。
……、なんて書くと「前回の記事を読んで09系、買っちゃったよ、どうしてくれる!」と、思わず憤ってしまう人がいるかもしれない。でも、ご安心を。09系モデルも「全データ」更新により同様の機能が追加できるのだ。まさに、バージョンアップ! アップデータのリリースは11月下旬が予定されている。